余録

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余録:「不幸は2人連れでやって来る」…

 「不幸は2人連れでやって来る」はポーランドのことわざである。「不運は三つずつやって来る」とは英語の警句、「災難はドアからも窓からもやって来る」はエストニアのことわざだ。悪いことは重なるのが文明や文化を貫く原理らしい▲むろん日本にも「泣きっ面に蜂」「弱り目にたたり目」がある。ただでさえ予算関連法案成立の目算もなく、与党内にも危険な火種を抱える窮地の菅政権だ。そこに今度は政権の支柱をなしてきた前原誠司外相の辞任である▲聞けば、前原氏を少年時代から応援してくれた在日韓国人の焼き肉店店主の年5万円ずつの寄付が違法献金にあたるための引責辞任という。とりようでは人情話のような一席だが、今の政権をめぐる力学の中では政治資金についての違法は火のついた爆発物も同然だ▲前原氏といえば、土俵際の菅直人首相に代わる民主党政権の後継候補の筆頭だった。それが外相として脇の甘さを露呈し、過去の党代表時代の偽メール事件での対応の拙劣まで思い起こされての退場となった。今後の切り札を失った民主党も「弱り目にたたり目」だ▲だが何より悪いことが重なる事態となったのは、わずか6カ月で外国には不可解な外相交代を見せた日本外交である。米国や近隣諸国との関係再建も着手したばかりなのに、国内政局に引きずられて腰の定まらない日本の外交姿勢は諸外国の当局者にどう映るだろう▲内外ともに何一つ根本的問題を解決できないのに首相のすげ替えや閣僚の交代ばかりが繰り返される日本の政治である。心底「泣きっ面に蜂」という気分なのが誰かは、今さら言うまでもないだろう。

毎日新聞 2011年3月8日 東京朝刊

 

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