阪神大震災時に病院で奮闘、海外移住が夢、国際ボランティア活動がライフワーク--。ニュージーランド地震で、クライストチャーチ市の建物が倒壊した語学学校「キングス・エデュケーション」で学ぶ13人の看護師が安否不明となっている。意欲的な活動が評価されている人ばかりだ。背景にはニュージーランドが外国人看護師の受け入れに積極的で、学費が安く資格も取りやすいことがある。海外で働く希望を持つ看護師に人気があったという。【服部陽、近藤諭、安藤いく子、五十嵐和大】
玉野裕子さん(43)は大阪市出身で、神戸市内の病院に15年間勤務していた。最近約3年間ニュージーランドに住んでいる。現地で看護師試験に挑戦中とみられる。玉野さんは95年の阪神大震災で被災した。神戸市内の自宅マンションが被害に遭い、住めなくなったため、大阪市北区の実家に身を寄せた。家族によると、大阪府内の港からフェリーに乗るなど苦労して病院に通い、被災者の看護に奮闘したという。父繁一さん(79)は「責任感の強い子だから、クライストチャーチでも救助を手伝っていて連絡が取れないと信じたい」と話す。
神戸市垂水区の看護師、大坪紀子さん(41)は青年海外協力隊員としてアフリカで3年間活動。貧しくて十分な医療を受けられず死んでいく子供たちを見て、看護師を志した。病院で働きながら、カンボジアやバングラデシュで医療ボランティアに従事する。先月からの留学は医療英語を学ぶためだ。
盛岡市の看護師、早坂美紀さん(37)は国際看護師になる目標に向けて、語学を学んでいる。09年に次いで2度目のニュージーランドへの留学だ。
大坪さんと早坂さんの留学をコーディネートした京都市右京区の「M・I・海外留学」は、オーストラリアやニュージーランドの学校と結び看護専門留学のプログラムを提供してきた。
「海外留学」社によるとニュージーランドは週3日の休日など労働条件がいいため、現地で働き、永住権の取得を目指す外国人看護師も少なくない。特に現地での看護師資格取得に必要な医療専門英語試験は豪州では1度で合格しなければならないが、ニュージーランドは複数回受験できる。「キングス」は医療系の語学留学に力を入れ、看護師資格取得のための専門スタッフがいる。関連の人材派遣会社が就職のあっせんをするなど支援態勢が充実しているという。
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◆連絡が取れない28人
■富山外国語専門学校--12人
中学では双子の姉と一緒にソフトテニス部に所属し、部長を務めた。富山一高でも硬式テニス部。近所の女性は「姉妹はとても仲がいい。2人でおしゃべりしながら自宅周辺で犬を散歩させる姿をよく見かける」。
県立八尾高校のブラスバンド部で3年間、フルートを担当した。同校教頭は「休みがほとんどない部で、暑い日も寒い日も外で一生懸命練習していた」。富山外国語専門学校の入学式では、新入生代表で宣誓した。
富山西高1年生の時、米ポートランド市での海外研修で姉妹校との交流イベントに参加した。バレーボール部に所属し、引退後も、体育大会の応援リーダーを務めるなど積極的にクラスを盛り上げていた。
県立富山いずみ高校時代には卓球部で活躍していた。高校関係者は、「高校時代は目立たないが、おとなしくていい子だった」という。
富山西高でフェンシング部に属し県総体(個人)で準優勝。今もフェンシングの指導助手を務める。近所の女性は「明るくて本当に優しい子。娘が小学生の時に足を悪くした際、車椅子を押すなど世話をしてくれた」。
「明るく社交的で、友だちがとても多い。道で会っても元気にあいさつしてくれる」(友人ら)。高校の文化祭で友人とダンスを披露、現在も、バスケットボールbjリーグ「富山グラウジーズ」のダンスチームに所属。
富山国際大付高の2年生時に英検2級。同校で生徒会役員も務めた。友人と一緒にバンドも組み、ギターを担当。同校教頭は「礼儀正しく面倒見もいいので、剣道部で先輩からも後輩からも慕われていた」。
友人は「正直な性格で、誰とでも友だちになれる。富山外国語専門学校から大学に編入、英語を使う職業に就きたいと夢見ている」と話す。県立氷見高では書道部。親戚は「年に数回、家族旅行をする仲のよい家族」。
料理が好きで、ケーキ店やピザ店でアルバイトをした。県立雄山高を卒業後、調理師免許取得を目指し雄峰高校専攻科調理師養成課程に入学。西洋料理を学ぶために英語力を磨こうと富山外国語専門学校へ。
県立南砺井波高では放送部の副部長で、生徒会役員も務めた。高校時代、福祉施設でボランティアにも参加。同校教頭は「将来は英語を生かした職業に就きたがっている。卒業後、英語の勉強が楽しいと話していた」。
県立高校校長も務めた元生物教諭。約20年前にダニの研究を始め、英語の研究論文も発表する熱心な研究者。教員を退職後の昨年春、「もう一度学生に戻って英語を勉強したい」と富山外国語専門学校に入学した。
石川県立金沢伏見高校国際文化コースを昨春卒業し、語学研修で現地へ。接客業に就き、好きな英語を生かすのが夢。バイト仲間の森下朝子さん(22)は「恋の話もいっぱいしたけど、もっとしゃべりたい。会いたい」。
■M・I・海外留学--2人
国際看護師免許取得のため、横浜市の病院勤務をはさみ、2度目の留学中。父七郎さん(70)は「元気で明るい娘。どんな形でもいいから生きて帰ってきて。お互いに肩をたたき合いたい」。
看護師として働きながら人道医療支援NGOに所属し、活動する。「医療英語を学びたい」と勤務先の病院を退職し、5月末までの予定で留学中。現地に向かった父修さん(72)は「あきらめてはいません」。
■ワールドアベニュー--10人
地元の高校を卒業し、専門学校を経て、千葉県内で看護師として働いていた。09年9月、「国際的な医療に携わりたい」と、海外での看護師としての勤務を目標に仕事を辞めて語学留学した。
看護師と助産師、保健師の資格を持ち、神戸市内の病院で勤務した後、英語を学ぶため渡航。姉御肌で、高校時代は剣道部主将を務めた。祖父は「私たち夫婦を温泉に連れて行ってくれた優しい子。無事を願っている」。
京都市内の病院で看護師として働き、海外での看護師免許取得のため留学資金を蓄えた。約2年間の留学予定で、19日に国内を出発し21日に学校が始まったばかり。
福岡市内の高校を卒業後、京都府城陽市の病院で、看護師の資格を取るために働きながら勉強していた。出身高校の教頭は「明るく、まじめ。笑顔の印象が強く残っている」と話している。
看護師をしながら、語学を勉強していた。近所の人の話では、看護学校卒業後、複数の病院で勤務。病院関係者によると、熱心な仕事ぶりが評価され、若くして部下約20人をまとめる消化器系担当の看護課長を務めた。
看護学校に通いながら臨床でも経験を積みたいと、病院でリハビリ助手を経験。更に仕事の幅を広げるため、「英語力をつけたい」と現地へ。病院事務長は「明るくて患者の評判もよく、未来ある青年。助かって」。
看護師として大学病院に数年前まで勤務した。近所の人によると、両親と妹の4人家族。近くの男性(67)は「先月も愛犬と散歩する姿を見た。笑顔の明るいお嬢さん」と話す。
救急ヘリコプターに乗り込む「フライトナース」として活躍していたが、昨年11月からニュージーランドで看護師の仕事をしようと留学中。家族らはニュージーランド行きに反対だったという。
市内の小学校から名古屋大付属中・高校に進学。看護師になった。幼い頃を知る住民らは「活発な子で、医師の母親の影響で医療関係を目指したのだろう。無事でいてほしい」と帰りを待つ。
昨年7月まで東京慈恵会医科大付属第三病院(東京都狛江市)の小児科に看護師として勤務していた。実家(大田区)の近所の主婦は「まじめで頑張り屋さんという評判です」。
■その他--4人
大谷大文学部国際文化学科で英米ゼミに所属。卒業後、更に英語を学ぶため京都外国語専門学校に進んだ。「観光や旅行関係の仕事に就きたい」と希望する。同校関係者は「落ち着いた雰囲気でお姉さん的存在」と語る。
北國新聞社を退社し昨年10月に現地へ。記者時代に親交があった金沢市の寺越友枝さん(79)は「気遣いがあり、孫みたい。何とか生きて見つかって」。父彬人さん(65)は「とにかく祈るしかない」。
奈良女子大2年で富山県出身。富山市立富山外国語専門学校教授で現地入りした国昭さんの娘で、同校の学生と行動を共にしていたとみられる。地震の朝に富山の姉に連絡。大学の同級生は「無事でいて」と祈っている。
2人の兄と育ち「男っぽいさばさばした性格で、しっかり者」(父繁一さん)という。よく友人と旅行などに出掛ける行動派。多くの看護師仲間に慕われており、実家には安否を気遣う電話が相次いでいるという。
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毎日新聞 2011年2月28日 東京朝刊