事件【産経抄】3月7日2011.3.7 02:24

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【産経抄】
3月7日

2011.3.7 02:24

 子供が大好きだった詩人のサトウハチローは、孫の名前はもちろん、ラジオ番組の企画で、聴取者の子供の命名まで引き受けた。昭和40年代半ば当時、男の子には彦、女の子には美という字をつけるのが人気だった。

 ▼「この次にどんな名が流行してくるかたのしい気もするし、こわい気もしている」とエッセーに書いた。熊本市内で先週、3歳の保育園児が行方不明となり、遺体で見つかった。女児の名は、清水心(ここ)ちゃん。8年前に放映された、NHK連続テレビ小説のヒロインの名は「こころ」だった。

 ▼「心と書いて、『ここ』と読みます」。これから入学式、就職、結婚と人生の節目節目で、同じような説明をするはずだったのに。防犯カメラの映像などから捜査線上に浮かんだ地元の大学生、山口芳寛容疑者(20)は、県警の調べに対し、心ちゃんからその機会を奪ったことを認めている。

 ▼犯行に及んだのは、3月3日、女の子の成長を家族で祝う、ひな祭りの当日だった。童謡の「うれしいひなまつり」が全国各地で流れていたはずだ。作詞家としてのハチローの出世作でもある。

 ▼発表した昭和10年ごろ、最初の妻と離婚して、3人の女の子を引き取っていた。母のない寂しさを不憫(ふびん)に思ったハチローは、豪華なひな人形を奮発する。大喜びの娘たちの姿を見ながら作った、といわれている。そんな特別の日に、いたいけな女児の未来が断たれるなんて。

 ▼いや、小さな子供が狙われる事件が後を絶たない世相にこそ、ハチローは猛烈に怒っているに違いない。同じエッセーにこんな記述もある。「殺す。いやなものがはやる時代だ。ボクは殺す奴(やつ)を殺せ…と叫びたい。その思いでいっぱいだ」

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