2011年02月26日

ある日オカマに訪れる危機 其の拾壱 海からの援軍

あちこちで凄まじい爆音が鳴り響き次々と砲弾が亡者達の真ん中に炸裂しその動きが乱れた。
広場近くの海上に見慣れない艦隊が何時の間にか複数隻出現しており、亡者達に向かって砲撃を開始した音だった。
ゆっくりと着岸しその船首からフードを被った長身の誰かが身振り手振り何か叫んでいるが砲撃の音でかき消され何を言っているか解らない
その事に気付いたのか慌てて後ろを向き両手を交差して×マークをすると砲撃が止まった。
そしてその人物は振り返りどこかで聞きなれた声が鳴り響く
船首の人物『コホン、ちょ〜っと待たせたわね、さぁ派手に行くわよ』
フードを脱ぎ船首に立つその人物はイシュガルドの強襲艦隊を率いたハム子だった。
ファンナ『肝心なとこがいつも抜けてるにょー』
アラニー『さて、私達も出ます。公爵様指示を』
ピコ『久々の実戦!いっくぞー(`・ω・´)』
アップル『皆出る前に海串食べていってね』
近衛隊の面々が船上から長弓で援護を始めると
船首の部分に仁王立ちしたハム子が右手を上げ再び砲撃が開始される。
サクヤが砲撃手を務める砲台から放たれる砲弾は稀に船首のハム子すれすれの軌道を描くが
的確に敵の中心部を狙い亡者達を蹴散らしていく。
長距離から高威力で敵を狙える長弓はその大きさから金属ではどうしても重くなり移動が多い冒険者達が扱うには携帯性が落ちる為
通常骨や木製が多い。
しかし近衛隊が操る長弓は霊銀と呼ばれる希少金属のミスリルで出来ている為
軽さと剛性を兼ね備えており非常に優れた性能を持っている。
その長弓から放たれる一撃は重鎧の厚い装甲すらいとも簡単に貫いてしまう。
先天的な天才肌のファンナは近衛隊ながらあえて身軽な装備を好む為、機動力に長けたミスリル製の長弓とは非常に相性が良い。
敵の懐に飛び込みあえての至近距離で放つ長弓の強烈な一撃は的確に各急所を狙っており次々と亡者達の戦力を削いでいく。
ファンナ【うひひひ今日の撃破王はアタシが頂くにょー】
アラニー【無駄口叩いてるヒマあるなら、その後ろの敵どうにかしたら如何かしら?】
ファンナ『にょ!?』
勢い良く先行し飛び出したファンナだったが先ほど射抜いた敵にまだ息があり背後から襲い掛かろうとしていた
しかし遥か船上のアラニーから放たれた矢がその亡者の額に命中し
そのまま崩れ落ちた。
ファンナ【ギギギギギ・・・おにょれアラニー!まだにょ、まだ終わらんにょ!】
先ほどのファンナがもって生まれた天才型とするとアラニーは努力型の秀才であった。
穏やかな口調から後衛職とよく想像されるが実は得意とするのは格闘術であり近接戦では近衛隊の中でも屈指の実力者である。

しかし彼女はあえて弓術中心の公爵近衛隊に入隊し一から慣れない弓術を覚えなおして公爵の身の回りの世話を一手に受け持っている。
毎日飽きることなく地道に繰り返される訓練から生み出される実力、それが彼女の絶対の自信であり誇りでもあった。
その努力の根源は公爵を守るただそれだけ。そうまでする理由は彼女が公爵と出合った出来事に関係しているのだが近衛隊の中でも知る人物は少ない。
アラニー『公爵様、着岸地点付近は私とファンナで大丈夫です。ピコとサクヤの砲撃は囲まれている皆様の方へ』
ハム子『あら、そう?』【じゃぁ、ピコ聞こえる?今から指示する地点へ一気に攻め込むわよ】
ピコ【了解っ!☆(・ω<)武者奮いしてきたぁーーっ!ww】
ハム子【サクヤ、カタパルトの準備宜しくねぇ】
サクヤ【えっ?アレ使うんですか?まだ修理終わってないのに大丈夫かなぁ・・(ブツブツ)】
デッキ部分から迫り出してきた移動式の砲台には大型弩弓があり
通常矢を番える部分は人が1人乗れる様に足場が取り付けられていた。
そこに矢の代わりにセットされるピコ。着地の補償は何も無くかなり危険なのだが何故かその顔は期待に膨らんでいる。
サクヤ【方角NNW、距離325.77y、射出角度38.7・・・全て問題なし・・・・・発射】
勢い良く射出されるピコ、本来生身の人間であれば射出の衝撃だけでも大事故になるのだが
彼女が着ている装備には特殊な処理がされてあった。
極稀に発見される飛竜の翼から特殊な製法で抽出された染料を用いて
表面をピコの好む桜色に染められたその胸当てとブーツには極微力ではあるが風の精霊力が宿っており
常に外側に向かって風が吹いている為、斬撃等には効果が無いが
鈍器による打撃や落下の衝撃に関しては大幅に緩和出来る
そしてその恩恵によりカタパルトでの発射、着地の衝撃を殆ど受けずに戦場で騎兵以上の機動力を得ることが出来る。
しかし稀少な飛竜の翼が素材と言う事と前例が殆ど無い事から、正規兵の中では自ら志願するものは居なかった。
しかし入隊間もない好奇心旺盛なピコが名乗りを挙げ、弓術士でありながら初の高機動強襲兵として異例の近衛隊採用となった。
その戦闘スタイルは独特でありミスリル製の長弓の上下に刃を取り付け回転させまるで長刀の様な使い方をする。そしてミコッテらしからぬ腕力を用いて一度に3本以上の矢を番えさながら移動砲台の如く
弾幕を展開していく。先出の二人とはまた違う戦い方ではあるが殲滅力としては引けを取らない。
ピコ【これこれ、この空を飛ぶ感覚!人には譲れないーーーーっ(;´Д`)】
着地点に着くまで多数の亡者を射抜いてようやく着地したピコに襲い掛かる亡者達。
そこに時間差でサクヤの緻密な計算によってピコの安全且つ一番効率良く敵を撃墜出来るポイントに放たれた砲弾が見事にズレも無く着弾する。
鳴り響く爆音の中、その爆風に巻き込まれる事無く凄まじい量の矢を次々に放つピコ。

近衛隊が愛用するミスリル製武具の整備・開発、そして艦隊の砲台手と1人で何役もこなすサクヤだが
何かに没頭すると何日も睡眠を取らずよく体調を崩す事が多くさらに本来戦闘向きではない性格の為
武器を取り直接戦闘に参加する事は殆ど無い。
しかしその綿密な計算による戦況の判断とあらゆる武器防具に関する知識と技術は
公爵を筆頭とした感性で行動するメンバーが多い中、論理的に考えることの出来る貴重な存在であり
戦闘の際の作戦はほぼ彼女の案が中心である。
そして次々と放たれる砲撃に逃げ惑う亡者達、しかし数発に一発はハム子の至近距離を飛んでいく。
ハム子【えーっと・・・サクヤ?さっきからずーっと思ってたんだけどさ、少〜し砲撃の軌道アタシに近くない・・・?】
サクヤ【この軌道が一番効果的なんです、色々と】
ハム子【・・・・そう・・・・。】
彼女の言うとおり絶体絶命の危機はわずか数分で様変わりしていた。
これにより殆どの亡者達の標的は突然の来訪者達に向けられていた。

アオ子『この混乱の中ならママを助けに行けますわ』
アンジー『今行きます!ママ』
この不意に訪れた最大のチャンスを見逃さなかったアンジーがラヴ子に向かって走りだす。
そして援護を開始する為、詠唱に集中するアオ子。

だが動きを乱した亡者達の中でもフードを被った呪術師達の一部は再び不気味な詠唱を開始し
霊矢が次々と空中に現れ
こちらに向かってくるアンジーに襲いかかろうとしていた。
リーダー格の亡者と激しい戦闘を続けているラヴ子は肩以外にもいくつか手傷を負っておりかなりの苦戦を強いられていた。

アオ子の詠唱もまだ完成しておらず更に先程のシェルの効果も殆ど失われている。
マリア『アンジー!上よ!』
迫る亡者を蹴散らしながら空中に不気味に浮かぶ矢にいち早く気付き叫ぶマリアだったが砲弾の轟音にかき消されて既に少し離れて走っているアンジーにその声は届かなかった
そしてその彼女もラヴ子だけを見つめて走り続けている為、気が焦り空中で自分を狙う複数の矢は見えてはいない。
戦闘中のラヴ子も不意に嫌な気配に気付き振り返る。
するとこちらに向かって走ってくるアンジーの頭上から今まさに放たれようとしている霊矢が見えた。
ラヴ子『来るんじゃな・・!!』
マリアと同様、悲痛な叫びをあげる。

ようやく状況に気付いた彼女が空を見上げると
至近距離に複数の霊矢が回転しながら霊力を充填し今まさに自分に向けて放たれようとしていた。
その場にいる全員の表情が強張る。
そして次の瞬間、非情なる矢の雨が降り注いだ。

続く
posted by ラヴ子ママ at 11:17| Comment(4) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
拾壱くるのはやっ!
着岸でようやく船酔いのターン終了ね☆
そして下々を働かして自分は動かないアタシさすが。
みんなガンガレ、超ガンガレ!
Posted by お歳暮 at 2011年02月26日 12:22
週末は一日一話のペースで投下可能!後は適当!
Posted by ラヴ子 at 2011年02月26日 13:05
執筆お疲れ様です!
楽しく読ませて頂きました。
近衛隊の面々が・・・か、かっこいいタル〜
ちょっと弓術上げたくなりましたw

物語も佳境に入って来た感じですよね。
無理ない程度に頑張ってください〜
Posted by アラニス at 2011年02月26日 21:31
後から読み直すと色々修正した部分は沢山出てくるのよね
近衛隊の面々については正直あまり理解仕切れてない部分があるから7割想像よ!(きっぱり)
あと無理とか全然してないから心配ナッシン!お蔵入りしなかった事だけが一番嬉しいから
Posted by ラヴ子 at 2011年02月27日 00:58
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]