「エネルギーは質が全て、量ではない」改訂2010年7月
石井吉徳 Yoshinori ISHII
理解したいエネルギーの質、EPR,Net Energy、そしてエントロピーの法則
資源とは、1)濃縮されている,2)大量にある、3)合理的な位置にあるもの

「地球は有限、自然にも限りがある」、経済成長至上主義はもう止めよう
「石油ピーク」は「枯渇」ではない、資源を「寿命」では考えない
「寿命」とは資源の可採埋蔵量/年生産量の比、「質」とは無関係
地球、人類の基本的生存基盤は、市場と技術では解決しない
日本で喧伝される「メタンハイドレート」も資源でない
ネット・エネルギー: Net Energy
エコロジー経済学の基本概念
エネルギー利益比、EPR、Energy Profit Ratio
EROI: Energy Return on Investment, EROEI: Energy Return on Energy Invested
emergy: eMergy (H. T. Odum)
エネルギー資源にとって「質が最も大切」、「量」ではない

つまりグロスでなく、ネットのエネルギーだが、その指標としてエネルギー利益比、つまりEPR:Energy Profit Ratioが先ず上げられる。これはエネルギー生産に必要な入力エネルギーと生産されるグロス・エネルギー、つまり出力エネルギーの比

エネルギー利益比:EPR= 出力エネルギー/入力エネルギー

である。これが1.0以上でないとエネルギー資源、エネルギー技術は意味がないことになる。
先ず、各種のエネルギー源についてのEPRを次に示す。


各種エネルギー源とEPR(Energy Profit Ratio)

EPR: 日本経済新聞2006-7-2(但し、左から二番目の石炭・天然ガスは石炭の誤り)


1)Oil & gas US
1940s: discovery > 100.0
1970s: production 23.0、discovery 8.0
2)Coal US (mine mouth)
1950s: 80.0
1970s: 30.0
3)Oil shale: 0.7 ~ 13.3
4)Oil sand: 1.5
5)Coal liquefaction: 0.5 ~ 8.2
6)Geopressured gas: 1.0 ~ 5.0
7)Ethanol (sugarcane): 0.8 ~ 1.7
(corn): 1.3
(corn residues): 0.7 ~ 1.8
8)Methanol (wood): 2.6
9)Nuclear Japan:6.7 ~ 17.4 (Amano)
US: 4.0 (Cleveland etal)
10)Geothermal: 4.0
11)Electricity US Coal average: 9.0
western surface no scrubbers: 6.0
scrubbers: 2.5
12)Hydro power electricity: 4.0


EPRのリスト: 石井吉徳2006(C.Clevelad, R.Heinberg, O.Amanoなどから

石油生産におけるNet Energyの意味

日本の誤解:EPR、資源の質を考えないと石油280年分となる(石油連盟2006)


EPRが1.0以上であることは、エネルギー問題において絶対的な意味を持つが、文明を支えるにはEPRが10以上が望ましい。余剰のNet Energy が文明維持に不可欠だからである。なぜならエネルギーが無ければ「何も動かせず、何も作れない」からである。

海水ウランが資源として無意味なのは、ウランを濃縮するために使われる消費エネルギーが莫大だからである。一般論だが、この濃集こそが資源の本質である。未だに海水は膨大な資源という人が絶えないのは困ったことである。今はリサイクルブーム、ごみは資源、ごみからエネルギー回収ということが多いが、誤った政策論議に陥りやすいので注意が要る。

しかしモノは違う。例えば金属資源では、それがどうしても必要であれば、いくらエネルギーを投じても意味がある。金、プラチナなどが高価でも社会で通用するが、それは貴金属だからで、またダイヤモンドに人々が大金を払うは価値観が違うからである。言い替えれば、必要であれば人は大金を投じると言うことであり、「貨幣で計る価値」とはそのようなことである。

繰り返すが、エネルギーはそうは行かないのである。見かけ上、投じられるのがが金銭であっても、元々どの程度エネルギーが間接、直接に投じられたかが問題である。部分、皮相的に見ては本質が見えないのである。トウモロコシからアルコール燃料を、という自然エネルギー派も注意が要る。それは現代農業は、膨大な石油を使うからであり、食料供給とも真っ向から対立するからである。

近未来社会において、石油ピークは様々な面で深刻な影響を及ぼすと思われるが、先ず交通輸送分野が先ず重大問題である。車、飛行機は石油無しには動かない。いずれ来る石油減退に向け、社会の大変革が必要だが、これにはかなりの年月を要する。

このため、既にオーストラリアでは、「CLIMAXING OIL:HOW WILL TRANSPORT ADAPT?」と題したシンポジウムが持たれたことがある。そこで発表された一論文の[Energy profit ratio]に関する図を次に紹介する。


 


CLIMAXING OIL:HOW WILL TRANSPORT ADAPT?

BJ Fleay B Eng, M Eng Sc, MIEAust, MAWWA
Associate of the Institute for Science and Technology Policy
Murdoch University, Western Australia
presented at the:Chartered Institute of Transport in Australia
National Symposium, Launceston Tasmania 6-7 November 1998
BEYOND OIL:TRANSPORT AND FUEL FOR THE FUTURE


EROI = Energy Return On Investment (or: EROIE = Energy Return On Invested Energy)
The energy that you need to invest in order to get an amont of energy.

Examples:
Oil extraction. In the beginning of the 20:th century, the energy investments needed to use the energy of crude oil was estimated to 1:25, i.e. your gain was 25-fold. Today, the same figure is estimated (globally) to less than 10, in the lower 48 to less than three. When the figure goes down to 1, the oil ceases to be an energy souce. Tar sands are estimated to give an energy gain of about 1.5, at least the shallow ones.

The Rabbit limit. If you live solely of rabbits, you alwys have to invest a cetain amount of energy in rabbit hunting. This amont can never be more than the energy content of a rabbit, since you will lose energy in the activity. You will starve to death, and faster the more rabbits you catch in that way.

 

The EROI concept is closely related to the more broad concept of YPE, Yield Per Effort

Holon Ecosystem consultancy <http://www.holon.se/folke/kurs/logexp/eroi.shtml>