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一昨日の「アキバ街宣」の動画を昨夜upしたところ、すでに多くの人が見てくれている。なかなか、街頭から細かな経過をたどっての話をすることは出来ないが、あの「アキバ演説」には、保坂事務所の専門デスクが準備した「草稿」があった。この「児童ポルノと表現規制」問題についての要点をまとめたものとなっているので、ここに公開することにする。




[8月1日、秋葉原演説草稿]

 昨日、自民党のマニフェストが発表されました。そのなかでは「ゲームやアニメ、キャラクターなど、日本が強みを持つコンテンツ」という見出しを掲げ、「お家芸ともいえるこの分野の人材育成、製作者の待遇改善を行い、世界に誇る作品が生み出される環境を作ります」と公約しました。

 自公政権は、補正予算で117億円を計上し、「国立メディア芸術総合センター」、俗称「国立マンガ喫茶」「アニメの殿堂」をつくろうとしました。このような箱物によって、ほんとうにゲームやアニメの振興につながるのでしょうか。

 そもそも、自公政権はゲーム、アニメ、そしてマンガに理解があったとは思えません。もちろん、麻生太郎首相は、たびたび秋葉原で遊説を行い、マンガ読みであることをアピールして若者の支持を集めてきました。空き時間にはマンガ週刊誌を読むのが趣味と喧伝され、萌え系マンガ『ローゼンメイデン』を読んでいたという風聞によって、「ローゼン閣下」という愛称で呼ばれているとも聞きました。オタクのアイドル、あるいはアキバ系首相と認知されているようです。

 しかし、麻生首相は、ほんとうにコンテンツ産業や若者文化に理解のある政治家といえるのかは疑問です。若い人たちは知らないかもしれませんが、麻生首相は1991年、自民党議員によって設立された「子供向けポルノコミック等対策議員懇話会」の会長を務めていました。いわゆる「有害」コミック規制というものが吹き荒れていたころのことです。当時、懇話会は出版関係者を呼び出し、出版の自由を訴えた業界側の人間に対して、出席した若手議員が「ふざけるな」と声を荒げる場面さえあったと聞いています。

 麻生首相は、このときのことを反省して、コンテンツ産業の振興を訴えるようになったのかもしれません。しかし、自民党・公明党の議員が提出した「児童ポルノ禁止法」の改正案には、実在児童の被害者が存在しないにもかかわらず、マンガ、アニメ、ゲームなどの創作物の規制をしようとする付則がありました。「児童ポルノに類する漫画等の規制及びインターネットによる閲覧の制限については、この法律の施行後三年を目途として、前項に規定する調査研究及び技術の開発の状況等を勘案しつつ検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとする」という内容です。

 児童ポルノ禁止法は、現実に行われている性的搾取や性的虐待から子どもを守るのが、本来の目的です。にもかかわらず、妄想や空想、想像を表現した創作物を規制対象とするのは話が違います。1999年に児童ポルノ禁止法が施行された際には、宮本武蔵を主人公にして当時ミリオンセラーになっていた青年マンガの「バガボンド」に、17歳の時の性交渉の場面があるという理由で販売を自粛した書店まで現れたと聞きました。

児童ポルノ禁止法の曖昧さは当時から指摘されてきたことですが、3年後に創作物さえ児童ポルノとして扱われるようなことになれば、マンガ・アニメ・ゲームなどで培われてきた表現活動は萎縮し、それら創作物を享受してきた読者らへの影響も甚大なものになります。秋葉原といえば、家電街の代名詞でしたが、最近はオタクの聖地と称されています。「萌え」という言葉も、アキバ文化が発祥でした。そのアキバ文化も壊滅させられてしまうかもしれません。

 そもそも、児童ポルノ禁止法の自公改正案というのはどのような内容なのでしょうか。現状では、実在の児童を性的虐待から守るための法律であり、虐待の事実を記録した写真や動画は当然に規制すべきものであり、その製造に携わったものは摘発されなければなりません。ところが、単純所持の処罰規定導入をめぐって、6月26日の衆議院法務委員会の審議では、自公改正案では広く一般に広まっている写真集や人気アイドルグループのステージ公演、過去の名作映画なども、3号ポルノという扱いになり、規制対象になり得ることが分かりました。

 与党提案者は、1991年に刊行された宮沢りえさんの写真集「サンタフェ」や女優の関根恵子さんの出演した映画について、「大手の出版社が出したからといってオーソライズされるわけじゃないんですよ。大手の新聞社だって時々間違いを書くんです。ですから、その意味でいったら、社会の中で、十八歳未満の児童のポルノ、これについてはしっかり廃棄をしていきましょうというようなことがあれば、それは、この一年間の猶予期間があるわけですから、そういったものをやはりちゃんと廃棄していくということは、私は当然のことじゃないか」と発言しました。また、ジャニーズのようなステージ上で「衣服の全部又は一部を着けない」状態で踊り、歌うことも、条文をそのまま解釈すれば3号ポルノにされてしまいかねないことがわかりました。

 海外、たとえば、アメリカの合衆国法典第18編第1466A条(児童の性的虐待のわいせつな視覚的表現)では、児童ポルノの定義を「純文学的、芸術的、政治的又は科学的な価値を欠くもの」などと厳密に規定しています。

 現行の定義のまま、単純所持規制が行われれば、「サンタフェ」のような合法的に市販されていた出版物や過去の名作映画の「転校生」や「青い珊瑚礁」のような映画が児童ポルノとして扱われるのは大きな問題があります。このような作品の廃棄を求めるという法改正には納得がいきません。

 また、法規制によって、警察の恣意的捜査の虞れもあります。本人の意志とはかかわりなく送られてくるスパムメールのなかに児童ポルノがあったとして、そのことを理由に摘発されることはないのか。政治的に対立していたり、単に気にくわなから陥れてやろうと、児童ポルノを送りつけたり、そのことを送り主が密告して打撃を与えるということも起きてしまうかもしれません。単純所持規制がえん罪の温床になりかねないのではないでしょうか。

 規制そのものにも疑問があります。戦前のエロ・グロ・ナンセンスに対する規制は、治安維持法などの言論規制法にたどり着きました。児童ポルノ禁止法の改正案は、一見治安立法とはかかわりのないもののように見えますが、いったん成立してしまえば、治安立法として使われることはないとは言い切れません。さらに、児童ポルノ禁止法の改正を推進する団体の間では、児童ポルノの摘発には共謀罪が有効だという議論が成されています。表現の自由はもとより、内心の自由まで侵害されようとしているのではないでしょうか。

 心のなかではどんな妄想をしてもかまわない、というのが憲法をはじめとした近代の考え方でした。ところが、与党議員が「ペドファイルとの戦い」と宣言したように、法とは相容れられない「道徳」や「倫理」を強調し、子ども、若者の心を統制するような動きが強まっています。その結果、世の中や政治がおかしくなってきました。公共の安全・秩序を基準にして、ワガママを言わず多数に従いなさいという戦前の隣組的な考えが蔓延しつつあるように感じます。

 一方で、社民党は2006年2月の党大会で「社会民主党宣言」を採択しました。宣言ではこう記しています。

(12)あらゆる価値観を保障した創造的文化
 生活を豊かにおくるために不可欠な文化や芸術の分野では、表現の自由やあらゆる価値観が保障されるべきです。また階層、性差、障害の有無などによって、文化や芸術を体験し、創出する権利が損なわれてはなりません。メディアの発展は民主主義の根本にかかわる問題であり、権力や支配層の意思、考え方が一方的に押しつけられることがないように、表現および言論の自由を徹底的に擁護します。

 自民党を中心に、連綿と続いている若者文化に対する干渉や規制をはねのけるためにも、引き続き議員として表現の自由や内心の自由を守るための活動を続けていきたい。秋葉原にやってくる皆さんにも、社民党への支持を訴えます。

[文責・保坂展人事務所「表現規制問題」専門デスク]

ジャーナリスト出身でこの問題に精通している秘書が専門デスク員である。街頭演説にしては硬い内容なので、部分的につまみながら演説をした。今日はこのふたつを提示することにする。

今日はカルショック「超人大陸」に政策の訴えがupされた。


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