コンゴとアフリカの過去を振りかえ、それらの現状と今後を考えた上で、次の行動へのきっかけになることを願っています。
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昨日[34]は嬉しい日でした。JICAのアフリカ仏語圏平和構築の研修の一環として、研修生(ブルンジ、コンゴ民主共和国、コートジボワール、ジブチ出身)と女たちの戦争と平和の資料館に行き、実のある議論ができたからです。この資料館は唯一慰安婦問題に特化し、その問題の記憶の拠点です。また世界で起きている性的暴力の不処罰の連鎖を断ち切る活動に関する情報もあります。
 
http://www.wam-peace.org/jp/index.php
 
日本政府が認識していない慰安婦問題を、同じ政府の役人である研修生と共有したことは、ある意味で「タブー」を破ったかもしれません。しかし、平和構築とは単にインフラの建築・整備や工業化することだけでなく、戦争加害者の処罰など司法的な問題を真剣に取り組むことによって初めて実現できることを研修生に理解してもらいたかったのです。人々の葛藤と直面しなければならないため、後者の方が前者よりかなり難解で複雑です。これは私が世界最悪の紛争地であるコンゴ東部に勤務した時に学んだ教訓であり、啓蒙の際に特に強調している点です。
 
研修生の反応は以下のとおり。
「慰安婦("comfort women")という言葉を聞いたのは初めてで、ショックを受けた」(女性の研修生)(注:英訳のcomfort womenは誤解を与えてしまうために、『性的奴隷(sexual slave)』と英訳されている)
「アフリカだけでなく、日本にも不処罰の問題があることが分かり、グローバルな問題として取り組まないといけない」
「真実を伝える被害者の勇気と強い意志を尊敬する」
(負の遺産も含む)真実を知る必要がある。それを次世代に伝えないと」
「日本政府の協力なしに、市民団体がこのような資料館を建てたことは立派」(現在のリビアのように、アフリカの多くの国々では、政府批判、あるいは政府の方針と異なった活動をすると抑制されるので、それが自由にできる日本はまだ人権が保障されていることを意味する)
 
また日本における女性観についても、話が盛り上がりました。女性の地位が一般的に低いのは日本もアフリカ諸国も同様ですが、日本において女性の国家議員や経営者の比率はアフリカの特定の国々より低い場合もあります。「アフリカは遅れている。我々が知識を教え、支援しないと」と偉そうに言う前に、我々も多くのことをアフリカ諸国から学ばなくてはね!
 
JICA研修生の見学は今回が初めてだったのですが、この資料館行きはそもそも私が提言して実現できました。資料館の訪問の効果について、あるアフリカ諸国の人に事前に相談すると「アフリカ諸国にとって、日本はあこがれの国、モデル国である。そんな資料館に行ったら、『日本でさえ不処罰に取り組まず、ここまで経済発展ができた。だから我々も放棄していいや』とますます不処罰問題に消極的になるだろう」と資料館行きについて強く勧めませんでした。その意見も理解できたのですが、議論の進め方によっては処罰の重要性を再確認できるという自信はありました。
 
実際に、ある研修生は以下のようなことを言ってくれました。
 
「経済発展など日本のいいところばかり見せられると、日本は何か隠しているのではないかと逆に疑ってしまう。今回日本の問題をオープンに見せてくれたおかげで、自国が抱えている問題を振り返るきっかけとなり、一緒に協力しながら取り組まないといけないことがわかった」
 
自分の短所や負の遺産を直接批判されると、改革派でない限り、傷ついて受けいれたがらないのですが、他人や他国の不正行為を見ることによって自分を正すと自分のプライドを傷つけられることはありません。ただコンゴのように汚職が日常化している国では、「ヨーロッパもやっているのだから、自分たちがやって何が悪い」と汚職を正当化してしまうところもあるのですが。。。
 
それはともかく、資料館で学んだことをどう母国で生かせるかが次の課題となります。そのために研修生だけでなく、私もフォローアップに力を入れなければ!
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プロフィール
HN:
米川正子
性別:
女性
職業:
大学教員
趣味:
旅行、ジョギング、テコンドー、映画鑑賞、読書
自己紹介:
コンゴ民主共和国(コンゴ)やルワンダといったアフリカ大湖地域を中心に、アフリカでの人道支援や紛争・平和構築を専門としています。
過去にリベリア、南ア、ソマリア、タンザニア、ルワンダ、コンゴなどで国連ボランテイアや国連難民高等弁務官事務所職員(UNHCR)として活動。南アの大学院でコンゴ紛争について研究し、2007年―2008年には、コンゴ東部でUNHCRの所長として勤務したこともあり、その経験を活かして現在アドバカシ―に力を入れています。
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