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ルーアン地方編
第二十七話 幽霊騒動と怪盗紳士の再挑戦
<ルーアン市 ジョアン武器商会>

先日の市長邸占拠事件で愛用していた棒を失ったエステルは、クローゼをジェニス王立学園に送り届ける前に武器屋で買い物をする事にした。
しかし棒術用の武器は種類も少ないため、エステルは満足の行く物をなかなか選べなかった。

「うーん、これはちょっと長すぎるわね」

そうつぶやいたエステルは別の棒を手に取る。

「これは短い割に重すぎるわね」

別の棒を振り回したエステルは不満そうにつぶやいた。

「エステル、前に使っていた武器はこのぐらいの長さじゃないかな?」

ヨシュアがまた別の棒を指差すと、エステルはその棒を手にとって振り回す。

「これは軽過ぎちゃって重心が取りにくい……」

色々悩んだ末に、エステルは妥協して1本の棒を手に取るのだった。
カウンターで接客をする店主の妻、エーファも申し訳なさそうな表情だ。

「ごめんなさいね、棒術の使い手は少ないから主人も仕入れたがらないのよ」
「ううん、あたしも覚悟の上で使っているから」

エステルは軽く首を振ってエーファに答えると、真新しい棒を持って武器屋を後にした。
そしてジェニス王立学園に向かうため、エステル達3人がルーアン市を出ると、3匹の犬型魔獣がメーヴェ海道を塞いでいるのが見えた。
エステルとヨシュアの脳裏にダルモア元市長邸での事件が思い出される。

「クローゼ、下がって! こいつらにかまれたら危険な病気にかかっちゃう!」
「いや、この犬達は軍用犬が野生化したものみたいだから、そう言う病原菌は持っていないようだ」
「どうしてわかったの?」

ヨシュアはうなり声を上げてこちらを見ている犬型魔獣の首元を指差した。
犬型魔獣は3匹とも首輪をしていた。

「手配魔獣のコバルティセイバーはこいつらみたいだ」
「強そうな魔獣ね、新しい武器の訓練にちょうどいいわ」

エステルはそう言って武器を構えた。
ヨシュアは素早く情報のクオーツで魔獣の特徴を確認する。

「武器は効きにくいみたいだ、さらに厄介な事に倒すと他の魔獣の能力を上げる能力を使うみたいだから、火のアーツで3匹同時に範囲攻撃しよう」

ヨシュアの言葉にエステルは冷汗を垂らす。

「あたし、範囲攻撃が使えるように戦術オーブメントをセットしていないんだけど」
「効果が薄いかもしれませんが、私が水のアーツで範囲攻撃をします」
「ありがとうクローゼ、助かるー♪」
「じゃあエステルは魔獣達の注意を引きつけておいてよ」

ため息交じりにヨシュアはエステルに指示を出した。



<ルーアン地方 ジェニス王立学園 学園長室>

クローゼを学園に送り届けたエステルとヨシュアはコリンズ学園長に相談を受けた。
最近、ウワサが流れて生徒達は落ち着きを無くしていると言う。

「幽霊が出る!?」

コリンズ学園長から話を聞いたエステルは驚きの声を上げた。
そして顔を色を青くしてつぶやく。

「まさか、幽霊なんているわけないじゃないの……」
「魔獣だったら放ってはおけないよ」
「そうね、きっと魔獣かもしれないわね」

エステルは自分に言い聞かせるようにそうつぶやいた。

「ジル君やハンス君とも協力して、事件の調査に当たってくれ」
「分かりました」

コリンズ学園長の言葉にヨシュアはしっかりとうなずいた。
学園長室を出たエステル達は生徒会室でジルとハンスとの再会を果たす。

「やあ、久しぶりだな」
「この前のヨシュア君のお姫様姿、大好評だったわよ。ヨシュア君が突然居なくなっちゃたもんだから、みんな残念がっていたわ」
「もう勘弁して下さい」

ジルに向かってヨシュアは疲れた顔でそう答えた。

「それで、幽霊騒ぎの事なのですが……」
「ああ、クローゼはルーアンの街に泊まっていたから知らなかったんだな。昨日の夜、何人もの生徒が幽霊を見たって大騒ぎになっているんだ」
「勘違いとか、気のせいじゃないの?」

クローゼの質問に答えたハンスの言葉を聞いて、エステルはごまかすような笑いを浮かべてそう言った。

「何人もの目撃者が居るんだ、それはありえないさ」
「やっぱり何かが居るのは確かだね」

ハンスの言葉にヨシュアはうなずいた。

「それじゃあまずは目撃証言集めだね。放課後の部活動で生徒が色々なところに散らばってしまっているから、分担を決めましょ」

ジルの提案により、エステル達は手分けをして生徒達に話を聞く事にした。
ヨシュアは校庭、クローゼは本館、エステルは女子寮、ハンスは男子寮、ジルは講堂の生徒に聴き取り調査を行う事になった。

「ねえ、昨日の夜目撃された幽霊について聞きたいんだけど……」
「やっぱり、あの白い影は幽霊でしたのね!?」

エステルが尋ねると、女子寮の自分の部屋に居たフラッセは声を上げた。

「いや、まだ幽霊と決まったわけじゃないけど、目撃証言を聞かせて欲しいなあと」
「ほら見なさい、わたくしの気のせいじゃ無かったでしょう?」
「しかし、フラッセお嬢様の目撃した白い影が幽霊と決まったわけでは。私は鳥の姿を見間違えたのだと思います」

フラッセに訴えかけられたレイナは冷静な口調で返した。

「えっと、それでフラッセさんのみた白い影はどんな感じだったの?」
「それがまるで、シルクハットを被った人間みたいでしたの。窓を見ていたわたくしと目を合わせると、シルクハットを取ってお辞儀をして、あちらの方向へと消えてしまいましたわ」
「レイナさんは見て居ないの?」
「私はトイレの外で待っていましたので。お嬢様はこのお年で1人でトイレに行けない程怖がりだからそのような幻影を見たのかと。だいたい人が空を飛べるはずは無いじゃありませんか」
「レイナっ、今ポロっとわたくしの恥ずかしい秘密を暴露しましたわね!」
「だって、本当の事を話さないと状況が伝わりにくいではありませんか」
「調査に協力してくれてありがとっ!」

エステルは言い争いを始めてしまったフラッセとレイナにお礼を言うと慌ててその場を離れるのだった。
聴き取り調査を終えたエステルが生徒会室に戻ると、ヨシュア達も他の生徒達の調査を終わったのか、集まっていた。
フラッセの他に目撃証言を聞けた生徒は他2名だった。

「エステル、この3人の生徒の証言を聞いてどう思う?」
「うーん、白い影はシルクハットを被っていた手品師の幽霊なのかな……」
「僕が言いたいのはそこじゃないんだけど。それじゃ、ヒントを出そうか。この3人の証言には決定的に違っている所があるんだよ」
「あっ、そうか! 白い影の飛び去った方向ね!」
「その通りだよ」

エステルが声を上げると、ヨシュアは満足したようにうなずいた。

「3人の証言を合わせると、こうなるな」

ハンスはテーブルの上にジェニス王立学園の見取り図を広げ、3人が白い影を目撃した場所と白い影が消えて行った方向を書き込んで行った。
そして、その3つの矢印が交差した点は、学校の裏手にある旧校舎だった。

「旧校舎は鍵が掛けられていて誰も入れないはずなんだけどね」
「でも、証拠は旧校舎に何かがあると示しています」

ジルのつぶやきに、クローゼはそう反論した。

「旧校舎の中を調査する必要があるね」
「職員室に鍵を借りに行きましょう」

ヨシュアとクローゼの提案により、エステル達は職員室へと向かった。

「と言うわけで、旧校舎の鍵をお借りしたいのですが」
「あれ、昨日も旧校舎の鍵を借りに来なかった?」
「私がですか?」

ミリア先生の言葉を聞いたクローゼは不思議そうな顔をして聞き返した。

「そりゃおかしいですよ先生、昨日クローゼはルーアン市に行ったまま帰って来なかったんですから」
「それじゃあ、私の勘違いかな? テストの採点が忙しくて寝不足気味だったから」

ハンスの言葉を聞いてミリア先生はごまかし笑いを浮かべた。
そしてミリア先生はクローゼに旧校舎の鍵を渡した。

「それじゃあ早速、旧校舎の調査に行くか!」

そう言って張り切るハンスにヨシュアは首を横に振って押し止める。

「ハンス達は生徒会室で待っていてよ。旧校舎へは僕達だけで行って来る」
「おいおい、こんな面白そうな事件を独り占めかよ」
「どんな危険な相手が潜んでいるか分からない。民間人の安全を最優先に考える遊撃士としては君達を連れて行くわけにはいかないよ」
「ちぇっ、そう言われちゃ仕方無いな」

真剣な顔でヨシュアがそう言うと、ハンスは渋々ながら従った。

「私なら、足手まといになりませんよね? 是非お連れ下さい」

クローゼがそう言うと、ヨシュアは困った顔になる。

「でも、これ以上君の力に頼るのは遊撃士としてマズイと言うか……」
「ねえ、ここで断っちゃうと、クローゼは勝手に旧校舎に行っちゃうかもしれないよ? それなら一緒に行った方が良くない?」
「まあ、そうかもしれないけど……仕方無いな」
「ありがとうございます、エステルさん、ヨシュアさん!」
「まったくエステルってばこういう時ばかり機転が効くんだから」

ヨシュアは疲れた顔でため息をつきながら皮肉を言った。



<ルーアン地方 ジェニス王立学園 旧校舎>

ジェニス王立学園の旧校舎の入口の扉は、大きな南京錠が掛けられていた。
鍵を差し込んで開けようとしたエステルは、扉にカードのようなものが挟まっているのを見つけた。
カードを取り出したエステルとそのカードを見たヨシュアは絶句して驚く。
2人ともそのカードには見覚えがあったからだ。

『蒼耀の灯火は我がアジトに有り。取り戻したければ我の挑戦を受けよ。最初の暗号は全ての源を探せ』

「この文章、怪盗紳士に間違いないわね」
「でもどうして怪盗紳士は今頃になって蒼耀の灯火のありかをわざわざ僕達に知らせるような事をするんだろう」
「変人の考える事なんて解らないよ」
「今は、暗号を解く事に集中しませんか?」

クローゼに言われてエステルとヨシュアはうなずいた。

「全ての源とは何でしょう?」
「哲学的な事なのか、物理的な事なのか……」
「それなら人文学科のラティオ先生か自然科のミリア先生にお尋ねしましょうか?」

クローゼとヨシュアは顔を合わせて考え込んだ。

「そんな難しく考えないでさ、怪盗紳士の出す問題の答えはこの旧校舎の中にあるんだから、旧校舎の中を探しまわればいいんじゃない?」

エステルがそう言うと、ヨシュアとクローゼは少し驚いた表情でエステルを見つめる。

「それもそうだね」
「考える事ばかりに気を取られて、重要な事を忘れていました」

エステル達はまず最初に旧校舎の周りの庭から調べて見る事にした。
荒れ果てた庭を歩いていたヨシュアは、朽ち果てかけている石像に目を止める。

「この石像は?」
「初代の校長先生の像です。ジェニス王立学園を創立された方だとか」
「もしかして……」

クローゼの答えを聞いたヨシュアが石像を調べると2枚目のカードが見つかった。

「そっか、誰かが学校を作ろうと言い出さなければ何も始まらないもんね」

エステルは納得したようにつぶやいた。
2枚目のカードには怪盗紳士の次の暗号文が書かれている。
怪盗紳士の遊びに付き合わされるエステル達はため息をつきながら旧校舎の中を歩き回るのだった。

「この鍵は何だろう?」

3つ目の暗号を解き終わったエステルは、古びた鍵を手に入れた。
同じ場所にカードは隠されて居ない。

「カードが無いと言う事は、今度はこの鍵を使って開く扉を探せと言う事だろうね」
「東館の1階に鍵のかかった扉がありましたね」
「多分そこよ」

エステル達は東館の1階へと移動し、鍵の掛かった扉に鍵を差し込む。

「開きましたね」
「この部屋に蒼耀の灯火があるのか……」

クローゼとヨシュアはそうつぶやいて部屋へと足を踏み入れた。
すると、部屋の中には蒼耀の灯火の姿は無く、地下への階段が口を開けていた。

「この階段を降りろって言うの?」
「どうやら、そうみたいだね」

ヨシュアはそう言って心配そうな顔でクローゼを見つめた。

「私なら大丈夫です、ご一緒させて下さい」

力強くクローゼに言われたヨシュアはため息をつくのだった。
旧校舎の地下は古代の遺跡のようなものが広がっていた。

「ジェニス王立学園は古代の遺物の研究をするために設立されたと聞きましたが、こんな近くに遺跡があるなんて」

クローゼは驚いて言葉をもらした。

「導力の懐中電灯で照らして行くけど、視界が狭いから油断しないようにね」
「いいな、あたしも懐中電灯を持ってみたい」
「そんな長い棒を片手じゃ振り回せないじゃないか」

ヨシュアに自分の武器を指摘されたエステルはやむなく引き下がった。
階段を降り切って踊り場に出て、さらに階段を下った。
そして階段の終点に降り立ったエステル達は奥に通じる通路の方から白い影がやって来るのが見えた。

「あれが幽霊?」
「ほこりが魔獣化したもので、物理攻撃や風や水のアーツは通じにくい敵みたいだ」

情報のクォーツでヨシュアは相手の能力を確認した。

「ええっ、また武器攻撃が効きにくい敵なの?」
「私は水のアーツの他に地属性のアーツも使えます、お任せ下さい」

ほこり魔獣との戦闘はクローゼが攻撃の中心となって戦った。
エステルもクローゼの活躍に負けまいと、必死に棒を振り回した。

「きゃあっ!?」

エステルは、ほこり魔獣の吐き出した暗黒ブレスを浴びてしまい、視界を失ってしまった。

「エステルっ!」

ヨシュアは素早くエステルを抱え、ブレスの範囲外にエステルを避難させた。
クローゼが唱えた地のアーツは確実に、ほこり魔獣にダメージを与えて行き、ほこり魔獣は力を失ってかき消えた。

「ごめんヨシュア、あたしルーアンに来てから足を引っ張ってばかりで」
「今回はたまたま相手が悪かっただけだよ」

ヨシュアはエステルにそう返した。
しかし、エステルの顔は晴れない。

「本当、あたしったらダメね」

下を向いて落ち込んだエステルを見て、クローゼは困った顔になってしまった。

「……それならこれから取り返せば良いじゃないか」
「えっ?」

エステルは驚いて顔を上げてヨシュアを見上げた。

「アーツが苦手なら、一生懸命練習すればいいじゃないか。努力もしないうちから諦めるなんて、それこそいけない事だよ」
「うん、あたし、アーツの練習も頑張る!」

エステルが華やいだ笑顔に戻ると、クローゼはホッとした表情を浮かべた。

「でも、その気持ちがいつまで続くだろうね……」

ヨシュアは苦笑しながらそうもらすのだった。

「白い影の正体はさっきの魔獣だったのかな?」
「でも、目撃証言では白い影はシルクハットをかぶっていて、あいさつをしたと言う話ですけど……」
「白い影の正体が何だとしても、蒼耀の灯火は取り戻さないといけないよ」
「あっ、そうか」

エステル達は蒼耀の灯火を探して、魔獣が徘徊する古代遺跡の中を歩き回る事になった。
古代遺跡は迷路のように入り組んでいて、エステル達は苦難の末に蒼耀の灯火が置かれている部屋にたどり着いた。
天井がとてつもなく高い割に手狭な感じの不思議な部屋だった。

「ここが、怪盗紳士のアジトなの……?」
「人の気配はしないみたいだ」

エステル達はゆっくりと部屋の中へ入って行った。
部屋の入口から見える台座の上に蒼耀の灯火が置かれていて、側には怪盗紳士の残したカードがあった。

『ルーアンの財宝を簒奪者から正統な持ち主の下へ』

カードを拾い上げたエステルは意味が解らず首をひねった。

「ダルモア家はルーアン土着の住民ではなく、王都グランセルの方から移り住んで来たと聞きます。経済的な力で市長の座に着いてからは、ルーアンは漁業の町から観光の街へと変化したとか」
「怪盗紳士はダルモア市長をルーアンの政治を力で奪ったと思っているようだね」

クローゼの言葉にヨシュアも賛成の意を示した。

「じゃあ、怪盗紳士は蒼耀の灯火を返してくれるって事?」
「そういう事だろうね」

ヨシュアはエステルの言葉にうなずいた。

「ねえ、この機械みたいなのは?」

エステルが部屋の片隅に置かれている装置を指差した。

「何だろう?」
「オーブメントの部品でしょうか」

何の装置かは解らなかったが、何とか持ち運べる大きさだったので、持ち帰る事にした。

「では、私は蒼耀の灯火の方を運びますね」

クローゼがそう言って台座から蒼耀の灯火を持ち上げた時、部屋の壁が大きな音を立てて崩れた!
そこから姿を現したのは身長がヨシュアの2倍ぐらいある、巨大な導力駆動のオーバルマペットだった。
ヨシュアの手にはライトが握られており、クローゼは蒼耀の灯火を抱えていて反応が遅れた。
エステルが2人をかばうように巨大なオーバルマペットの前に立ちはだかる。

「エステル、相手との距離が近すぎる!」

ヨシュアは巨大なオーバルマペットの剛腕によりエステルが跳ね飛ばされる事を想像してしまった。
しかし、巨大なオーバルマペットはヨシュアの想像とは全く違う想定外の動きを取った。
なんと巨大なオーバルマペットは突然マイクを取り出して歌い始めたのだ!
部屋の中に響き渡る大音量の歌声。
エステル達がその衝撃に何とか耐えると、巨大なオーバルマペットは突然機能を停止して動かなくなった。

「……どうしたのかな?」
「きっとエネルギーのようなものが切れてしまったのだと思います」

動かなくなった巨大なオーバルマペットを前にエステル達は悩んだ。
これを持ち帰るにはマイクでも大きすぎる。
オーバルマペットのボディを調べたヨシュアは、《十三工房》のマークが刻まれているのに驚く。

「これは……《十三工房》のマークだ」
「そうみたいですね」
「どうしてこんな所に」
「これ以上何か起こらないうちに早く帰ろうよ」

考え込んでしまったヨシュアとクローゼを急かすように、エステルが言う。
とりあえず謎解きは後回しにしてエステル達は地下遺跡を出る事に専念するのだった。



<ルーアン地方 ジェニス王立学園 学園長室>

旧校舎の探索ですっかり疲れてしまったエステルとヨシュアは再び学園の寮に泊めさせてもらう事になった。
コリンズ学園長は預かった装置を一晩調べて見たが、自分の知識では結局何の装置か解らないと言う事だった。
学園長はオーバル装置についてはあまり詳しく無かったのだった。

「お役に立てなくてすまなかったな」
「いえ、ギルドに持ち帰って相談してみます」

学園長が謝ると、ヨシュアは気遣うように首を振った。

「幽霊は倒せたのか?」
「うーん、それはまだ解らないんだ」

ハンスの言葉にヨシュアはそう答えた。

「幽霊がまだ続けて目撃されるようでしたら、お呼びください」
「その時はお願いするよ」

エステル達はコリンズ学園長にあいさつをして、ジルとハンスと共に学園長室を出た。

「幽霊がまた出て欲しいですね」

学園長室を出た所で、クローゼがポツリとそうつぶやいた。

「どうして?」
「だって、またエステルさんとヨシュアさんがまた学園に来てくれるじゃないですか」

エステルの問い掛けにクローゼがそう答えると、ジルは少しあきれたように息を吐き出す。

「クローゼがそんなわがまま言うなんて、よっぽど2人の事が気に入ったのね。親友を自称する私達が妬けちゃいぐらいに」
「あ、いえ、そう言う事じゃ……」

クローゼが顔を赤くしてうろたえると、エステル達からも笑いが起きた。
そして、別れを惜しむクローゼ達に見送られ、エステル達は学園を後にする。

「何だか、クローゼ達ともすっかり友達になっちゃったね」
「うん、ルーアン市に来てずいぶん経ったから、やっと馴染んで来た気がするよ」
「でも、もうそろそろかなあ?」
「……僕達は準遊撃士なんだから、仕方の無い事だよ」

ヴィスタ林道を歩きながら、エステルとヨシュアはそんな事を話してため息を吐き出した。
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