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きょうの社説 2011年3月8日
◎奥能登キャンパス構想 地域再生の研究、実践の場
奥能登地域を大学キャンパスに見立て、教育研究や学生の交流、地域貢献活動の場にし
ていく県の構想は、地域おこしの一つのアイデアである。金沢・加賀地区に集積する高等教育機関の人的資源と奥能登の地域資源を活用して、地域再生の可能性を広げることを期待したい。県の計画では、金大と奥能登の2市2町で奥能登キャンパス構想推進協議会(仮称)を 今月下旬に設立し、活動の一環として今夏、地域再生に取り組む全国の大学の研究者や自治体関係者が集まる「地域再生人材大学サミット」を開催する方針という。 地域再生を担う人材育成事業として、金大は珠洲市を拠点に「能登里山マイスター」養 成プログラムと名付けた活動に取り組んでいる。環境に配慮した農林水産業やグリーンツーリズム型の観光、里山保全などの座学、実習を通じて地域のリーダーとなり得る人材を育成するものだ。さらに、昨年10月には能登地域での教育・研究を連携して支援する組織(能登オペレーティング・ユニット)をつくり、特色ある地域研究の拠点形成をめざしている。 日本の原風景が残っているといわれる能登は、里山里海の保全や農林漁業の研究、過疎 化の進行を食い止める政策の研究、あるいは歴史文化、民俗などさまざまな研究において、格好のフィールドワークの場である。と同時に、大学と地元自治体の連携による地域おこし活動の実践の場であり続けたい。 大学の研究成果や学生のアイデアを生かした地域おこし活動は、全国各地で競うように 行われている。県内では、大学コンソーシアム石川に参加する各大学の学生が地域課題の研究・貢献活動に熱心に取り組んでいる。これまでの活動では、能登の特産品を生かした商品開発やブランド化、祭りなど歴史文化資源の研究、活用策に関する提案が目立つ。 こうした取り組みの継続で、地域おこしの新事業やビジネスの成功例を生み出すことが できれば、奥能登は大学と地元連携による地域再生の研究、実践活動のモデル地域となり、県内外から研究者や学生が集まる期待が膨らむ。
◎主婦の年金救済 速やかに是正進める必要
専業主婦の年金切り替え漏れ問題で、政府が現行の救済策を見直すのは当然である。直
近2年分の保険料を追納すれば、残りの無届け期間を不問に付すという救済措置は、きちんと保険料を払っている人や記録訂正した人からすれば明らかに不公平であり、年金制度の不信感がさらに広がりかねない状況にあった。自民党など野党は前原誠司前外相の献金問題とともに、菅政権を追い詰める絶好の攻撃 材料と位置づけ、参院予算委員会でも細川律夫厚生労働相の責任を厳しく追及した。救済措置は昨年12月に「課長通知」でなされ、年明けから実行されていたが、その内容を1月下旬に知ったという厚労相の答弁はお粗末というほかない。 だが、手続きの凍結期間が長引けば、該当者の年金受給が遅れるなど新たな混乱も予想 される。より公平な救済策を講じるなら、与野党を超え、政治の責任で速やかに是正してほしい。 サラリーマン家庭の専業主婦が夫の退職などで「第3号被保険者」の資格を失えば、自 ら保険料を納める必要がある。この手続きを忘れ、未納状態の人が100万人規模でいる可能性が浮上したため、厚労省は未納期間も納付したとみなす措置に踏み切った。 ルールを適用すれば、無年金や低年金に陥る人がたくさん出る恐れがある。何らかの政 治的配慮が必要なケースだが、厚労省だけで対応したのはやはり問題が多い。 国会では未納保険料をさかのぼって納付できる期間を現行の2年間から10年に延長す る法案が継続審議となっている。政府は法案再修正も視野に、未納時期を「カラ期間」とし、年金額に反映させないが加入歴に算入する、納付時効を超えた納付も特例として認めることなどを検討している。 問題の背景には、旧社会保険庁の申請主義により資格切り替えを呼びかける対策がなさ れなかったことがある。年金記録の国民への周知不足は自民党政権時代からの根深い問題である。政局優先で対応が先送りされれば、年金不信が政治不信を招くこれまでの悪循環を再び繰り返すことになろう。
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