余録

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余録:税を考える

 久しぶりに所得税の確定申告をして驚いた。随分と便利になったものだ。電卓片手に鉛筆、消しゴムで何度も計算し直すペーパーワークをしなくても、国税庁のホームページで指示通りに数字を打ちこむとたちどころに納付税額が出てくる▲税を天引きされるサラリーマンの身としては、年に一度納税者としての自覚がふつふつとたぎる時期でもある。「税金泥棒」とは言わないまでも、政府や政治家に対し、無駄や不正はないか、気になることが多くなる▲そんな折、政治の世界に税を巡る二つの潮流が出てきた。河村たかし名古屋市長らが推進する「減税党」が一方の旗頭だ。市民税の1割カット、議員報酬の半減を掲げ、先の知事選・市長選・議会リコールのトリプル投票で圧勝、国政にまで打って出ようという勢いだ▲もう一方は、菅直人政権の税・社会保障制度の一体改革路線である。初めから増税ありきではないが、議論の行きつくところ、消費税率を相当程度上げざるを得ない、という結論が見えており、「増税党」として区分できる▲さて、目覚めたる納税者としては、税をどう考えるか、願ってもない好機と受け止めたい。減税はありがたい。だが、その財源をどこから出すのか。それは持続可能なのか。国で言えば92兆円の歳出をいつまで40兆円前後の税収でまかなえるのか。論点は豊富だ▲そもそも議会の起源は税にある。英国・絶対王朝の恣意(しい)的な徴税権に対し、課税承認権を盾にとり対抗したところから来ている。今や王はいない。徴税、支出に対する議決権は議会にある。名古屋市議選(13日)と税をめぐる国会論戦に注目する。

毎日新聞 2011年3月7日 0時03分

 

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