事件【主張】住基ネット訴訟 異常な国立市の接続拒否2011.3.8 02:38

  • [PR]

[事件]ニュース トピック:主張

  • メッセ
  • 印刷

【主張】
住基ネット訴訟 異常な国立市の接続拒否

2011.3.8 02:38

 最高裁の合憲判断を無視し、住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)への接続拒否を続ける一部自治体の姿勢が、改めて問題視されている。

 先月、重ねて違法とした東京地裁判決を不服とし、控訴した東京都国立市のことだ。関口博市長は「住民のプライバシー侵害の恐れ」などを控訴理由にしているが、行政が違法を承知で「自説」を押し通すのは、異常としか映らない。

 住基ネットは、国が社会保障と税の一体改革に向けて導入を目指す共通番号制度の基盤システムとしても有力視されている。すべての自治体が参加してこそ最大の効果を発揮するのが制度本来の仕組みであり、訴訟の長期化は国立市民の不利益だけで済まない。

 関口市長は、直ちに控訴を取り下げ、違法状態の速やかな是正に取り組むべきだ。

 国と全国の自治体を独自のネットワークで結ぶ住基ネットは、氏名や生年月日、性別、住所の4つに限った個人情報を一元管理する。旅券や住民票など公的証書の交付や納税、年金受給の手続きなどは大幅に簡素化される。年金記録の照合でも威力を発揮した。

 それが、稼働開始から9年以上も経過するというのに、国立市と福島県矢祭町の2市町だけが、いまなお接続に応じていない。

 今回の訴訟も「接続すれば不要となる行政コストの支出は違法」とする国立市民が、市と市長を相手取り、支払い済みの公金返還などを求めて起こしたものだ。

 東京地裁判決は「市町村長が住基ネットからの離脱を判断することは許されない」と明言し、約40万円を市に返還するよう命じた。明確で妥当な判断といえる。

 だが、平成20年3月に最高裁判断が確定しながら、国立市などが国の是正要求を無視し続けた背景には法の不備もある。現在の地方自治法は、地方が国の指示に従わないケースは想定しておらず、そうした場合の強制措置や罰則を規定していないからだ。

 こうした経緯から総務省は、自公政権時代から法整備の検討を進めており、今国会にも改正案を提出したい考えだ。だが、これには地方側が抵抗している。

 国の権限強化に自治体側が抱く警戒心も理解できないでもないが、不正常な状態の放置は、より大きな禍根を将来に残す。双方の歩み寄りを求めたい。

  • [PR]
  • [PR]

[PR] お役立ち情報

PR
PR

編集部リコメンド

このページ上に表示されるニュースの見出しおよび記事内容、あるいはリンク先の記事内容は MSN およびマイクロソフトの見解を反映するものではありません。
掲載されている記事・写真などコンテンツの無断転載を禁じます。
© 2011 The Sankei Shimbun & Sankei Digital