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社説:前原外相辞任 菅政権最大の危機だ

 菅直人政権はさらに窮地に陥ったといっていい。菅内閣の重要閣僚の一人で、「ポスト菅首相」の有力候補だった前原誠司外相が6日、政治資金規正法で禁じられている外国人からの政治献金を受け取っていた責任を取り辞任することになった。

 判明している献金は少額で、全容はまだ明らかになっていない。そんな中での外相辞任は性急過ぎるのではないかという印象がある。だが、ルールに違反したのは明白だ。厳しい国会情勢を考えればやむを得ない判断だったと考える。

 問題となったのは前原氏の地元・京都市で焼き肉店を経営する在日韓国人の女性から5年間で25万円の献金を受けていたというものだ。

 政治資金規正法が外国人からの献金を禁止しているのは、日本の政治や選挙への外国や外国人勢力の影響を防ぐためだ。前原氏は「古くからの知人」という、この女性に関し「献金を受けているとの認識はなかった」と語っていたが、規正法の規定は国会議員であれば当然認識すべき内容で、仮に前原氏の言うように事務的なミスで、故意ではなかったとしても管理責任は免れない。

 ましてや前原氏は外国との交渉に臨み、国益を守る立場の外相だ。また、小沢一郎・民主党元代表の政治資金問題に関し厳しい姿勢を示してきた一人だ。国民に疑念を抱かせる結果を招いた責任はやはり大きい。野党側は前原氏に対する問責決議案を提出する方針を示している。菅首相も了承したという。辞任は時間の問題だったのかもしれない。

 菅内閣、いや、民主党政権が崩壊するかどうかの危機的状況だ。新年度予算案はどうにか衆院を通過したものの、予算関連法案成立のめどはまったく立っていない。関連法案が成立せず、多くの予算が執行できなくなって国民生活に混乱を招く事態になっていいのか--。首相にとっては、そう世論に訴えるほか打開策は見当たらなかったさなかの閣僚辞任である。

 加えて、民主党代表経験者でもある前原氏は今も一定の国民的な人気があり、「ポスト菅首相」に名前が挙がっていた。今回のスキャンダルにより、国民の民主党への失望感は一段と増すことだろう。

 前原氏の問題だけではない。会社員の妻ら国民年金第3号被保険者の切り替え漏れ問題で、細川律夫厚生労働相が、昨年12月の課長通知による救済制度について「当時は知らなかった」などと国会答弁した点についても野党側は厳しく追及する構えでいる。

 前原氏が辞任しても、何ら展望が開かれるわけではない。菅政権の苦しさはここにある。

毎日新聞 2011年3月7日 2時31分

 

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