(写真1)クイズ
これは何でしょうか?
(写真2)こたえ
(写真3)背もたれ部分と斜め後ろにもセンサーを設置している例
わかりましたか?答えは、車いす対応トイレで見つけた、便器の後ろに付いたセンサー式の水洗スイッチの例です。
写真3では背もたれ部分の下側にセンサーをつけています。また斜め後ろにもセンサーがあります。いま、トイレではセンサー式のスイッチがどんどん増えています。直接触らないので衛生的だとか、力の弱いひとも操作できるということで、利点は大きいのですが、使いにくくなっている例もあるようです。
このところトイレシリーズが続いていますが、特に今回と次回はヨッシーのワンマンショー。ヨッシーにとってどんな使いにくさがあるのでしょうか。
レイコさんの話を聞いていて、私もトイレについていろいろ言いたくなった。編集者にお願いしてこれから2回は、私の話をメインにします。
まあ、ずいぶん熱くなっているわね。お好きなだけどうぞ。
レイコさんがセンサー式に困っているといっていたけど、実は車いす使用者も困ることがあるんだ。車いすを使っている男性の場合、小用の時には便器に乗り移らない人が結構いる。そうすると、便器の後ろのほうにセンサーがあるとどうなると思う?
後ろのほうにあるセンサーは便器に座った人の背中を感知するのだから、便器に乗り移らないのだと、感知しないわね。
その通り。仕方ないので流すときにはセンサーに手をかざすことになるけど、便器の向こうにあるので手が届かない。
あ、そうか!車いすと便器が正面衝突のようになるから、センサーはずいぶん遠くになるのね。
そう。流すだけで大変なんだ。こういうときは手前のほうにも水洗スイッチが必要だね。
レイコさんはトイレットペーパーが普通の位置と、それよりずっと前のほうとについているトイレがあるのを知っているかな?
以前触っていて、何でこんなに前のほうにあるのかなって思ったことがあるわ。
さっきの話でわかっただろう。便器に乗り移らない人にとっては、普通の位置のペーパーでは取りにくいので、手前のほうに別に付けてあるんだ。もちろん、普通の位置のペーパでも車いすから取りやすければ、それだけでもいいよ。
なるほど。
非常ボタンも、普通の位置のほかに足元近くにあるといいんだ。
それはどうして?
私たち車いす使用者はときどき車いすから落ちてしまうことがあるんだ。特にトイレでは乗り移りがあるから、落ちる危険が高いといえる。
そうか。それで床に落ちてしまったときでも押せる位置にというわけね。
ピンポン!さすがにレイコさん、ものわかりが早い。
非常ボタンそのものはわりと高いところにつけて、操作用のひもを垂らしているものもあるよ。
でも設計者には、そういうことをなかなか理解してくれない人もいるんだ。
じゃあ、使いにくいトイレがたくさんあるってこと?
そう。最近では設計ガイドラインに非常ボタンは床に転倒した場合に押せる位置にもつける、といったことが書いているので、非常ボタンのほうはだんだんよくなっている。でも背中のセンサーのほうは相変わらずの感じだね。
壁のほうにも水洗スイッチがあればいいのよね。
そうだね。でもときどき背中のセンサーだけのがあって、これが困るんだ。手の届きやすいところに、センサーだけではなく押しボタン式と併用して欲しいよね。
手が届かないときは、マンガじゃないけど、本気で手がニョロッと長くなって欲しいと思うよ。
わー、そんな手があったら私も欲しい。背中なんか簡単にかけるし。
(写真4)床近くまで引きひもを垂らしている
(写真5)便器の手前側にもペーパー、水洗ボタン、非常ボタンを設置している。
(写真6)非常ボタンを赤く塗って目立つようにしている
トイレは密室なので、こうして話を聞いてみないとわからないことが多いですね。男性の車いす使用者の中には、小用のときは一般トイレの小便器で用を足す人も結構います。少し立ち上がれるとそういうことができるんですね。
それにしても、流す手段がセンサーだけで、しかもそれが便器の後ろのほうにだけあるというのは、ヨッシーには相当使いづらいようです。
また、いろいろなスイッチ類があると、どれがどれだか混乱してしまうので、非常ボタンを目立つようにするとか、非常時ですから押しやすくするなどといった工夫も必要です(写真6)
これだけ利用者の使いよさを考えようという機運が高まっているのに、現実にはなかなかすぐによくならない部分もあるのですね。