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eugene_naの日記

2010-05-09

でかしたぞ、東京ディスニーランド!

18:49

ぼくは放送作家という肩書きを持って何年も経っている。その間は放送禁止用語との戦いだったといっても過言ではない。放送業界だけでなく、出版業界でも「使ってはならない言葉」が氾濫している。筒井康隆氏が断筆宣言を行ったとき、「このまま、使ってはならない単語が増えれば、いつの日かそのような用語を集めた指南書が広辞苑より分厚くなる」とコメントしていたが、ぼくもそれと同意見である。

ぼくが一番戸惑ったのは「狂う」という言葉を台本に書いてはならないと某ディレクターに言われたことである。理由は短絡的。「気が狂う」を彷彿させるからである。

しかし、「狂う」という言葉を使うとき、われわれは「調子が狂う」や「テンポが狂った」とごく当たり前に使用しているのわけである。なのに、いきなり「狂う」を使うなと言われても、書き手としてのぼくにとっては、はなはだ迷惑な話であった。

今でもよく覚えていることだが、ぼくが散々「狂う」という言葉を別な表現にしようと苦労して書き直した末にコントをやっとの思いで収録した後、パーソナリティの女の子が「では、ここで一曲聴いてください。○○の『△△が狂う』です」と曲紹介した後に、J-POPSのバンドが「△△が狂う〜♪!△△が狂う〜♪!」とスタジオに大音量で流れたことがある。ぼくはこのとき、やりきれない気持ちでいっぱいだった。

その後、ある放送局のラジオ番組を手伝った。その番組は当時絶頂期にあった人気アイドルグループと有名お笑いタレントがパーソナリティを務めるものだった。スタッフとパーソナリティがなぁなぁの関係にあり、スタッフがいい番組を作ろうとするよりタレントとその事務所との関係を良好なものにしようとする放送業界のいわゆる「方程式」の中に組み込まれたため、それはそれで嫌な思いをしたが、もっとひどいことがあった。

その放送局の社長が民放連の会長だったのである。そのため、その放送局は日本で一番放送禁止用語に厳しいところだったのだ。

その結果、ぼくはアシスタントディレクターから何度も書き直しを要求されて、最後はぼくがキレてしまい、「この番組を降りる!」と電話を通して高らかに三行半を突きつけ、その番組を降板した。

そういう経緯があるから、ぼくは放送禁止用語を流してしまった故の放送事故や「ちびくろサンボ」といった”禁書”の再出版に対して拍手喝さいを送っている。

理由は簡単である。放送禁止用語偽善が世間に晒され、児童書の中でも良書と客観的に思われるものが再び陽の目を見ることに対して一人でも多くの人が目を見開いて欲しいと思うからである。

と、ここまで書いて本題に移る。

首都圏限定だが、現在東京ディズニーランド東京ディズニーシーの割引パスポートが期間限定で販売されている。十八歳以上の人は五八〇〇円から千円引きの四八〇〇円、中学生や高校生は五〇〇〇円から七〇〇円引きの四三〇〇円、小学生は三九〇〇円から五〇〇円引きの三四〇〇円で売られているのだ。主にコンビニで取り扱われているが、どのコンビニのポスターにもこう書かれている。

大人 五八〇〇円→四八〇〇円

中人 五〇〇〇円→四三〇〇円

小人 三九〇〇円→三四〇〇円

一番上の「大人」はどう読んでも「おとな」としか読めない。難しいのは「中人」であって、これは「ちゅうにん」と読むべきであろうか。そして、最後の「小人」は普通に読めば「こびと」と読んでしまう。

放送業界に少しでも携わったことのある人は知っていると思うが、今では「こびと」は放送禁止用語であり、出版業界でもこの表現を使わないようにしている。

しかし、ディズニーには名作「白雪姫と七人の小人」というものがある。ぼくの勉強不足でこれが今ではどんなタイトルがついているか分からないが、おそらく「小人」という言葉は使っていないと思う。

ということは、ディズニーがこうした表現の自由を束縛する動きに対して密かに抵抗しているのではないかとぼくはついつい邪推してしまうのだ。本当は、東京ディズニーランド東京ディズニーシーの親会社であるオリエンタルランドはそこまで考えていないだろうが・・・。

う〜む。どうも、最近は年をとってきたことを実感する。ひがみっぽくなったし、いろいろと勘ぐり深くなってきた。

そういえば、老眼が進んで近くのものを見るときはすっかり「目くら」になってしまっている上、音楽を聴くときはヘッドホンで大音量で流すためにぼくは「つんぼ」になってきた傾向があり、そもそも今は安穏とした暮らしをしているものの、不安定な職業を選んでしまったため、いつ「乞食」になるやも知れず、だいたいこのような文章を書いているぼくは「気違い」なのだろう。

どうだ、放送倫理委員会。文句あるか。

けんかを売るのなら、いつでも買うぞ。

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