公立保育所の民営化をめぐり、財政負担を軽減させたい自治体が、保育面でセーフティーネット(安全網)の役割をどう果たしていくのかが課題となっている。河内長野市では、障害児たちの受け入れ態勢に支障を来しかねないと、保護者らが懸念を示している。
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市担当者と保護者、地域住民らが集まった意見交換会 |
同市では2007年度、減収傾向が続く中で財政健全化プログラムを策定。公立保育所も民営化の検討対象となった。市によると、公立は人件費を中心に児童1人1カ月当たり平均15万9千円と、民間(同9万2千円)の約1・7倍の経費が掛かる。市内の保育所計14園のうち公立は2園。現在はこのうち1園の民営化を検討している。
これに対し、保育所に通う保護者らが反発。特に大きな懸念になっているのが障害児への対応だ。
障害児数は公立で平均9人いるのに対し、民間では同4人にとどまる。障害が重度だと、子ども1人に対して職員1人の加配が必要。公立では市が雇うが、民間の場合は市が運営補助費として1人当たり10万円を補助するのみだ。
公立の人件費はその分高くなる一方、民間保育所では現状のまま障害児を受け入れ続けると負担が伴う。
08年度から、有識者をはじめ、公民の保育所所長や保護者を交えた「保育所のあり方を考える委員会」が2年間開かれ、障害児をめぐる加配の補助について、民間保育所の代表者からは「正規職員の配置ができる補助金が必要」との声が上がった。
軽度の知的障害児を公立保育所に通わせる母子家庭の母親(29)は、昨年同市に転入する際、公民8保育所を回って適切な場所を模索。民間保育所では、対応できるという回答もあった半面、「うちの園には向いていない」などとやんわり断られるケースもあったという。
また、母親は出費面で公民の差を指摘。兄弟は民間保育所に通っているが、入所時に制服代や文具代などで約3万円かかったほか、その後も絵本代といった公立にはない出費があったという。
収入はフルタイムのパートで月10万円程度。母子家庭や障害児を対象にした手当などでなんとかやりくりするものの「金銭的に余裕のある家庭ばかりではない。そういった家庭で育つ子どもを助けてくれるのが公の役割ではないのか」と憤る。
市の担当者は、障害児への加配をめぐる補助について「上げていきたいという思いはある」と強調。「ただ財源をどう組み立てるかが課題」と話す。民営化で浮く経費に注目し、民間に回すといった可能性も示唆するが、児童虐待への対応などもあり、「子育て支援施策を充実させるため、どう使うかは決まっていない」のが現状だ。
2月26日には、市立汐ノ宮保育所で市担当者と保護者らの意見交換会が開かれ、市側の主張や市民の思いがぶつかり合った。同保育所保護者会の山本洋子会長は「当事者の意見を無視せず、対話しながら最終的な結論を出してほしい」と訴える。
民間で担えない要素があれば、公がその役割を担うか、担える条件を整備する。その必要性が、あらためて浮き彫りになっている。
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