第0話『未だ見ぬ世界へ少女は旅立っていく』
惑星Zi、エレミア砂漠。
見渡す限り何処までも広がる砂の大地がある、そこに黒髪を後ろに一つに縛り額には紋様のような印が施されている少女が立っていた。
身につけている服、いや服というより黒を基調とした装甲服のようなものに見えた。彼女は“目覚めたばかり”故に此処が何処だか解らない、首を傾げるしかなかった。
後ろには遺跡が聳え立つ、取り敢えず其処から出てきたものの又戻る。
途中、少女が目覚めた部屋より前にあった部屋の中。壁に描かれた矢の様なレリーフ、割れたカプセルの残骸、カプセルから繋がれたコード。
その室内に足を踏み出し少女は何となく、矢のレリーフに右手で触れてみる。そうしなければいけない気がした、その予感は当たり。
触れた瞬間、少女の額にある紋様が光る。
記憶が流れ込んでいく。
古代ゾイド人、オーガノイド、〈D〉、シャドー。
「……そうか。
私は……シャドーと対なす者、でも」
目を閉じて感じてみたシャドーの思念、どうやら尽くすべき相棒となる人を見つけたようだ。
それなら自分はどうするべきだろうか、シャドーの事は気になるがこの世界の事も知ってみたい。
人とゾイドが織り成す未来、その答えを見つけるために。
……ゾイドイヴに会いに行くのは後回し、行動の指針は決まった。
歩きだそうとして足を止める。
「……お腹、空いた」
何とも締まらない旅立ちの始まりだった。
この遺跡にバンとフィーネ達が訪れる数時間前の出来事である。