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【社説】

調査捕鯨中止 暴力に屈しない外交を

2011年2月24日

 反捕鯨団体の悪質な妨害で今年の南極海での調査捕鯨が打ち切られた。政府は関係国に厳重な取り締まりと処分を要求するとともに、暴力に屈しない外交姿勢を国際社会にはっきりと示すべきだ。

 発光弾を投げ込んだりロープを流して調査船のスクリューに絡ませる。今年も繰り返された反捕鯨団体「シー・シェパード」の妨害行為は、調査活動だけでなく日本人船員の生命を危うくする恐れがあった。

 昨年は調査船団の監視船に活動家が侵入した。不法行為はここ数年エスカレートしており、今回は一九八七年から始まった調査捕鯨で初めて期間中での打ち切りとなった。政府は極めて深刻な事態と受け止めなければならない。

 これまで何度も指摘してきたように、調査捕鯨は国際捕鯨委員会(IWC)が認める加盟国の基本的権利だ。そもそもIWC自体が鯨類資源の保存と捕鯨産業の秩序ある発展を目的としている。

 調査はミンククジラなど限定されたクジラを捕獲して繁殖力や餌の種類などを調べる。それが将来の食糧資源へのデータとなる。

 一部に出ている調査捕鯨見直し論は間違いだ。今回の事件でやめれば日本は暴力に弱い国との誤ったメッセージを送ることになり、世界の信頼を失うだろう。

 枝野幸男官房長官が「来年以降のことをやめたのではなく、どうやったら安全にできるのかを省庁横断的に検討したい」と語り、調査捕鯨を継続する方針を表明したのは当然のことである。

 捕鯨のあり方を議論する場は、引き続きIWCが中心だ。

 IWC加盟八十八カ国の内訳は反捕鯨四十九、捕鯨支持三十九とほぼ拮抗(きっこう)している。

 昨年の総会ではIWC議長が今後十年間、商業や調査、先住民生存など捕鯨のカテゴリーを取り払うとともに現状より削減した捕獲枠を設定。日本の南極海での調査捕鯨について前半五年間は年四百頭、後半五年間は年二百頭とするなどの提案を行った。

 これはオーストラリアや英国などが強硬に反対して実現しなかった。今年七月に開かれるIWC総会ではあらためて正常化に向けた協議を再開すべきだ。

 捕鯨を小さな外交問題と取り扱ってはならない。日本は戦後、平和国家として再出発し経済力を高めて国際社会に貢献してきた。これからも武力を背景とせず議論を尽くし、横暴な力をはね返す凜(りん)とした外交が大切である。

 

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