防音 豆知識(2)

防音工事とその材料についてのお役立ち情報です。

「吸音」「遮音」「防振」「残響時間」

ベストな防音工事とは吸音、遮音、防振、残響時間の調整が出来ることだと考えます。ではそれぞれの用語について説明します。

吸音

吸音【sound absorption】とは音を吸収し、通常の状態よりか早く音が減衰することです。あらゆる物質は吸音する性質をもっています。何故音が吸収されるかというと、空気の振動が壁材にぶつかりエネルギーを失う(熱エネルギーに変換される)からです。リスニングルームやカラオケルームの防音部屋の設計においては、この吸音と、反射(跳ね返ってくる音)が最も大事なポイントになります。

遮音

遮音【acoustic isolation】とは音が通過するのを遮ることです。音を通しにくい材料を「遮音材料」と呼び、一般に遮音材料は緻密で硬く重いほど遮音性が高いです。又、2重窓のように空気の層がある場合は、遮音のレベル(遮音度)を高めることができます。音は僅かな隙間があると、そこから音が入り込んでくるので隙間を少なくすることも遮音度を上げるために必要です。
遮音は、部屋から室外へ漏れていく音と室外から侵入してくる音の両面から考えますが、ドラム練習室の場合は室内で出す音と振動が隣接する部屋や隣戸に迷惑にならないようにすることが重要です。部屋の遮音性能は、D値という等級で評価されますが、D値と聞こえ方はおおよそ下記表のような関係になっています。この評価は一般住宅であり、ドラム練習室の場合2ランクほどずれてきます。隣室の使用条件により必要な遮音性能は変わりますが、D-75~D-65程度が目標値となります。特に集合住宅などの場合は、打楽器系の音は、かすかに聞こえるだけでも苦情となることもあり、 十分な対策が必要となります。

■遮音等級と聞こえの関係(一般 住宅) 「建築物の遮音性能基準と設計指針」日本建築学会より

遮音等級 D-65 D-60 D-55 D-50 D-45 D-40 D-35 D-30 D-25 D-20 D-15
ピアノ・ステレオ等の
大きな音
通常で
は聞こ
えない
ほとん
ど聞こ
えない
かすか
に聞こ
える
小さく
聞こえ
かなり
聞こえ
曲がハ
ッキリ
分かる
よく聞
こえる
大変良
く聞こ
える
うるさ
かなり
うるさ
大変うるさい

■遮音等級と聞こえの関係
遮音等級 D-75 D-70 D-65 D-60 D-55 D-50 D-45 D-40 D-35 D-30 D-25
ドラム練習室 通常で
は聞こ
えない
ほとん
ど聞こ
えない
かすか
に聞こ
える
小さく
聞こえ
かなり
聞こえ
曲がハ
ッキリ
分かる
よく聞
こえる
大変良
く聞こ
える
うるさい
かなり
うるさ
大変うるさい

防振

音楽防音室における防振とは、楽器などから発生される音(空気振動のエネルギー)が部屋全体の壁や床までを揺らす事により、その振動音が外部に伝わるのを防ぐ事です。防音室の工事において一番難しくかつ、費用を要するのが防振です。「防振を制する事、それが完璧な防音室を手に入れる為のすべて」と言っても過言ではありません。
ドラム練習室では、振動を伝搬させないような床の防振構造が必要不可欠となります。
また、壁・天井に入射した音が物体内を伝搬し隣室に放射する音(固体伝搬音)があるため壁・天井の遮音・防振構造(浮遮音層)が必ず必要となります。苦情の多い練習室では、防振構造が無いところが非常に多く問題となっています。
たとえば、地下室につくるので壁の遮音層はいらないと考えがちなのですが、それが致命傷になってしまう場合があります。

残響時間

残響時間とは、特定の音場における残響の具合を示す指標の一つであり、音源が発音を止めてから、残響音が60dB減衰するまでの時間を言います。 60dB減衰するとは、簡単に言うと聞こえる音のエネルギーが1,000,000分の1 まで小さくなるということです。残響時間は、音が鳴っている場所の壁・床・天井の素材や、空間の大きさによって変化し、一般に素材が固いほど、また空間が大きいほど長い残響時間となります。つまり、洞窟のように岩で囲まれた空間や、天井が高く容積の大きい体育館などでは長くなり、一般的な部屋のような小さな空間では短くなります。

防音材料

上記に対し、 材料の特性に応じた使い方が防音対策の基本となります。

  • 遮音材
    音を遮るもので、面密度(単位面積あたりの質量)が大きいほど 遮音効果が高くなるので、通常は面密度の大きい材料を使用します。 硫化ゴム系の素材に鉄・鉛を加えたものや、アスファルト基材などを加え たものに不織布加工した遮音シート・パネル化したものが多いです。
    • コンクリートパネル、石膏ボード、樹脂加工した石膏ボード、 鉛シート・遮音シートなどの既製品があります。
    • 最近、メーカーによっては、鉛の入った素材が環境に与える 影響を考慮して、鉛入りの遮音シート・パネルの販売や製造を中止 しているようです。
  • 制振・防振材
    振動を吸収・抑える素材を使用してあり、振動を瞬時に抑えたり、 振動を吸収して振動音伝播を防ぐものです。 通常は、遮音材の内側に敷いたり、挟み込んで取り付けますが、 パッキンのように直接振動部にカバーするように取り付けるものも あります。
    • ゴム系・プラスチック系・アスファルト系の素材が主流です。
    • 高比重ゴム素材のように制振・防振・遮音を兼ね備えた優れた 防音材料があり、低音域から高音域まで広範囲にわたる防音効果が 期待できます。
  • 吸音材
    音の反響や空気の共振などを防ぎ、音を減衰させるもので、 防音効果を高める場合は壁や天井ボードの内側に取り付けます。 多孔質のウレタン系やグラスウール・ロックウール等が主流で、 一般に周波数の中音域から高音域にわたる音の減衰に効果があります。
    • 最近は、化学物質の揮発を懸念して植物繊維やウールを 素材としたライブウール、セルロース等の吸音材も使われています。
    • 吸音効果を高める方向性のない繊維で出来ている製品も 開発されており、ペットボトルの再生材を加工して作られた吸音材 もあります。
    • 特にペットボトル再生材のポリエチレン系素材は繊維が空気中に 飛散することもなく、湿気にも強く、安定した吸音性能を発揮します。
  • 防音材料の使い方留意点
    効果的な防音対策には、質量の大きい遮音材に、制振・防振材及び吸音材 を組み合わせて使用するのが基本ですが、低音域用・中音域用・高音域用 の材料を組み合わせることによって、総合的な防音性能を高めることが 可能です。
    質量則による遮音材(モルタル、鉛シート等)使用だけによる防音対策 だけでは、壁厚や重量の限界があるだけでなく、振動音対策の不備や サウンドブリッジ(音漏れ、音の絶縁不良)の問題が生じるので 注意しなければなりません。
    • 質量則:音響透過損失はコンクリート等遮音材の厚みを倍にすると 理論上は5デシベル程度遮音性能が向上します。
    • 壁面の厚みを倍にすることは躯体の設計上、コスト上も 現実的ではなく限界があります。
    • 既存のコンクリート躯体より面密度の低い遮音材を壁面に 直に使用するとコインシデンス効果により遮音低下が起きることもあります。

高性能な防音ルームの構造

以上を踏まえ、参考として住居系最高峰の防音構造(遮音性能D-70~75dB)を紹介します。

壁はベーシック仕様に遮音パネルをさらに1枚プラスしています。 床にはF010の防振ゴムをプラスし固体伝播音をより強力にカット、 さらに遮音性能をアップさせています。

遮音ドアも二重にすることで、 夜遅くまでのピアノ演奏も、ほとんどクレームが生じないレベルに なります。 音大をめざすあなたでも何時間も練習ができ、作曲をなさる方は 時間を問わず浮かんだメロディも弾くことが可能です。 夜中でも隣近所への音漏れを気にすることなくレッスンができる ハイグレードな遮音性能を得られます。

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