2011年03月05日

ある日オカマに訪れる危機 其の拾陸 その手に剣を 

『ぁでっ!』
投げつけた壁の方向から緊張感の無い声が男の声が聞こえた。
『あ、気を失ってたのか・・・・つーか俺生きてるじゃんヤッハー!やっぱイケメンには奇跡が宿るNE!』
その声の主は祭壇らしき台座に固定されている為こちら側を確認出来ない様だ
ラヴ子『ウグゥゥゥァァァ・・・・!?・・・・・!!』
殆ど意識を失いかけていたラヴ子であったがその聞き慣れた声とイケメンと言う言葉に正気を呼び戻され失いかけていた人格を取り戻す。
強靭な精神力のお陰か、鬼神化していた時間がまだ短かく
目覚めたばかりのイフリートの支配力がまだ弱かったからか
何とか意識を取り戻す事が出来た。
多少ふらつきながらも声のする方向にゆっくりと近づき固定具を外そうとするが
面倒になり台座ごと破壊しその男の顔を確認する為に覗き込む。

台座が破壊された為、男は自由になったがいきなり現れた異形な姿のラヴ子に驚き
瞬時に死んだフリをする男。薄目を開けて再度確認するが本能的に危険を察知したのか再び目を閉じる。

一方ラヴ子はその顔にはやはり見覚えがあった。事の発端となった男
限りなく奴隷に近い従業員リューゼルであった。
ラヴ子『りゅー・・・・ちゃん?ここに居たのね』

聞きなれた声に勇気を振り絞りもう一度薄目を開ける
この見慣れた赤黒い影・・・フサフサな白い髭・・・剥き出しの岩の様なゴツイ肌・・・・立派に伸びる角・・・角?
リューゼル『・・・・・えーっと角は取りあえず置いといて・・・・・トータルで考えると・・・・まさかママ?ひぃぃ』
ラヴ子の変身は黒ゴマがラヴ子秘蔵のプリンを勝手に食べた時に一瞬見たことがあるが
今回は以前のそれとは明らかに凶暴と言うか人外と言うか圧倒的に迫力が違う。
何かこう・・・脊髄から震えがこみ上げて来る程怖い。
まぁどっちにしても恐怖の対象である事に変わりは無い。
リューゼル『えー何がどうなってそうなった訳なんでしょうか・・・?あ、顔近づけないで』
ラヴ子が説明しようとしたその時、倒れていた大男がゆらりと立ち上がり音も立てずにラヴ子の背後にやって来た。
肩越しに気付いたりゅーが大声で叫ぶ
リューゼル『危ない!ママ!後ろだ!!』
声を出すと同時にリューゼルは攻撃を仕掛けようとしたが、長期間身体を動かしていなかった為思ったように反応出来ず
何より誘拐時からほぼ半裸だった為、肝心の武器が無い。あの役立たずだったマドラーすらも。
リューゼルの声には気付いたラヴ子だったが、すっかり元の状態になり人格が戻っている代償として
先程までの圧倒的な強さはほぼ失われていた。

無防備なラヴ子に襲い掛かる大男。
動きの取れていなかったリューゼルを巻き込む形で倒れるラヴ子、そしてそのまま意識を失ってしまう。

リューゼル『っこいせっと!ママ相変わらず重いな・・・』
気を失ったラヴ子の巨体からようやく逃れたリューゼルが見たのは
砕けた壁から槍状の鉄骨を引き抜きそれを両手で握り締め
まだ倒れているラヴ子の背中に突き立てようとしていた大男の姿だった。

リューゼル『やらせねぇよ!』
近くに転がっていたラヴ子の撲殺棒を見つけたリューゼルはそれを握り締め、ずっしりとした重さを感じながら
振り下ろされた鉄骨とラヴ子の間に身体ごと飛び込み刀身の部分で大男の一撃を間一髪で防いだ。
木製の撲殺棒だが上手く黒曜石の部分に当たりその刀身がミシミシと音を立ててきしむ
体全体で剣を支えていた為、何とか持ちこたえたが
その衝撃は剣越しにでも伝わる程であり彼も無傷では無かった。
リューゼル『痛っ、2,3本持っていかれたかもしんねーな』
脇腹の激痛を抑えて立ち上がり再び剣を構える。
リューゼル『長い間待ってやっと回って来た出番だ、そう簡単に終わらせないってね』
攻撃を邪魔され不服そうな表情で大男がゆっくりと振り向くと、ターゲットをこちら側に変えたのか一瞬にして目の前に迫ってきた。
至近距離でその顔がにやりと笑ったかと思うと脇腹から胸にかけて再び突き抜ける様な衝撃が走る。
えぐる様な角度で大男の膝が突き刺さっていた、先程ヒビの入った部分にまともに喰らった為、
おもわず意識が飛びそうになり膝から徐々に力が抜けていくが、普段ラヴ子やカズママの怒涛の様なお仕置きに耐えていたお陰か
なんとか耐える事が出来、消えそうになっていた意識を奮い起こす。

リューゼル『きっちりと御礼しなきゃな!』
あのラヴ子を倒した強さは計り知れない。
純粋な実力差から考えると一見根拠の無い自信に思えるがリューゼルには勝機があった。
初対面では今と同じくほぼ装備無しの状況だったので一方的にやられはしたが今回は少し状況が違う
相手も先程までのラヴ子の攻撃で相当なダメージが残っているらしく、
攻撃後も軸足がふらついており数箇所程骨折しているのか構え方や歩き方もどこかおかしい
最初に出会った時ほどの恐ろしいまでの威圧感と殺気は無く、確かに強敵ではあるが冷静に対処さえ出来れば決して勝てない相手では無いと判断した。
そして一番重要な事はこの手に武器がある。ラヴ子仕様の特注撲殺棒は重さサイズ共に一般的な両手剣に近くその破壊力は身を持って実証済みだ。
盾も無く、普段使用している通常の片手剣とは色々勝手は違うが武器には違い無く
前回のマドラーとはリーチも破壊力も雲泥の差である。(まぁマドラーはまず根本的に武器では無いのだが・・・)
なので握り締めているその剣が冒険者、いや剣士として何よりの自信に繋がっていた。
体勢を低く構え大きく深呼吸すると同時に目を閉じる。迎撃準備は完了した。

再び大男が先程と同様に攻撃を仕掛けようと迫ってきた。
が、しかし今度は電光石火の一撃が大男の額にカウンターで見事に入った。
もんどり打って倒れる大男。

実は普段光のほぼ差さない奈落で一日の大半を過ごす生活している為、目で見るよりも
気配や音にはかなり敏感になっており落ち着いて集中さえ出来れば大男から発する殺気や呼吸音は
格好の的になる。後はその気配に併せてタイミング良く剣を振るだけであった。
混乱した大男は再度攻撃を繰り返すが攻撃は更に直線的に単純になり悉くカウンターでダメージを受けていく。
そして激しく打ち据えられ血まみれの大男が気が狂ったかのように笑い始める
大男『クゥハハh・・・kノカラdエハ・・・fルスギr・・・!』
何を思ったのか先程の鉄骨で地面に魔方陣を描き出し
それが終わるとおびただしく流れ出す血液を指に取り自らの身体にも何かの紋様を書き始める大男

余りの理解不能な行動に剣を構えたままその様子をじっと見つめるリューゼル
そして大男はこちらを振り向くと突然落ちていた鉄骨を自らの胸に突き刺した。
リューゼル『お、おい何してんだ・・・いきなり・・・・・』
自ら心臓を貫きしばらく痙攣を起こしていたがやがてその動きも小さくなり絶命する大男、
しかしその後すぐに身体に描いた血の模様が鈍く光りだし大男の肉体に異常な変化が起こる
そして数秒後、大男は驚くべき真の姿を曝け出した。
『サテ ガンバッタオマエニハ イイモノヲミセテヤロウ・・・』
そして、更に変化を始めたその姿にリューゼルは自分の目を疑った。
リューゼル『お、おい、嘘だろ・・・?』




ラヴ子が意識を取り戻した時には部屋は静まり返っていた。
オーガー化しかけていたその姿はすっかり元に戻っており
そして丁度目の前でリューゼルがこちらを覗き込んでいる状態で
見つけた時と逆の状態であった。

ラヴ子『痛・・・、不覚を取ったわ・・・りゅーちゃん大丈夫だった?奴は?奴は何処へ行ったの?』
リューゼル『あと一歩でたった今逃げられた』
首を振りながら答える。
リューゼルは戦闘によりボロボロに破けた服を脱ぎ捨て
何処から見つけてきたのかロングソードと小奇麗なローブ羽織っていた。
ラヴ子『そう、それにしても奴相手によく無事だったわね。奈落生活で相当腕を上げたのかしら?まぁいいわ、すぐに奴を追うわよ!』
勢い良く部屋から出るラヴ子とリューゼル。


2人が部屋から出て行ったしばらく後に
瓦礫の中から這い出す人影があった。

続く
posted by ラヴ子ママ at 11:55| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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