回復の兆しを見せる米国の雇用。その一方で上昇が目立ってきた原油など国際商品価格。米連邦準備理事会(FRB)は金融緩和の効果を確かめつつ、その副作用への注意が欠かせない局面を迎えている。
農業以外の米国の雇用者数は2月には前月比で19万人以上増えた。製造業、建設、サービスなど民間雇用が増えたことに、米政府やFRBは景気回復の手応えを感じている。
世界経済全体にとっても好ましい動きだが、週末の米国株は雇用の改善よりむしろ、原油価格の高騰に反応して下落した。このところの資源・食料価格の上昇は、川下の製品価格に転嫁され始め、物価への目配りが重要な段階となっている。
雇用改善と商品価格上昇。2つの出来事の根っこは実は同じである。FRBが昨秋に始めた大規模な金融緩和だ。おかげで企業活動が活発になり、雇用も増えた。その裏側で、金融緩和が生んだ大量の資金が有利な運用先を求め商品に流れ込んだ。
新興国は相次ぎ利上げに踏み切り、欧州中央銀行も4月利上げを示唆した。一方で、FRBが直ちに引き締めに転じるとは考えにくい。
FRBの場合、物価安定だけでなく雇用の最大化をも金融政策の使命としているからだ。米国の雇用は改善しだしたものの、リーマン・ショック後の落ち込みを埋めるには時間がかかる。バーナンキFRB議長が力点を置くのは雇用である。
とはいえ、昨秋にFRBが決めた国債の買い取りの期限は今年6月末までとなっている。バーナンキ議長も景気回復の確かさが増していると述べ、FRBの地区連銀報告でも原材料値上がりの製品価格への転嫁に言及するようになった。そう見ていくと、国債買い取りは6月末で打ち止めにする公算が大きいだろう。このへんの政策のかじ取りの微調整がバーナンキ議長の課題である。
日銀は最近、世界的な金融緩和環境が商品価格上昇の一因との見方を強調している。日本は金融緩和をやめる状況にはないが、世界を見渡せば物価抑制が大きな課題になっているのは間違いない。そんなメッセージを発しようとしているのだ。金融環境を巡る潮目の変化に、経営者や投資家は目を凝らすべきだろう。
FRB、バーナンキ、日銀、原油
日経平均(円) | 10,693.66 | +107.64 | 4日 大引 |
---|---|---|---|
NYダウ(ドル) | 12,169.88 | -88.32 | 4日 16:30 |
英FTSE100 | 5,990.39 | -14.70 | 4日 16:35 |
ドル/円 | 82.32 - .34 | -0.07円高 | 5日 5:48 |
ユーロ/円 | 115.11 - .16 | +0.09円安 | 5日 5:49 |
長期金利(%) | 1.295 | +0.005 | 4日 17:54 |
NY原油(ドル) | 104.42 | +2.51 | 4日 終値 |
経済や企業の最新ニュースのほか、大リーグやサッカーなどのスポーツニュースも満載
詳細ページへ
日経ニュースメール(無料)など、電子版ではさまざまなメールサービスを用意しています。
(詳細はこちら)