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社説:保護司の仕事 社会がもっと手助けを

 刑務所を仮出所した人や、少年院を出た少年らと日常的に面談をし、更生を手助けするのが保護司だ。

 全国に約4万8600人いる。非常勤の国家公務員で、給与は支給されず民間のボランティアと位置づけられる。60歳以上が全体の4分の3を占め人生経験の豊かな高齢者が多いが、近年、新たな成り手の不足が深刻化している。

 裁判員裁判が始まり、執行猶予の被告に保護観察処分を付けるケースが増えた。保護司の役割はますます重要になった。だが、それに見合うだけの対応が、社会の中で取られているだろうか。

 昨年7月、茨城県内の女性保護司の自宅が、保護観察中の少年に放火され全焼した。元教員だという被害者は、今も保護司としての仕事を続けている。頭が下がる思いだ。

 現行の法制度の下では、物的な被害は補償できない。法務省保護局は全国保護司連盟と共同で、こうした場合の補償など保護司活動の基盤整備を進める検討会を作った。近く初会議を開く。予算措置を含め、実効性ある制度を作ってもらいたい。

 また、保護司が対象者との面談に使ったり、保護司同士が交流する地域の拠点であるサポートセンターが、新年度、新たに34カ所できる見通しだ。現在は21カ所で、ようやく全都道府県がカバーされる。

 保護司は自宅に対象者を招き入れ面談をする。だが、家族の理解が得られなかったり、近年は女性の保護司が増え、自宅での面談が難しい場合も少なくないようだ。

 保護司が配属される地域は全国に883カ所ある。拠点はまだまだ足りない。そこで期待されるのが自治体の役割だ。例えば、東京都大田区は、廃校になった学校の部屋を提供し、役立てている。サポートセンターは、公的施設の一角があれば足りる。自治体には、場所の提供など一層の配慮を検討してほしい。

 保護司は、対象者の住まい確保や就労支援にも走り回る。協力企業を作る活動が積極的に進められる地域もあるが、温度差がある。

 もともと、法相の委嘱を受けて活動する保護司と地域行政との結びつきは制度上、強くない。だが、非行青少年の立ち直りは、地域の教育活動の一環として位置づけられるはずだ。行政、経済界など一体となった支援の動きを進めてもらいたい。

 そして、何よりも大切なのが教育現場だ。保護司の中には学校との連携を求める声が強いが、十分に生かされていないのが現実のようだ。たとえ失敗しても人生はやり直せる。過ちをおかした多くの少年らに接してきた保護司の言葉は、子供たちの心にきっと響くはずだ。

毎日新聞 2011年3月8日 2時30分

 

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