きょうのコラム「時鐘」 2011年3月8日

 「人生とは何か」と問われたら「出会いだ」と答えたい。恩師との出会い。恋人や友人、一冊の本でもいい。出会いによって人は成長し、人生は変わる

亡くなった箕島高野球部元監督の尾藤さんに、何人もの人が「自分の人生を変えた人」と同じ言葉を贈っていたのが印象的だった。延長18回を戦った星稜高の山下総監督。プロ球界に名を残す東尾元投手。あの延長戦で運命的な落球を見たナインからも同じ言葉があった

出会いがあって今の自分がある。言い換えれば、さらなる出会いがあれば、60歳を過ぎてからでも人生は変わり、新しい自分に会える。毎日の紙面で著名人の訃報に接して心を動かされるのは、数々の人生を築いた出会いの力を思うからである

ニュージーランド地震で死亡した魚津市の平内好子さんもその一人だった。元高校長にして語学専門学校の1年生。「同世代として尊敬と憧憬(しょうけい)の念を持っていた」との富山外国語専門学校長の言葉に共感を覚えた人は多かったに違いない

中高年世代にも若者たちにも、出会いを求め続ける大切さを教えてくれる生涯だった。ご冥福を祈る。