前原誠司外相が6日夜、在日の韓国人(72歳、女性)から違法な政治献金を受けたことを認め、辞任した。政治献金の額は年1回5万円、過去に5回計25万円と小さく、中学校時代からの知り合いであり、日本名を通名としていたというから、いわば個人的な支援者・応援団とみてよいだろう。外国人の献金を禁止しているのは、戦後、米国や旧ソ連が組織的な狙いから献金し、日本政治に影響を及ぼしたり情報収集をはかるのを防止するためというのが主な理由だった。今回の場合、前原外相の政治的ミスを、野党が追及して辞任に追い込んだわけだ。
菅直人首相は、なぜ外相を守り切れなかったのだろうか。菅首相は自らが窮地に追い込まれた際、「日本の首相がコロコロ代わっては国際的信用を落とす。最後までがんばる」と主張し、首相がすぐ代わることは日本の国益にならないという論理も展開していた。コロコロ代わって信用を落とすという意味では国際会議の多い外相や財務相、経済産業相なども同様だ。
菅首相は、粘り腰でこれまでも何度か危ない場面を切り抜けてきた。自ら守ることでは、実にしぶとい首相だった。菅首相は「絶対に守るから辞任を思いとどまるように」と説得したようだが、捨て身になっても守る気概があったかどうかだ。自分の進退に関するしぶとさに比べると、あっさり辞任を認めた感がぬぐいきれない。
外相は来週から米など各国との外相会合を次々と控えているし、日中・日露・日米など2国間の問題を多く抱えている。また最近はインフラ輸出など再び経済外交で前線に立ち、日本経済の長期低迷を打開する先導役も期待されていた。こんな事情の中で、違法な政治献金とはいえ、年1回5万円、5年間に計25万円というわずかな額の責任を取ってやめなければならなかったか。私はやや行き過ぎで、菅首相はとことん守り切る姿勢を貫くべきだったと思う。その熱意が周囲に見えたのかどうか。
これで菅政権になってから、現役閣僚が不祥事の責任を取って3人もやめている。これでは「菅首相は閣僚を守れない総理」と見られ、野党は一段と攻勢を強めよう。閣僚が次々と辞任してゆけば、最終的に総理も辞任に追い込まれるに違いない。ポスト菅には、岡田克也幹事長、前原前外相、野田佳彦財務相らの名前があげられていたが、岡田氏・前原氏の後継はなくなりつつある。消去法でまた菅首相が居残る選択となるのか。
2011年3月8日