[2010年11月19日(金)]
【MLB】日本人内野手はなぜ生き残れないのか?
水次祥子●文 text by Mizutugi Shoko益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi
今オフ、ポスティング制度やFAで多くの日本人選手がメジャー移籍を目指している。楽天の岩隈久志投手がポスティングでアスレチックスと独占交渉を行うことになったのを皮切りに、ロッテ小林宏之投手、西岡剛内野手、ソフトバンク多村仁志外野手、日本ハム建山義紀投手らが大リーグ挑戦を表明した。
これまでも日本から多くの選手がメジャーで活躍の場を求めてきたが、その全員が成功を収めてきたわけではない。高額契約を結び大きく期待されて入団したものの、それに応えきれなかった選手もいる。こうした前例がある中で、日本人選手は米国でどう評価され、メジャーでどれだけ需要があるのだろうか。
「確かに失敗例も多いが、それでも日本は、メジャーにとっては大きな市場だと思う。日本に調査に行く球団も年々増えている。レンジャーズのコルビー・ルイス投手(08〜09年広島所属)は、きっちり調査して獲得し成功した好例になっている。日本の優れた選手は、まだまだ評価も注目度も高い」
こう話すのはスポーティング・ニューズ誌のスタン・マクニール記者だ。実際、メジャー各球団は以前より日本人選手の調査に力を入れるようになっている。岩隈獲得に失敗したものの入札に参加したツインズは、元GMだったトップスカウトを筆頭に少なくとも3スカウトが日本人選手を調査している。
サンフランシスコ・クロニクル紙のヘンリー・シュルマン記者は「ジャイアンツは今年9月にローレンス・ベア球団社長が直々に日本に行っている。日本の調査に力を入れているのは確か」と話す。球団幹部クラスが自ら日本人選手の調査に乗り出すケースが増えているのは、獲得したものの期待外れだったなどの失敗を防ぐためと、選手を能力だけでなくあらゆる面で調査しているということなのだろう。
レンジャーズのジョン・ダニエルズGMも、「いい選手なら、ポスティング制度で入札金を積んでも獲得したいというのが私の考え。どんな選手を獲得するときでも常にリスクはつきものだし、この選手はいいと思えば積極的に獲りにいく」と言う。
ただし野手、特に内野手に関しては賛否両論がある。ワシントン・ポスト紙のデーブ・シェイニン記者は「今オフはFA市場にミドル・インフィールダー(二塁、遊撃)が少ないので、日本の内野手もかなり注目されると思う。例えばオリオールズは遊撃が穴なので、いい選手なら欲しい。上原も所属したし、日本マーケットをさらに開拓する可能性もある」と好意的。
だが前出のマクニール記者は「日本の内野手はこれまで成功していないので、厳しい目で見られると思う」と辛口だ。過去にメジャーに移籍した松井稼頭央、岩村明憲、井口資仁らは確かに最初の頃はまずまずの働きをしたが、いずれも尻すぼみだった。
メジャーでは三塁、遊撃はパワーを求められるため、その点で劣る日本人選手は二塁に転向せざるを得なくなり、新たな守備を覚える負担も大きい。守備ではメジャー特有の体当たりのスライディングなど激しいプレイに慣れていないため、岩村のように大ケガをし、その後打撃の調子を戻せないケースもある。西岡についても「彼は日本でもケガが多く130試合以上の出場は1度だけ。その点が評価のネックになるのでは」と不安視している。身体の強さと日米のプレイスタイルの差で、内野手のメジャー挑戦はハードルが高いのだ。