政治

文字サイズ変更

クローズアップ2011:前原外相・外国人献金 弱体政権に追い打ち(1/2ページ)

会合の会場に向かうため新幹線を降りる前原外相=JR新神戸駅で2011年3月5日午後0時31分、幾島健太郎撮影
会合の会場に向かうため新幹線を降りる前原外相=JR新神戸駅で2011年3月5日午後0時31分、幾島健太郎撮影

 ◇民主「閣僚辞任ドミノ」を懸念 攻勢強める野党

 前原誠司外相が政治資金規正法で禁じられている在日外国人からの献金を受けていた問題は、民主党内で辞任論が広がり、弱体化した菅直人首相の政権運営に追い打ちをかけた。国民年金の切り替え漏れ問題で責任追及される細川律夫厚生労働相と並び、11年度予算案審議の大きな焦点として主要閣僚2人の責任論が浮上。前原氏が辞任すれば閣僚の「連鎖辞任」に発展しかねない。自民党は一気に衆院解散・総選挙へ追い込もうと攻勢をかける姿勢だ。【田中成之、岡崎大輔、笈田直樹】

 「民主党が誕生して最も厳しい局面にあると言ってもいい。皆さんとともに頑張り抜きたい」。首相は5日、党本部に都道府県連代表を集めた全国幹事長・選挙責任者会議で「党の危機」を強調し、4月の統一地方選へ結束を呼びかけた。前原外相の外国人献金問題には言及しなかったが、「3月危機」を乗り切る展望が開けない苦悩がにじんだ。

 11年度予算案は年度内成立が確定したものの、特例公債法案などの予算関連法案は成立のめどが立たず、統一地方選を前に首相の退陣論も党内にくすぶる。前原氏が辞任する事態になれば、前原グループが中心となって首相を支えてきた政権構造が土台から揺らぎかねない。石井一選対委員長は記者団に「責任を取らなければいけない問題ではない。(進退には)発展しない」と強調した。

 前原氏は5日、北九州市での記者会見で「事務的なミスとはいえ、たいへん申し訳なかった」と陳謝する一方、「献金をいただいていたことは分からなかった」と改めて故意ではなかったと主張。自民党の福田康夫元首相が、朝鮮籍の男性が経営する会社から寄付を受けていた問題が07年9月の首相就任直前に発覚したことにも言及し「福田元首相は故意ではないと説明した。自民党が批判するなら整合性をつけて説明してほしい」と辞任要求に反論した。

 不人気の首相のまま衆院解散・総選挙に追い込みたい自民党は、今国会で「ポスト菅」候補の前原氏を過去の北朝鮮訪問などで執拗(しつよう)に攻撃してきた。谷垣禎一総裁は同日、京都市の会合で「事実関係を明らかにし、しかるべき対処をしてもらわないといけない」と辞任を要求。この問題で「前原首相」の芽を摘みたい思惑も働く。

 ただ、昨秋の臨時国会で仙谷由人前官房長官らに突きつけた問責決議案は当面、提出しない方針。問責を可決しても前原氏が辞めなかった場合、参院予算審議が止まり、菅政権を追いつめる格好の場を自ら放棄するジレンマに陥るからだ。自民党の参院幹部は「3月末には予算関連法案が成立せず菅内閣自体が倒れるのだから、慌てることはない」と首相問責決議案の提出に照準を合わせる。

 首相にとっては、前原氏が辞任すれば予算審議の障害を取り除けるが、前原グループの「菅離れ」によって政権基盤がさらに弱体化するのは必至だ。前原グループからは「ここで前原さんを切ったら、自分が生き残るためとしか映らない」と首相をけん制する声も漏れる。

 民主党内の小沢一郎元代表を支持するグループは倒閣の動きを加速させる構え。中堅議員は「政権(崩壊)がカウントダウンだ」と気合を込める。参院幹部は「前原外相が辞めれば(閣僚の辞任が連鎖する)ドミノになる。苦しいけどしのぐしかない」と続投論を唱えつつ、「党内抗争はさらに激しくなるだろう」と予言した。

◀ 前へ 1 2

毎日新聞 2011年3月6日 東京朝刊

 

おすすめ情報

注目ブランド

毎日jp共同企画