〜巴術士ギルド内部〜
ギルド自体がまだ冒険者達に解放されていない為
あまり訪れる事は少なく馴染みの薄いギルドだが諸外国へ向けての入口に面しているだけあって
作りとしては質実剛健に建てられており、尚且つ至る所にリムサ様式の調度品が並んでいる。
しかし広間内にはギルドメンバーらしき人物は誰も居らず、代わりに数人の亡者達が配置されておりこちらに気づくと襲い掛かってきた。
体力も少し回復しており戦闘準備も出来ていた事もあり難なく倒す事は出来たが
ラヴ子の胸中ではある疑惑が再び湧き上がっていた。
入り口から何か違和感があったのだが占拠された他の建物やギルドと比べて明らかに抵抗した形跡が無く
外壁を含め建物自体が一切荒らされていない、そこからはじき出される結論はただ一つ。
亡者達は他ギルドとは違い最初から巴術士ギルドを拠点とする為に侵攻しており、更にそのギルド側も受け入れていると言う事実。
バデロンが恐れていた事ははほぼ的中していた事になり、今回の一連の出来事と巴術士ギルドは明らかに繋がっている。
ラヴ子『どうやらここが本拠地らしいわね、貴女達気を抜くんじゃないわよ』
無言で頷く3人。
辺りを見回すと地下へ降りる階段があり、耳を澄ますとそこから不気味な機械音が聞こえてくる。
慎重に地下に向かう4人。
先程の騒ぎと無関係の様に機械音だけが淡々と鳴り続ける地下への階段を下りていくと
凝った作りの大きな扉の前に行き着いた。
鍵は掛かっていないらしく、先頭のラヴ子がゆっくりと扉を開けるとそこには数十人のソーサラー達が
見たことも無い装置に詠唱を続けていた。
奥で思いつめた様に座っていた一人の男がこちらに気付き歩み寄ってきた。
顔色の悪いミッドランダー巴術士『おおお、お前達、だだだ、誰だ!』
マリア『名前なら後でゆっくり教えてあげるからとりあえずこれが何でアナタ達が何をしてるのか全部教えてくれないかしら?』
顔色の悪いミッドランダー巴術士『えええい!五月蝿い黙れ!こ、こ、ここを見たものはす、すべ全て排除する!』
そう叫ぶと男は慌てて先端に鉄製の蕾の様な物体の付いた杖状の武器を取り出しブツブツと詠唱を始めた。
マリアが素早くウィップで杖を弾き飛ばし、続け様に床を打ち鳴らしながら男を壁際まで追い詰める。
他の巴術士達は何も見えていないかの様に、こちらには目もくれず装置に向かってひたすら詠唱を続けている。
ラヴ子達は無抵抗な彼等を取り押さえ、詠唱は中止された。
一方ウィップを両手で束ねる様に持ち直し、軽快な音を鳴らしながらマリアが男に詰め寄る。
マリア『さぁて♪楽しい楽しいお仕置きの時間ねぇ・・・うふふふふ』
顔色の悪いミッドランダー巴術士『ひぃぃぃ、いやぁぁぁぁぁぁ・・・・・・』
《余りにも凄惨な光景の為、描写は控えさせて頂きます。》
マリア『ふぅ、呆気なかったわね』
アオ子『お疲れ様ですお姉さま、今日も素敵でしたわ(うっとり)』
ラヴ子・アンジー『・・・・・・・』
限界値を超えうっすらと笑みを浮かべながらぐったりした顔色の悪いミッドランダーであったが
こう見えても実は巴術士ギルドの師範であり、観念したのかここで起こった出来事を話し出した。
数日前ある1人の大男が一通の手紙と設計図、そして手の平大の漆黒のクリスタルをギルドマスター宛に持ち込んで来た。
その設計図に描かれた装置は熟練のソーサラーが大量の魔力を注ぎ込む事により、人間の生体エネルギーであるアニマをかなりの広範囲で吸収する事が出来る
そして何より驚かされるのは中心部の黒いクリスタルにそのアニマを注入、濃縮する事により死した者の爪や体の一部さえあれば
一部生前の能力を有したクローンを作り出す事が出来る装置と言う事。そして元となる素材が多ければ多い程、能力は濃く反映されていく。
そのクローンは”гёуся”と書かれておりエオルゼアの言葉では無かった。
作られたгёусяは知能こそは低く能力も限定されてしまうが、あえて例えるなら呪術の中でも禁忌とされる死霊魔術
ネクロマンサーが使う呪術に近い、マスター(創造者)の指令に絶対であり疲労も躊躇も痛覚も無く何より死を恐れない
だがネクロマンサーになるにはまず高位の呪術を習得せねばならない上、その術法は一般的には解明されていない
例え運良くその術法を習得出来たとしても基本的に呪術には失敗のリスクがあり、
これほどまでの高位呪術になると術者の命どころか魂まで未来永劫危険に晒す事になる。
しかしこの装置を用いればある一定量の魔力さえ供給出来れば
低レベルのソーサラーでも容易且つノーリスクで脅威のクローンアンデッド軍隊を完成させる事が出来るのである。
マリア『まったく自然の摂理を舐めきった装置ね』
アオ子『ギルドマスターともあろう人が何故こんな大それた事を・・』
巴術士師範『ささ最初はこここんな怪しい男には関心すら示さなかったマスターだが、もも持ってきた手紙を見て何かにとり憑かれた様に設計図や、くくクリスタルに興味を持ち始めたんだ。
ちちちちらっと聞いた内容ではきょきょ恐怖を感じないこいつらさえ居ればいつまで経っても意識の統一すら、ふ、ふ不可能なギルドマスター達や
自国の利益のみばかり考える3国の指導者達を、み自らの手を汚す事無く武力で全てのギルドとアニマを支配下に置く事が出来る。
そそうすれば一枚岩になって帝国の脅威に脅かされる事無く、ささ更にそその帝国ですら支配下に置く事が可能と考えたらしい』
アンジー『マスターなりに考えての行動だったって事ですか、決して支持は出来ませんけど』
巴術士師範『しし死者を冒涜するやり方に異議を唱える者も多かったが、はははは反対者はいつの間にかギルドから次々と消えていた、あああの大男が何かしたに違い無いと悟った他の反対者は、し次第に声を潜めマスターは装置の製造に踏み切ったんだ。そそう、おお俺も声を潜めた中の1人さ』
師範は目線を落としながら話した。
しばらく考えた後ラヴ子が口を開く
ラヴ子『てことはよこのガラクタを止めた今、新たな亡者はもう現れないって事でいいのね』
巴術士師範『そそっそうだ、たただし。あああいつがいる』
マリア『その大男ね』
巴術士師範『やや奴の強さは、じじ尋常じゃ無い、ばばば化け物だ』
ラヴ子『知ってるわ、アタシ達はそいつを追って来たのよ。で何処に居るの?』
少し驚いた表情をした師範だったが、しばらくラヴ子達の顔を眺めて意を決した様に一枚のメモを手渡した。
巴術士師範『こ、ここから先の部屋に、ギ、ギルドマスターの部屋がある。そそこの像に、こ、この呪文をえ、え詠唱するんだ。』
ラヴ子『これを唱えればいいのね解ったわ。じゃぁ貴方達はこのガラクタブッ壊しときなさい』
マリア『まーた1人で行こうとする』
アオ子『その大男って言うのが一番の使い手なのでしょう?でしたら尚更大勢の方が良いのでは?』
アンジー『装置破壊するだけならこのハルバードですぐ出来るし^^』
ラヴ子『貴女達今の話聞いてたの?あの数の亡者達作れるほどのエネルギー量持ってる装置よ
迂闊な処理して暴発したらどうするの、アオ子の魔法で厳重に結界張りながらアンジーとマリアで慎重にゆっくり解体しなさい
それにオカマの勘だけどその黒いクリスタル・・危険な臭いがプンプンするわ』
巴術士師範『そ、そのく黒い人の言う通りだだ大分減ったとは言え、だ、ぼ膨大なエネルギーが、ま、ままだクリスタル内に残っている。ぼぼ暴走すればギルド・・・いやリムサごとドカンだ』
師範が大袈裟に爆発のリアクションをし、勢い余ってひっくり返る。
マリア『でもママ、これ以上無理しちゃ・・・』
ラヴ子『まだ全力出して無いし、昔傭兵時代に行った戦場の方がまだきつかったわよ』
アオ子『掛けれるだけの補助魔法掛けておきますねママ』
ラヴ子『そうねぇお肌つゃつゃ超絶美人になる補助魔法でお願いするわ』
アンジー『ママ死なないで;;』
ラヴ子『アタシを誰だと思ってるの、不死身のガイアイーターよ!』
アオ子からの強化魔法を受け、扉から出て行くラヴ子
マリアは嫌な胸騒ぎがしていた、このまま別れるといつものママとはもう会えない、そんな気がしてならないのだ
それはアオ子、アンジーも同じ気持ちだった。
マリア・アオ子・アンジー『ママァ!必ず帰って来て!』
扉が閉まる直前ラヴ子は振り返りニッコリと微笑んで一言。
『アディ押忍!』
ギィィィと鈍い音をたて扉がゆっくりと閉まり
いつも見慣れた広く大きな背中が見えなくなる。
次にこの扉が開く時はいつもの元気なこの人に会える
それを信じてをいつまでも扉を見続けている彼女達であった。
続く
2011年03月01日
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