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外国人看護師受け入れ、負の連鎖も

 2月下旬、今年度の看護師国家試験が行われ、経済連携協定(EPA)に基づいて2008年夏に来日したインドネシア人看護師候補者(第1陣)約90人が最後の試験に臨んだ。彼らは不合格の場合、8月に滞在期限を迎えるため、政府は来年度も受験できるよう、在留期間を1年延長する方向で調整している。ただ、仮に延長になったとしても、あくまで「応急処置」にすぎず、制度の見直しという課題は残されたままだ。この問題は日本とインドネシア、フィリピンとの友好関係だけでなく、看護師候補者の人生をも左右するが、このままでは負の連鎖が続くとの懸念が広がっている。(敦賀陽平)

 「わたしたちはこの何年間か、国家試験に合格するために毎日勉強してきました。時間もなく…家族と離れて…日本人の中で日本語に苦しみながらの毎日でした。何度インドネシアに帰りたいと思ったか分かりません」―。3月5日に在日インドネシア大使館で開かれた第1陣の慰労会。候補者を代表して日本語であいさつしたデウィ・スプティヤスリニさんは目に涙を浮かべ、言葉を詰まらせた。
 デウィさんは名門インドネシア大を卒業後、首都ジャカルタ市内の病院で経験を積んだエリート看護師だ。しかし、その彼女にとっても言葉の壁は厚く、候補者から初の合格者が出た昨年度の試験でも、合格ラインにわずかに届かなかった。関係者によると、彼女は今回も合格者の最有力候補の一人だという。「昨年に比べて易しかったけれど、合格点も上がるので分かりません」とデウィさんは話す。ただ、不合格だった場合の帰国だけは既に決めているという。「3年で合格しなかったら帰ると、最初から決めていました。もう(頑張る)元気はないです」。彼女の顔には疲労の色がにじんでいた。
 一方、彼女と同じ病院で働くイルファン・ボラギンアギンさんは、「必修問題はできたけれど、一般問題は難しかった」と話す。イルファンさんは不合格でも日本にとどまるという。

■「候補者の合格は厳しい」との声も

 予備校関係者によると、今回の試験は例年に比べて難易度が低かったという。ある関係者は、「昨年並みの合格点ならば、30人ぐらいは受かるかもしれない」と話す。看護師国家試験では、必修問題(50問)で一定の正答率(例年は8割以上)を上げた上で、一般問題と状況設定問題で合格ラインに達する必要がある。今年度の合格点は、週内に開かれる厚生労働省の医道審議会の分科会で決まるが、合格点が跳ね上がる可能性もある。
 今回の試験では、専門用語に英語を併記したり、難解な言葉を簡単な表現に改めたりするなど、外国人受験者に配慮する措置が取られたが、その効果には疑問が残る。ある関係者は「第1陣の候補者は日本語で覚えているので、英語表記は意味がなかったのではないか」と話す。デウィさんも、「あまり変わらなかった」と言う。前出の予備校関係者は、「(表現が改まって)問題文が長くなり、外国人には逆に不利になったようだ。外国人候補者の合格は厳しいのではないか」との見方を示した。

■受け入れ延長で苦悩する医療機関

 候補者を受け入れている医療機関側も苦悩している。現行の制度で受け入れ施設側は、日本人と同等以上の給料を支払わなければならない一方、日本の看護師の国家資格を持たない候補者には看護補助の仕事しか認められていない。補助金が一部支給されているものの、施設側は教育費などを負担しなければならない上、候補者の世話をする職員も必要だ。このため、滞在期間が1年延長されても、引き続き受け入れるかどうか、施設側は苦渋の選択を迫られている。
 「わたしたちも、頑張っている彼らを帰国させるなんて、そんな理不尽なことはしたくないですよ」。デウィさんとイルファンさんを受け入れている永生病院(東京都八王子市)の宮澤美代子相談役は苦悩を打ち明ける。同病院では候補者と面談し、本人の意向を確認した上で、担当職員らと相談しながら受け入れ延長を決めるという。

■「看護師としての自信がなくなる」

 一方、今回の試験で不合格の場合、デウィさんのように既に帰国を決めている候補者も少なくない。国家試験に合格するまでの間、注射などの行為ができないため、中には「看護師としての自信がなくなる」と打ち明ける人もいる。「しばらくすると忘れるんですよね。スムーズにできなくなるんです」。昨年度の国家試験に合格し、新潟県三条市の三之町病院の脳外科病棟で働くヤレド・フェブリアン・フェルナンデスさんはこう話す。ヤレドさんは、院内の研修で徐々に感覚を取り戻したという。
 在留期限の延長についてヤレドさんは、「システムを変える努力をしないと、今と変わらない」と指摘。日本語の研修期間を現行の6か月から1年に延長した上で、2年間実習を行うことを提案する。実習先については、看護学校か医療現場で実習先を選択できるよう求めている。
 「仕事楽しいです」―。流暢な日本語でこう話すヤレドさんの横顔は、充実感に満ちていた。

 「どんな結果であっても、わたしたちは既に勝っている。勝利者であることに変わりはありません」。駐日インドネシア大使のムハマド・ルトフィさんは、慰労会でこう元気づけるのが精いっぱいだった。
 閉会のあいさつで、モハマッド・ユスプさんはこう締めくくった。「初めてのEPAの看護師候補者として、たくさん苦労しました。でも、日本語が大好きになりました。これからもインドネシアと日本のために、わたしたちはいろんなところで役に立ちたいと思います。いつまでもわたしたちのことを忘れないで応援してください」。



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