そもそもタマゴがコレステレロールの代表のようにいわれるようになったのは、約90年前です。
1913年、ロシアでの実験がきっかけでした。
コレステロールが人体に与える影響を調べるために、栄養価の高いタマゴを草食動物のウサギに食べさせて実験をしました。
その結果、動脈硬化の元といわれる血中コレステロールが増加し、タマゴ=コレステロールの印象がうまれてしまったのです。
これが、誤解の始まりです。
ウサギは草食動物なので、動物性の脂肪を含むタマゴを食べさせればコレステロールが増加するのは当たり前のことです。
しかし、人間は雑食性なので、動物性の食品もたくさん食べますが、常にコレステロールが増えるということにはなりません。
そこで最近では、このロシアのコレステロールの実験は、科学者の間でも疑問視されています。
日本でも1981年に、人体とコレステロールに関する興味深い研究結果が発表になりました。
健康な成人に1日5〜10個のタマゴを連続して食べさせるという実験です。
その結果、1日に10個ずつ食べた人でも血中コレステロールの値はほとんど変化しないことがわかりました。
また最近の実験でも、普段の食事以外に、1日にタマゴを3個ずつ、しかも2週間食べつづけてもらった結果、コレステロール値を
測ってみると、ほとんど変化はありませんでした。
こうしたいくつかの実験でもわかるように、タマゴや他の食品からコレステロールを多く摂っても必ずしもコレステロールが増加するとは限らないのです。
食物に含まれたコレステロールは、からだに入ると小腸で吸収され、肝臓に運ばれます。
肝臓では人間に必要なコレステロールの量を判断し、足りない分は自ら合成します。
血液中に存在するコレステロールのうち、1/4が食事から、残りの3/4が肝臓で合成されます。
ですから、食べ物からとるコレステロールが多少多くなっても自ら合成する量を減らし、いつも一定量を保つように調整されるので
すぐ健康に悪影響をおよぼすということはありません。
コレステロールは、私たちの体内に100〜150gあります。
からだの細胞膜の主成分であり、脳神経の刺激を伝える神経組織の成分でもあります。
また、胆汁酸に変化して脂肪の消化を助けるほか、若さを保つ性ホルモンや副腎皮質ホルモンなど、さまざまなホルモンの原料としても必要です。
コレステロールは、とかく目の敵にされがちですが、実は人間の生命と健康を支える不可欠な栄養成分なのです。
食べ物に含まれるコレステロールと同じように、小腸で吸収され、肝臓に運ばれるものにミリスチン酸という脂肪酸があります。
ミリスチン酸は肝臓を刺激すると同時に、コレステロール合成の材料となって大量に血液中に流出させます。
血液に入ったコレステロールは、細胞膜の合成などに使われるので悪影響はないのですが、余ったコレステロールが肝臓に戻るのをミリスチン酸が邪魔します。
これが悪玉コレステロールとなり、次第に血中にコレステロールがあふれ、長い間には動脈硬化の原因となります。
タマゴは、コレステロールの多い食品ですが、実験で証明されてるように、それが血中コレステロール値を上昇させているということではありません。
タマゴにはこの問題のミリスチン酸はほとんど含まれていないうえに、コレステロールを下げる効果のあるオレイン酸が豊富に含まれています。
研究の結果、卵白は血中コレステロール、特に悪玉コレステロールを下げる作用があることが明らかになっています。
それは卵白に含まれるアミノ酸シスチンの効果ではないかといわれています。
また、卵黄にはレシチンという脂肪酸が含まれていますが、レシチンは動物実験の結果、血液の悪玉コレステロールを減らす働きがあるといわれています。
タマゴはコレステロールが心配どころか、反対に私たちの健康づくりの味方だったのです。
1999年11月より卵のパック等への賞味期限表示が食品衛生法によって義務付けられました。
賞味期限は生で卵が食べられる期間のことです。
ですので、表示されている賞味期限が過ぎても加熱処理をすれば安心して食べることができます。
*加熱処理=70度で1分以上の加熱*
賞味期限はサルモネラ菌の増殖しない期間を元に決められています。
この期間は保存時の温度が深く関係するために季節によって変わってきます。
夏場は約3週間、春・秋は約4週間、冬場は約7週間が目安になっています。
ゆで卵の賞味期限は、ゆでてから3〜4日位です。
ゆで卵は新鮮な卵であるほどむけにくいものです。
ですから、保存はゆでてから保存をするのではなく、生卵の状態でちょっと長い期間保存をして、
ゆでたらすぐ召し上がる方が美味しくいただけると思います。
卵白に含まれているリゾチームという殺菌力のある酵素や卵黄膜というバリヤーは、細菌の増殖を防ぐ働きがあります。
肉や魚と同じ生鮮食品であるタマゴが長く日持ちするのは、リゾチームを成分に含む卵白に守られているからなのです。
■ 上手な保存方法
タマゴは、直射日光や高温多湿を避け、買ったらすぐに10℃以下の場所で保管しましょう。
タマゴには、上下がありますが、とがった方を上にして置くと、卵黄を支えるカラザが緩んで、卵黄が上昇して殻にくっつくことがあります。長持ちさせるには、卵黄を安定させることが大切なのでタマゴの丸い方を上にして置きましょう。
冷蔵庫のエッグポケットは、ドアの開閉によって振動が激しく、温度が上がりやすいため、なるべく冷蔵庫の奥の方に置いて
おくことをおすすめします。
新鮮なたまごは、殻がむきにくいのでゆでたまごには向きません。
冷えた卵はゆでると割れやすい
ので、使う前に室温に戻しておきましょう。
冷えきった状態から急に温めると、割れやすくなるので、急ぐ場合は水にしばらくつけておきましょう。
ゆでている最中に卵にひびが入る一番の原因は、ゆでているうちに殻の中の空気が膨張して亀裂ができるためです。
これを防ぐには、卵の丸みのあるほうの先に針で穴をあけておくといいでしょう。
水から入れてゆでる場合、沸騰するまで静かに転がしながらゆでていくと、黄身がちょうど真ん中で固まります。
お湯の中にあらかじめ少量の塩を入れておくと、殻にひびが入ったときでも白身が外に流れ出ません。
塩にはタンパク質の凝固を早める働きがあるからです。(塩の代わりに、酢を入れても同じ効果があります。)
沸騰したお湯の中に入れた卵は3分で半熟になります。適当な固さは5分くらいです。固ゆでは12分くらいです。
水から入れるときは、10分で半熟、18分で固ゆで、黄身がしっとりしておいしいのは15分です。
ゆで卵ができあがったらお鍋の湯を捨てて、ふたをして強くゆさぶって卵同士をぶつけ、ひびを入れます。
それから水につけてむくと、簡単にむけます。
65〜70度までの温度を保って約30分ゆでると、白身が柔らかくて黄身だけ固まっている温泉たまごができます。
落としたまごもゆでたまごにできます。
形がくずれないように水ではなくお湯に酢を加えて煮立てて、火を弱めてから割った卵を静かに落として入れます。
3分ほどゆでたらすくい取ってください。殻なしのゆでたまごのできあがりです。
ひびが入っているタマゴは、細菌が外から進入しやすく、増殖している可能性があるので、加熱調理してください。
同様に、タマゴは料理に使う分だけ、使う直前に割って、すぐに調理しましょう。
決して割ったままの状態で放置しないでください。
そのままにしておくと、細菌が増殖しやすくなり危険です。
料理を途中でやめるときは、冷蔵庫に入れましょう。
再び調理するときは、充分に加熱しましょう。
また、自家製マヨネーズは、材料のタマゴを加熱しないで使用するので、殻にひびがあるタマゴを使うのはやめましょう。
タマゴのたんぱく質は豊富であり、すべてえの食品のなかでも最も良質です。
それは、たんぱく質をつくるうえで大切な必須アミノ酸がバランスよく含まれているからです。
必須アミノ酸の一種であるメチオニンは、動物性たんぱく質のなかではタマゴに非常に多く含まれています。
このメチオニンが、がん予防に大きな働きをすることが注目されています。
またビタミンEやカロチンなどに、発がんを抑える作用のあることが研究の結果わかってきています。
タマゴに含まれるメチオニンは、肝臓でアツコールが分解されるときに必要なアミノ酸でもあります。
このメチオニンは、二日酔いの薬に必ず入っているほどで、タマゴ100gにつき400mgも含まれています。
これは他の食品に比べて、ずばぬけて高い数値です。
またアルコールによる肝臓も炎症を抑える働きのあるビタミンB2やビタミンB群もたっぷり含まれています。
がんをはじめ心臓病、糖尿病、高血圧などの生活習慣病は、まさに生活習慣を改善することによって予防や治療が可能ですが、
骨粗しょう症もその一つ。
人間が骨をつくるうえで必要な栄養素としては、カルシウムが代表的ですが、カルシウムが充分に働くためには、
たんぱく質、ビタミン、さらに鉄分、マグネシウム、亜鉛、リンなどの多くの栄養素の助けが必要です。
タマゴはビタミンCと食物繊維以外のすべての栄養素を含んでいるので、毎日食べることによって、丈夫な骨づくりに役立ちます。
最近、アルツハイマー病(老人性痴呆症)の治療薬として期待されているのが、タマゴの卵黄に含まれているコリン。
コリンは、脳で記憶や学習に深いかかわりをもつ神経伝達物質アセチルコリンの原料となるものです。
タマゴはすべての食品の中でも、最もコリンの含有率が高く、大豆の3倍近くもあります。
脳に送られる栄養は、脳関門という関所を通過しなければなりません。
大豆のコリンは他の成分が邪魔するため吸収しにくいのですが、タマゴのコリンは吸収しやすいという特徴をもっています。
全国の100歳以上の長寿者のうち1500人を対象として、食生活を調査した結果、『ボケ知らずで心身ともに元気なお年寄り』は、
毎日欠かさずタマゴを食べていることがわかりました。
長寿には、良質のたんぱく質をしっかり摂る食事が第一条件。
年をとると肉は苦手という人も多くなりますが、タマゴなら抵抗もなく、歯が弱くなっても美味しく食べることができます。