719日、『スポーツ・ビジネス・デイリー』紙がMLBスター選手の「マーケッタビリティ(広告/商品価値)トップ10リスト」を発表した。

同リストは、スポーツ・ビジネスにかかわる経済人及びマスコミ関係者49人を対象とするアンケート調査を元に作成。1-5位の順位付きでマーケッタビリティの高い選手の名を上げてもらい、1位選手に5点、2位選手に4点、・・・5位選手に1点と点数をつけた後、総得点で順位をつけた。以下に結果(順位と総得点)を示す。

1位 デレク・ジーター(ヤンキース) 223
2位 アルバート・プホルス(カージナルス) 111
3位 ジョー・マウアー(ツインズ) 103
4位 スティーブン・ストラスバーグ(ナショナルズ) 63
5位 ライアン・ハワード(フィリーズ) 57
6位 エバン・ロンゴリア(レイズ) 37
7位 ティム・リンセカム(ジャイアンツ) 27
8位 デイビッド・ライト(メッツ) 21
9位 アレックス・ロドリゲス(ヤンキース) 18
10位 ダスティン・ペドロイア(レッドソックス) 9
10位 トリイ・ハンター(エンゼルス) 9

 ジーターがダントツのトップとなったが、49票中39票の1位票を獲得して広告/商品価値の高さを見せつけた。総得点は223点。最高可能得点(投票者49人全員から1位票)が245点であることを考えたとき、その高さが際立つ。

以下、プホルス、マウアーと昨季両リーグMVPが続き、4位にスーパールーキー、ストラスバーグがつけた(投手としてベスト10入りを果たしたのはストラスバーグとリンセカムのみ)。

全体をざっと見渡していえるのは、マーケッタビリティで上位に入るためには、ただ実力があるだけではダメで、好感度が伴わなければならないということだ。そういう意味で、実力と比較して広告/商品価値「9位」とその「低さ」が目立つのが、A−ロッドだ。

ご存知のようにA−ロッドはMLB一の高給取り(今季の年俸で3200万ドル)。ヤンキースとしては、戦力としてだけではなく、「マーケッタビリティ」も見込んで高給を払っているのだから、その「人気の低さ」は期待外れだったのではないだろうか?

同じ三塁手同士の比較でも、デビュー3年目、それも「スモール・マーケット・チーム」レイズの、ロンゴリア(6位)に遅れを取っている。しかも、今回のマーケッタビリティ調査だけでなく、ロンゴリアには、オールスターのファン投票でも、今季・昨季と2季連続で1位の座を奪われた。さらに、ニューヨークのライバル・チーム、メッツ三塁手のライト(8位)にまでマーケッタビリティで劣るのだから、「情けない」と言われてもしかたないだろう。

A−ロッド自身、広告専門家をコンサルタントとして雇うなど、「イメージ」に気を使っているのだが、元々ただでさえ好感度が低かったところに加えて、昨季開幕前ステロイド使用歴が暴露されてますますマーケッタビリティを下げてしまった。

ジーターの場合、アンチ・ヤンキースでさえも「尊敬」するファンが多いのとは反対に、A−ロッドの場合、ヤンキース・ファンでさえも嫌う向きが多いのだが、なぜ、そこまで嫌われるのかというと、言葉はきついが「人品の卑しさ」が自ずと出てしまうからではないだろうか?

しかも、「人品の卑しさ」が、グラウンド外のスキャンダルだけでなく、グラウンド内のプレーにまで現れてしまうのだから、メジャー史上でも際立った存在と言ってよいだろう。以下、A−ロッドが、グラウンド内で「人品の卑しさ」を発揮した実例3件を記す。

2004年のリーグ選手権第7戦。A−ロッドはタッチしに来たブロンソン・アロヨのグラブを手ではたき、落球させて一塁に生きたものの、「スポーツマンシップにもとる行為」でアウト。

20075月の対ブルージェイズ戦92死。内野飛球が上がった際に一塁走者だったA−ロッドが「俺の球だ」と叫んだせいで、ボールは野手の間に落下。ブルージェイズ監督ジョン・ギボンスは、試合後「ヤンキースの名を汚す行為」とA−ロッドを批判した。

*今季、422日の対アスレチクス戦。A−ロッドは、ファウルで帰塁する際、わざわざマウンド中央を横断、相手投手ダラス・ブラデンを怒らせた。さらに、試合後、ブラデンが怒っていると聞かされたA−ロッドは「反論すると無名投手に15分の名声を与えることになる」と言葉でもブラデンを侮辱した。A−ロッドから徹底的に馬鹿にされたことで発奮したのか、ブラデンは、59日メジャー史上19人目となる完全試合を達成した。

ところで、A−ロッドは、いま、通算600本塁打という大記録達成まであと2本(722日現在)と迫っている。普通だったら(少なくとも15年前だったら)、大騒ぎとなっていたのだろうが、A−ロッドの場合、薬剤汚染の前歴が明らかなせいもあって、あまり騒がれていない。

ヤンキースとの契約では、今後、660号(ウィリー・メイズの通算本塁打数)、714号(ベーブ・ルース)、755号(ハンク・アーロン)、762号(バリー・ボンズ)、763号(メジャー新)に到達する度に600万ドルの特別ボーナスが支払われることになっている(すべて達成した場合ボーナス総額は3000万ドル)。

ヤンキースとすれば、A−ロッドが記録に挑戦する度にファンの注目を集め、絶大なマーケッタビリティを得ることができると期待したからに他ならないが、契約を結んだ時点では、A−ロッドの記録挑戦が薬剤汚染の暴露で「白けた」ものになるとは夢にも思っていなかったのである。

Fox TVの解説員ケン・ローゼンタールが「ありし日のスタインブレナーだったら、きっと、『薬剤汚染の事実を知らされずに結んだ契約だから無効』と、特別ボーナスの取消を求めたのではないか」と言っていたが、けだし同感である。

718日、姉妹サイトCTBNL (Column To Be Named Later)を更新、「間に合わなかった初著書」をアップしました。なお、講演・原稿等のご依頼は本サイトのコメント機能をご利用下さい)