5日午後0時20分ごろ、福岡市中央区薬院4、西部ガス社長、田中優次さん(63)方玄関前に、手投げ弾のような不審物があるのを家族が見つけて近くの交番に届け出た。福岡県警の爆発物処理班が回収した。更に同2時ごろ、同市東区香椎照葉2、九州電力会長で九州経済連合会長、松尾新吾さん(72)方車庫の支柱やシャッターが壊れ、一部焦げているのを家族が見つけた。住民の証言などから発生時間はいずれも午前4時ごろとみられる。福岡県警は過去の経緯や手口などから、いずれも指定暴力団工藤会(本部・北九州市)の犯行とみて器物損壊などの容疑で捜査している。
県警などによると、西部ガス社長宅に置かれた不審物は鉄製で直径約10センチ、長さ約15センチの円柱形。玄関と門扉の間の通路に置かれているのを家族が気付いた。門の外には手投げ弾のピンのようなものも落ちていたという。
田中社長によると、5日午前4時ごろ、就寝していた田中社長の家族が金属が転がるような音を聞いたという。県警が不審物を回収して爆発物かどうかを鑑定している。
九州電力会長宅では、玄関横の車庫のシャッター(高さ約2・5メートル、幅約3メートル)の一部が幅約70センチ、高さ約25センチにわたって内側に曲がり、コンクリート製支柱の一部が割れて周囲に散乱していた。シャッターは焦げた跡もあった。近所の複数の住民が「午前4時ごろに『ドーン』という爆発音を聞いた」と話しており、県警は爆発物が使われたとみている。
西部ガスを巡っては、昨年4月6日に福岡市東区の西部ガス関連ビルが銃撃され、翌7日には同市南区の同社役員親族宅への銃撃が確認された。県警は、同社が北九州市若松区で同年6月に着工予定だったLNG(液化天然ガス)基地建設工事に絡み、北九州を拠点に置く工藤会が特定の大手ゼネコンを参入させないことを狙って脅したとみて捜査していた。
LNG基地を巡っては、10年4月に西部ガスと九州電力が共同出資し、運営会社を設立。県警はこうした経緯から工藤会が両社を標的にしたとみている。
西部ガス社長宅は福岡市地下鉄七隈線薬院大通駅南約100メートルの高級マンションや戸建てが建ち並ぶ閑静な住宅街で、近くには交番や警察官舎、小学校や高校もある。九州電力会長宅は北に約13キロ離れた人工島の住宅街の一角。
毎日新聞 2011年3月5日 21時10分(最終更新 3月6日 3時02分)