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【コラム】

中日春秋

2011年3月7日

 父親が亡くなって引っ越した先で、親切にしてくれたおばさんがいた。貧乏のどん底だった少年が慕ったその女性は偶然焼き肉店を経営する在日韓国人だった

▼女性が実の息子のように思っていた少年は、苦学して政治家になった。女性は応援しようと五万円ずつ日本名で寄付をしていた。そのことが違法献金と激しく指弾されることになるとは、夢にも思わなかったに違いない

▼前原誠司外相がきのう、辞任した。外国人や外国法人の政治活動への寄付を禁じた政治資金規正法違反であることは明白で、国会審議への影響を考えての決断だった

▼外交の責任者であり、将来の首相候補とも呼ばれる前原氏だ。仮に本人が献金の事実を知らなかったとしても、わきの甘さが厳しく批判されるのは当然だ

▼規正法の規定は日本の政治が外国勢力に影響されることを防ぐためだ。だからこそ、外国人と知りながら寄付を受ければ、公民権停止を含む厳しい罰則があるのだが、旧知の人物からの献金を声高に非難することには、どこか違和感を覚えてしまう

▼政権の足元が揺らぐ中での「決断」にしても後味が悪い。今後、インターネットを通じた個人献金は増えていくはずだ。国籍確認は、より難しくなる。これが「前例」になれば、また同じことが繰り返されるのだろうか。刃が自らに戻ってくることを覚悟しなくてはならない。

 

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