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社説:論調観測 予算案と国会 どこに打開策はあるか

 来年度予算案が衆院を通過したが、赤字国債の発行を認める特例公債法案などは野党の反対で参院では可決できそうにないため採決を先送りした。92.4兆円の予算案のうち40兆円のめどが立たず、このままでは国民生活に大きな影響が出る。

 反対姿勢を変えない野党を批判する政府に対して読売は「不成立の際の責任を野党に押しつける布石を打っているとしたら、不見識だ」と指摘する。「菅首相は腹をくくって、衆院選政権公約の大胆な修正に一刻も早く踏み切るしかない」という。

 批判の矛先は予算案の衆院採決を欠席した民主党の16議員にも向けられる。「政策面の主張や政治行動は自由だが、それが最も重要な予算案の採決を欠席する理由にはなり得ない」という日経は「与党が内紛を続け、野党がいたずらに対決姿勢を強めるだけでは政治の責任は果たせない」と結んだ。

 具体的に予算案の修正を提案したのは朝日だ。野党側の反対が強い子ども手当について「児童手当のように、豊かな世帯には支給しない仕組みにしてはどうか」「高速道路無料化は優先課題には当たるまい。それらを撤回し、予算の総額を圧縮してはどうか」と指摘した。

 産経は手厳しい。「民主党政権の破綻は、主要政策をめぐる党内コンセンサスがいまだに形成されていないところに端的に表れている」として「首相に残された選択肢は、政治責任をとって退陣するか、衆院解散・総選挙で信を問い直すかなどである」と言い切る。東京も与野党が胸襟を開いて修正協議に入るべきだとした上で「それすらできない首相なら潔く身を引くべきであり、国会が立法機能を果たせないのなら、国民に信を問うべきである」と論じた。

 だが、首相が代わっても衆参の「ねじれ」の国会状況は変わらない。「修正合意を経て主張を予算に反映させる実績を残すことが『責任野党』にふさわしいのではないか」と毎日は論じる。「民主、自民を中心に政策の対立軸が不明なまま有権者の判断に資する争点が示されない選挙となりかねない」。仮に解散・総選挙で自公が政権を取り戻しても参院では過半数に届かず、やはり「ねじれ」になる。総選挙をすれば展望が開けるとは言い難い状況なのだ。

 「今からでも遅くはない。与野党は関連法案の修正合意に全力を挙げて取り組み、接点を真摯(しんし)に探るべきである」(毎日)。国民の多くがそう切望しているのではないだろうか。【論説委員・野沢和弘】

毎日新聞 2011年3月6日 2時30分

 

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