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[16066] 【習作】名無しの忍者(NARUTO オリ主憑依 一部TS有り)
Name: copu◆b7c18566 ID:31db10ca
Date: 2011/01/05 19:55
 どうもお久しぶりです。あちらは放置していてすみません。

 5ヶ月ぶりに何故かまた2次創作を書きたいと思い、投稿することに。
 
 そして、何故かナルト2次に。


 注意点

 ・オリ主が強い、最強? 系です。

 ・その他にも憑依者がいます。憑依先はオリキャラ、既存問わず。

 ・オリキャラ多数。オリ里出現。

 ・一部キャラがTSします。

 ・時間軸が少しおかしいかも知れません。年齢も少し誤差が生じる場合も。

 ・本家の設定と異なることも。

 その他色々ご都合主義っぽいかもしれません。それらが苦手な方はお戻りください。

 こんな小説ですが、一人でも多く楽しめたらうれしいです。


第一話~第四話 プロローグ・序章編
第五話~第七話 暁出会い編
第八話~第二十一話 ナイ修行編
第二十二話~第二十四話 本当に昔話編
第二十五話 暁別れ編
第二十六話 音隠れ編
第二十七話~第三十三話 波の里編
第三十四話~第四十話 再会編
第四十一話~ ???



[16066] 第一話 夢の始まり
Name: copu◆b7c18566 ID:31db10ca
Date: 2010/01/31 21:01
 真っ白な部屋。一年のほぼ半分を過ごすこの部屋。
 学校には行けず、一日の大半を本や漫画を読むことで過ごす。
 明日もそんな日々が続くと思う。何も変わらない。何も始まらない。そんな日々。

 そして、目を閉じ、眠り始める。


『何も変わらないと思うか?』


 ――声がした。知らない男の声が。

 目が覚めると見知らぬ天井が見える。
 体を起こすと、ゴツンッと隣から小さな子供が転がってきた。そして、違和感を感じる。

「……小さくなってる」

 自分の手を見る。手が小さくなっているのだ。否手だけではなく体ごと小さくなっている。

「ここはどこ?」

 立ち上がり、外に出ようとする。ドアの前に着き、ふと自分がいた部屋を見るとそこには十人足らずの子供達が寝ている。見覚えのない子供たち。
 廊下に出て、玄関を探す。学校のような雰囲気があるこの建物。走りながら適当に向かうと、運良く玄関が見つかる。そこで、履けそうなサンダルを見つけ、外に出る。クツの大きさを見て、やはり体は小さくなっていると実感する。

 そこで、見てしまった。そして、気づく。ここがどこなのか。

 顔を上げ目線を上げると、見える 聳え立つ崖。そこには、凛々しき顔が切り込まれている顔岩。その数四つ。

「……木の葉隠れの里」

 ここはNARUTOの世界で、木の葉隠れの里である。
 ジャンプは毎週チェックしているので、勿論知っているこの漫画。
 原作に、アニメ。NARUTOは好きな漫画の一つである。

「これは夢?」

 首を傾げるが、誰も答える人はいない。


 建物に戻るとする。そこには、木の葉孤児院と書かれた板が立てられている。
 この子には両親がいないんだ。

「おや、もう起きたんですか? 顔は洗ってないみたいですね。顔を洗ってきなさい」

 もう一度布団に戻ろうと部屋に行こうとすると、一人の青年に出会う。この施設の人なのだろう。
 小さく頷き、洗面所へ向かおうとするが、どこか分からない。

「洗面所は反対ですよ。寝ぼけてますね」

 見かねて教えてくれた。運が良い。
 NARUTOの世界はかなり奇妙。銀魂並に色々とゴチャゴチャしている。しかし便利だから、嫌とは思わない。

「……似てる」

 鏡を見てそう思う。黒髪に黒目、幼少の自分とそっくり。違うとしたらこっちのほうが顔色がいい。年齢は5歳前後。不思議に思い小さく顔を傾げる。

 顔を洗うとさっきの青年にまた会い、もうご飯ができたからみんなを起こせと言われた。
 部屋にたどり着き、ゴロゴロと寝ている子供たちを見る。下は今の自分よりも少し年下からで上は十歳を越えるぐらいだろうか。
 どうやって起こせばいいのだろうかっと真剣に考える。

「起きなさいよっ!」

 唐突に少女の声が響く。ビクッとしながら、後ろを見ると一人の少女がいた。

「男子が遅いから私たちも待ってるのっ!」

 孤児院ということだから、男子だけではなく女子もいるのだ。

「ほら、ほら、さっさと起こすの手伝う」

 少女に言われて、いそいそと寝ている子達を起こそうとする。

「リアルな夢だなー。ファンタジー? ってほどじゃないけど」

 ついそう思ってしまう。



[16066] 第二話 出会いは運命
Name: copu◆b7c18566 ID:31db10ca
Date: 2010/01/31 21:03
 ぼくはファンタジーが好きである。冒険物の小説も好きだけど。ここではない異世界が一番好きである。
 
 今日でこの世界に来て三ヶ月目になる。夢にしては長いし、痛みも感じる。どこかおかしい。頭の隅っこではそう分かっているが、考えないことにしている。

 文字が同じということはとても有難かたい。ここに来ても本が読める前までは読まなかった歴史物にも手を出している。五歳児が歴史書を読むのはかなりおかしな光景かもしれない。
 そして、少し残念なことがあった。どうやら、孤児院の子たちはアカデミーには通えないらしい。とは言っても、アカデミー以外の学校にはいけるようである。文字や計算を習う学校に。ここの孤児院は両親が忍者ではない子供たちの孤児院である。難民なども含むらしいが。任務などで両親がなくなった忍者の子供たちには別の孤児院があるらしい。
 そこが残念である。せっかくNARUTOの世界に来たのに忍者になれないなんて。独学でチャクラを扱えるほど、世の中甘くない。アカデミーの教科書でさえ、一般の人たちは手に入れることができないのだ。原作知識があるけど、それだけ使ってやれというのは、厳しい。

「意味あるのかな?」

 そう思ってしまう。何故こんな夢を見ているのか。
 本を借りた図書館の帰り、暇つぶしで公園にきた。
 孤児院の中だと、なかなか一人にはなれず、静かに本を読むことはできない。

 誰もいなかったので、ブランコに座って本を読む。
 暫く経ったからだろうか。

「なー、本読むんだったら、ブランコ交換しろってばよ」

 顔を上げると金髪に碧眼の少年がそこにいた。年頃は今の自分よりもちょっと上ぐらい。
 見覚えがある。とても見覚えがある。それはこの世界にとても重要というか切り離せないというか。

「……」

 立ち上がり、ブランコを交換する。

「な、なんか言えってばよ」

 目をパチリ、パチリとして、少年を見る。

「お、オレの名前はうずまきナルトっ!」

「……」

「な、名前っ!」

 自分の名前はなんだろうか。何故か、孤児院にいたときから名前で呼ばれることはない。いや、呼ばれたけど記憶に残らないのか。どっちいにしろ、自分の名前が分からない。向こうの名前を名乗ってもいいのだが、それはだめなような気がする。

「……名前は無いです」

「ナイか? よろしくなっ!」

 なんか、勘違いをしてくれた。名無しのナイか。カッコいいかも。

 これが、うずまきナルトと初めて出会った時の話である。


「何読んでるってばよ?」

 本に影ができ、顔を上げる。そこには、金髪の少年、うずまきナルトの姿があった。

「……木の葉の歴史書」

「なあ、なあ、ナイってば、オレより一つ年下だよな。そんな本読まないで、遊ぼうぜ」

 腕を引っ張ってくるので、仕方なくナルトと遊ぶことに。
 ナルトは小さい時から他の人と遊ぶという経験がなかったみたいなので、とても楽しそうにしている。

「よしっ! 鬼ごっこだ。オレが鬼するっから、ナイは逃げろてっばよ?」

 二人で鬼ごっこも悲しいような気がするが、小さく頷き逃げる。
 ちなみにナルトと会うのは、これで三回目。
 二回目は単に道ですれ違った時にアカデミーに入るんだぜ、オレっと言ってたぐらい。


 日が暮れてたきた。さすがに帰る時間である。

「いたいた。駄目じゃないか。まっすぐ帰らなきゃ」

 施設の青年が探しにやってきたらしい。
 たしかに、お昼ごろ出てきて今は五時頃。図書館に行って帰るにしては遅い。
 
「さあ、帰るぞ」

「ナイ帰るのか?」

 青年に連れて行かれる姿を見て、ナルトが近寄る。
 すると、ナルトを見た青年は驚いた。
 僕は小さく頷き、ナルトに向かって手を振る。

「また今度ってばよ」

 ナルトも手を振り返してくる。


 道中。

「いいかい、もう二度とあの子と遊んじゃ駄目だからね。分かったかい」

 原作を知っていた。ナルトは幼少時から里のみんなに疎まれていることを。
 優しい親切な青年だと思っていた。だから、そんなことを言われぼくは驚く。
 ナルトは何も悪くない。口には出さず心の中で呟く。




あとがき
短くてすみません。こんな感じで進んでいきます。



[16066] 第三話 時間はゆっくり進んでいく
Name: copu◆b7c18566 ID:31db10ca
Date: 2010/02/04 15:50
 一年後。ナイ六歳。

「ナイはアカデミーに入学しないのか?」

 ベンチに座り本を読んでいたら、本に影ができる。本閉じ、上を見るとナルトが木にぶら下がっていた。
 結局その後もナルトと会って遊ぶ仲に。

「……アカデミーってお金がかかるから」

「へー、知らなかったってばよ」

 ナルトは地面に着地し、隣に座る。
 ナルトは四代目火影の息子である。原作からして三代目が面倒を見ている感じがしているので、学費はそこから出ているのだろう。

「ナイ、ナイ、これいるか?」

 ナルトは数冊の本を取り出す。
 あちらこちらに落書きが多く、本の状態も良いとはいえない。しかし、それは……

「忍術入門-忍者の心得-」

 アカデミーの教科書であった。目を輝かせて、ナルトを見る。

「オレってば、もうその教科書使わないから、ナイにやるってばよ」

「ほ、本当?」

「おうっ! 男に二言はねえ」

 今現在七歳のナルトは胸を張ってそう言い切った。
 
「ナルト兄ちゃんありがとう」

「えへへ、照れるってばよ」

 初めてナルトと友達になってよかったと思う。(何気にひどい)

 ちなみに何故ナルト兄ちゃんと呼んでいるかというと、君は同級生じゃないのでおかしい、呼び捨ては慣れてないからパス。さん呼ばわりも違和感を感じるので、兄ちゃんと呼ぶことにした。なんか、しっくりくる。精神年齢はこっちのほうがずっと上なのだが。ナルトもそうよばれて結構喜んでいるので問題なし。



 夢かどうか怪しくなっていた今日この頃。
 アカデミーの教科書を手にいれ、早速開いてみることに。

 前半忍の心得が書いてあるが、六歳に理解できるがどうかあやしい内容だった。
 そして、チャクラのアバウトな説明に隠れ蓑の術が載ってある。それ以外は足音が経たない歩行法など。
 忍術らしい、忍術は載っていない。

「六歳だから当たり前なのかな……変化や分身ぐらいは載ってて欲しかったけど」

 読みながらため息が出てしまう。
 もらった本は、忍術関係、体術関係、忍びの歴史書関係の三冊。

「……チャクラコントロールだけは練習しようかな」

 去年のうちに、NARUTOの出来事は覚えている限り紙にメモをしていた。読めないように、ローマ字で偽装を。

 チャクラコントロールの練習方法。額に木の葉を乗せて、チャクラを練り、木の葉を立たせる。イルカ先生談。
 木登りもチャクラコントロールの練習になる。そこから発展して水の上を歩いたり。

 初歩的なのは木の葉を立たせることから。
 そんな簡単にうまくいかないが、がんばってやってみる以外に選択肢はない。
 ゆくゆくは螺旋丸を……とか考えてたりもしている。




あとがき
書いて疑問に思ったこと。ナルトはたしか、アカデミー卒業試験を何度も受けていたと書いてありました。普通に考えるとサスケたちよりもアカデミーには先に入った。しかし、シカマルとはアカデミーの頃からの腐れ縁。その前に、リーやネジとも会ったことがない。不思議です。突っ込んではいけないところなのでしょうか?
なので、このSSでは普通にナルトはサスケと同級生になってます。多分あんまり本編には関係ないけど。



[16066] 第四話 それは偶然、必然、転機点
Name: copu◆b7c18566 ID:31db10ca
Date: 2010/02/04 16:03

 その又一年後。ナイ七歳。

 変わらない平和な日々を過ごしている。
 一つだけ変わった点。成長したともいえる。

 それは、チャクラコントロールがうまくなったということ。額に木の葉を乗せてチャクラを練ると綺麗に立ち上がる。実は一枚立ち上がったら、もう一枚その上に置くと連結して木の葉を立たせる事ができる。一発芸に使えたりとか。

「……上出来です」

 今現在木の葉二枚目。満足げに頷く。

「何やってるってばよ?」

「な、ナルト兄ちゃん!」

 後ろにはいつの間にかナルトがいて、微妙に恥ずかしくなり顔が一気に赤くなる。
 木の葉の一枚がはらりと落ちる。

「にしてもナイってば上手だな。オレ、それ苦手」

 苦笑いをしながらナルトは額にある木の葉を取る。

「苦手を克服してこそ男です」

「なんかカッコいいってばよ」

 ナルトは木の葉を額に当て、チャクラを練る。しかし、ヒョロッとだけ、立ち上がりまた倒れる。

「なんでできないんだ? ナイはできんのに」

 不満げに言うナルト。
 確かお腹のところで九尾が封印されてて、その影響でうまくチャクラがコントロールできないんだっけっと思い出す。
 それでも、原作よりは上達したような気がする。

「……才能です」

「ナイってば最近生意気になってないか?」

「気のせいです」

「まあ、いいってばよ。おっと、もう時間だ。今日はなんとイルカ先生がラーメン奢ってくれる日なんだぜ。一楽のラーメンー。ナイまたな」

 ナルトはうれしそうに言い、額の木の葉を落とす。

「……ナルト兄ちゃん、忘れてる」

「へっ? 何をだ?」

 ナルト兄ちゃんが持っているものを指差す。
 ナルトは用事があるから来たのだ。

「あっ! 今日はこれ渡そうと思って来てたんだよな。ナイ、プレゼントッ!」

「ナルト兄ちゃんありがとう」

 笑顔でお礼を言う。

「ナイは笑ったほうがいいってばよ。またな」

「はい」

 もらった物は去年ナルトが使っていたアカデミーの教科書。
 すでに何回か見せてもらっているので、内容は把握済み。でも、やっぱり手元にあったほうがいい。
 ナルト兄ちゃん復習とか大丈夫かなっと心配したりとかも。




 数ヵ月後

 NARUTOの世界と言っても結局自分は忍者ではないため、向こうと同じ一般人生活。それでも、体が弱くないため、走り回ったり色んなことができること。普通なことがとてもうれしい。

 そして、最近重要なことができた。

「ナイ、よく見ろっ!」

 額に木の葉を置いたナルトはチャクラを練ると、なんと木の葉がきれいにまっすぐ立ったのだ。

「おー、すごいです、ナルト兄ちゃん」

 一つ年下で忍者でもないナイができたことが、嫌だったのだろう。ナルトはもう特訓の結果チャクラコントロールの練習をしっかりしたみたいである。しかし、やはり苦手なことは変わっていない。

 重要なことというのは、そのままいくと普通にナルトは分身の術ができて卒業するのではっということ。悪く無いじゃんっといえるが、影分身のないナルトは、本編にかなり影響を与えるような。
 密かに困ったりしている。まあ、あと五年もあるし平気かな。ナルト兄ちゃんだし。(何気にひどい)

「ナルト兄ちゃん」

「ん? 何だっ?」

 ナルトは未だに額の上に木の葉を乗せている。
 その様子からすると、実は成功確立はあまり高くないように思える。

「明日ハイキングなんてまた今度です」

「お土産待ってるってばよ」

「……山に行くだけなんで、何もないですよ」

 平和な日々。どこかゆったりしていて、心地のいい日々。木の葉が平和なのは今だけ。だけど、こんな日々が明日も続くと思う。




 ……前言撤回。木の葉は平和かもしれないが、自分は平和ではなかった。

「ここはどこでしょうか?」

 呟いてみるが、誰も居ない。
 周りを見渡すと、木、木、木。 上を見上げると、空はとても青かった。

「ここはどこだろう」
 
 もう一度呟く。
 孤児院のみんなでハイキングに来ていた。なのに、何故かぼくだけが迷子になっている。
 何か悪いことをしてしまったのだろうか。
 
「だ、誰か助けてっ! あっ」

 思わず叫ぶ。そして、気を取られて躓いてしまう。
 捻り所が悪いのだろうか。転んだ左足の付け根が痛い。
 今はまだお昼だから良いものの、このままだと日が暮れて夜になってしまう。食べ物のストックは飴玉ぐらい。

「いや、きっと大丈夫……み、見つかる。発見される……」



 結局発見されずに、日が暮れて夜になろうとする。
 大きな木の幹に座り込む。闇雲に回っても発見はされない。だから、待つことにした。この足じゃ、歩き回ることもできないし。

 ため息をつく。そして、眠りこけるのだ。

 ガサッと音がしたような気がした。

「……な、なにっ?」

 うっすらと目を開けると、目の前に人影が見える。闇の中にいたから、月明かりだけでも平気。
 忍の衣装を来た一人の少年。年の頃は自分よりも年上。多分、向こうに居た時の自分と同じぐらいの歳。

 視線が合う。そこで、気づく。目の前の少年が誰かということを。一瞬だけ写った印象深い少年の瞳。その瞳は勾玉の文様みたいになっていた。

 目の前の少年の名前が分かった。

「……こんなところで何をしている」

 声が出なかった。そして、今更に思い出される。きっと今日うちは一族はうちはイタチに滅ぼされた。

 表面上木の葉は平和に見えるが、実際はそうではない。裏では色々なことが起きている。この世界は微妙なバランスで成り立っている。こちらにきて初めてそう思った。

「名前は何て言うんだ?」

 怖がっていると感じたのか、イタチの口調が少しやさしくなった感じがする。

「な、なまえはないです……」

 お腹が空いて、ハイキングで疲れ、何ともいえない緊張感にさらされ、瞼が重くなりその場に倒れてしまう。




 目が覚めると、見知らぬ木の天井が見える。
 上体を起こすと、思わず左足に痛みを感じる。薄い毛布を取ると、左足は包帯が巻かれていた。
 改めて周りを見る。中央に囲炉裏がある、板屋の小さな小屋。あまり使われていないようで。小屋の中はほこりで汚れている。

 自分で来た記憶はないし、囲炉裏からは煙が出ている。この場合誰かに助けられたということなんだろうか。
 夜中に起きた記憶があるが、寝ぼけていて定かではない。とても重要なことがあったような。

 ガラガラッ!

 引き戸が開く音がする。それと共に、

「起きたか」

 声がかかる。顔を上げ、相手を見てようやく思い出される。

「……うちは?」

 うちはイタチに助けられたという事を。
 呟きが聞こえたらしく、イタチの表情は硬くなる。

「オレの名前はうちはイタチだ。木の葉の里の者か。どうして昨日はあんなところに?」

「そ、その、ハイキングをしていたら、迷子になって、転んで左足を痛めて、えーと」

 うまくまとまらない。
 すると、イタチは小さく息を吐く。

「昨日はアカデミーがあったんじゃないのか?」

「アカデミーには行ってないんです」

 ここでイタチは怪訝な表情になる。
 忍者はあまり一般市民の生活を知らないらしい。
 木の葉の里の子供=アカデミーの子。ということにはならない。

「忍者じゃないんです。ぼく」

「……そうか。歳はいくつなんだ?」

「七歳です」

 目を細めながら見てくるイタチ。
 サスケとは一才違い程度。髪形は違うけど髪の色も瞳の色も同じ。どこか弟を思い出しているのだろうか。

「どうかしたんですか?」

 我ながら意地の悪い質問だと思う。

「いや、怪我は二日もしたら良くなるだろう。明日には動ける程度にはなるはずだ。それよりも、お腹が空いただろ? 朝飯にしよう」

 眼差しが優しくなるのが分かる。
 
 

 ぼくは多分、そのイタチの気持ちを利用する。利用することによってぼくは、外に出る。
 ここが平和ではないことを知った。だけど、それは自分がずっと望んでいたような気がする。ぼくはファンタジーが好きだから。一般人の生活をするならわざわざNARUTOの世界にいる意味がない。
 僕は望むから、きっと悪いこともするかもしれない。見て見ぬ不利をするかもしれない。
 でも、少しぐらいはいいよね。
 だって、これは……

『夢だから、ぼくは夢を見ていたいんだ』


 これがうちはイタチとの出会い。





あとがき
という感じに進みます。
ちょっと出てきたので、ナイ君に憑依する前の年齢は中一程度の年齢です。オリキャラ全員出たら、一覧作りたいと思います。話的には中忍選抜が始まる前辺り。
narutoのキャラクターデータブック購入しました。臨、兵は持ってたので、次の闘を。中古でいいやと思ってブックオフにいったら100円コーナーに。お金が浮いてよかったです。これで、サスケ奪還編まではいけます!



[16066] 第五話 始まりの一歩
Name: copu◆b7c18566 ID:31db10ca
Date: 2010/02/06 16:20
 一日が経過した。昨日目覚めてから、イタチさんは小屋を空けて外に出て行った。

 多分ここは、ぼくが思いほど山奥ではないし、木の葉隠れの里からも遠くもない。わざわざ外に行くのは追っ手を気にしているからだろう。
 三代目火影は、体面を保つために追っ手を出す。どういう気持ちなのだろうか。親を殺し、一族を殺した。それは、里のためでもあるし、一族のため、そして、弟のために。
 今現在のイタチさんの歳は、向こうにいたぼくとだいたい同じぐらい。ぼくでは考えられない。生まれた世界が、環境が違うから。その一言で終わるのだろうか。

「ナイ、どうかしたか?」

 考えに更けていたら、イタチさんが心配そうにこちらを見てくる。

「大丈夫です」

 小さく笑顔で返すが、顔が笑っているかが分からない。

 一つの偶然。イタチさんはぼくのことをナイと呼ぶ。それは、ナルト兄ちゃんと同じ。
 記憶にないが、夜中あったときに名前を聞いたら、名前はナイですっといったらしい。きっと名前は無いですっというのが正しいのだろうが。
 イタチさんで二人目である。ぼくをナイと呼ぶのは。

「足はどうだ?」

「あっはい。動けるぐらいには平気です。ありがとうございます」

 立ってみて軽く歩いてみせる。左足をぐりぐりとする間接の体操などは痛いが、普通に歩く分には問題はない。
 イタチさんに感謝である。
 普通追われているのに生き倒れている? 子供を拾うというのは、根が善人なのだろう。NARUTOの話からして前半イタチ悪い人から、後半イタチ良い人に変わっている。
 助けてもらったので完全にイタチさんは良い人だっということになっている。心の中でうん、うんっと頷く。

 突然イタチは顔を上げ、引き戸を見る。

「そのままこの小屋にいろ」

 声から緊張が伺える。
 追っ手が来たのだろうか。それならもっと早く気づいてもいいような気がするが。

 イタチの目が細まり、そのまま引き戸に近づく。手裏剣を左手で挟んでいる。
 そして、勢いよく引き戸を開け、手裏剣を投げる。

 キキッン!

 手裏剣が弾ける音。

「危ないですねェ。折角私が迎えに来たというのに」

「……鬼鮫か」

 あまり声が大きくないがきちんと小屋の中でも聞こえてくる男の声。
 イタチさんの呟きも聞こえる。鬼鮫……干柿鬼鮫、霧の忍刀七人衆。鮫肌を持つ霧隠れの怪人。
 興味本位で、いそいそと引き戸から外が見える位置に移動する。チラッと怪しい風貌の大きな刀を持った人物が見えた。漫画やアニメよりもずっと若く見える。実際に原作登場より4,5年前。今は20代半ばぐらいだろうか。

「おや、その子供は誰ですか?」

 鬼鮫と視線が合う。一瞬寒気がした。殺気ではないと思うが、体か動かなくなる。
 イタチさんも振り向いてくる。なんか、表情が硬いような。怒っているのか。

「拾い者だ。森で迷子になっていた」

「連れて行くんですか?」

「いや、里に返す」

「そうですか」

 鬼鮫はそれをきくと、興味を無くしたようにこちらを見なくなった。

「ナイ、すまいないが仲間が迎えに来た。街道までは送ってあげるが、そこから一人で里に帰れるな?」

 イタチさんは近づいてきて、膝折り目線をあわせそう告げる。どこか申し訳なさそうだ。

 決意を固めて、イタチさんを見る。

「あの、ぼくも連れて行ってくれませんか?」

 イタチさんは怪訝な表情を浮かべる。
 漫画やアニメでもあまり見ない表情。

「クックック、面白い子供ですねェ。知ってるんですか、その子供はあなたがしたことを」

「……いや、知らない」

 きっと、うちは一族のことだろう。
 鬼鮫は小さく笑い、興味を取り戻したようでこちらに近づいてくる。

「何かできることは?」

 鬼鮫は訊く。
 で、できること? えーと……。

「料理、洗濯、家事全般できますっ!」

 右手ガッツポーズで答える。
 取り得は、多分それだけ。原作知識っとかあるけど、教えるわけにはいかない。
 孤児院生活は、自分たちのことは自分たちでやるというのがルール。家事から料理まで色々とやった。初めてやったことなので、地味に楽しかったりもする。

「愉快ですね。連れて行ったらどうですか? 身の回りの世話をする人がいたほうが楽ですよ。そこら辺の子供とは違って、礼儀は正しいようですし」

 チラッとこちらを見て、鬼鮫はイタチさんをみる。
 ぼくもイタチさんを期待を込めて見る。
 イタチさんの表情はあまり変わらないが、物凄く困っているように感じる。  

「家族はどうする?」

「家族はいないんです。孤児院で育ちました」

「……そうか」

 自分で言って一つ気づく。うちはサスケはなんとなくぼくと似ている。家族がいないという点はナルト兄ちゃんの方が似ているかもしれないが。黒髪、黒目、歳も近く、家族がいない。兄はいるか。それでも、思ったよりもサスケと共通点があった。

「オレは里を抜ける。それでもいいのか? 後悔はしないか?」

 後悔はしない。チラッとナルト兄ちゃんの顔が浮かぶが、きっとナルト兄ちゃんは大丈夫だろう。

「はいっ!」

 笑みを浮かべて元気よく返事をする。
 周りから見たら、里を抜けるという意味が分かってないのではっと思われるかもしれない。

「決まりましたか?」

「……ああ、連れて行くことにする」

「それはよかった。いきますよ。時間に遅れてしまう」

「ナイ、着替えて出発の準備だ」

「はいっ!」



 そして、一歩物語は進んでいく。




あとがき
題名がなかなか決まらなかった……はじ○の一歩っぽくなってしまいました。
暁のメンバーを調べていたら色々と知らないことが。
原作読んでるぐらいなので、詳しいキャラ設定までは知らないものが多いですね。綱手の付き人だったシズネさんが、ダンの姪っ子(甥っ子) だったとは。



[16066] 第六話 包丁を振りかぶる
Name: copu◆b7c18566 ID:31db10ca
Date: 2010/02/07 20:28


「遅いな……うん」

「何をやっている、あいつらは」

 


 第六話 包丁を振りかぶる



 イタチさんに背負られて、山道を走る。
 物凄く迷惑を掛けているような気がしないでもない。実際に掛けているわけなんだが。

「はー」

 小さくため息をついてしまう。

「疲れたか?」

 心配そうに声を掛けてくれるイタチさん。なんか、申し訳ない。

「だ、大丈夫です……」

「あと数時間とそこらでつくでしょうねェ。この調子だと」

 小屋を出発して数日が経過した。火の国を出て地理的に言うと、西に向かっている。
 向かう先は聞かなかったが、話の素振りからすると暁のアジトの一つらしい。
 そして、そこで他のメンバーと待ち合わせをしているとのこと。

 数時間後には暁のメンバーと顔合わせ。一体誰と会うのかドキドキする。



「あれかそうか」

 イタチさんと鬼鮫さんは立ち止まる。

 顔を上げ、イタチさんが見ている方向を見てみるが、これまでと同じように木々があるようにしか見えない。
 ぼくには見えない、何かがあるのだろう。結界忍術か幻術辺りだろうと予想する。

 印を結びながら、イタチさんたちは歩き始める。
 空気が変わる。何かをくぐった様な違和感を感じる。

 気づくと、目の前にあった木々が消え、大きめな建物が現れたのだ。

「すごい」

 感嘆の声が出る。NARUTOの世界に来て、初めて目のあたりにした忍術だ。不思議なことはあったけど。
 イタチさんはぼくを背中から降ろすと、少し微笑んだ。
 この数日間で、イタチさんの距離が少し縮まった気がする。鬼鮫さんとはあまり話はしていない。時たま鬼鮫さんから視線を感じる。

「一日遅れだ……うん」

 足音を立てずに、一人の金髪の少年が現れる。年齢は十を超える辺りだろうか。
 髪型が特徴的で、片目を隠すように髪が垂れている。額には隠れて見にくいが、岩の隠れのマークがある。
 その……暁のメンバーに似たような人がいたが。その、まさか。

「デイダラか、サソリはどうした?」

「旦那なら、奥で弄ってる……うん」

 普通に会話をするイタチさんとデイダラらしき少年。
 目の前の少年はデイダラでいいのか。暁の中では若いとは思っていたけど、イタチさんと同じ歳か、年上だと思っていた。
 実は、イタチさんの年下だとは……。

「ん?」

 デイダラがこっちに気づいた。イタチさんの背中に隠れる。

「誰だ?」

「世話係りみたいな人ですよ。さっさと中に入りましょうか」

「まあ、いいか……うん」

 鬼鮫さんに促され、建物の中に入っていく。

「ナイ、先に部屋に行ってくれ。これから話し合いをしなきゃいけない」

「ご飯作りますか?」

 ここに来る前、町によって数日分の食材を買ってきたのだ。ちなみに、荷物を持ったのは鬼鮫さんだったりする。意外だ。

「飯か、お前が作るのか?」

 デイダラが間に割って入ってくる。

「……はい」

「それが、いいでしょう。デイダラ、台所は?」

「あそこの奥だな……うん」

 小さく頭を下げて、デイダラが指差すほうに向かう。
 台所に到着。無残に放置されている食器。昨日からここにいるとのことで、量は多くはない。

 料理は得意。七歳だが孤児院の上級生顔負けの技術を持っている。料理の才能があったのだろうか。
 実質包丁を持ったのは、六歳から。しかし、五歳のときから毎日朝と夜の二回、料理の手伝いをしていた。
 レシピも忘れずに覚えている。
 この二年間で、家事は一通りマスター。一人暮らしもできるっと心の中で思っていたりとかも。

 一つ問題がある。しかし、ナイ本人はあまり気にしていない。
 力が弱いので、包丁の扱いが危なっかしい。

 もし、この場にイタチがいたら、思わず止めるぐらいに。特に硬いものを切るとき辺り。

「カボチャ、切るの難しいです……うん」

 思わず、デイダラの真似をしてしまう。
 
 ドンッ! 

 と大きな音が台所に響く。
 もう一回包丁をカボチャに振りかざす。

 カボチャにあたる寸前に腕が止まる。
 手首のところを握られているのだ。

「……イタチさん?」

 何故か隣にはイタチさんの姿が。首を小さく傾ける。

「ナイ、何をやっている?」

 何故か少し焦っているように思える。

「カボチャを切って、味噌汁の具にしようと……あと汁物作れば完成です」

 イタチの視線はコンロの上に置かれているフライパンへ。

「おかずはできている……カボチャはオレが切ろう」

「えっ? あっはい」

 有無を言わせない感じで、イタチさんは手で握っていた包丁を取る。
 どうしたんだろう、本当に。




あとがき
デイダラが若くて驚きました。
そして、続きを書いているのですが、だんだんとキャラが壊れてきた人(複数かも)が……。
題名が決まらないのはいつものこと。なんか題名ひどいので今度変えるかもしれません。



[16066] 第七話 きっかけはご飯から
Name: copu◆b7c18566 ID:31db10ca
Date: 2010/02/09 15:37

 イタチさんの協力あって料理は完成。
 お皿に盛り付けて、みんなより一足早くご飯を食べることに。

「皆さんは?」

「適当に食べるだろう」

 言われてみれば当たり前。
 暁のメンバーが全員仲良くご飯を一緒に食べる様子はおかしいのかも知れない。
 イメージできない。

「オイラのどれだ……うん」

 ご飯の香りに誘われたのか、デイダラがやってきた。

「おいしそうですねェ」

 そして、別のドアから鬼鮫さんも登場。

「ナイの料理はおいしい。七歳とは思えない」

 イタチさんは手をとめて褒めてくれる。   
 ちょっと恥ずかしい。

「ほー、これは。思わぬ拾い者でしたねェ」

 鬼鮫さんも食べて褒めてくれた。

「これはお前が作ったのか?」

「はい」

「まあ、おいしい……うん」

「ありがとうございます」

 そういえば、何歳ぐらいなんだろうか。

「あの、デイダラ……さんは何歳なんですか?」

「オイラは十一だ……うん」

 つい、呼び捨てにしまいそうだった。
 十一歳。ナルト兄ちゃんより三つ上。たしか、白やテマリたちと同じ歳だ。

「いつからここは託児所になった?」

 鬼鮫さんと同じで怪しい風貌の男が部屋に入ってきた。見た目からしてサソリだろう。
 言われてみれば、イタチさん十三歳。デイダラさん十一歳。ぼく七歳。
 子供の割合のほうが多い。

 どこか冷たい空気が漂う。

「世話係ですよ。料理の腕はいいようで」

「ナイです。よろしくお願いします」

 箸を置き、お辞儀する。
 今思うと自分からナイと名乗るのは初めてだったりする。

「フンッ」

 サソリはそのままご飯を食べようと、空いていた席に座る。
 あれ? メンバー四人揃ってご飯食べている……。

 深く考えず、置いた箸を取ろうとするが、指で弾いてしまう。
 お、落ちる。キャッチではなく、チャクラによる吸引。いつもは気分で印を結んでいるが、印を結ばなくてもできる。

「セーフです」

 床に落ちずに手にくっついている。それを、つかみ直す。

「へっ?」

 イタチさん、鬼鮫さんがこちらを見ていることに気がついた。
 不味いことした?

「ほー、木の葉の里はやっぱり優秀ですねェ。戦乱でもないのに、アカデミーではそんな歳でチャクラコントロールを教えるとは」

「いや、アカデミーではそこまでチャクラを放出するようなコントロールは教えない。ナイ……アカデミーにいってないんじゃなかったのか?」

「えーと、アカデミーに行ってる友達がいて、その友達が先生に教わったものを、教えてもらったんです」

 うまくまとまっていない。友達というのはナルト兄ちゃんのことである。

「教わったもの?」

「はい、額に木の葉を乗せて、チャクラを練るやつです」

「……あれか」

 イタチさんも知っていることから、木の葉の里だと割りとポピュラーの練習方法らしい。

「それでは、独学で? 忍術を教えたら優秀な忍になりそうですねェ。思わぬ拾い者。どうです習うつもりはないですか? そのほうが役に立ちますし」

 思わぬところから来た申し出。

「はいっ! 習ってみたいです」

 勿論答えはイエス。元々そのつもりで着いてきたということもある。しかし、どうやって切り出せばいいのかわからなかった。

「やる気も十分。それなら、わ「オレが教えよう」……同じ木の葉の里出身ですし、そのほうがいいかも知れませねェ」

 鬼鮫さんはイタチさんを見て、少し笑う。
 なんとなく鬼鮫さんに教えてもらえような雰囲気だったが、イタチさんが教えてくれるようだ。そのほうが言い。 
 鬼鮫さんと一対一になるのは、ちょっと怖い。まだあまり話をしたことがないからだ。

 こちらを見てくるデイダラさんに向かってパチリ、パチリっと視線を送る。
 視線が外された。不思議に思い首を傾げる。
 サソリはあまり興味を持たないらしくこちらを見ない。
 


 台所でお皿を洗う。

「……ナイ」

 物音も無く唐突に後ろから声がかかる。

「デイダラさん?」

 金髪の少年が目の前に。

「オイラ、明日里に戻る。弁当作ってくれ……うん」

「里?」

「岩隠れの里だ……うん」

 額あてが目に入る。
 里のマークに横線が入っていないのだ。今の会話からすると、まだ里抜けはしていない様子。
 まだ十一歳だから当たり前なのか。いつごろ抜けるのだろうか。

「はいっ。おいしいの作ります。炊き込みご飯作ろうと思ってるので」

 旬の野菜に炊き込みご飯。竹の子が売れているこの時期。

「混ぜご飯は嫌いだ。作るな……うん」

「……あっはい」

 そして、去っていく。
 ご飯が気に入ったらしい。いい事だと思う。
 苦手なものも把握。

 そして、一つ重大なことに気づく。
 サソリは傀儡のままでご飯食べていたような……。

「不思議です」

 ポツリと呟く。



あとがき
一番ご都合っぽいところでした。
鬼鮫がナイを気にしているのは一応理由があります。
次回かその次あたり、その理由の話です。
今週号のダンゾウがイケメンで吹きました。いや、いいよ。うん。
なんか、narutoはイタチも含めてああいう感じのキャラが多い。最近キャラを殺しすぎてる気が……。どうでもいい感想でした。




[16066] 第八話 少年と忍術
Name: copu◆b7c18566 ID:31db10ca
Date: 2010/02/12 20:11
 次の日。
 朝ごはんは昨日の夜、デイダラさんのお弁当と一緒に作った。
 あとは焼くだけ。朝のうち昼ごはんの用意を。

 そして、ご飯を食べてイタチさんと一緒に外に行く。
 服装は動きやすい短パンにTシャツという軽装。
 いわゆるこれが修行と言うのかも知れない。


「ところで、ナイ。忍術の原理は知っているか?」

 イタチさんと対面。

「はいっ! 精神エネルギーと身体エネルギーを混ぜて、チャクラを練り、印で忍術、幻術にするんですよね」

 手を挙げて発言。
 ここまで行くと、アカデミー半ばごろの内容。ちょうど今ナルト兄ちゃんが使っている教科書である。

「……よく知っているな」

「教科書も見せてもらったので。一つ年上なんです」

「……普通に考えるなら、在籍三年。それなら、変化の術ぐらいまでは載っているな。見せてくれないか?」

「えっ? そ、その、実は忍術までは試してないんです。チャクラコントロールしかやってないんです」

 たしかに、教科書には変化の術など載っていた。
 しかし、この一年間やっていたのはチャクラコントロールのみ。
 そもそもチャクラを練ることができるようになるのに、一ヶ月。木の葉を立たせようとするのに、また一ヶ月。木の葉を綺麗に立たせるまでいくのに一ヶ月。
 合計三ヶ月かかった。早いのか、遅いのかよくわからない。
 ナルト兄ちゃんは、木の葉を立たせるのはぼくよりもずっと早かった。アカデミーでチャクラを練るのは習っていたので当たり前。しかし、その後が駄目でぼくよりもずっと習得するのが遅かった。

「そうなのか? なら、それを見せてくれ」

「移動してもいいですか」

 木を指差す。

「ん? ああ」

 イタチさんは怪訝な表情を浮けべて、後をついてく。
 場所を移動。

 気分は木遁秘術・樹界降誕。巳の印を構えて、チャクラを練る。ちなみに、別にチャクラを練るのに印を結ばなくても平気だったりする。
 雰囲気は大事なので、この場は印を結ぶ。

 そして、木に向かって走る。
 チャクラを足元に。
 
 幹に向かって、ジャンプ。駆け上がる。
 重力に逆らい、勢いで枝まで登る。

「イタチさんこんな感じです」

 木の上で手を振る。
 高さ七メートルちょい。

「……驚いたな。木登りの業は、下忍の初めに覚えるもの」

 イタチさんは素直に感心する。
 少し照れてしまう。
 木登りだけじゃなくて、水面歩行もできるが、見せるのは又の機会に。

「よしっ。降りて来い」

「えっ……ですよね」

 降りる。ここは七メートルちょい。
 じ、地味に落ちるのが怖い。自分で登ったんだけど。
 いつもは、頂上までついたら、そのまま下にカムバック。
 登って待機したのは今日が初めて。

「ナイ、降りるのが怖いのか?」

 焦っているのが伝わったのか、イタチさんが顔をあげてこっちを見てくる。

「あははっ、何を言ってるんですか。べ、別に怖くないですよ」

「はー、仕方ない。大丈夫だ。受け止めてやる」

 イタチさんは小さくため息をつく。

「ほ、本当ですか? ぜ、絶対受け止めてくださいっ!」

 そして、ダイブ。目は瞑らないでいた。そのぐらいは我慢。
 
「降りられないなら、すぐに戻って来い」

「あっはい……」

 イタチさんがきれいにキャッチ。
 すぐ目の前にはイタチさんの顔が。少し呆れ顔。思ったよりも表情豊かである。

「準備運動だ。この敷地と森の境を二十周してこい」

 と言われて、二十周することに。
 意外と広いこの敷地。一周百メートル以上はある。
 この屋敷自体も大きい。一体何があるのだろうか。
 サソリさんの怪しい研究所とかあって、怖いかもしれない。

「あれ? 最低二キロ?」

 計算すると、きついかも知れない。



「ハァーハァー」

 肩で息をする。二キロはやっぱり長かった。
 体は鍛えていなかったのが裏目に出た。

「体力は付けなければな。十分休憩だ」

「は、はい……」 



 休憩終了後。

「体術もやるが、先に忍術からだ。アカデミーレベルの術……そうだな、変化の術からやってみよう。理論は分かるか?」

「理論は大丈夫です」

「それなら印を教える」

 印は十二種類。一応それぞれ全部組めたりできる。続けて、印を組むのは初めてだ。

「誰に変化すればいいんですか?」

 イタチさんは少し悩む。

「鬼鮫にしよう」

「き、鬼鮫さんですか」

 まあ、たしかにあまり周りをみても変化の対象が少ない。
 鬼鮫さん以外はデイダラさんにサソリさんだ。会ったばかりなので、二人は除外される。
 
 イメージはできている。
 チャクラを練り、印を組む。

 ボンッ!

 視線が高い。一応術は成功したようだ。初めてでできるとは……才能ある?

「ほー、うまいな。チャクラコントロールが上手な証拠だ。印もうまく結べている。チャクラの効率もいい」

 素直に褒めてくれる。

「ど、どんな感じですか?」

「変化の術は術者のイメージでできる。お前には鬼鮫はそう見えるだな」

「えっ? ど、どんな風ですか?」

 すごく気になる言い方。
 鏡はどこ、鏡?
 周りを見ると、そこには鏡があり、鬼鮫さんの姿が……本物ですね。

「もう、変化ですか。ところで、なかなかうまいとは思いますが、私ってそんなに目が怖かったでしょうか?」

「ナイのイメージだ」

「ち、違います。えーと、意外と鬼鮫さんの眼はかわいいと思いますよ……はい」

 何故かデイダラさんの口調が移ってる。
 そして、原作の誰かが言っていたような台詞を言う。
 目が合う……か、かわいいと思います。はい。

「よく言いますねー。どんな感じですか?」

「体術は体を作ることからだが、型は覚えたほうがいい。忍術のほうはチャクラコントロールがうまいから、アカデミークラス程度ならすぐに使えるようになるだろう。変化の術もあとは慣れだ。相手を観察し、それをイメージする」

「中々優秀のようで、私は行きますね」

 何しに来たのだろうか。
 うーん、よく分からない人だ。
 なんか、気に入られているのか不思議だ。

「次は分身の術だ。一通り印を教える。覚えろ。そして、早く組めるようにしろ。昼以降は体術、体作りだ」

「はいっ!」

 修行再開。

 ところで、修行に付き合ってもらっているが、暁は仕事をしないのだろうか。突っ込んではいけないところ?




あとがき
修行編やっと入りました。ここ一番の長いシリーズになると思います。
題名が決まらなかったので、また適当です。一応修行編は少年と○○みたいな感じにしようと思います。




[16066] 第九話 少年と忍刀①
Name: copu◆b7c18566 ID:31db10ca
Date: 2010/02/12 20:18
 朝のトレーニングが終わり、朝ごはんの準備へ。
 廊下には、同じく朝の自己練を終えたイタチさんの姿が。

「イタチさん、おはようございます」

「おはよう、ナイ」

 イタチさんにあいさつをする。
 すると、その奥には刀を背負った鬼鮫さんの姿も。

「鬼鮫さん、おはようございます」 

「元気がいいですねェ」

「鮫肌もおはよう」

「モゾモゾ」

 鮫肌が布の中で声に呼応するように動く。
 声を掛けると返事らしき仕草をしてくれるように。
 ここまでの関係になるのに一ヶ月かかった。

 イタチさんは奇妙なものを見るような目で鮫肌を見ている。

「あれは何だ?」

「私の刀ですが」

「いやそうじゃなくて、なんで動いている」

「生きてますからね」

「……」

「そうですね」

 ぼくも鬼鮫さんに同意する。

「霧の忍刀か……」

 考え深くイタチさんは呟いた。
 何故だろう。



 第何話 少年と忍刀①


 時間は少し遡り、ナイがイタチに背負られて集合地点に向かうときの話。

 

 夜のお休みタイム。
 しかし、視線はある一点向かわれる。
 あれが噂の鮫肌。白い布にくるまれている。
 視線の先には、コクリ、コクリと寝ている鬼鮫さん。そして、その後ろに大刀鮫肌が木に支えられている。

 生きているっぽい。原作の描写からすると。

 興味深い。

 好奇心。四つ足で近づくことに。
 そして、触ってみる。

「触らないほうがいいですよ」

 触れるまであと数センチのとこで声が掛かる。

「お、起きてたんですか鬼鮫さん」

「動いた時点で気づきましたよ」

 まあ、普通そうである。素人だし。

「少しはなれたほうが……」

 言い終わらないうちに、刀がもぞっと動いた。
 刃が逆立ち、指に掠る。
 血かスッーとでる。

「言わないことではないですね……どうかしましたか?」

 プルプル震える。

「す、すっごいです。何ですか。やっぱり、生きてるんですか? この刀?」

「あ、ああ、生きてますよ……そんな反応されるとは」

 とても感激する。なんか、すごい現象が目の前に。
 さすがNARUTOの世界だ。生きる刀。生霊を思い出す。なんか守鶴と関係があるのだろうか。尾のない尾獣。
 うーん、世界は広いです。

 鬼鮫さんは少し困っているようである。

 ここは何も知らない振りを。

「その、名前とかあるんですか?」

「鮫肌ですよ」

「さ、鮫肌」

 刀を凝視。

「鮫肌?」

「……」

 反応なし。

「緊張してるんでしょうか?」

「い、いや、違うと思いますよ」

「そ、そうですか」

 触ろうとすると、また、もぞっと刃が逆立つ。
 今度は刃が当たる前に回避。

「おー、動きました。こんばんは」

「……」

「しゃべりませんか」

「しゃ、しゃべらないと思いますがね」

 気のせいか、鬼鮫さんが引いているような気がする。
 しかし、ここでめげちゃ駄目だ。やる気は大事。

「お手」

「……」

 反応がない。
 これが駄目なら。

「お座り? 駄目ですが……」

 あきらめ半分で言ってみると、なんと、鮫肌がモゾモゾッと動き出したのだ。

「すごいですねー。あれですね。きっと、ちょっとずつスキンシップを取ったら良いんですね。最初だから緊張しているに違いありません。それでは、鬼鮫さんおやすみなさいです」

 鬼鮫さんに頭を下げて、元いたスペースに戻ろうとする。

 鬼鮫さんはこちらを見てくる。
 結構変なこといったかもなあっと改めて思う。
 なんか怖いな。



「ほー、鮫肌が反応するとは。興味深いですねェ」

 鬼鮫の小さな呟きはナイには届かない。





あとがき
間隔空けて続く感じです。今回は短め。
鬼鮫さんがナイに興味があるのは、鮫肌がナイになついている? からです。鮫肌興味深いですよね。なんか可愛い。
刀に話しかける少年。想像するとなんかシュールです。でも、narutoの世界なら一人ぐらいいてもおかしくない設定ですよね。
明日も更新予定ですっ!



[16066] 第十話 少年と性質変化
Name: copu◆b7c18566 ID:31db10ca
Date: 2010/02/13 21:39
「ナイ、分身の術を見せてみろ」

 今日はイタチさんは任務が無いため、修行を見てもらっている。

「はいっ! 分身の術っ!」

 印をすばやく組み、術を発動。
 だいたい印が五つ以内の術ならスムーズに結べるようになった。
 アカデミーレベルは問題はない。
 実践やら演習はしたことないけど。


 ボンッ!


 周りを見ると、分身が三つ。綺麗にできている。

「合格だな。一ヶ月でマスターするとは。どんなチャクラコントロールの訓練をしていたのか」

 木の葉から螺旋丸の練習までです。
 羅旋丸の練習を始めてから、半年あたりが一番ひどく、噂の経絡系が痛くなってきた。数週間もすると、やっと痛みが引いてきた。さすがにあの時は困ったものだった。

「では、次はこれだ」

 イタチさんは懐から一枚の紙を取り出した。

「チャクラに反応する材質で作られた紙ですか?」

「ああ、そうだ」

 噂のアイテムである。

「使い方はこうだ。チャクラを練り、指先に集める」

 すると、手で持っていた場所から紙は燃えていく。

「燃えるということは、火の性質なんですね」

「ああ……うちは一族は皆火の性質を持っている」

 説明が終わると、紙を渡される。
 
 指で挟んでチャクラで練る。

 すると、

 チリチリ……。

 静かに燃えてきた。

「火の性質か。木の葉の里の住人は火の性質が多いから、当たり前といったら当たり前だな」

 火か……いいんだけど、なんかなあ。
 好みは風とか水だったりする。白の忍術カッコよかったし。

「下忍クラスの忍術も飽きてきただろう。一つ忍術を教える。ここだと、燃え移るから池に移動だ」

 豪火球の術とかだよな。うん。



 池に到着。水面歩行もしている、御用達の池である。水も綺麗で安心。

「印はこうだ」

 印をゆっくり結ぶ。

「火遁・豪火球の術」

 息を吸い込み、一気に吐く。
 すると、イタチさんの口から大きな火の球が出されるのだ。
 火力は弱くしているのか、思ったよりも小さい。思ったよりもというのは、イタチさんとカカシが戦ったときのと比べると。
 サスケと比べると炎の大きさは大きいだろう。

「……こうだ」

「……す、すごいです」

 改めてみるとすごい。火遁馬鹿にしてごめんなさい。

「では、やってみろ」

 印をゆっくり結び、

「火遁・豪火球の術」

 息を吸い込み、一気に吐く。


 ……。


 ちょろっと、炎が出た。うん。

「くっくっくっ、初めはこんなもんだろう。今日からはこれを練習しろ」

 笑われた。そういえば、イタチさんが笑うのを見るのは初めてだったり。
 パチリ、パチリっとイタチさんを見る。

「どうかしたかナイ?」

「えっ、いえ、その、手裏剣術やらないのかなーって」

 ずっと疑問に思っていた。
 何故か手裏剣、クナイに触っていないことを。

 イタチさんはあっと言う顔になる。
 忘れていたのだろう。

「体術と一緒に練習させるか。一人でもできるし、ある意味体術よりも練習しやすいはず。ところで、山積みになっていたあの教科書は?」

「あっ! あれは、デイダラさんからもらったんですっ!」

 うれしそうに笑う。

「そうか……仲良くやっているようだな」

 といわれたが、そこまで話をする仲ではない。

「今から忍術じゃなくて、手裏剣術のほうをやる。戻るぞ」

「はいっ! あ、あと」

 イタチさんは振り向く。

「幻術とかも習ってみたいんですけど……」

「幻術? まあ、ナイには向くかもしれないが、何でだ?」

「この屋敷に入ったときのあれが、とても印象深くて興味があったんです」

 印を踏んで中に入ると、建物が見えるあれ。
 はじめてみた忍術なので、とても興味があった。

「そうか……興味があるのはいいことだ。幻術も並列して教えよう。幻術用の本も探さなければな」

「ありがとうございます」

 内心は手裏剣触るのが楽しみだったりもする。
 過去に触ったことがあるのは二回ほど。
 ナルト兄ちゃんに貸してもらった。あの時は全然まっすぐに飛ばなかったのを覚えている。

 こうして、投擲の練習も始まる。 


あとがき
修行編=ナイが最強? になるまでの話。
だったりします。
多分そこまで最強にはならないかな。節度ある(年齢的な意味で)で最強になる予定。

追記 次の話と間違えてしまいました。実際これは十一話です。まあ、変えるのもあれなので、このままにします。
話自体は十話読まなくても平気なので。今後ミスのないようににしたいです。



[16066] 第十一話 少年と分身※
Name: copu◆b7c18566 ID:31db10ca
Date: 2010/02/14 17:12
 前回の追記に書きましたが、不手際により前回の話を間違って投稿してしまいました。この話は実際十話の予定でした。なので、時間軸が十話より少し前になります。
 単品で読めるのでそのまま投稿。今後再編成する際(ナルト板移行)に、変える予定です。


 岩隠れの里。


「これ……もっていくか……うん」

 デイダラが手に持つものは、岩隠れのアカデミーで使った教科書が。

「お弁当のお礼だからな……うん」

 微妙に義理堅い。

「今度はおでんだな……うん」

 ただいま季節は夏ごろだったり。

「戻るか……うん」



 第十一話 少年と分身



 今日は、ぼく以外出払っていて、屋敷には誰もいない。

 ここの屋敷にきてもう少しで一ヶ月になる。

 さすがにアカデミークラスの忍術も飽きてきた。
 教えてもらった下忍レベルの忍術もなんか派手さが足りないとか。
 ちなみに教えてもらったのは、瞬身の術と金縛りの術。よく使う忍術で便利だと思うけど。

 なんか、ドバーっとかなんか出てくるのも覚えてみたい。幻術とか使ってみたい。医療忍術とか使ってみたい。
 言うだけならただである。心の中で。


 そして、屋敷に一人になっているときに練習している忍術がある。

 それは、影分身の術。
 何故かというと、覚えている印がそれぐらいだったからである。
 十字だし。それに、実践的で便利である。
 影分身の経験値貯めるシステムはなかなかいいと思う。

 しかし、一つ大きな落とし穴が。
 多分二人ぐらいならいけるかもしれないが、チャクラを二等分するというのは、スタミナも二等分。
 ようするに、一時間動けるところが、三十分しか動けなくなってしまう。

 恐ろしい。そこは、チャクラコントロールで分身に入れるチャクラ量は変えられるのだろう。

 二週間そこらやっているが、分身の術のようにうまくいかない。さすが、上忍レベル。
 一日でマスターした、ナルト兄ちゃんがすごい。あれは、多分スタミナで無理やり発動させて、コツを覚えたんだろう。

 そもそも、影分身の練習をするだけで、チャクラの消費量が高い。ほどほどにしなければ、他の修行ができなくなってしまう。
 でも影分身ができれば、分身に家事をやってもらって、自分は修行に専念できたりする。
 あれ? ぼくって何のためにここにいたんだっけ? 世話係だよね……。


 ところで、子供だからチャクラを多く練るのが難しい。螺旋丸のゴムボールがどうしてもうまく壊せない。二番目をあきらめて、さっさと三番目に進もうかと思っていたり。多分そのほうがいいのかもしれない。


「影分身の術っ!」

 本日ラストの影分身の術。これが終わったらお昼ご飯へ。


 ……失敗です。それっぽいのは隣にいるけど。
 へなっています。
 なんか原作のナルト兄ちゃんがアカデミーで分身の術やったみたいになっている。
 逆に実体があるのがかなり怖い。

 蹴る。

 ボンッ!

 と煙を上げて消えていく。


「今のは実体? ……だな……うん」

 ぼく以外誰もいないはずなのに、声が聞こえてくる。

「で、デイダラさん?」

 振り向くと、ちょうど今帰ってきたと思われるデイダラさんの姿がある。
 何か荷物が多い?
 いや、その前に見られた。見られたらアウトなものを。
 教えてもらっていない忍術を知っているとなるとかなり危なくなりそう。それも、禁術指定の忍術。
 見られたのが、デイダラさんでよかったのか。イタチさんたちでないのは幸い。
 どっちにしろ見られたらアウトだけど。どうしよう。
 帰ってくるなら一言いって欲しい。居なくなる時も一言いって欲しい。

「今のは影分身だな……うん」

 冷や汗が出る。
 やるしかないか。

 すばやく印を結ぶ。

「忍法 金縛りの術」

 術の発動は完璧。まるで見えない鋼の糸で相手を縛りつけるような身体拘束術。
 不意を突かれたデイダラさんを拘束することができた。距離も近いので、その分拘束力も強くなる。

「見たらいけないものをみましたね……」

「金縛りの術……使えるようになったのか……うん」

 どこか、余裕のデイダラさん。

「仕方ありません……お腹が空いたのでお昼ご飯にしましょう」

 金縛りで動けないはずだが、デイダラさんがこけた様に見える。何故だろう。


 ゴドッ


 何かが崩れるような音。振り向くと、すぐ後ろに崩れかけのデイダラさんの姿が。

「で、デイダラさんっ! 死んだら、駄目です。生きるんですー」

「そいつ分身だけど……うん」 

「……知ってますけど、土分身ですか」

 体の百パーセントは土でできている土分身。
 ぼくの真後ろにある。
 ということは、術に掛かる前に発動していたということなのだろうか。恐ろしい。
 
「お先に屋敷に戻りますね。手を洗うんですよっ!」

 戻りながら、土分身の印を教えてもらうとか思ったりとかも。



 フラリといなくなる人のために料理は少し多めに作ったりする。
 余ったら大変だが。

 料理をテーブルの上に運ぶ。
 デイダラさんはすでに座っているようだ。

「遅くなりましたけど、デイダラさんお帰りなさいです」

「お、お帰り?」

「はいっ! おかしいですか?」

 どこかキョトンっとデイダラさんがするので、首を傾げる。おかしなことでも言っただろうか。

「……いや……うん」

 そして、料理に手を付け始める。
 始終無言。

「あっ! ……ナイにお土産だ。受け取れ……うん」

 デイダラさんは途中で何かを思い出したのか、テーブルの下から袋を取り出す。

「何ですか?」

 結構な厚みに、重さがある袋をもらう。
 中を見ると……

「あ、アカデミーの教科書だっ! 岩隠れマークがついてる。たくさんっ! えっ? ほ、本当にもらっていいんですか?」

 大量のアカデミーの教科書が入ってあった。
 忍術から体術、忍の心得、小隊での戦略などなど。
 たぶん量からして、アカデミー終了分までだろう。

「やるよ……うん」

「ありがとうございます」

 大事そうに抱きしめる。

「ところで……さっきのは影分身だよな……うん」

 固まる。
 誤魔化せる? 無理ですよね。だって、十一歳っていっても暁だし。たしか、イタチさんは十歳で中忍になったと考えると、デイダラさんも中忍レベル以上はあると考えられる。
 恐ろしいです。 

「ひ、秘密の忍術の修行です」

「秘密?」

「はい、イタチさんに内緒で修行して、今度びっくりさせようかと」

「そうか……オイラもあいつを、殺してやる……うん」

 ちょっと物騒になってきた。
 たしか、デイダラさんを暁に介入させるきっかけを作ったのは、イタチさんだっけ? 結構無理やりだったような気もしないでもない。

「印は誰に教わったんだ?」

「うっ、ぶ、分身の術習うときに、実体のある分身を聞いて、印だけ教えてもらったんです」

 これしか、言うことがない。
 本人に聞かれたらすぐばれる。しかし、デイダラさんの様子から見ると話すことはなさそうだ。

「そうか……うん」

「と、ところで、土分身の印教えてくれませんか? すごく興味があるんですけど」

「イタチの奴がどうせ、知ってるからいいか……性質変化が土だったのか? そうじゃなかったら、習得は難しーぞ……うん」

 大事な性質変化を忘れていた。
 形態変化はそれなりに使えるのだが、性質変化はまだ未知の領域だった。

「まだ自分の性質しりませんが、是非教えてください。紙にメモメモ」

 デイダラさんに教えてもらい、メモをする。
 メモ帳には名無しの忍法帳と書かれている。
 
「コツとかは?」

「影分身のと同じでいいじゃないのか……うん」

 コツまで聞くのはあれか。教鞭取っていたというわけじゃない。理論派じゃなくて実践派。
 感覚というのが大きいのだろう。

「ご、ご飯が冷めちゃいますね。早く食べなきゃ」

「……だな……うん」



あとがき
三日連続更新。次は明後日の予定です。
早く戦闘シーン書きたいけど、書けるか心配です。
ああいう流れる描写苦手だったりします。
者の書買いました! みんな四年後かなり強くなってますね。



[16066] 第十二話 少年と忍刀②
Name: copu◆b7c18566 ID:31db10ca
Date: 2010/02/16 18:36
 今回は三人称視点で


 第十二話 少年と忍刀②


 鬼鮫は気づく。
 自分の部屋に誰かがいるということを。
 とは言っても、普通に耳を澄ませば、声が聞こえてくる。
 声の出所は勿論自分の部屋から。

「おや、一体誰でしょうがね……この声はナイ?」

 自分の部屋から聞こえてくるのは、この屋敷にいる一人の少年。
 デイダラと違って、礼儀正しく、料理もうまい。
 七歳とは思えない少年である。

「くっくっくっ、そんなこと言ったら、六歳で中忍になった方もいますし、どっちもどっちでしょうねェ」

 鬼鮫は部屋の前に立つ。
 部屋の中から廊下へと声が響いている。


「それでね、デイダラさんが教科書もってきてくれたんですよ」


「うんうん、はいっ! すごくうれしかったです。デイダラさんもいい人ですよね」


「手のまめ? これは、手裏剣の投擲の跡です……大丈夫です。少しぐらいだけですから」


「どこいってたんですか?」


「うわー、遠くまでいったんですね。お疲れ様です」


 ナイの声が聞こえてくる。
 ナイの声だけが聞こえてくる。
 声と声の間に間がある。誰がいるのだろうか? にしては、その声が聞こえてこない。

 鬼鮫は自室のドアを開ける。
 そこには、大刀の隣にナイだけがいた。

「あっ! ご、ごめんなさい。勝手にお邪魔しています」

「別にいいですよ……」

 鬼鮫は自室を見回す。
 本当に誰もいない。
 ナイは誰と話していたんだっと不思議に思う。

「どうかしました鬼鮫さん?」

「えっ、いえ、ところでナイ誰と話したいたんですか?」

「あっはい。鮫肌と」

 鬼鮫の問いに、ナイは笑顔で答えた。

「さ、鮫肌と?」

「はいっ!」

 たしかに、最近ナイの問いかけに鮫肌はよく反応する。昔はあまりみられなかった行動だ。

 鮫肌には意思がある。
 尾のない尾獣とも言われている代物。
 前から、ナイに懐いていた? とは思うがそこまでとは。
 いや、その前に普通に会話していたが。
 鬼鮫は心の中で色々と考える。

「ねっ! 鮫肌」

 すると、モゾモゾっと声に答えるように動き出す。

「あっ、たしかにもうこんな時間ですね」

 今の瞬間、鮫肌がナイに何かいったのだろうか。動きで伝わったのか。

 モゾモゾ

「はい、また明日です。鬼鮫さんぼくは一足先に寝たいと思います。失礼しました。おやすみなさい。鮫肌もおやすみ」

 モゾモゾ

「おやすみ、ナイ」

 鬼鮫の視線はモゾモゾと動く鮫肌。

 バタンッ。

 扉が閉まると、動きをやめる鮫肌。

「鮫肌」

 鬼鮫が呼んでみるが、鮫肌は反応を示さない。
 元々戦い以外ではあまり、反応をしめしてはいなかった。

 不思議だ、と鬼鮫は思う。




 ナイと鮫肌が話しているのを目撃してから一ヶ月が経とうとする。

 その間、鬼鮫たちは幾度か外へ任務へ向かう。
 ほとんど、情報収集の領域のため戦闘にはまだ至らない。
 
 ナイはというと、火遁の術、秘密裏にやっている影分身、土遁の術を練習していた。
 幻術はまだ、知識までっとなっている。


「火遁・豪火球の術」

 池の上空に炎の球が現れる。
 勿論使用者はナイである。
 今日の午前中イタチさんは自主練習のため、ナイは一人で忍術の練習。

「中々、上手になってきましたね」

「き、鬼鮫さん?」

 思わぬ客にナイは少し驚いた。
 ナイが振り向くと、鮫肌を背負っている鬼鮫の姿がある。

「完成までもう少しっといったところですが」

「はい。今ので大体、六、七割程度です。合格ラインは八割だそうなので、今週末か来週までにはできそうです」

「ほー、三週間でものにするとは。さすがですね」

「えっ、いえ、三週間も掛かってしまいました。金縛りや瞬身の術はもっと早くにマスターできたんですけど」

 ナイは下忍レベルの術程度ならもっと早くマスターできた。
 それは、チャクラコントロールがうまかったからできたものだったりする。
 ナイは中忍レベルの術の難易度は二種類に別れていると考えている。
 一つは純粋にチャクラコントロールが難しい。もう一つはチャクラ量が多く必要。
 豪火球の術は後者に辺り、まだスタミナが多くないナイにとっては、練習自体複数行うのが難しい。そこは、チャクラコントロールをして使う分だけ練るなどの工夫を行っている。

 上忍以上の術は、チャクラコントロールに精密さが必要だったり、やはりチャクラ量が桁違いに必要になるだろう。

「いや、いや。ナイは他にも術を練習しているでしょう? 複合しながら、やっているなら中々ですよ」

 ば、バレテイル。内心ナイは焦る。
 人前で見せたことはない。デイダラは知っているだろうが、しゃべる感じではない。

「ふふ、驚いていますねェ。イタチさんも気づいていますよ?」

「気づいてたんですか……驚かそうと思っていたのに」

「術はデイダラ辺りからでしょうがね。もう一人のサソリさんはありえなさそうですし」

「えっ、ああ、はい。そうです。土遁を……」

 デイダラさんに感謝。影分身は黙っておこうとナイは思う。
 ここで、ナイは閃いた。

「あ、あのー」

「何ですか」

「水遁教えてくれませんか?」

「おや、何ですか?」

「えーと、その技のバリエーションがあればいいかなって」

「器用貧乏になりますね。習得するのに、時間が掛かりますし」

「印とかでも駄目ですか?」

「普通忍者は自分の手の内を見せませんが……まあ、いいでしょう」

「ほ、本当ですかっ!」

「何か希望はあるんですか?」

「水分身とかがいいです。あと、水遁の基本的な忍術を」

「どれも中忍レベルですねえ」

 若いうちに、早めに術を覚えたほうがいい。ナイはそう思っている。
 
 ナイの一つの問題は、忍術ではなくて、体術にあったりする。
 そこは体格的な意味合いが強いので、ここはもう成長しだいとしか言いようがない。

「午後は体術ですよね」

 ナイは鬼鮫の問いに頷いて答える。

「暇なので、私が見ましょう」

「あっはい。ありがとうございます」

 一時間後、それをナイは後悔することに。


「抜き足が甘いですね。右、左……やはり、体術はまだまだですが」

 クナイを構える、ナイと鬼鮫。
 ちなみにナイにとっては、クナイを構えた組み手は初めてだったりする。

 すでに、ナイはヘロヘロになっている。
 イタチよりも、厳しい。

「ふむ、イタチさんから習っている木の葉流の体術見せてくれませんか?」

 ナイは小さく頷き、チャクラを全身に行き渡せる。
 そして、地を蹴る。

「木ノ葉旋風」

 上段からの蹴る。鬼鮫はそれを後ろに下がることによって回避するが、続けて、下段の蹴りが襲う。

「速さは中々。しかし、やっぱり錬度がまだまだですねえ」

 捕まえにくい下段の蹴りをいとも簡単に捕まえる。
 逆さまになるナイ。

「体格もあるんですが、威力もそこまでじゃない。瞬発力を付けて、威力を上げようとするのはいいんですがね」

 まあ、まだはじめたばっか。小さく鬼鮫は呟き、ナイを池のほうに投げる。

 ナイは慌てて、チャクラを練る。

 落ちる音はしない。

 ギリギリで間に合い、ナイは水面に立ち安堵した。

「水面歩行の業まで……チャクラコントロールは並みの下忍以上はありますね。体術とチャクラコントロールも兼ねて、水面の上で組み手をやりますか」

 言う方が早いのか、移動するのが早いのが、ナイが気づくと目の前には鬼鮫の姿が。

「……はい」

 拒否権なんてないと感じるナイ。


 
 数時間後。

「つ、疲れました……」

 ボロボロのナイの姿が。
 イタチもそれなりにハードだったが、鬼鮫のは比較にならないぐらい濃かった。

「悪くはないですねェ。任務も無いようですし、明日からは体術は私がみましょう」

 それを聞いてバタリと倒れるナイ。
 顔を上げると、夕日が紅い。

 モゾモゾ

 鮫肌が少し動いた。

「が、頑張れってひどいです……」

 そんな様子を鬼鮫は面白そうに眺めるのであった。


 忍術はイタチが、体術は鬼鮫が。という、豪華な修行が始まる。



 小話

「ところで、そのクナイは」

 鬼鮫はナイのクナイを指差す。
 鬼鮫がもつよりも、かなり小さい。
 子供用という奴だ。

「これは、デイダラさんから貰いました」

「ほー、仲がよろしいようですねェ」

 ナイはそれに対して小さく笑う。

 イタチと鬼鮫は気づかない。
 日々の食事の大部分がデイダラの好きなものでできているということを。




あとがき
ナイ視点以外は三人称みたいな感じに。
一週間で豪火球を会得したサスケや影分身を会得したナルトは凄いのか? 凄いんですよね、きっと。サスケのお父さん驚いてたし。
術の会得ってどうなんでしょうね。会得しても使いこなせるかどうかは人それぞれなんでしょうが。
少年と忍刀全部で4、5パートまであります。修行編で一番重要なパートだったり。
次の更新は明後日になります。お持ちいただけると光栄です。



[16066] 第十三話 少年と毒物
Name: copu◆b7c18566 ID:31db10ca
Date: 2010/02/18 21:03
 修行を初めて、三ヶ月あまりが経過。

 忍術の覚える速度は早かったので、今現在投擲や体術の時間に当てることが増えてきた。

「……マメができます」

 自分の手の平を見ると、マメがいくつもできている。
 手裏剣とクナイによってできる、マメである。

「忍者の基本は体術だけど……苦手です」

 息を吐き小さく呟く。
 さすがに一ヶ月も経つので、鬼鮫さんの体術の修行は慣れてきた。雰囲気だけ。毎日ボロボロだったりする。

「お昼ごはんにしましょうか」

 昨日から、イタチさんと鬼鮫さんは任務で出かけているためいない。今日屋敷にいるのは、デイダラさんとサソリさんだ。
 そういえば、サソリさんとは全然話をしてないなーっと思いつつ、お弁当を探す。

「……持ってくるの忘れました」

 屋敷に戻ることに。



 第十三話 少年と毒物



「ん?」

 何か臭う。鼻をクンクンッとさせる。
 真っ先に向かうのは台所。
 火の元は大丈夫。

「ここじゃない?」

 台所ではない。
 臭いの元を探しに、屋敷を回ることに。

 たどり着いた場所は、あまり入ったことのない部屋。
 たしか、結構窓がいくつもあって結構換気がよかったはず。
 そもそも、誰も使っていない空き室。
 なのに、ここから変な臭いがする。

 扉を開けてみる。
 すると、赤髪の少年が何やら床に座り何かをしている。年頃はイタチさんよりも少し上程度。
 こっちを見てきた。
 少年が口をあけようとする前に、扉を閉める。

「あれ? えーと、今のは……サソリさん?」

 どこか見覚えがあった。
 というより、サソリさん以外に考えられない。
 この三ヶ月見かけても傀儡の姿だったので忘れていた。
 本体が別にあるということを。

 もう一度扉を開く。

 サソリさんがにらんできた。
 サソリさんの周りには小皿がいくつか。その上に粉が乗った紙が置かれている。それと、粉挽きらしきものもある。
 薬の調合だろうか。

「餓鬼か何のようだ」

「変な臭いがしたので気になって」

 サソリさんは眉を寄せる。

「変な臭い? お前この微臭が分かるのか」

 サソリさんは、手元にあった布を投げてくる。
 それを、受け取り鼻から少し離して、手で扇ぎ嗅いでみる。

「あっ、はい。そうです。これです」

「……常人じゃ気づかない。微かな臭い。いつにおいに気づいた」

「屋敷に入ったときからですけど」

 向こうでは病院生活で、あまり刺激にはなれていなく、薬品の臭いに敏感だった。
 多分その影響もあって、鼻が良い。

「くく……たいした餓鬼だ。どこから拾ってきたんだが」

「薬の調合ですか?」

 身をかがめ、視線は小皿へ。

「舐めてみるか?」

「……絶対毒ですよね」

 サソリさんは少し笑う。
 こうして、きちんとサソリさんと話すのはこれが初めてだ。

「正解だ……ところで、オレが誰か分かるのか?」

「えっ? サソリさんですよね。も、もしかして、別な人ですか?」

「いや、当たりだ」

「なんか、イタチさんにしろ、デイダラさんにしろ、みんな若いですよね」

 何にも判ってなさそうに、笑って言う。
 たしか、見た目と反してサソリさんは鬼鮫さんよりも年上だったような気がする。

 サソリさんは、無表情になり、作業を再開した。
 ぼくは、それを興味深く観察する。

「出てけ、邪魔だ」

「……もっと、みたいです」

「気が散る」

 殺気混じりで向かっていってくる。
 邪魔だとは気づいていたけど。

 ショボーンっとしながら、部屋を退室する。
 ぐーっとお腹が鳴く。

「お腹が空きました……あっ! この作戦でやってみましょう」



 トントンッ!

 扉をノックして、開ける。

「またか」

 呆れ口調のように感じる。

「どうぞ、お昼ご飯です」

 お盆にご飯を載せて、まるで献上するようにサソリさんに渡す。

「何だこれは」

「わい……ご飯です。持ってきました」

 本音が漏れてしまう。

「お前本当に七歳か?」

 痛いところをついていく。
 見た目は子供、頭脳は……中学生? NARUTOの世界で雑学知識は増えてはいるが。純粋な勉強力は、うーんっと悩む。
 精神年齢は中学生をいったりきたり。元々、病院生活だったので、そこらへんの一般倫理も怪しい。

「そうですけど」

 首を横にかしげて、誤魔化しておく。

「さっきからなんだ。邪魔だ。用件を言え」

「その、毒物について教えてくれませんか?」

「……くだらねぇ。何で、オレが教えなきゃいけない。忍術を習ってるみたいだが、必須なものじゃない」

「でも、サソリさんはなんか詳しそうですし、習えるものは習っておく。知って損するものではないと思います」

 それは一種の欲。知識欲。
 知識をどんどんと増やすのはいいことだと思う。

「くく……面白いことをいう餓鬼だな」

 サソリさんは懐から、ビンをいくつか取り出した。
 それに、床にあった小皿から粉末を少量いれる。

「今から渡す粉末を覚えろ。明日テストをするから識別しろ。合格したら、教えてやるぜ」

「臭いでですか?」

「舐めてみろよ」

「……遠慮します」

 そうして、小さなビンを五つもらった。
 


 屋敷の中で開けるのは、あれだと思い外に出る。
 右手にはお弁当を持って、

「あれ? これって……」

 臭いをかいで、見比べてみると違和感が。



 翌日。
 場所は三日目と同じあの部屋。
 サソリさんと対面。

「ここに十種類の毒物がある。そこから、そのビンにあったヤツを選べ」

 サソリさんの前には粉が乗った小皿が十枚。
 ビンを下に置き、粉の臭いを嗅いでみる。

 あれ? 心の中でそう思う。

 選ぶ小皿は……。

「一つだけでいいのか? ちなみにどのビンだ」

 コクリと頷き、ビンを二個と三個に分ける。
 小皿は、二個の方へ。

「チッ。予想以上に鼻がいいな。似たようなヤツを準備したのに」

 元々五つあった、ビンには二種類の粉しか入っていない。そして、サソリさんが準備した十種類の粉も、ビンの中に入っていたのと同じものは一つしかない。
 引っかけばっかりである。

「……教えてくれますか?」

 目をキラキラさせて、期待しながらサソリさんを見る。

「……分かったよ。教えればいいんだろ。厳しいぜ。覚悟しろよ」

「はいっ!」

 どこか面倒臭そうなサソリさんに向かって笑顔で言う。

「お前さあ、オレらが悪者だって知ってるか?」

 沈黙。少し顔に出そうだった。
 知らない振りをして、首を傾げる。

「やさしいお兄さんたちですよね」

 どこかずっこける感じを受けるサソリさん。
 小さく息を吐いて、

「……明日また来い」

 ぼくに向かって言う。

「了解です」

 敬礼して、部屋を後にする。


「ぼくにとっては……良い人だと思います」

 暁、ビンゴブックS級の集まり。
 人は色々とあるのだろう。
 イタチさんもサソリさんも。
 鬼鮫さんは全体的に謎だけど。

 それと、今日知ったのですが、サソリさんご飯食べないでもいいみたいです。
 早く言って欲しかった……。




あとがき
サソリの出番。
サソリの口調がアレなような気が。本家も歳相応って感じではなかったんですけど。
ナイがどんどんと進化するー。



[16066] 第十四話 少年と爆発
Name: copu◆b7c18566 ID:31db10ca
Date: 2010/02/19 18:36
 サソリさんから毒物含め薬物について習い始めた今日この頃。
 夜の数時間はサソリさんと過ごすことに。
 今思うとサソリさんは口が悪いです。
 歳が鬼鮫さんより上とは思えない。口調的な意味でも。

 イタチさんたちは戻ってこないので、体術は軽めに。軽めに。でも、サボるとばれると思う。なので、ほどほど軽めに。
 日々あまりできない、土遁や水遁の練習を行う。

 少しいい事が。
 影分身が、完成しました。
 それと共に、土遁や水遁の分身の術ができるようになった。
 いい事である。
 でも、やはり中忍クラスの忍術習得は苦労する。

 上忍クラスはまだまだ先である。チャクラの練る量も少ないし、手が出せない。今の段階でそもそも上忍クラスの術に手を出すこともないのかもしれない。
 でも、医療忍術って興味あったり。あれは難易度が高い。上忍クラスはあったはず。サソリさん使えるかな? たしか、サソリさんのおばあちゃん、チヨバアは医療忍者だったはずだし、人傀儡の作り方を思い浮かべてみると少しは使えるような気がしないでもない。
 
 
 ドドーンッ!!


 爆発音が聞こえ、思わず振り返る。

 森から鳥たちが羽ばたいて去っていく。



 第十四話 少年と爆発



 音が鳴ったほうへ歩いていく。
 木々の間から見える。地面に大きな跡が残っていた。
 爆発した中心だ。

「ナイか、今は邪魔だ。どこかに行け……うん」

 デイダラさんが座り込んで何かをしていた。

「……お弁当ありますけど」

「よしっ! 来い……うん」

 お弁当を広げ、昼食タイムへ。

「何やってるんですか?」

「あいつがいないうちに、練習だ……うん」

 あいつというのは多分イタチさんのこと。
 もう一度爆発の跡を見る。
 かなり大きい。半径数メートル程度。深さも結構ある。
 練習って、起爆粘土か何かだろうか。
 ダイデラさんの手の平を見るが、まだ口はない。

「爆発すごいですよね……」
 
「まだ甘いな……うん」

 周りを見ると、あやしげな物体一つと巻物一つ。
 怪しげな物体は粘土? 巻物は多分、忍術の?

「でも、爆発とかっていいですよね。一瞬で散る何かって」

 うんうん頷きながら言ってみる。
 デイダラさんが、ギロリっという感じにこっちに見てきた。

「爆発は……芸術だ。芸術ってのは美しく儚く散っていく一瞬の美を言うんだよ。ナイもそう思うか……うん」

 なんかここ一番で口数が多い。
 爆発ネタは、ご飯ネタと共釣るのにいいのか。

「えっ? あっはい。花火とか一瞬で散って綺麗でいいですよ。迫力ありますし」

「内緒にしろ……ナイにオイラの芸術見せてやるよ……うん」

 そういって立ち上がり、謎の物体多分粘土をちぎり手でこね合わす。
 何かを模るように見える。
 そして、できたのか手のひらに載せて、片手で印を結ぶ。

 ボンッ!

 という音が鳴り、デイダラさんの手のひらには、粘土でできた小さな鳥がいた。

「うわぁ、すごいです」

 デイダラさんはニヤリと笑い、その鳥を飛ばす。

 空を翔るその鳥。
 ある程度飛び上がったところで、もう一度デイダラさんは印を組む。

「喝!」

 ドーンッ!!

 大きな音をたてて、鳥は爆発した。

「わー」

 と言っているが、結構心の中では冷静。
 間違いなくアレは、起爆粘土の術。
 狙いが間違ってなかったら、無造作に置かれているあの巻物は、起爆粘土について書かれているのだろう。
 読んでみたい。読んでみたい……うん。

 手を伸ばそうとするが、

 トンッ!

 手と巻物の間の地面にクナイが刺さる。

「ナイ何やってる……うん」

「ま、巻物が気になって」

 ここは素直に。

「見るな」

 だけど、やっぱりそう言われる。
 普通に考えてそうだろう。しかし、どうしても気になる。
 原作でも起爆粘土はかなり気になる技。

「もうそろそろ寒くなってきましたよね」

「?」

「おでんとかいいですよ。寒いと」

「!?」

 分かりやすい。すごく、顔に出ている。
 ここは食べ物で釣る……デイダラさんとの関係がほとんどご飯つながりのような気がした。

「ばくだんとかいいですよね……そういえば、知ってますか? 普通ばくだんって卵が入ってますけど、海老ばぐだんっていうのがあるみたいです。なんか、おいしいらしいですね」

「……仕方ないな。特別だ見せてやるよ……うん」

 釣れた。
 これでいいのだろうかっと思いつつも巻物を取ってみる。

「あいつには秘密にしろ」

「はい」

 ん? 巻物の表面、には何か大きく書かれている。

「禁術指定……里外持ち出し厳禁……デイダラさん」

「どうかしたかナイ……ん? それか、気にするな。芸術には色々と犠牲が必要だ……オレの芸術が分からない奴なんて死ねばいいんだ……うん」

 すでに、何か起こった?
 一度それは脇に置いておこう。
 中身は、えーと、物質にチャクラを練りこむ術が書かれている。
 半分まではあまり禁術指定とは思えないもの。読んでみるとあまり効率がよくなさそうだ。しかし、後半以降はそれを克服する形で肉体を介して術を行使する。
 それは、原作のデイダラさんの手である。肉体改造程度で禁術指定にするのであろうか? 目安が分からない。
 物体を介して忍術を行うので、忍具使い同様対写輪眼とは相性は良さそうである。

「メモしていいですか?」

 どうぞっといった感じなので、重要な部分を写す。
 術の原理とかはいらないので、術の行使部分を。
 
「自由度があって、いい術ですね」

「ナイもそう思うよな。オイラの芸術的造形が光る術だ……うん」

 とりあえず、メモしたものの、あまり使いこなせそうにない術だったりする。芸術センスあまりないし。
 誘導して爆破する忍術は結構いいなっと思う。

「さっきの火遁で再現できたりしませんかね」

 ふと、そう思う。爆破だけなら火遁の範囲である。
 術的レベルは多分、チャクラコントロールが求められるから上忍レベル以上。

「ナイもオイラの芸術的センスに惚れたのか……うん」

「はい。新術開発?」

 一応、すごいと思います。はい。
 ないなら作るか。

「新しい術を開発するのは難しいぞ。オイラもその巻物の術をアレンジしてやってるが、それでも調整が結構かかる……うん」

 上忍クラスの一個上のレベルである螺旋丸の開発期間はたしか四年。それも、才能ある四代目火影である。
 新術開発は考えてみるけど、難しい。
 似たような術ないかな。あったら、デイダラさんと同様にそれを調整すれば……火遁のことだからイタチさんに聞いてみよう。

「ですよね……うん」

 デイダラさんの口調がたまに移ってしまう。





あとがき
おでんのばぐだん良く分からず、ネットで調べました。
関西のほうだとあるみたいですね。関東なので、初めて知りました。
ちなみに、海老は鬼鮫も好きみたいなので、なかなか一石二鳥の代物。
やっと次はナルトのターン。明日更新予定です。



[16066] 第十五話 一つのすれ違い
Name: copu◆b7c18566 ID:31db10ca
Date: 2010/02/21 20:51
 今回も三人称で


「おかしいってばよ。何でナイは来ないんだ……」

 季節は夏から秋になった。
 ナルトはずっと、公園で一人の少年を待っていた。
 数日に一度は会っていたのに、ここ数ヶ月ずっと会えないでいる。
 たしか、最後あったとき、ハイキングに行くといっていた。
 まさか……ナルトの脳裏に嫌なことがよぎる。


 
 第十五話 一つのすれ違い



「今日も来ないってばよ……」

 だんだんと寒くなる。

「本当にどこいったんってばよ」

 ナルトは空を眺める。
 夕日で空は紅くなる。

 ベンチから立ち上がり、家に帰宅。

「会えるよな……」

 自分よりも一つした。だけど、体が小さいので、年齢はもう少しだけ低く見える。
 最初は無口だったけど、だんだんと口数も多くなった。
 黒髪で、ナルト兄ちゃんって呼ぶ。

「どこいったんてばよ」

 思い返すと、ナイのことはあまり知らない。
 どこに住んでいるかも。
 名前がナイで、歳が一つ下。あまりお金が無いらしく、アカデミーに行ってはいない。
 そのくせ、小難しい本を読み、忍術に興味がある。

「はー」

 ナルトは小さくため息をついた。

「ん? あれってば」

 ナルトは今すれちがった青年に見覚えがあった。

「ちょっと、待つってばよ」

 青年は振り向く。
 たしか、昔ナイのことを探して、呼び戻した青年である。

「き、君はっ!?」

 青年はナルトの顔を見て驚く。
 少し、傷つくがナルトはこの際構わない。

「ナイ今どこにいるってばよっ!?」

 大事なことはこれである。

「な、ナイ? 誰だいその子は?」

 首を傾げる青年はそういったのだ。

「えっ? ほ、ほら、昔オレと遊んでた時に呼び戻しにきた子供」

 驚きながら、ナイのことを説明する。
 
「あっ、あの子か……結局君とまた遊んでたのか……」

 青年は、ナイというのはあだ名か何かと思い深く考えなかった。
 それよりも、どこか表情が暗い。
 ナルトもそのことに気づく。

「ナイに何かあったんのか?」

「……ああ、あったんだよ。今――行方不明なんだ」

「はぁ!? も、もしかしてハイキングでかっ!」

「えっ? そうだよ。捜索もされてたみたいだけど……見つからないみたいで。時期も悪かった」

 それを聞いて、ナルトは視線を地面に下げる。

「そ、そいうわけで、失礼するよ」

 青年は足早に去っていく。
 ナルトは地面を見たまま動かない。

 次の日、ナルトは初めてアカデミーを休んだ。 
 その次の日も。
 その次の日も。

「おーい、ナルト。大丈夫か?」

 イルカは心配でナルトの家の前にいる。
 最初休んだ日にきたが、返事が無かった。
 次の日は、体調が悪いと言ってきた。直接会うことは無かった。
 今日は……これから会う。

「イルカ先生。今日も体調悪いから無理ってばよ……」

 元気が感じられない。

「大丈夫か? 元気がないなら、俺が奢ってやる。ラーメンでも食べに行こう」

 やさしく声を掛ける。
 しかし、

「そんな気分じゃ、ないってばよっ!? イルカ先生一人にしてくれ!」

 完全に拒絶される。

「ナルト……俺に話してみないか? 相談なら乗る。なっ?」

 暫くの間反応が無かった。

 カチリッ。

 ドアの鍵が開く。
 そこから、ナルトが顔を出してきた。

「一体どうしたんだ?」

 やつれているナルトを見て、イルカは驚いた。
 里の中でナルトに対してどんなことが行われているかは知っていた。
 しかし、ナルトは頑張っていた。
 一瞬そのことかと思ったが、何か違うと確信する。

「い、イルカせんせーいっ!!!」

 ナルトはイルカの胸に飛び込み、泣きじゃくる。

「おいおい」
 
 イルカはそれを優しく包み込む。
 すると、

 ぐー

 っと音が鳴った。

「美味しいもんでも食べに行こう。奢ってやる」

 ナルトは小さくうなづく。


 食べながら、ゆっくりとイルカはナルトの話をきいた。

「何で、もっと探さないってばよ。おかしいってばよ、絶対」

 不満を漏らすナルト。
 しかし、その日はうちは一族が皆殺しにされた日である。
 里としては、山で行方不明者を探すよりもずっと重要視される。
 現にうちはイタチの捜索は引き続き行われている。

 どうしたものかと、イルカは困る。
 ナイの話はナルトとご飯を食べに行くと毎回聞く名前の子だ。
 ナルトにとって唯一の友達と言ってもいいはず。
 アカデミーでもナルトは……。
 その子が亡くなった。いや、まだ亡くなってはいないが、ほぼ確実。

 掛ける言葉は難しい。

「ナルト、ナイ君はどんな子だったんだ?」

 ナルトは少し考える。

「変なやつだってばよ」

「変なやつ?」

 ナルトは頷く。

「素直で静かだったけど、内心オレの事バカにしてるんじゃないかってたまに思うし、アカデミーにいってないのにオレよりチャクラコントロールうまいし、オレのことナルト兄ちゃんって呼ぶし……」

「ナルトはナイ君のこと大事だったんだろ?」

「あったりまえってばよ! ナイは大事な友達……」

「ナルト……ナイ君はナルトのことどう思ってたと思うんだ?」

「そんなの分かるわけないってばよ……でも、ナイはオレのこと羨ましそうに見てた気がする」

「羨ましい?」

「あいつ、アカデミーに入りたかったってばよ。オレの使ってた教科書あげたら、スゲー喜んでたし……」

「ナイ君は忍者になりたかったのかな」

「多分……そうだってばよ」

「ナルト……忍者になれ」

「い、イルカ先生?」

 ナルトは顔を上げ、イルカを見る。
 すると、イルカは自分の額あてを指差している。

「そして、里一番の忍者になって、凄い忍者になれ。ナイ君の分も頑張ってな」

「……イルカ先生。オレ、やってみるってばよ。ナイの分も頑張ってやってみるってばよっ!」

 まだ泣いているが、口をかみ締めながらいうのだ。
 ナルトは決意する、ナイの分も頑張って忍者になると。

 
 しかし、ナイがいるからこそ練習はうまくいっていたっと言っても過言ではない。
 成績は真ん中よりも下ぐらい。勉学の面はやはり苦手であった。
 しかし、ナルトは頑張る。


 四年後。
 アカデミー卒業試験は下から数えたほうが早いが、ナルトは無事に合格。分身の術も成功した模様。
 しかし、その後ミズキに唆され、原作通りに禁術が書かれた巻物を取りに行くことに。多重影分身を会得。
 班員は、サスケ、サクラと変わりはなく、担当上忍もカカシもままである。
 これは、三代目の決定である。九尾を宿す四代目の息子、写輪眼を持つ一族からして、カカシが適任かと思われた。
 くノ一の中でも特に問題がない(ナルトと普通に接することができる)、無難な子としてサクラが起用される。ナルトは勉学は得意ではなかったので、バランスが取れることも採用された理由。
 ナルトは忍者として頑張ることに。

 ナイと再会するまでもうあと少し。





あとがき
本家のイルカ先生ならもっと良いこと言ったはず。
途中まではスラスラ書けたのですが、そこで止まってしまいました。
今後も何回かシリアスっぽいのが入ってきますけど、シリアス難しいです。
追記誤字脱字直しました。ご指摘ありがとうございます。それと、文章一部変更。また変えるかも……。
このSSのナルトは本家よりもチャクラコントロールがうまい予定です。



[16066] 第十六話 少年と遠出
Name: copu◆b7c18566 ID:31db10ca
Date: 2010/02/21 21:08
 息を吐くと白くなる。

 秋が終わろうとする。

「ナイ、明後日任務でここを出る」

「あっはい。了解です」

 夜の食事中にイタチさんはぼくに向かってそう言う。
 しかし、その後言った事が予想外だった。

「ナイもくるか?」

「えっ? いいんですかっ!」
 
 初のお誘いである。
 心はウキウキ。
 ここに来て以来に初の遠出。料理の買い物のためたまには、出かけたりしている。ほとんど、イタチさんが材料買ってくれるが。

「場所は一体?」

「湯隠れの里だ」

 ん? どこかで聞いたことがあるような……。



 第十六話 少年と遠出



 雪が積もるが、雪の間から湯気が出る。
 硫黄の香りでいっぱいの街。
 街並みの情緒あふれるもので、綺麗である。

 こう見えてもここは忍びの隠れ里。
 しかし、観光客も多い。
 戦を忘れた里と呼ばれている。
 一応戦力の忍びも存在している。数は多くはないが、国の兵力として活動している。一種の警察みたいなものらしい。
 報酬も多くは無く、里としての経営は、観光から成り立っている。

「たしか……飛段の出身の里だったような」

 暁の一人、飛段がこの里出身。

 はーっと小さく呟く。
 なんとなく、あの人は嫌だな。会わなくていいやっと思う。ゾンビコンビはいいや……うん。

 羽織を着て、外に出る。
 泊まる場所は、宿ではなく離れの屋敷丸々借りた。
 ぼくとイタチさんたちだけかと思ったら、デイダラさんやサソリさんも行くとのこと。

 大人数の旅行は楽しみだったりする。
 今現在四人は用事があるとのことで、出かけている。
 大方飛段に会いにいってるのだろう。

 雪を見ながら温泉に入る。
 かなり季節感あふれることだと思う。
 ちなみに、温泉に入るのはこれが初だったり。

 今回は、街中をぐるぐるする。
 まだ時期的に早いため、人はそこまでは多くはない。
 しかし、それなりに賑わっていて、通りには出店がたくさん並んでいる。

「うわあー!」

 見ているだけど、凄く楽しい。

「お金ないんだよな……」

 お金を持っていないことが悔やまれる。
 見るだけにして、ブラリとする。

 少し休憩、ベンチを見つけ座ることに。
 空を見上げると、快晴、とても青々としていて澄み切っている。それが、とても冬らしく寒さを感じる。
 もう一度出店を見る。
 やっぱり、いいなあ。お祭りには行ったことがない。

「ナイ、どうかしたか?」

「イタチさん?」

 声が掛かる。
 振り向くと、イタチさんの姿が。他の三人は見当たらない。

「用事は終わったんですか?」

「ああ、一応な……小遣いだ」

 イタチさんはぼくが出店を見ていたのに気づく、お金を渡してきた。千両である。かなりの大金。

「わ、悪いです」

 首を振る。

「受け取れ。遊んでみたいんだろ?」

「……じゃあ、イタチさんも一緒に行きましょうっ!」

「……ああ、分かった」

 予想外にイタチさんも一緒に来てくれるらしい。
 なんかウキウキする。

「そういえば、鬼鮫さんたちは?」

「先に戻るそうだ」

「そうですか……」

 お土産を買おうと心に決める。


「凄いですよね。遊ぶものもたくさんありますし、食べ物も本当にたくさんあるなんて」

「うれしそうだな」

「はいっ! こういうところ来るの初めてなんです」

「……そうか」

 笑顔で言うが、イタチさんの表情はどこか暗くなった。
 それに気づくが、知らない振り。気まずいことを言ってしまった。
 
 気を取り直して物色中。
 ヨーヨーを発見。

「おじさんっ! 一回お願いします」

「あいよ、坊主」

 水風船をゲットッ!

「えーと、次はあれです」

 射的ゲーム。

「兄ちゃんもやるかい?」

 お店の人は、イタチさんに向かってそういう。

「いや、オレは……」

「やりましょうっ! 是非やりましょう」

「分かったよ」

 どこか表情が柔らかいイタチさん。


 食べ物関係もぐるぐると行く。
 焼きそばにたこ焼き。りんご飴にあんず飴。

「食べすぎじゃないか?」

 とイタチさんに言われるぐらい。

 お土産にいい物を発見。

「すみません。えーと、この鮫のやつと、鳥のやつと、サソリのやつください」

「あいよ」

 飴細工である。なかなか、リアルにできているので、デイダラさんやサソリさんも喜びそうである。


 途中出店ではないが、気になるお店があった。
 お手製のお面を売る店である。値段もそれなりの代物。
 見たのはちょっと。でも、欲しいなあっと思った。
 なんか、カッコいい。暗部がつけていそうなお面である。欲しいのは、赤で彩色されたもの。
 でも、お金的な意味もあるので買わない。

 泊まっている屋敷までもどる。

「っ!?」

 イタチさんがいきなり、振り返る。

「どうかしましたか?」

「……いや、何でもない」

 ぼくは小さく首を傾げる。





「……隣の子は誰かしら? もしかしたら……」 

 雑踏の中から不気味な声が響く。



 基本的なナイの一日。
 朝 自主トレ→朝食→イタチと修行
 昼 昼食→鬼鮫と修行
 夕 夜食→サソリの授業→自主トレ(読書含む)→睡眠

 イタチたちがいないと、デイダラと共にだらけてたりも。
 その他にも屋敷の掃除などもやっていて、予定を見る限りぎっしりと詰まっている。



あとがき
湯隠れの里は勝手に作ったイメージです。
実際どうなのでしょうか。
感想に書いたのですが、修行編内で暁は今の四人以外出す予定はありません。元は除きますけど。
次話。皆さんの反応がどうなるか気になる感じに。賛否両論。
いや、賛成する人いるのかなー。楽しく読めたらいいですけど。



[16066] 第十七話 少年と大蛇
Name: copu◆b7c18566 ID:31db10ca
Date: 2010/02/23 17:04
 冬が終わり、春が訪れた。
 風で桜が散る。
 
 見上げると、立派な天守閣が聳え立つ。
 湯隠れの里に行って以来、一ヶ月に一回程度、イタチさんと鬼鮫さんにくっ付いて外に行く。
 任務には参加しないので、ただ外を見て回る。
 小旅行気分で楽しい。

 今イタチさんたちは任務でいなく、明日戻ってくるそうだ。
 なので、通りを散歩中。
 小遣いも貰ったので、楽しく散策である。 



 第十七話 少年と大蛇



「晴れていいお天気です」

 食べ歩きが趣味になってきた今日この頃。
 桜餅を片手に、ベンチで小休憩。

「隣いいかしら」

「あっはい。どうぞ」

 どこかで聞き覚えがあるような声。いや、デジャブと言うのだろうか。
 隣を見ると、黒い髪が長く肌が白い、多分男がいた。顔立ちがそれとなく蛇のような印象を受ける。特に目が。
 いや、待て……どうからどうみても……大蛇丸ですよね……うん。
 偶然? 怪しい。どこかで、イタチさんと一緒にいるのを見られた? 結構一緒に出かけていたからありうる。
 だらだらと、冷や汗が出る。

「唐突だけど、明け・夜明け・暁・東雲・曙・黎明・彼誰時って何か知っているかしら?」

「……それらは全部明け方の言い方です。明け三つ時といわれる時間帯」

 今の言い方すれば、偶然なわけはない。もう、ドンピシャリ。
 ぼくがイタチさんと一緒にいたのを見かけて話しかけてきた。
 あの人たちはビンゴブックに載ってるとは思えない、格好で出かけているから余計に目立つ。
 誘拐される?

「幼いのに優秀ねえ……」

 ゾクリっときた。
 大蛇丸が嘗め回すようにぼくを見る。
 殺気ではない。でも、何故か鳥肌が立つ。怖い。

「そんなに怯えることないんじゃない……うふふ、ところで貴方は誰なの?」

「……ナイと言います」

 ここは答えるしかない。逃げるにしても、ぼくの実力じゃ逃げれない。

「素直な子は好きよ。どこの里出身なの? なんで、イタチと一緒に居るわけ?」

「木の葉の里です……森で迷子になったときに助けられて、そのまま一緒に」

「そう。百パーセントそうよね、きっと」

 小さく大蛇丸は呟いた。
 ぼくは首を傾げる。

「貴方で二人目よ」

「……何がですか?」

「NARUTOの世界に来た子よ。私は貴方以外にもう一人知っているわ」

 驚きで目を見開いた。
 今、この人は何を言った? いや、その前に、この人自身も……。

「分かったみたいね。そう、私もこの世界にきた一人よ。六年前になるかしら」

 ぼくという例があるなら、他の人でもあるえるだろう。会うまで思わなかったが。
 しかし、ここで疑問が。
 口調があまり変わっていない。

「口調?」

「うふふ、向こうの世界でも私の口調はこのままよ……ちなみに向こうでも男」

 ……知りたくなかった。いわゆる、あれですか……うん。
 暫く大蛇丸さんはぼくの顔を凝視する。

「気のせい?……何年前に来たのかしら?」

 一体どうかしたのだろうか。

「もう少しで三年です」

「まあ、いいわ。最近じゃない。たしか、もう一人の子は小さいときからって言ってたわ。本題に入るわね。貴方は何がしたいのかしら?」

「したいこと? 何ですか?」

 唐突に言われ、首を傾げる。

「折角NARUTOの世界に来たのよ。やりたいぐらいあるでしょう。ちなみに、忍術習ってるの?」

「忍術は一応、イタチさんから。体術は鬼鮫さんとか……はい」

「ご、豪華なメンバーね。そこで、他の暁のメンバーから何か習っているなんて言わないでしょうね」

「えーと、サソリさんから薬物関係習ってます。デイダラさんは、なんか術の開発に相互協力中です」

「……どこの暁? もう少し殺伐としているところじゃなかったかしら」

 大蛇丸さん下を見て、呟いた。

「あれね。チートね。基本的に憑依者たちはチートが基本なのね」

「憑依者?」

 聞きなれない言葉がでてきた。

「そう、憑依者。元々あった肉体の他の魂が宿っているの。すでに、成り代わってるわね……どうかしたかしら?」

 あれ? じゃあ、元々この体の持ち主がいたの?
 すごく幼少のころの自分そっくりだから気づかなかった。

「もしかして、転生のほう?」

「転生?」

 またしても聞きなれない。意味はなんとなく分かるけど。

「死んで、他の世界で生まれ変わったってやつだわ」

「その、この体自分の幼少のときとほとんど変わらないんですけど……」

「可愛い系ね。美味しい……ゴホッン。それなら、他の世界の自分説。魂の類似ね。ほら、よく言うでしょう? 世界には自分と同じ顔した人が三人いるとか。それと、似たようなもので、他の世界にはもう一人の自分がいるって言うやつ。パラレルワールド?」

 寒気がする。

「あっそれなら、なんとなく分かります。ファンタジーやSF小説は結構読んでたので。大蛇丸の記憶はあるんですか?」

 異世界にわたる物語は好きな話だ。

「あるわよ。なかったら、今頃死んでるわ。向こうでいくつだったの?」

「えーと、十二歳です」

「わっ若いっ!!」

「何歳だったんですか?」

「……二十九よ」

「ジャンプ読んでるんですか?」

 大人でも読むものなのかな。

「何か今心に刺さったわ。いいじゃないっ! ジャンプぐらい読んで」

「えっ? いいと思いますよ。ジャンプって面白いじゃないですか」

 ニコリと笑顔で言う。

「……十二歳じゃ、特に何も考えてないみたいよね」

「考えるって何ですか?」

「私は、原作どおりに事を進めさせるつもりよ。少しは変えるけど」

 あー、そういうことですか。
 原作どおりのことを進めると言うことは、木の葉崩しとかするつもりなのだろう。

「それじゃあ、サスケとかも」

「勿論よ。強くなってもらわなきゃいけないわ。うふふ」

 何故か寒気がする。

「貴方はどうするの? そのまま暁と一緒居るの?」

 あまり考えていなかった。
 どうしよう。今はまだいい。でも、原作始まると……。

「判りません……」

「今はまだいいわ。里を作ったら、来ないかしら?」

 ぼくは顔を上げ、大蛇丸さんを見る。

「それは、ちょっと……」

「今の流れからすると、はい、いきますじゃない?」

「その、イタチさんが知らない人についていったら駄目だって」

「何、私不審者なにか? 」

 不審者か何かだと思ういます……うん。

「まあ、いいわ。他にも音以外にもあてがあるの。里に行きたくなったら教えて。紹介するわ」

「あっはい。ありがとうございます」

 ベンチから立ち上がり、この場を去ろうとする。

「まだ話終わってないっ! 座るっ!」

「あっはい」

 何か怖いです。

「そういうわけで、貴方の力を見て見たいの。行くわよ」

 どういう流れだろうか。
 行かなきゃ、殺されそうなので、行くのだが。

「ほら、ついてくる」

 

 街外れの森。
 大蛇丸さんと対面。

「忍術を習ってどのぐらいかしら?」

 指折りで数えてみる。

「十ヶ月ぐらいですかね」

「それなら、まだまだじゃない。アカデミーレベル?」

 イタチさんに忍術を習っていると聞いていたので、落胆した様子。

「忍術は進みが速いので、下忍や中忍の術勉強中です」

「……おかしくない? どうなったら、十ヶ月でそうなるの?」

「えーと、チャクラコントロールだけは六歳のときからやっているので、はい」

「下済みはあるわけね。螺旋丸とかもやってたの?」

「一応……でも、チャクラが多く練れないのでどうしても、ゴムボールが割れなくて」

「子供じゃきついわよね。まあ、いいわ。何か忍術を見せて」

 即されたので、何か忍術を披露することに。
 何かいいだろうか?
 水はないから、火遁か土遁がいいだろう。
 ここはやっぱり分身系。
 足元には土があるので、土遁。

「土遁・土分身の術」

 チャクラを練り、印を結ぶ。
 すると、地面からニョキッと二体、自分とそっくりの分身が出来上がる。

「土遁ねえ。性質は土なの?」

「あっ、火です」

「……ところで聞いていいかしら? 忍術何が使えるの?」

「えーと、火遁に水遁に土遁です」

「やっぱり、チートだったわ」

 大蛇丸さんはため息をつく。
 何かいけないこと言ったかな。

「血継限界あるっていわないわよね」

「そんなのあるわけないじゃないですか。欲しいぐらいです。カッコいいじゃないですか」

「十二歳か。若いっていいわね」

 大蛇丸さんはどこか遠くを見るよう呟く。

「ちなみに、もう一人の子は血継限界よ。あったら驚くわよ」

「いいですね。うんうん」

「才能も問題なさそうだし。てか、有望かしら」

 大蛇丸さんは背中から大きな巻物を取り出し、地面に広げる。

「口寄せ?」

 見覚えがある。多分口寄せの契約を行う巻物。

「そうよ。さあ、名前を書きなさい」

「……えっ?」

 いきなりのことで驚く。

「どういうことですか?」

「認めてあげたの。これで、貴方も私の弟子よ。ナイ」

「……遠慮します」

「遠慮しなくていいわ」

「サスケとかいるじゃないですか」

「何言っているの。サスケ君は別よ。貴方は弟子と言うより、後継ね。サスケ君、蛇を使い捨てにするし」

「あっはあ」

 たしかに、攻撃をよけるために口寄せして防いでいたような。

「口寄せ動物は便利よ」

 逃げれない。いや、この際いいや。うん。

 口寄せの巻物の前にしゃがむ。

「あのー」

「どうかしたのかしら?」

「名前ー」

「名前?」

「ぼくの名前わからないんですけど」

 一番大事なことである。口寄せの巻物には契約者の名前を書かなきゃいけないのだが、ぼくの名前はわからない。

「さっき、ナイって名乗ってたじゃない?」

「名前が無いですっから来てるんです。あれって」

「……ナイって書いてみれば?」

「えっ? そんな、適当でいいんですか?」

「レッツ、トライ。ためしにやってみるものよ」

「はー」

 と巻物に名前を書く。
 右手の跡もつける。

「印は亥、戌、酉、申、未よ」

 メモにメモメモ。
 
 そして、チャクラを練り印を結ぶ。
 右手を地面に。

 ボンッ!

「あっできた」

 驚きです。偽名? でも、発動した不思議です。

「おい、大蛇丸。オレ様を……小さくなってないか?」

 声質は低く偉そう声。
 毒々しい赤紫色と黒の縞模様の蛇。大きさは通常通りで、長さは一メートル程度。

「もしかして、マンダ? あら、小さくなったわね」

 マンダ? たしか、大蛇丸の口寄せの中で一番大きいやつでしたよね。
 小山ぐらいある巨大な蛇。

「おい、餓鬼。どういうことが説明しろ」

 ぼくは大蛇丸さんを見る。

「私を見てもねえ。にしても、面白いわ。どういう術の原理になってるのかしら」

「ぼくに聞かれても」

 触ろうと手を出すと、

 カプッ。

 噛まれた。

「毒あるわよ」

「えーと、解毒剤はもっている……あれ? 毒あります? 痺れも何も起こらないんですけど」

「おかしいわね。小さくなったときに毒も消滅したのかしら」

 地味に痛いので、引っ張ろうとするが離さない。
 なんか、こうしてみると可愛いかもしれない。
 左手で、撫でてみる。冷たくて気持ちいい。
 口の下辺りを撫でる。

「や、やめろ。ぶっ殺すぞ」

 くすぐったいのか、指を離した。
 でも、なんかその様子が可愛い。口が悪いのも余計に際立つ。

「なんか、可愛いですね」

「そうねえ。意外だわ」

「大蛇丸、この変なやつ誰だ」

「貴方の新しい契約者よ」

「ナイって言います。よろしくおねがいします」

「礼儀はあるみたいだな。用がないならオレ様を戻せ。そして、二度と呼ぶな」

「はい、今日はこのぐらいで、ご苦労様でした」

 すると、

 ボンッ

 と音を発てて消えていった。

「何ですかね。今のは」

「不思議よね。これで、貴方も私の後継となったわけね」

 話は勝手に進んでいく。

「別にいいですけど……ギブ&テイクで」

「まあ、いいわ。それで貴方は原作どおりに話を進ませるつもり? もう一人の子はあまり干渉しないっていっていたわ。やってることがあれだから、話に関わってくるけど」

「多分……原作どおりでいいんじゃないんですか。一部とかは」

 よく分からない。
 どっちが良いのか。
 どっちが悪いのか。

「そう。何か欲しいものはあるかしら?」

「その……医療忍術習ってみたいので、一式欲しいです」

「か、かなり高額なの要求するわね。でも、独学じゃ無理よ。あれは」

「サソリさんが、少しはできるみたいなので、用具があれば教えてくれるそうです」

 結構無理やり頼んだ感がある。
 サソリさんも、自前で道具を用意できないと知っていたので、こういう約束をしたにだろう。

「貴方どこに進むのつもりよ?」

「習えるものは習っておくつもりです……」

「はー。用意してあげる」

 ため息をついて、大蛇丸さんはぼくに紙を渡してきた。
 住所が書かれている。

「一週間後ここに連絡しなさい。それと、ここに手紙を送れば私に届くから」


 そうして、ぼくは大蛇丸さんと別れた。



 後日。

「ナイ、その荷物は一体何だ?」

 医療忍術に使う道具一式を片手に廊下をあるいていたら、イタチさんが声を掛けてきた。

「医療忍術に使う道具ですけど……この前、貰いました」

「誰にだ」

「知らない人です」

 嘘をついておこう。
 知られるとやっかいだ。

「……どんなやつだ」

「えーと、くくく、貴方中々美味しそうよっていう感じの人でした」

 似てるかな。物真似。

「な、ナイッ!」

 イタチさんが詰め寄る。

「いいか、二度とソイツと会わないように。そいつは変態だ。ナイ危ないから近づくな。わかったか!!」

「えっ、あっはい」

 大蛇丸さんイタチさんに何かしたのだろうか。


 サソリさんの部屋へ

 道具を持って入ったら、サソリさんが物凄く面倒くさそうな目でこっちを見てきた。

 こういうときは、笑顔で、

「準備できました」

 ニッコリと笑えばいいと思う。




あとがき
賛否両論ありそうな、大蛇丸さんです。ギャクでもシリアスでもいける大蛇丸。ギャク面が強いのか?
憑依者はあともう一人(今現在)。出番はもう少し先です。
医療忍術も使えるナイはもうチートしか……本家のいの程度には使えるようになるかと。毒物知識の延長線上。

書いてる分が、やっと、ある意味本編に突入しました。
長かった。そこでラストの憑依者がでます。

今後の予定。修行編は第23話ごろで終わりです。そのときまでにナイは11歳になってるので、一話辺りの時間のテンポは速いのかな。



[16066] 第十八話 少年と忍刀③
Name: copu◆b7c18566 ID:31db10ca
Date: 2010/02/24 17:52
 
 梅雨が始まる。
 ちょうど来月で、イタチさんに拾われてから一年が経過する。

「ところで、ナイは今何歳なんだ?」

 夕食中、イタチさんは思い出したかのように聞いてきた。

「今八歳です」

「……いつ誕生日だったんだ?」

「先月です」

 イタチさんの手が止まる。
 その場にいる鬼鮫さんの手も。

「早く言え。祝ってやったのに」

 どこかすねる雰囲気をイタチさんから感じた。

「そうですね。子供なんですから、誕生日ぐらい祝ったのに」

 鬼鮫さんがそういうと、うんうんっとイタチさんは頷いた。
 あなた方の誕生日はとか思ってしまう。

「ぼくは……ここにいられるだけで十分です」

 どこか、うれしくなり笑顔で言う。
 そう、それで十分。
 ぼくは日々充実してる。毎日が忙しい。この後も、サソリさんの勉強タイムが始まる。



 ナイただ今八歳。

 第十八話 少年と忍刀③



 午後。
 いつもの池のほとり。
 しかし、ちょっと変わったことが。
 いつもは鬼鮫さんは鮫肌が邪魔だといい、少し離れた地面に刺している。
 だが、今日は背中に背負っている。

「鬼鮫さん。鮫肌どうかするんですか?」

 気になって、尋ねてみることに。

「これはですねェ」

 ドンッ

 鬼鮫さんは、鮫肌を目の前の地面に刺す。 

「ナイ、ではこれをもってください」

 何故とか聞きたいが、その前に……。

「手が届かないんですけど」

 鮫肌は大きい。二メートル近くある鬼鮫さんが持っていても、その大きさがわかるぐらいに。
 軽く柄もいれると、鬼鮫さんと同じぐらいではないだろうか。

「あっそうですね。仕方ありません」

 鮫肌を地面から抜き取り、横たわるように置く。

「では、どうぞ」

 と言われて、柄を持ってみることに。
 触ったことはあるが、柄を触ったことがない。
 たしか、あそこから刃が出てきたのを覚えている。

「鮫肌持つよ」

 一応声を掛けると、呼応するように刃を振るわせる。
 okだそうだ。

 なので、普通に持つ。

「持ちました。お、重いですね」

 見た目どおり、重量はかなりある。
 持つというより、柄を持ち上げるような感じ。。

「持ち上げるのは無理ですか……」

「む、無理です」

 一生懸命、持ち上げようとするが、持ち上がらない。

「さ、鮫肌動いたら駄目です。自分で持ち上げなきゃいけないんです」

 鮫肌が協力しようと、モゾモゾっと動き出すのを制する。
 ぼく一体何してるんだろう。

「小さかったら大丈夫そうですけど。成長してもぼくじゃきついですよ」

 たしか、十二歳の時点で辛うじて身長百四十を超えるぐらい。
 本とかで読んで、軽くショックを受けたが、そのぐらいの男子の平均身長が百五十を超えるぐらい。なので、十センチも差がある。
 多分、成長速度も同じなので、十二歳までは変わらないだろう。
 身長百七十行きますように、と祈ってたりも。

「鮫肌?」

 柄から手を離すと、鮫肌がモゾモゾっと動き出した。
 包帯から刃が出ている。

 鬼鮫さんも一体何かっと見守っている。

 いつにもまして、動く。声を掛けるが、返事がない。
 動くというより、何かが起こっているような気がした。
 しいて言うなら、蛹から蝶が出る。
 そんな感じである。

 動きが止まった。

「おや、これは」

 鬼鮫さんが一番最初に異変に気づく。
 ぼくはまだ異変に気づかない。

「あれは何ですかね?」

「あっ!」

 言われて気づく。
 鮫肌の表面一部分だけが盛り上がっている。

 モゾモゾッと鮫肌が動く。

「取れって? う、うん。分かったけど」

 一歩前へ。そして、盛り上がっているところの包帯を取り、見てみる。

「これって……」

 モゾモゾ。

「う、うん」

 即され、手にとって見る。

「それは、鮫肌ですかね。小さいですが」

「ですよね」

 手に取ってみたものは、小さい鮫肌。刃渡り三十センチで忍刀っぽい。

 モゾモゾ。

「えっ?」

 モゾモゾ、モゾモゾ。

「何て言ってるんですか?」

「えーと、遅くなったけど、誕生日プレゼントだって言ってます」

 鬼鮫さんに鮫肌が言っていることを通訳する。
 もう一度鮫肌を見る。

 モゾモゾ。

「あ、ありがとう。大事に使わせてもらうよ」

 笑顔でお礼を言う。

 すると、手に持っている小さな鮫肌も動いたのだ。

「うわあ、これも動くんだ。よろしくね」

 小さい鮫肌に視線を下ろす。 
 
 モゾ。

「うん……名前は、子鮫しましょう」

 モゾッー。

「気に入った? よかったです」

 うんうんっと頷く。

「鬼鮫さんもありがとうございます。こんなサプライズをしてくれるなんて」

「えっ? ああ、それはよかった」

 ……鬼鮫さんは何も知らなかったみたいです。

「愛刀、子鮫ゲットですっ!」

 子鮫を手に上に持ち上げる。
 普通の刀よりもずっと重量感があり、重い。
 鮫肌と同じ能力を持っているみたいなので、かなり便利かもしれない。
 同化とかもできるのだろうか?

「早速、刀の使い方を教えてあげましょう」

 そういえば、霧の忍刀七人衆といわれている、プロフェッショナルが目の前に。

「はいっ! お願いします」

 刀の師匠としてはこれ以上にない適任者だ。




 おまけ①

 少年とお面 


「ナイ、プレゼントだ」

 イタチさんが任務から帰ってきたと思ったら、小包をぼくに渡してきた。

「えっ! わ、悪いですよ」

「いいから、受け取れ」

 差し出されたので仕方なく。貰ってみる。
 よして、その場であけてみると。

「こ、これって……」

「欲しがっていただろ前?」

 木でできたお面。赤で彩色されたやつである。一番欲しいと思った。
 そう、湯隠れの里で見たあのお面が目の前に。
 恐るべし、洞察眼。

「本当にくれるんですかっ!」

「ああ、喜んで貰えてよかった」

「すっごくうれしいです」

 イタチさんはぼくをみて優しく微笑む。

「どうして、お面が欲しかったんだ?」

「だって、忍者が付けてるみたいでカッコいいんじゃないですか!」

 ぼくはイタチさんに笑顔を向ける。

「……そうか」

 イタチさんの表情が少し暗くなる。
 暗部時代、木の葉時代色々とあったからだろう。

「大切にします!」

 イタチさんを元気付けるように。ぼくはガッツポーズでお礼を言う。



 おまけ②

 少年と火鳥

「喝っ!」

 飛び上がった鳥が勢いよく爆発する。

「爆発はすばらしいっ! ……うん」

 テンションが高いデイダラさんを横目に、イタチさんからもらった火遁の巻物を見ている。

 火の鳥を出す術は存在していた。中忍レベルである。
 それを、アレンジして、爆破までこぎつく。
 爆破の術として、分身爆破の術の印も教えてもらった。

「大きさは小さくてもいいんだよな。誘導にも使えるし、小鳥サイズ」

 そこは、チャクラコントロールだけでうまくいく。
 大きいのを作るなら、その分チャクラを多くすればいい。

「で、誘導して爆破か……」

 火の鳥を出す術はそれなり方向転換はできるが、所詮それなり。
 きちんと軌道を操ることはできない。できたら、上忍レベルだろう。

 そのことからして、爆破含めようとすると、上忍以上のレベルになる。

「む、難しいです」

「ナイも頑張れ、オイラのようにな……うん」

 デイダラさんの額あてを見ると、横線が引かれている。
 数ヶ月前に里を抜けた様子だ。
 
 そして、デイダラさんの手のひらに、変な口がある。
 起爆粘土の術に使う例のアレである。
 よくよく見ると(原作でも思ったけど)、グロテスクである。

 気分転換に粘土をこねる。
 デイダラさんの真似をした起爆粘土ナイ風味である。
 実践で使う場合は、事前に作った物を呼び出して、使う。
 威力は起爆札程度プラスアルファ。しかし、ある程度操作性が聞くので、なかなか良い。
 しかし、造形に関して言うなら、これまたデイダラさんのパクリ。
 手は器用なので、それなりに見た目は良い。

 これを、火遁でやりたいのだ。
 だが、やはり難航中。
 今は、火の鳥をきちんと操作できるように調整中である。
 それもまだまだうまくいくまで、まだまだ先である。

「火遁・火鳥の術」

 少しアレンジした印を結び、息を吸い、息を吐く。

 口から現れるのは、体長二メートル程度の火の鳥。
 なかなか綺麗である。

 手である程度、右、左とさせる。
 まだまだ操作に難点あり。オリジナルよりは動けるが、大きい動作しかできない。

「見栄えはいいな。オイラのよりはまだまだだがな……うん」

「ですね。あとは、あれをどうやったら爆発させるかなんですよね」

 完成はまだまだ先が見えない。




あとがき
鮫肌が開花しました。
鮫肌が可愛いので、ナイにも使わせようと思い、このような感じに。
あとは子鮫を使いこなせる過程で、いくつか技術(忍術、能力)を習得してナイのチートは終わる……?
今書いてる分読んでると、チート終わってないような。現在進行形でレベルアップ中。
おまけ②のほうの忍術は、ナイが子鮫と共にとっておきとして使えたらなあっと思っています。

あとどうでもいいのですがなんとなく鮫肌、ブリーチにも持っていけそうな感じですね。斬魂刀鮫肌。
始解→鮫肌 卍解→持ち主と同化。どっちかと言うと、破面っぽいですけど、卍解は。

次話更新で、少年と忍刀シリーズ終了です。



[16066] 第十九話 少年と忍刀④ 最終編
Name: copu◆b7c18566 ID:31db10ca
Date: 2010/02/26 06:08
 子鮫を手に入れてすでに、半年がたつ。
 二度目の冬を迎える。

「やはり、非力なのが問題ですねェ」

 鬼鮫さんによって、勢いよく後ろに吹き飛ばされる。
 受身を取り、すぐさま立ち上がる。

「ですね」

 速さは悪くはないらしい。しかし、どうしても、腕力が足りない。
 八歳にそれを求めるのはおかしいとは思うが。

 でも十二歳の自分の姿を思い浮かべてみると、どっちにしろあまり腕力はなさそうだ。
 何か良いアイデアはないだろうか。



 第十九話 少年と忍刀④ 最終編



 数ヵ月後。

「木の葉旋風」

 木の葉流体術は、体術の修行として覚えている。
 他にも霧隠れ流のも習っているが。
 基本的にクナイや子鮫を使うときは、霧隠れ流の動きが定着している。

 勢いをつけて、丸太へ回し蹴り。

「あっ! 勢いをつければいいのか」

 一つ閃いた。使えるのでは。

 早速、端に置いてある子鮫を取りに行く。
 柄を見る。
 大きさも問題はなさそう。

「子鮫。鎖を繋げてみていい?」

 モゾッ。

 子鮫は動く。

「別にいいって、自分のことなのになあ……じゃあ、ためしにやってみよう。えーと、こういう場合は、サソリさんだっ!」

 改造はサソリさんに頼めばしてくれそうだ。
 鎖の準備もしなければならない。
  

 どういうことかというと、子鮫を鎖につなげて、鎖分銅などと同じ風に扱えないだろうか、ということだ。
 非力さをカバーするには、鎖を回して、腕力以外で子鮫の威力を上げればいい。

 そう思って目を付けた。



「ふふふ、鎖付子鮫です」

 サソリさんに付けてもらった。
 結構色々と言われる。
 毎日教わっているときにも言われているので、あまり気にならないけど。
 ストレスでも溜めているのだろうか? でも、何だかんだやってくれるので良い人だ。

 午後の体術は、ほどほどにしてもらい、子鮫の練習を行っている。
 
 ちなみに、鬼鮫さんにはまだ見せていない。
 なんとなく知っているかもしれないが、秘密にしている。きちんと扱えるようになったら、公開予定。

「とうっ!」

 鎖の投擲。
 やってみて思ったが、かなり難しい。
 熟練者になると、手元の鎖で操ることができるらしいが、かなりきつい。
 直線から左や右程度ならできるが。それ以降は……。ぐにゃぐにゃ、蛇みたいに操るにはどうしたら、いいだろうか……。

「あっ! 傀儡の術を使えば良いんですね。チャクラの糸で鎖を操作すれば……」

 思えば吉日。実行開始。


「サソリさんっ!!!!」

 一応ノックをしてから、勢いよくドアを開ける。
 すると、思いっきりぼくを睨んできた。

「ちっ、お前が夜以外に来ると、いつも厄介ごとを持ち込んだが」

「ですよねー」

 皮肉に負けずに、笑顔で言う。
 サソリさんは傀儡を作成中だ。

「……まあ、用事は何だ」

 何だかんだ、今まで断ることができないのを覚えているのか、最近はやたら素直である。
 困ったら、サソリさんのとこへ行け。実は心の中でいつもそう思っていた。

「くぐ「いやだ。帰れ」……聞いてくれるんじゃないんですか!? 傀儡の術教えてください」

 聞いてくれるっていったのに。
 結局言い切ったけど。

「お前はオレからなんでも習おうとするな。毒物の次は、医療忍術、そして、最後に傀儡だと。お前はオレの弟子でもねえんだ。帰れ」

 たしかに、そう言われたら仕方ないけど……。

「でも、イタチさんや鬼鮫さんは教えてくれますよ?」

「あいつらは置いとけ……てか、あいつらはなんでお前に忍者の指導してるんだよ。ここは、お前の家庭教師の集まりか」

「……サソリさんもそこに含むと思いますよ」

 サソリさんは思いっきりぼくを睨む返してくる。

「鎖の件もあれどうやって準備した? かなりの良い鉄だ」

「えーと、鎖は大蛇丸さんから……」

「やっぱりそうか」

 不快そうにいうサソリさんは言う。

「医療忍具もそうだな。今も連絡取ってるって事だよな」

「一応は……」

 仲が悪いのかな。元暁の相方だったし。原作でもカブトを派遣して殺そうとしていたし。
 サソリさんを見てみる。
 歳は取らないんだよね。
 いつか、手紙で可愛い系よりカッコいい系が好きよ。私って書いてたような……。
 もう一度サソリさんを見てみる……サソリさんはカッコいいと思う。イケメン? 羨ましいです。声もなんかいいよね。
 このことから考えてみると、大蛇丸さん何かした、という結論がでる。

「おい、何だ人の顔を見て」

「カッコいいなあっと思いまして」

「ハァ?」

「そういうこともあります」

 うんうんっと頷く。

「一人で勝手に解決するんじゃねぇ」

「いや、きっと大蛇丸さんの性格と、サソリさんの容姿を見ると。答えは一つしか……」

「黙れ……お前マジで八歳か? くそ」

 サソリさんは手で髪をぐしゃぐしゃとする。

「あいつが変態だって知ってたのか?」

「はい……イタチさんも近寄るなっていってました」

「たしか、イタチのやつも苦労してたみたいだな」

 何をしてたんだろう大蛇丸さん。

「その、ギブ&テイクの仲なので。はい」

「はー、で何で傀儡の術が必要なんだ」

 横道にそれて、やっと本題へ。
 かくかくしかじかっと説明する。

「面倒だ」

「そこをどうにか。お願いします。軽くでいいんです。鎖を扱うだけで」

「オレはそういうのが嫌いなんだ。なんで、妥協しなきゃならないっ!」

 サソリさんは言い切った。
 えーと、これは芸術家魂だろうか?
 発言からすると、教えてくれるのだろうか。

「頑張るんで、お願いします。大蛇丸さんにこの前希少って言ってた毒頼むので」

「……頼んどけ。あと、これもだ」

 サソリさんは紙をぼくに渡してきた。
 紙を見ると、毒以外にも色々と用具が書かれている。

「あの?」

「教えてやるよ。面倒くせぇが」

「ありがとうございますっ! 大蛇丸さんに頼んでおきますね」

「もう出てけ」

「はいっ! サソリさん大好きっですー」

「出てけっ!」

「……みんな好きですけどね」


 扉を閉める。
 なんか、サソリさんといるときは、口数が増える。






 傀儡を習い始めて数ヶ月。
 サソリさんの教える手際が良いのに驚いた。
 毒物や医療忍術教えるのもうまかったけど。
 手順を踏まえて教えてくれる。しかし、何度も失敗すると怒る。
 せっかちだなっとか思ったりも。 

「才能はあるぜ。くそっ。いやになる」

 不機嫌そうにサソリさんは言う。
 手が器用なので、覚えが良い。
 サソリさんも何だかんだ褒めてくれる。

 今のところ駄目なのが、体術しかない。
 大蛇丸さんにいうと、チートだっていわれそうな気がする。




 九歳になりました。
 皆さんから色々と誕生日プレゼントをもらいました。
 イタチさんからは本を。鬼鮫さんからは、子鮫に使える鞘を。でも、それは持ち運び用。実戦には白い布を巻くと思う。
 デイダラさんからは粘土細工。サソリさんからは……特には何も。ちょうどそのときから、傀儡の術を教えてもらっているの、それで良いと思う。
 というより、サソリさんから誕生日プレゼント貰うのはあまり想像できないでいる。 

 
 それから数ヵ月後。

「それで準備は、万全ですかね」

「はいっ!」

 鬼鮫さんと対面。
 半年以上、子鮫の改造をしてから見せてはいない。
 今日が初お披露目。

 それを踏まえて、鬼鮫さんと対決することになった。

 鎖分銅の要領で、子鮫を回す。

「ほー、たしかにそれなら威力を増やすことができますねぇ」

「では、行きますっ!」

 子鮫を投げつける。動きは単調なまっすぐ。
 鬼鮫さんは意図も簡単によける。
 しかし、途中で引っ張り手元の鎖を軽く捻ると、鎖の軌道は変わり鬼鮫さんに絡み付こうとする。
 これは、傀儡の術を使っていない自分の練習した成果である。

「なかなかですがね」

 少し感心した風に空中に飛び上がり、回避した。
 予想通り。
 ぼくの様子を見るために、技をよけるつもりなのだ。
 指を動かす。

 空中には逃げ場がない。今だっ!
 右指を動かし、チャクラの糸で子鮫を操作する。

「何っ!?」

 鬼鮫さんは驚く。
 子鮫が鬼鮫さん目掛けて飛んでくるからである。
 子鮫が左足をのぼり、鎖が絡みつく。
 
 そして、思いっきり鎖を引く。

「くっ」

 鬼鮫さんが地面に勢いよく墜落する。

「驚きましたよ。チャクラの糸……傀儡の術ですか。何でも習いますねぇ」

 身内に傀儡使いがいるので、ネタはすぐにばれてしまう。
 指を動かすのに大きな動作が必要なのもばれる証拠なんだろう。

「習えるものは習っておくんです」

「そうですか。それなら、一つ水遁の技を見せてあげましょう」

 えっ? 忍術あり? いや、傀儡の術は忍術ですけど……。
 や、やばい。
 鬼鮫さんが印を結ぶ。池が近くにあることも含め、印を見て多分水遁系。
 防御用に何か術を結ばなきゃ。いや、ここは相殺するように……。
 巻物を取り出す。間に合うか。

「水遁・水鮫弾の術」

 池から鮫を象った水の塊が飛び出し、襲ってくる。
 あれは、上忍レベルの忍術。
 
 巻物から小さな鳥が飛び立つ。間に合ったっ!

「暴っ!」

 勢いよく目の前が爆発する。
 爆発の衝撃でぼくも、後ろへ吹き飛ばされる。

「ほー、爆発で相殺しましたか……」

 使ったのは起爆粘土ナイ風味。
 巻物にストックしているので、あとは呼び出すだけ。
 受身をとれたので、怪我は特にない。

「ふー」

 と胸を撫で下ろす。

「もう九歳ですか……」

 考え深く鬼鮫さんは呟く。 

「えっ? あっはい。そうですよ」

 どうかしたのだろうか。




 おまけ

 蛇と鮫

 今日はイタチさんコンビもデイダラさんコンビもいない。

 なので、大蛇丸さんから教えてもらった忍術を練習することに。
 色々と巻物を貰った。
 たくさん手を出してもできないので、口寄せ関係のみにするつもりである。

 人生二回目の口寄せ。
 狙うは、マンダ。

 印を結ぶ。

「口寄せの術!」

 ボンッ!

 モクモクと煙が出る中、現れたのは、

「お前か……何で小さくなるんだっ!」

 狙い通りマンダが出てきた。
 でも小さい。

「小さくなるのはよく分からないんですけど……ファイト」

「餓鬼、馬鹿にしてるだろう」

 小さいながら睨んでくる。
 体長一メートルもあるので、普通の蛇と比べたら大きいだろう。

「馬鹿にはしてないんですけど……」

「チッ。用事がないなら、帰るぜ」

「えっ!? 折角口寄せしたのに。もう少しいましょうよ。話しましょう」

 モゾ。

 腰に付けていた子鮫が動き出す。

「ど、どうしたの?」

 布の拘束を振り切って、地面に着地。

「あっ? 何だこれ?」

 マンダは珍しいものを見る目つきで子鮫を見る。

「子鮫です。ぼくの刀ですね」

「……変わってんな」

 子鮫は刃を震わす。

「子鮫一体どうかしたの?」

 モゾ。
 
「えーと、誰だこいつは? 口寄せ動物のマンダさんですね。本当は山みたい大きくて、カッコいいんですよ」

 モゾ……。

 なんかシュンッとなって、落ち込んでいるように見える。

「帰るぞ」

「ええ、ああ、はい。ご苦労様でした」

 ボンッ。

「子鮫。君は相棒だよ……うん」

 モゾ。モゾ。

「うんうん。ねっ」

 モゾ。

 元気が戻った。
 マンダに自分のポジションを取られたかと思ったらしい。ポジションって何だろう。





あとがき
ナイはとうとう子鮫を扱えるようになったっ!
一応下読みしてもらっている友達がいるのですが、鎖ってなんか中二臭いっと言われました。た、確かに。そんな感じがします。
その下読みしてる友達NARUTOのナも知らなかったので、先週の月曜アニメ進めたら、今日までで百二十話まで観たそうです。恐ろしい。面白いっ! って言ってるので勧めてよかったですけど。原作知らないのに二次創作読ませる自分は……。
おまけはマスコット対決的な感じで書きました。



[16066] 第二十話 少年と温泉
Name: copu◆b7c18566 ID:31db10ca
Date: 2010/02/27 21:50

 久々にまた五人で共同任務に行くことになった。
 場所は違うが、また温泉街。

 今回は雪見温泉とは言わず、桜見温泉である。

 数ヵ月後にはぼくはもう十歳になる。



 第二十話 少年と温泉



 イタチさんと鬼鮫さんは任務でお出かけ中。
 今回は宿屋を借りた。
 ということで、

「デイダラさん。お風呂行きませんか? 露天風呂ですよ」

「今忙しい。ナイ一人で行ってろ」

 デイダラさんは何やら作業中。
 粘土細工?


 気を取り直して、テイクツー。

 ノックして扉をバッ! と開ける。

「サッ「出てけ」……」

 シクシク。

「最後まで言わせてください! サソリさん露天風呂行きませんか? 背中流しますよ?」

「一人で行け。オレは忙しい。それに、風呂は一人ではいる」

 サソリさんは何やら作業中。
 傀儡人形を弄っている。

「サソリさん……」

 ドンッ。

 チャクラの糸により目の前のドアが閉まる。


「インドアコンビめ。一人で入るからいいですよ。はー」

 小さくため息をつく。

「おや、ナイじゃないですか。どうかしましたか」

「ちょうどいいところにっ!」

 振り向くと、帰ってきたのかイタチさんと鬼鮫さんの姿がある。

「お風呂行きませんか? 露天風呂ですよ。ここ」

 すると、鬼鮫さんの背中にいる鮫肌がモゾモゾッと動き出す。

「鮫肌も行きたいですか? 子鮫も行きたいみたいですよ」

「私は暫くしたら入りたいと思いますが、イタチさんはどうしますか?」

「なら、オレは先に入ることしよう」

 鬼鮫さんは来ないのか。
 鮫肌が少し残念がっているように見える。

「イタチさんお背中流しますねっ!」

「ああ、頼む」



 桜が散っている。
 イタチさんの背中を洗ったて、湯船に使っている。

「良いお天気ですね」

「そうだな」

 快晴で、良い気持ちである。
 のんびりするのもいい。毎日修行で、結構大変だったりする。

「イタチさん」

「どうかしたか?」

「ぼくって強くなってますか?」

 筋や覚えがいいと言われているが、ぼく自身いまどのぐらい強いかよく分からない。
 戦う相手もイタチさんに鬼鮫さんだけだからだ。

「ナイは……強くなってどうするんだ?」

 ぼくは思わず、イタチさんをみる。
 イタチさんはぼくを見ずに、景色を眺めていた。

「……良く分かりません。ぼくはただ毎日が楽しいからそれで良いと思ってました」

 強くなるのはぼくにとっては、目標ではない。途中で出てきたもの。
 日々淡々としていたものを、楽しくするために忍術を習っていたと言っても良い。たとえ、修行が厳しくても、日々が充実しているのはいいことだ。
 強くなることはどうでもいいのかもしれない。
 でも、何故か強くなったほうがいいかもしれないっと心の片隅で思う。

「イタチさんは何か目標があるんですか?」

「……守りたいものがある」

 小さく憂いを帯びてイタチさんは呟いた。
 サスケのことだろうか。里か一族かを天秤に掛けた。そこには、平和か戦争も乗っている。そして、選んだのは里。

「守りたいものですか……」

 それは自己犠牲があるからこそ成り立つものだ。

「イタチさんはやさしいですからね」

「やさしい?」

 イタチさんが驚きをこめてこっちを見てきた。

「やさしいですよ。そうじゃなかったら、ぼくを助けてくれなかっただろうし。イタチさんは良い人です」

「良い人か……」

 どこかしんみりな空気が漂う。
 なんか気の利いたことを言えないだろうか。
 イタチさんの経験が凄すぎて何も言えない。

「イタチさん」

「どうかしたか?」

「何かあったら言ってくださいね。力になります」

「……ありがとう」

 イタチさんはこっちに近づき、額を小突いた。

「痛いですよ」

 イタチさんはきっと良い兄だったんだろう。
 なんとなく分かる。原作読んでも良い兄だって分かったけど。

 イタチさんの力になるのは?

「……忍者になればいいのか」

 という結果がでてくる。

「ナイは忍者じゃないのか?」

「まだ一人前じゃないと思いますけど――忍術使う子供?」

 多分まだそこら辺の気分。

「もうすぐで十歳か……」

「えっ? あ、はい」

 前に鬼鮫さんと同じようなことをいわれたような気がする。
 一体なんだろうか。




おまけ

 時間軸は幻術を習い始めて半年後辺り。

 少年と幻術

 イタチさんによる幻術指導である。
 最初は説明などが多かったが、ここ数ヶ月は実践が多い。

 写輪眼を持っていたからかどうかは知らないが、イタチさんは幻術に詳しい。

「幻術には数種類あるナイ分かるか?」

「はいっ! 気づかずに、現実を認識できなくさせるものと、精神的な苦痛を与えるものです」

「正解だ」

 前者は相手を道に迷わせたりするものなどで、後者は主に実践的で拷問にも使われたりするものである。
 どちらかというと、前者より後者のほうが幻術がときやすい場合が多い。
 前者は認識できたとしても、術者を倒さない限り解除できないことがある。

「幻術を解いてみろ。魔幻・奈烙見の術」

 視界からイタチさんの姿が消える。
 そして、

「うふふ、発見……」

 どこか湿ったような薄気味悪い声が肩越しに聞こえてくる。
 
「背中が「解っ!」」

 目をつぶり、すぐさま幻術を解こうと、印を結ぶ。

 目を開けると、イタチさんの姿が。
 無事に幻術は解けたようだ。

「その調子だ。うまく行ったな。ちなみに何が見えたんだ?」

「えーと、大蛇丸さんっぽいひとがいたみたいです」

 てか、それって大蛇丸さん怖いっていうものだろうか。
 ある意味怖い。

 漫画とかで読んだアレの怖さ。

 以下イメージ。

「みなさーん。最近怪しい人が出ているみたいなので、明るいうちに帰るんですよ」

 先生は、生徒に向かって注意を呼びかける。

「せんせー、それって女子しか関係ないしょ。男には関係ないんじゃないんですか? 毎回おれ等にも言うけど」

「山田君、最近は男の子でも危ないの。気をつけるのよ」

 イメージ終了。
 山田君って誰だろう? いや、いいや……うん。大蛇丸さんと会うとどうしても、このイメージが沸く。
 怖いな。

「それは、災難だったな」

 イタチさんも同情してくれた。

「次はランクを上げて、他のを見せてやる。簡単には解けないぞ。魔幻・臨死(みまか)の術」

 視界が一気に変わった。
 ここは、白い病室……向こうのときにいた部屋である。
 ぼくはというと、ベットに横たわっていた。
 視線を外に向けると、青い空が広がっている。
 上体を上げようとするが、力が入らない。

 誰かが入ってきた。

「もう……持ちません……すみません、力になれずに」

 白衣を着た男と、男と女。
 白衣の話をきいて、女が崩れた。

「もう手はないんですかっ!」

 男は詰め寄る。

「○△□君の症状は未だ解明されてません――国外でも期待は持てないかと……」

 ここで気づく。
 目の前にいる男と女が自分の親だと言うことを。
 順応しすぎていた。昔の記憶が霞む。そんな気分だ。

 死はいつも近くにいる。いや、今は多分違う。だからいただ。
 あのときのぼくならきっと、死というものがきても後悔はしないで、死ぬだろう。

 でも、今は違う。イタチさんがいて、鬼鮫さんがいて、デイダラさんがいて、サソリさんがいる。ナルト兄ちゃんもいるし、おまけで大蛇丸さんもいれてもいい。
 彼らと会って、少しぼくは変わった。
 淡々と凄いしていた日々が楽しくなる。
 日々が楽しい。ぼくはそれがとれもうれしかった。

 そう考えると、体が動くことに気がつく。
 両手を合わせて印を結ぶ。

「解っ!」

 視界が戻る。
 目を開けると、イタチさんの顔が見える。

「ん?」

 立っていたのではなく、横たわっていた。
 頭の後ろは……イタチさんの膝だろうか。

「大丈夫だったか?」

 イタチさんが額に手を当ててくる。

「大丈夫です」

 イタチさんに微笑む。
 頬に何かが流れた。

「……泣いているぞ」

「大丈夫です」

 もう一度、もう一度そういう。

「ぼくは大丈夫。毎日楽しいですから」

 目を拭き、もう一度イタチさんに微笑む。

「……そうだな」

 すると、イタチさんも優しい表情で笑うのだ。

「幻術の続きをやるぞ」

「はいっ!」

 今日も続く。明日も続く。
 だから、頑張れる。
 永遠には続かない。だからこそ、頑張れるのだ。
 この一秒を、この一分を、この一時間を、この一日を。
 大切にしたいと思った。 




あとがき
区切りの良い二十話です。
おまけの方は、本当は載せるつもりはなかったのですが、本編が短かったので、書き留めてた小話を持ってきました。シリアスっぽいのはやはり苦手です……。
次回、作者も思う。何でこうなった。世の中は不思議です。明日更新します。



[16066] 第二十一話 少年と初仕事
Name: copu◆b7c18566 ID:31db10ca
Date: 2010/03/05 19:36
 あんなところに子供が。
 視線の先には里との境界線にある塀に寄り添う子供影。日が暮れているので、そこは影で隠れ絶妙な死角になっている。

「おい、お前こんなところで何してる」

 服装自体も、暗色。怪しい。
 子供の姿だが、注意に注意を重ねる。

「振り向くな」

 背格好からしても子供。だが、油断してはいけない。
 背後に忍び寄り、クナイを首筋に当てる。

 しかし、子供はこちらを見ようと首を回す。

「チッ」

 舌打ちをしてクナイ刺す。

 グサリッ。

 首筋の急所を掻っ切る。
 すると、

 バチャッ!

 子供の体が水に変わる。
 これは……

「何っ? み、水ぶ……」

「螺旋丸」

 落ち着いた子供の高い声。
 気づいたら背後に気配を感じ、背中から何か圧迫感を覚え、壁にのめり込んだ。

 辛うじて首を曲げると、そこには暗色のローブを着た黒髪の子供。年頃は十かそこら。
 口から血が滴る。



 第二十一話 少年と初仕事



 すでに日が暮れて辺りは暗くなる。
 とある里の塀ギリギリでぼくは、イタチさんと鬼鮫さんを待っていたりする。
 武装は万端というわけにはいかない。子鮫を持ってくるのは心配だったので、置いてきた。もしものこともあるし。初陣に持ってこれなかったのは残念。
 服装は、オーソドックスな感じに。変わったところは、まず上半身から左腕に掛けて余裕を持って鎖を巻いた。子鮫がなくても、防御用や束縛用に使えるからだ。
 そして、指が出るタイプの手袋を嵌める。これは、大蛇丸さんから貰ったものである。
 度々あの人は、ぼくに未完成の術を渡しては感想を聞いてくる。この手袋もその一環。それに使う巻物も持っている。
 あとは、医療パックなどなどである。マントは柄がないが、イタチさんたちと同じ色。こっちはフードつきだが。

 なんで、こんなところにいるかというと、

 十歳になり、暫く経ったぐらいからだろう。

「ナイ、明後日きちんと任務に参加させようかと思うんだが」

 食事中、イタチさんに唐突に告げる。
 仕事って暁のやつですよね。 

「どんなやつなんですか?」

 その前にぼくを参加させていいのだろうか。

「強いて言うなら、斥候みたいなものですよ。私たちの逃げ道の確保ですねェ。里の境界ギリギリで待機なので問題は特にないはずですよ」

 鬼鮫さんがそう言う。
 思ったよりも楽そうだ。
 一緒に置く深くまで行かなきゃいけないかと思ってしまった。

「大丈夫でしょうか、ぼくで」

「心配することはない。ナイの力は下忍複数いても対処はできる。中忍相手でも普通に勝てるはずだ」

 イタチさんはそういうが、心配である。
 実戦経験ないし。

「……それで、一緒に来てもらう前に、オレ達について少し言っておきたいことがある」

 箸を置き、神妙な面でイタチさんは言う。
 それなら、わざわざご飯食べる最中に言わなくても。

「こいつだいたいのことは把握してるぜ」

 サソリさんが入った来た。
 今回は傀儡の中に入っている。基本自分の部屋以外は傀儡を着ている様子。
 イタチさんと鬼鮫さんは、サソリさんの本当の姿を見ていないと思う。

「だいたいとは?」

 イタチさんはサソリさんを見る。

「オレらの事とかな」

「うっ」

 言葉に詰まる。
 ある意味、サソリさんがぼくのことを良く知っていると言っても良い。

 イタチさんと鬼鮫さんの視線がぼくに集まる。

「ナイ知っていたのか?」

 イタチさんから戸惑いを感じる。

「知ってるって。えーと、鬼鮫さんは大名殺しや国家破壊工作など多くの大罪を犯して、霧隠れの怪人とか呼ばれたり、サソリさんが傀儡部隊の天才造形師と謳われ、赤砂のサソリとかで呼ばれたりとか。そして、イタチさんが……うちは一族を皆殺しにしたとかですか?」

 ぼくは表情が出ないようにみんなの顔を見た。
 一番感情が出たのはイタチさんである。どこか気まずいが、目はそらさない。

「驚きましたねェ。わたしたちのことを知っていたとは」

「あとで知ったんですよ。色々と読んでみたら。イタチさんやサソリさんもそうです」

「それで……よくオレ達と一緒にいたな」

 ぼくはイタチさんを見て少し微笑む。

「だって、皆さんぼくに良くしてくれているじゃないですか」

「変な餓鬼だ」

 といって、サソリさんは部屋を出て行く。

「はいっ! 任務についてなんですけど」

 イタチさんと鬼鮫さんは、ため息をついて任務の話を始めた。


 

 囮成功。
 ここで、静かに一人倒しておきたい。それに多分相手は中忍だと思われるし。
 右からも三人ほどやってきている。ただし、気配からして下忍程度。
 螺旋丸の威力は本家よりもずっと弱い。自分からも弱めにしたが、元々まだ完成していない未完成の螺旋丸。しかし、それなりに威力はあり、相手は壁にのめり込んだ。
 つまり、壁が壊れ、その音が響いたのだ。

「誰だっ!?」

 声が掛かる。
 バレタ。顔を上げる。
 塀の上に乗る、忍者三人。まだ若い。十二、三ぐらいだろうか。少年二人に少女一人。

「子供っ!?」

 そのうち一人が驚いたようにぼくを見る。

「お……お前ら、見た目手判断するんじゃねえ――お前らよりもずっと強い。逃げろ……」

 血を吐きながらも男は、下忍たちに言ったのだ。
 否螺旋丸の威力を少し弱くしすぎた。
 殺したくなかったというのもあるだろう。

 ぼくは実戦経験はないが、向こうもない。
 相手の反応が鈍い。

 牽制の手裏剣を投げつけ、逃げられる前に印を組む。

 忍法・朧分身

 塀の上、地面に数多の暗色の姿が現れる。
 そして、その子供らの顔には赤で彩色されたお面が付けられている。

 顔をばれたくないなら、隠せば良い。
 まだ慣れていないので、外していたが今はきちんと装着。

 たとえ、格下でも数が多いと面倒。相手も逃げる隙を探すので、実体のない分身だが数が多いのでハッタリは聞く。


 下準備完了。

 手裏剣を投げる。
 弧を描くように、狙いは少女へ。

 キンッ!

 クナイで弾く。だが、

「影手裏剣っ!」

 手裏剣の下にもう一枚手裏剣が。

「だ、大丈夫か?」

「問題ないわ。ギリギリで避けれたから」

 心配そうな少年の声。避けられたのは、予想通り。

「そこだっ!」

 もう一人の少年が、手裏剣を投げてくるが。
 すでに、待避済み。

 少し離れた塀の上に着地。
 チャクラの糸をひっぱる。すると、最初に投げたクナイや手裏剣が、少年らに降りかかる。

 相手は分身の中に本体がいると思うだろう。

 作戦はシンプル。
 思いっきり中間試験で雨忍がやっていたパクリだったりする。
 でも、あれはかなり有効な作戦。
 一人で多人数に戦うときも。
 それをヒントに色々と戦術を考えている。

 今はそれよりも、静かに印を結ぶ。

「魔幻・縛鎖十縛」

 ピクッと相手の動きが止まる。きっと、無数の鎖で絡まっている自分の姿を見ているのだろう。
 ちなみに、この幻術はイタチさんから教えてもらった。本物の鎖を使うから、中々便利である。
 注意が散漫になっているから、幻術も掛かり易い。
 普通に倒すよりも、幻術でやったほうが早いし安全。

「今のうちに、今のうちに」

 動けないうちに首筋へ一撃を食らわれ、気絶させる。

「なんかごめんなさい」

 パタリと倒れる少年少女。
 ふーっと軽くため息をつく。

「中々手際が良い」

 後ろから鬼鮫さんの声が聞こえる。

「お疲れ様です」

 イタチさんにも手を振る。

 ドンッ!

 鈍い音。
 背中に痛みを感じ、思わず顔をしかめる。

 さ、刺されてる?

 顔を後ろに向ける。痛みがひどくなる。

「……まだ甘えな」

 口から血を流す、さっき倒したと思われた中忍が、刀でぼくの背中から腹部を刺している。
 否螺旋丸の威力が低かった。思いっきりやればよかったのだ。命のやり取りで、やっとそれが分かる。

 男が吹っ飛んだ。
 それと同時に、ぼくは倒れる。

 トンッ

 仮面が下に落ちた。
 しかし、体は地面に落ちずに誰かに支えられる。

「ナイ、大丈夫か?」

 心配そうに見つめてくるイタチさんが目の前に見える。

「ご、ごめんなさい……大丈夫です」

 小さく微笑む。
 痛みが酷くなる。
 そして、だんだんと眠くなる……。


 
 上着に入れていた巻物が光ったような気がした。


 

「おい、大丈夫か?」

 視界がぼやく。

「い、イタチさん?」

 目が覚ます。

「痛いっ」

 起き上がろうとしたが、頭が物凄く痛い。

「無理はしないほうが良いわ」

 女の人の声?
 視界が鮮明になる。

 ……ここはどこだ?

 目を開けると、大きな木が見える。
 ここは森の中。
 そして、この人たちは……。

「木の葉の忍?」

 額あてが目に入った。
 しかし、服装がおかしい。今ならベストを着るだろうが、この人たちは、間接部を除いた簡易のよろいを着ている。
 そんなの時代遅れもいいところだ。一昔前以上の戦乱の忍の格好である。

「やっぱりお前、忍だったんだな。どうすんだ、猿飛。こんな状況に拾って。敵だったらどうする」

 黒髪で目つきが鋭い青年。歳は二十を超えていくつっといったところだろう。目印は、顎に十字の切り傷がある。
 見たことがない、いや、どこかで見たことがあるような気がする。どこだろう。
 いや、猿飛という名前も聞き覚えがある。それって……。

「声を荒げるな、ダンゾウ」

 落ち着いた声が聞こえる。
 少し無理をして、上体を起こす。
 すると、目の前には木の葉の里にいたとき毎日見ていた……。

「二代目……火影様?」

 二代目火影の姿があった。







あとがき
初のナイの戦闘シーン? 書いてて二回、三回と作戦が変わってしまいました。本当は幻術使わずに、水遁で攻めようかと思っていました。前半の水分身はその名残。実は、前日雨が降っていて水溜りがあったから水遁。という裏設定が。
最後らへんについて。
どうしてこうなった。書いてた時期はちょうど、ジャンプでダンゾウが死ぬ回想シーンを読んでたときです。歳設定は都合の良いように変えています。二十代前半です。
精神だけ過去にトリップ。でも、向かうに着いたときには体はあると。
そこら辺は全然考えてないので、色々と突っ込まれると困ったり……。
ここで切るのもあれですが、お待ちいただけるとうれしいです。



[16066] 第二十二話 それは昔のことでした 前編
Name: copu◆b7c18566 ID:31db10ca
Date: 2010/03/06 12:31
 暗闇の森を疾走する影。
 平らな場所を見つけるとそこで止まる。

「様子はどうですか?」

 イタチは慎重にナイを降ろし、傷口を見る。

「巻いていた鎖のおかげで、急所は外れている……しかし、出血が酷い」

 ナイの傷口から血が滴る。

「っ!? 追っ手ですが。思ったよりも早い」

 鬼鮫は森の奥を見て、呟いた。

「血が多く流しすぎたな」

 イタチはナイの額に手を当てる。
 顔色が悪い。

「……貴方らしくもない。私たちも甘くなりましたねェ」

 鬼鮫は鮫肌を抜き、地面に突き刺す。

「子鮫を持ってこないのが、こう来るとは……傷口は治せますね」

 ブルブルッ!

 呼応するかのように、鮫肌は刃を震えだす。

「イタチさん?」

 鬼鮫は目を細め、イタチを見る。
 イタチは袖を捲くっていた。

「血が足りない……オレので代用する」

「血液型はあってるんですか?」

「問題ない。同じはずだ」

 鬼鮫はそれを見て、少し笑う。

「起きたら、もう少し厳しくしないといけませんね」

「そうだな」

 二人はナイの顔を眺める。
 そして、鬼鮫は敵に向かう。

「鬼鮫……」

「忍刀がなくても、私は忍ですよ」




 第二十二話 それは昔のことでした 前編




「フム、他の里の子供にも名が知れるとは。有名になったな」

 少し感心するようにそういった。
 二代目が生きてて、猿飛ヒルゼンにダンゾウ。年齢的に見るとここは四十数年前?
 いや、待って。さすがにこの状況はありえないんじゃないのかな。NARUTOの世界に来たと入っても、タイムスリップとは……。

「感心しないでください。この状況どうするんですか?」

 メガネを掛けて青年が冷静そうにそう言う。

「ところで、お前はどこの里のものだ」

 二代目火影はぼくを見つめる。

「……ぼくは里には所属してません」

 歴史はだいたい知っている。
 まさか、未来から来ましたなんていえない。なら、嘘をつくしかない。
 それに里に所属していないのは本当だし。

「それは、一族としてということか?」

「はい」

 この当時はまだ、里には所属していない一族はいくつも存在している。ぼくがいた時代も存在しているが。
 一族……はあやしい。でも、あそこの人たち(暁)を一括りとしてみれば、一族だと考えても……。

「どうだカガミ」

「……嘘はついていないようですが」

 二代目火影の後ろで気がつかなかった。青年がいる。その瞳は写輪眼。観察眼は嘘をついていたら挙動で分かってしまっただろう。

 もう一度周りを見てみる。
 多分最初に声を掛けてくれたお姉さん。お団子を頭の上に作っている。そして、メガネを掛けた青年に髪の毛がツンツンしている青年。ツンツンしているほうは、ヒルゼン……後の三代目火影。
 黒髪に目つきが鋭いダンゾウに、写輪眼をもっているカガミと呼ばれた青年。最後に、多分秋道一族だと思われる青年。計六人。火影を入れて七名だ。
 
 ぼくは、この編成を知っている。漫画で読んだことがある。見たことがある。

「どうしてこんなところに?」

「気づいてたらここに……」

 わけが分からない風に首を振る。たしかに、気がついたらここにいた。

「……最後に聞く。木の葉の敵ではないな」

 殺気が混じる。
 ぼくは首を横に振る。
 みんなの視線は、カガミに集まった。

「嘘はついていない様子です」

「そうか……何歳だ」

「十歳です」

 火影は突然、ピクッと頭を上げ周りを見渡す。
 そして、下に手を付ける。

「囲まれている……影分身も含め二十か」

 原作どおり。
 だが、ぼくのせいで囲まれた感じを受けてしまう。

「小僧。お前のせいではない。元々追われているところだった。気にするな」

 どうからどうみても、ぼく足手まといですよね……。

「この追跡力からして、雲隠れ……手練れの金角部隊か」

 火影は、目を瞑りながら冷静に判断しているようだ。

「こちらは二代目火影様を含め七人と少年一人。これじゃ、とても……」

 メガネの青年は言う。

「敵はまだこちらの位置を把握してない。ここは、待ち伏せをして不意をつき突破口を」

「無理だ……。この場合誰か一人を陽動で気を引くしか方法は……」

 お姉さんが言ったが、すぐさまカガミに反論される。

「囮役……まず命はない……」

 秋道の青年がそういうと、暫し静かになる。
 漫画だと、ここでダンゾウの葛藤シーンが入ったはず。

「あの。ぼくがやります」

 手を上げる。

 一気に視線が集まった。

「そのすみません……ぼくのせいで。ぼくが時間を稼ぎます」

 緊迫した中、手が勝手に動く。

「いや、オレがやります! 君は駄目だ」

 ヒルゼンが手を上げた。
 駄目だという理由は分かる。
 まだ本当に味方かどうか分からないからだ。簡易式の尋問程度じゃ所詮そんなもの。

 ぼくは静かになる。

「心配するな。こう見てもお前らの中じゃ、一番できると自負してる……死にゃあしないよ」

 ヒルゼンはダンゾウの肩を触る。

「これから皆を頼むぞ、ダンゾウ。お前なら……」

「黙れ! オレが手を挙げようと思っていたのに! 一人で良い格好するな! 囮役はオレがやる。」

 ダンゾウはヒルゼンの手を払いのけ、語彙を強める。
 あれ? ぼくは軽くスルー。してもいいけど。
 ぼくはダンゾウを見る。にしても……。

「ダンゾウ……」

 ヒルゼンは少し驚いている様子だ。

「オレの父も祖父も戦場で忍として死んだ。自己犠牲は忍の本文……!!

「囮役はオレが行く……お前たちはこれからの里を守っていく若き火の意思達だ」

 静かに火影の声が響く。

「ダメです! アナタは火影ですよ!! 里のアナタ以上の忍はいない!」

「ダンゾウよ。貴様はサルといつも何かあるごとに張りあっていたな……だが、この場で必要なのは仲間同士の結束だ。私的な争いを待ちこむな。ダンゾウ……サル……その歳で焦るな。いずれ時は来る。その時まで、その命とっておけ」

 火影はまたぼくを見つめる。

「十歳の小僧が気にすることではない。こいつらは、木の葉でも優秀な忍たちだ。その歳で自ら命を落とすことはない」

 気にするなといいたいのかな。

 火影は立ち上がり、

「里を慕い、貴様を信じるものたちを守れ。そして育てるのだ。次の時代を託すことのできるものを。明日からは貴様が……火影だ」

 ヒルゼンに向かっていった。

「ハッ!」

 ヒルゼンは頭を下げる。

 その時のダンゾウの顔は何ともいえない、悔しみや色んな感情が見える。
 
 そう、なんとなくダンゾウはイタチさんとそっくりなのだ。
 ぼくはそう感じた。 


「名はなんという」

 もう一度火影はぼくを見下ろす。
 本当のことは言えない。記録が残るとやっかいだ。ここにいる半数は最低限今も生きている。

「な、ナナシです」

 名前がないから名無し。ナイと同様、ある意味ぼくにピッタシな名前である。
 運が良かったのは、うちはの青年が今は周りを警戒していて、ぼくを見ていなかったこと。
 即興だったので、もし見ていたらばれていただろう。



「ナナシ君は生まれはどこなの?」

 枝から枝へ移り渡る。
 森の中を走る。二代目は囮役のため、ぼくを含め七名で脱出した。
 前二人、真ん中ぼくを左右で挟み三人。後ろ二人という陣形。

 ぼくが真ん中は監視の意味もあるし、足でまといになるので真ん中に配置と言う意味もあるだろう。

「一応火の国です……」

 話はしてはいけないはず。、だが空気が重いため、その気分展開も兼ねてお隣にいる姉さん、コハルさんが声を掛けてくる。
 全員の名前も教えてくれた

「あっそうなの。家族は?」

「いません……一人で倒れていたら、助けられたんです」

「ごめんなさいね」

「いえ、今のご時世ですから」

 なるべく嘘はつかないようにする。

 前を歩いていた、うちはの青年、カガミさんは手で止まるように合図をする。
 枝に着地。気配を探ってみると、複数人感じられる。数はそこまで多くはない。

「まさか、二代目火影様がっ!?」

「いや、違う。そこまでの手練ではない……後続の部隊が先回りしていたのか」

 ダンゾウさんが声を荒げるが、カガミがそれを否定する。
 ぼくでも気配を感じられると言うことは、中忍程度。

 カサッ。

 木々が揺れる音。
 上を見てみると、クナイや手裏剣が落ちてくる。
 四、十、二十、数が多い。

 ジャラ。左腕を振り、鎖を投げつけ払いのける。
 傀儡の術はまだ使わないが、準備をしておく。

 気配に気づき、左右を慌ててみる。

「囲まれている」

 他の六人も気づいている。
 その数目算二十。
 雲隠れの額あてをした忍びが。

 だが、気配は薄い。

「実体はない」

 カガミさんが皆に忠告をする。
 こういうときの写輪眼は便利である。

「危ないっ!」

 コハルさんの声と同時に、背後に気配を感じる。
 指を動かし、鎖を操作。背後にいるものを巻きつけ、引っ張る。

 グシャッ!

 二つに切り裂かれる音。

「土分身ですか……」

 この中で一番弱いぼくを瞬時に狙う。
 危ない……。年齢的に見てもぼくが一番弱く見えるだろう。陣形のど真ん中だし。

「中々やるな」

 ヒルゼンさんがこちらを見て、にやりと笑っている。

「小さい子ばっかり、戦わせない」

 コハルさんがそういうと、残りの五人は瞬時に動く。疾い。
 念のため、鎖は待機状態。ぼくの周りをとぐろを巻くように、浮かばせておく。

「火遁・鳳仙火の術」

 最初カガミさんが炎の塊を五箇所を襲い、そこを残りの四人が向かう。

「何でばれた……写輪眼だとっ!? クソッ……」

 敵の忍びの声。
 一分もしないうちに、幻術は解けていく。
 警戒は解かず、もう一度慎重に気配を読む。
 同じ過ちは犯さない。

「ナナシ平気だ。しまっていいぞ」

 カガミさんにそう言われたので、鎖を左腕にしまう。

「チャクラの糸……傀儡の術か」

 瞬時に見抜く、写輪眼が羨ましい。

「その流れです……傀儡は使いませんが」

「砂の忍っていうわけじゃないのか」

 鋭い眼光でダンゾウさんはぼくを見る。
 小さく頷く。

「そんなに見ないの。国境までもうすぐよ」

 木の葉の国境まで向かっている。
 国境には、木の葉の部隊が待機しているそうだ。
 その後ぼくはどうすれば良いのだろうか。 

「ついたらどうするんだお前は?」

 不安が顔に出ていたのだろうか、ヒルゼンさんが声を掛けてきた。

「えーと、どうしましょうか?」

 首を傾げる。
 本当にどうしよう。
 どうやって、ここにきたのだろうか。

「なら木の葉の里に来るか? 若いし、有望だ」

「猿飛っ! スパイかもしれないだろ」

 声を荒らげるのは、ダンゾウさん。
 ヒルゼンさんと比べると性格もまるっきり違う。

「決めるのは、里の上層部だ」

 ホムラさんが静かに言うと、二人は黙る。

 ぼくは後ろを眺める。

「どうかしたの?」

「大丈夫ですか? その、火影様」

 歴史上まだここでは死なないはず。だが、心配になってしまう。

「大丈夫だ。あの方は強いっ!」

 ヒルゼンさんは言い切った。

「ああ……そうだ」

 後ろに控えているトリフさんもそう言う。

「信頼しているんですね」

 里長か……。


 国境まで着くと、無事に木の葉の部隊と合流できた。

「そこの子供は?」

「ほ、保護してくれ」

 少し困ったようにヒルゼンが言う。

「監視も付けろ。スパイの可能性もある」

 ダンゾウが付け加える。
 木の葉の忍の視線が少し痛い。

「ダンゾウ……」

 ヒルゼンが詰め掛けようとするが、

「だ、大丈夫です。ヒルゼンさん」

 間に割ってはいる。

 

 軽く尋問タイム。

 筆頭はカガミさんだ。後ろに忍が二人控えている。
 武装解除として、手裏剣やクナイなどは奪われた。
 鎖はそのまんまなのだが。

「名前はナナシでいいんだな」

 ストレートです。困りました。

「そ、そのナナシで良いです」

 とかしか良いようがない。

「どういうことだ?」

「名前……ないんです。だから、ナナシでいいです」

 ナイというのはぼくの名前ではない。口寄せできて、皆そう呼ぶのでナイで良いとは思うけど。

 カガミさんが難しそうな顔になる。後ろの忍と少し話す。

「何故あそこにいた?」

「分かりません。気づいたらあそこにいました」

「あそこにいる前は何をしていた?」

 とある里に来ていて……、刀で刺されて……ん? 巻物が光ったような……。

「すみません。ちょっといいですか? 取りたいものが……」

「ああ、いいが」

 警戒をしながらも許可してくれた。
 巻物は取られていない。
 大蛇丸さんからもらったあの巻物が光ったのを覚えている。
 とって、開いてみると、

「それは何だ?」

「未完成の時空間忍術の巻物です……」

 それは、飛雷神の術。術式を付けた場所に移動する時空間忍術。
 四代目火影が使っていた忍術である。
 大蛇丸さんはそれを再現しようとした。しかし、まだ未完成。巻物を使わない限り、術式が安定しない。その安定度もまだまばら。ぼく自身がゆっくりと調整しているところ。ここまで、最低限の基礎まで完成させた大蛇丸さんはすごいとは思うが。
 そして、術式を改良したのが、この巻物。

「文字が消えてるっ!」

 右端の文字が薄れている。この前見たときはそんなことはなかった。

「口寄せの術と似たようなものか?」

「あっはい。別なところに移動する忍術みたいんですけど……未完成で」

 すると、カガミさんは顎に手を当てる。

「なるほど、未完成の時空間忍術の影響であそこにいたのか」

 一人で納得してくれた。
 いや、その推測はあたっているかもしれない。
 この巻物自体もぼくがアレンジを加えたものだ。意外とありえるかもしれない。タイムスリップなんてありえたら困るけど。

「それを渡してくれるか?」

 ぼくは顔をあげ、カガミさんと視線を合わせる。

「これは……ダメです」

 これは四代目が使う忍術の基礎になる。これは見せられない。
 歴史がどうとかもあるし、危険だ。

「君達一族のものだから仕方ないだろう」

 一族特有の秘伝は口外しない。それは、忍として当たり前だ。
 カガミさんは納得してくれたようだ。
 だが、後ろの人たちが納得しているかどうかが怪しい。

「ところで、ナナシ。木の葉に来る意思はあるのか?」

 今度は、カガミさんからぼくを見てくる。

「今のぼくは……一人ですから。もし、大丈夫なら行きたいです」

「一人? 家族はいないといったが、拾って忍術を教えてくれた一族は?」

 横に首を振る。
 ここにはいない。それは、本当なので洞察眼では見抜けない。
 カガミさんもうちは一族なので、イタチさんの面影を感じる。
 親戚だろうな。

「……そうか。できる限りのことはやってみよう。まだ、監視はつくが我慢してくれ」

 そう言い締めて、尋問終了。



 木の葉の人たちには悪いが、暇である。
 一日二代目火影様を待つことになった。

 監視は三人ほど。
 話すつもりはなく、少しはなれたところからこっちを見てくる。

 話しかけてくれるのは、ヒルゼンさんにコハルさん、カガミさんの三人。それについてくるように、ホムラさんとトリフさんも来てくれた。
 それでも、そわそわしている。

 木の葉に渡してもいい忍術として、いくつかメモをしている。
 それをもって木の葉に行けば、ある程度は保障してくれるはず。
 選別は悩む。一歩間違えれば歴史を変えるかもしれない。

 顔を上げる。
 騒がしくなったのだ。
 耳を潜める。

「火影様が戻ってきたぞっ!」

「やはり、我らの火影様だ」

 戻ってきたようで、安堵が漂うが、

「誰か、医者を。解毒だ」

 相手の毒に掛かってしまったようだ。
 パッとみ、木の葉の医療を見てみたが、やはり四十年前。それも、医療が進んでいた木の葉ではない。かなり酷かった。ぼくがいた時と比べるとである。

 気になったので、少し近づくことに。

「まさか……あれは雲隠れが最近使うようになった毒――まだ、解毒する方法が」

 一人の忍者が、サルトビ等に説明しているのが見えた。
 色々言い争っている。

 今後も普通に二代目火影は生きていた。
 なのに、毒を解毒できない。
 そして、きっとぼくはその毒を解毒できる。
 毒の歴史は覚えさせられた。解毒方法も。
 ぼくが解毒しても問題ないのでは?

 近づく。

「あの、ぼくに見せてくれませんか? その……ぼくの一族はそういうの詳しかったので」

「任せられるかっ!」

 開口一番が、ダンゾウさんのその一言。
 まあ、当たり前か。

「できるのか?」

 カガミさんが次に動く。

「多分、その毒ぼくは知っています」

 他の忍たちが、あの子は誰だと噂しているのが聞こえる。

「任せる。オレが責任を持つ」

「それ以外方法はないみたいね」

 サルゼンとコハルは周りを見る。

「チッ。監視は付ける」

 ダンゾウは折れたようだ。

「はいっ!」



 二代目火影様はベットの上にいた。
 傷自体は深くはなさそうだ。

「意識はあるみたいですね」

「ああ……小僧どうかしたのか?」

 驚きながらぼくを見てくる。

「ぼくが診ます。質問に答えてください」

 血圧を取りながら、質問を行う。
 痛み、痺れ、経過時間、ありとあらえる症状を。

「高山にのみ生息する毒物ですね。間違いありません」

 今も幅広く使われている毒物だ。
 ポーチから解毒用具を取り出す。
 ちょうどストックしている粉末がある。それを使えば、解毒可能。
 それを、控えている忍に渡す。

「水に煎じて飲ませてください。コップ一杯分に対して、小さじ二つほど。一日もしたら毒素は抜けます。明日には動けるはず」

 しかし、その忍はどうしようか困りこける。

「飲もう」

 二代目火影はそう言う。

「ナナシを信じる」

 そして、薬を飲んだ。

「傷口はどうですか?」

「たいしたことはない」

「見せてくれませんか?」

 ぼくはこのやり取りで、木の葉に見せる術が決まった。
 いや、いいのか怪しいが。これにしようと思う。

「これでいいのか?」

 包帯を捲る。

「あの大丈夫ですから」

 火影様にも後ろに控えている忍者にも言う。

 印を結ぶ。

 治傷術

 医療忍術の基礎で中忍レベル程度。外傷しか治せないが、便利である。サソリさんが教えてくれた。
 チャクラコントロールが得意なため、習得は思ったよりも速い。一言言うが、医療忍者になるつもりはない。サポートもできればと思い習得しただけ。
 ランクもあったが、影分身よりも覚えるのは早かった。

 手を患部に当てると、傷口が治っていく。

「これはっ……」

 二代目火影が感心する素振りを見せる。

「医療忍術です。一族の一部が使っていたものです」

 ぼくの予想が正しければ、医療忍術というものはまだこの時代には存在していない。それっぽいのはあるだろうが、まだまだバラバラで統一されていないはず。
 医療忍術を木の葉に渡そうと思う。 






あとがき
お久しぶりです。これは前半、後半の二パートの話です。ここでナイの血液型が決まりました。どうでもいいことですね……うん。
少しご連絡が。
オリジのものをきちんと取り組みたいと思い、ナイ修行編、ナイが四人から旅立ったら、一度更新停止しようと思います。中断まであと、二話か三話程度です。
続きは四月に入ったらにしようと思います。
たくさんの方々に読んでもらっているか中、こういうことを言うのはアレだと思いますが、ご了承ください。
一時中断までお付き合いよろしくお願いします。



[16066] 第二十三話 それは昔のことでした 中編
Name: copu◆b7c18566 ID:31db10ca
Date: 2010/03/10 17:28
 目の前には、懐かしい木の葉の里が。
 ぼくが知っているものよりもずっと小さく、戦の雰囲気が漂っている。
 でも、やはり木の葉の里。


 

 第二十三話 それは昔のことでした 中編




 木の葉に来てから一週間。
 二代目火影を助けたという、ことは多く歓迎されて里に入った。
 しかし、上層部はまだまだ議論中。

 見知らぬ忍術を使っているからである。
 まあ、いいけど。

「ナナシさん手裏剣の修行見てくださいっ!」

 わらわらと子供たちが近寄ってくる。
 何故かぼくはアカデミーにきている。
 このときのアカデミーは今よりもずっと小さい。

 ある程度歳が近い子もいるので、過ごしやすかったりもする。

「はい。いいですよ」

 ところで実は手裏剣やクナイを投げるのはあまり得意ではない。
 傀儡の術を覚えてから、チャクラの糸を使うなどして軌道を操作することが増えたからである。
 なので、自力の命中精度はあまりよくない。けど、ある意味百発百中。
 インチキです。

「あの、クナイが浮かぶやつ見せてください」

 生徒から指名が入るので、その術をお披露目することに。
 いくつものクナイをチャクラの糸で連結させ、空中に停止させる。

「おーっ!」

 生徒たちから歓声が。
 雰囲気は手品のショーである。

「操襲刃」

 腕を振って、クナイを的に向かわせる。
 一個も外すことのないように軌道も調整。

 トットトッン。

 一個も外すことなく綺麗に的に当たる。

 パチパチッ!

「スゲーッ!」

 拍手と歓声が起こる。
 でも、絶対クナイを投げる練習にはなっていない。
 ぼくはちょっと恥ずかしいように、頭をかいている。

「ほー、今のは中々凄いな」

「ヒルゼンさん」

 振り向くと、ヒルゼンさんの姿が、度々顔を覗かせにきている。

「楽しくやっているみたいだな」

「はい、それなりに」

「ナナシさん、ナナシさん。今度はオレの見てくれよ」

 子供がそう言ってきたので、ヒルゼンさんに頭を下げてその場を後にする。




「下手ね、自来也」

「静かにしろ綱手」

 投擲をしている二人の子供。歳は五歳だ。
 名前的に見ても、うん。今後三忍になる子供らである。

「くそっ」

 下手と言われているが、十分うまい。
 比較対象が同じ歳の大蛇丸だったり。

「握り方に癖があるね。きちんと持たないと、手裏剣以外のクナイや忍刀を持つときにも出てくるよ」

 気づいたことがあったので、アドバイスをする。

「な、ナナシさんっ!?」

 綱手は驚きながら、こっちを見てきた。
 それに対して、小さく微笑み返す。

「こ、こうですか?」

 ちょっと無理しているような感じの敬語口調。
 最初ぼくに対して、自来也はタメ口で話していたら、突然「馬鹿っ! 年上なんだから敬語使いなさいよ」っと綱手に殴られていた。

「そうだね。握り方は大事だよ。すばやく忍具を取り出すことは、必須だからね」

「綱手さんは握り方はうまいね。手が器用なのかな」

「あ、ありがとうございますっ!」

 少し顔が紅くなっている。
 可愛らしい女の子だな。

「ん?」

 他のグループが騒がしいことに気がつく。

「な、何やってるの!」

 少女の悲鳴。

「動く的のほうが良いだろっ!」

 少年の怒声。
 なんか、いやな感じがするので、早々に近づいてみる。

「はー、駄目じゃないか。動物を傷つけるのは駄目なんだよ」

 少年らが、小鳥に向かって手裏剣を投げていた。
 命中はしていないが、羽にかすって飛べないようだ。

「で、でも……」

「でもじゃないです。それに、忍者は動物と深く関わりあっています。野生動物でも思いやることは大切なんですよ」

 少年はばつが悪そうにしている。

「ナナシさん。この子……」

 綱手さんが小鳥を持ってきてくれた。

「傷は大丈夫ですね」

 印を結び、小鳥の傷に手を当てる。
 数秒すると、その小鳥は不思議そうに傷口を見て、飛び去った。

「うわあ、すごいです」

 間近で見ていた綱手が驚くように言った。
 周りの子供たちも一体何かあったのかと驚く。

「医療忍術です。傷や病気を治せたりできるんですよ。ぼくは、骨折までしか治せませんが」

 綱手が目をキラキラさせてみてくる。

「む、難しいんですか?」

「精密なチャクラコントロールが必要です。今の術も中忍以上の難しいものにあたります」

「ナナシさんってやっぱりすごいんだ」

 自来也が感心するように言った。

「あ、いや、チャクラコントロールだけは得意だったので」

 今現在のスタミナはあまり多くはない。子鮫があるので、供給できるが。
 しかし、チャクラコントロールはイタチさん、サソリさんのお墨付きである。

「でも、傷を治す忍術か……便利だけど、実戦的じゃあ」

 少年が一人そういうが、

「戦場にその医療忍術が出来る人がいたら、戦況は有利になりますよね」

 利発そうな声。大蛇丸である。治すところは見ていたらしい。

「そうですね。忍者の死亡数も減って、戦況は有利になります……でも、医療忍術習得は並みの術とは違って医学知識も必要で、育てるのが難しいんです」

「えー、じゃあ、頭良くないといけないの?」

「そういうことです。君はもう少し頑張ろうね」

 少年の頭を軽くたたく。
 すると、笑い声が起こる。


 気配を感じ、振り返る。

「お時間です」

 額あてを付けた木の葉の忍だ。

「分かりました。皆またこんどね」

 子供たちに手を振って、後にする。
 向かう先は、火影の執務室。

「わざわざご苦労だった」

「あっいえ。それで?」

 部屋には里の重鎮や有力一族の頭が集まっている。
 その中にポツンといる十歳の子供。

「ナナシがいた一族の忍術を渡してくれたら、木の葉での生活は保障するという結果になった」

 予想通り。

「それでいいです」

 ぼくはすでに、メモをしていた紙束を渡す。

「医療忍術です。ぼくが使えるものから使えないものまで。分かる範囲で原理も書きましたが、後半はまだぼくの手じゃ全然終えないので説明もままならないです」

 二代目火影様は、それを一通り見ると、医療班と思われる忍に渡した。
 ページをめくっている。

「か、画期的です。まさか、ここまで洗練された忍術があるとは」

 驚きの声を上げている。
 まあ、戦の歴史分の重みはあるはずだ。

「しかし、簡単には使えない様子です。精密なチャクラコントロールが必要で、候補生を集めるのも、有望な者ではないと無理でしょう」

 的確にそう判断するのは、やはり歳の功。
 ぼくもそれに同意するように頷く。

「そうか……ナナシ。最後一つだけ。木の葉隠れの里にようこそ」

 ぼくは頭を下げる。



 夕暮れ時、監視は一応解かれている。
 里の周りには感知結界があるので、出たらすぐにばれるだろう。

「あれって、ダンゾウさん?」

 ダンゾウさんの姿が見えた。
 ちょっと顔色は良くない。
 まあ、二代目火影様がほとんど火影はお前だヒルゼンっといったので当たり前なのだろう。

 少し気になったので後を追うことにした。
 追跡はなれてはいないので、少し距離を置いていくことに。

 里の崖を登っている。
 頂上についた。
 木々の間からみえる景色は……。

「綺麗……」

 夕日に染まる木の葉の里。
 ここから木の葉の里が一望できた。

「誰だっ!?」

 思わず声が漏れてしまい、ばれてしまう。
 隠れるのもあるので、素直に姿を見せる。

「お前は――何でここにいる?」

 鋭い目つきで問いだしてくる。

「その歩いているのを見かけて、気になったので……」

 少し不機嫌そうなダンゾウさんを横目に景色を堪能する。

「良い景色ですね」

「……ああ」

 返事は返してくれた。
 少しうれしい。

「こういう人が多いとこに住むのは久々なんですが、木の葉は良い里ですね。」

「当たり前だ。木の葉は……里の中じゃ一番だ」

 誇らしげに語るダンゾウ。
 当たり前かもしれないが、聞けるとは思わなかった言葉を聞いた。
 目をパチリ、パチリとしてしまう。

「何だ?」

 それに気づいたのか、また不機嫌そうになる。

「いえ、その。やっぱり、ダンゾウさんもこの里が好きなんですね」 

「オレは木の葉の里の忍びだ。この里、火の誇りを持っている」

 里の忍びか……良く分からないや。
 でも、木の葉の里は良いと思う。内面は色々とあるのだろうが。
 
「火影様を助けてくれて、ありがとう……悪かった、あの時は」

 暫し無言の中、ダンゾウさんが口を開いた。

「えっ? いえ、たいしたことじゃないです。ぼくこそ助けてもらったみたいですし」

 そういうと、ダンゾウさんはサッと視線を外した。
 えーと、たしか、置いとけとか拾うなとか言ってたんだよね。あの時。

「忍なら仕方ないですよ。状況判断が一番です」

 ぼくなら、余裕があったら助けただろう。必ず助けるとは言えない。

「……お前は忍とはどんなものか分かるか?」

 躊躇う風にぼくに聞いてくる

「言葉通り、忍び任務を全うすることじゃないんですか? でも、それだけが全てじゃないと思いますけど」

 忍びはいかなるときも感情を出してはいけない。
 でも、感情を出すことは悪いことじゃないと思う。冷静さは大事だが。
 仲間を思うことも大事だ。自己判断に委ねられる。感情論。理論論。どっちがいいのだろうか。

「難しいです……ぼくはそれにまだ忍者じゃないですし」

「里にいる並みの忍以上にお前は強い……本当に忍じゃないのか?」

「まだ……ですよ。つい最近やっと一つだけ任務を手伝ったんですが、最後の最後にミスを犯しちゃって」

 苦笑いを浮かべる。
 
「どうしたんだ?」

「倒したと思ってた敵に、後ろから刀で刺されたんですよ。グサッて」

「大丈夫だったのか?」

「大丈夫ですよ。じゃなかったらここには……」

 あれ? 本当に大丈夫だったのだろうか。
 大蛇丸さんがいつか言っていた、死んでうやらの転生……。まさかね。
 少し間が空いたのを誤魔化すように笑う。

「お前はオレのことが嫌いじゃないのか?」

 へっという風に首を傾げる。

「何でですか?」

「オレはお前をこの里に連れてくるのに反対した」

「そ、それは、仕方ないことじゃないですか……その、ダンゾウさん。ぼくに忍術教えてくれた人に似てるんですよ」

「……どんな奴だ」

「そうですねえ。優しい人かな。修行は厳しかったですけど」

 イタチさんの顔を思い浮かべる。
 最初会ったときと比べると、声を掛けてくる表情も明るい。
 親しみが篭っているかのように。

「オレとは正反対だな」

「……自己犠牲とかそこら辺ですかね。自分がやんなきゃいけないとか、そんな風に思っているところが似てると思います」
 
 ダンゾウさんはぼくを見てくる。

「……火影になりたいんですか?」

「成りたい……何でヒルゼンなんだ?」

 ダンゾウさんは木の葉の里を眺める。

「ぼくに聞かれても」

 首を傾げながら、困ったような声を出す。

「聞いてもしょうがないか……」

「ぼくは里長というのがどういうものか知りません。まとめ役っぽい人は知ってますが、所詮そんぐらいでした」

 それも原作だけの知識。
 実際のぼくはそういうものは直接的には知らない。

「それなら、火影というのが判らないさ」

「……でも、里は火影だけで成り立つものじゃないです。他の人もいて、やっと成り立つもの。火影になるだけが、里を、木の葉を発展するものじゃないと思うんですけど」

「……面白いことを言うな。本当に十歳か? 変な奴だな」

「よく言われます」
 
 小さく笑う。
 少しだけダンゾウさんの表情が明るくなったと思う。




あとがき
二パートの予定でしたが、三パートに分裂させます。申し訳ありません。
あと二話で、一時終了だったり。
もう一度言いますが、このトリップはあまり詳しい謎はありません。謎だらけですけど。書く理由になったのは、原作読んで補完したかったからです。ちょうどあのタイミングに読まなかったら、このイベント? は未発生でした。
追記大事な誤字脱字発見。ナイとダンゾウ会話の一文変えました。混乱させて申し訳ありません。



[16066] 第二十四話 それは昔のことでした 後編
Name: copu◆b7c18566 ID:31db10ca
Date: 2010/03/10 17:27
「おかしい……文字が消えてる?」

 飛雷神の術式が書かれた巻物。
 ここにきて開いたのは一度。カガミさんに尋問されたとき。あの時、右側の文字が消えていた。
 今開くと、巻物の半分まで文字が消えている。
 何故だろう。

 そして、この巻物を持っていると誰かに呼ばれているような気がする。

『……ナ…………ナ……イ』

 


 第二十四話 それは昔のことでした 最終


 自来也と綱手、大蛇丸が良く話しかけてくるようになった。

 そういえば、大蛇丸さんがぼくと会ったとき、ぼくのことを少しの間凝視していなかったっけ?
 もしかして……謎は多いです。

 仲良くするのは良いけど、この子達の忍のセンスは高い。
 たしか、六歳でアカデミー卒業だよね。このごろは、教育期間も色々とあったみたいだけど。

「ナナシさんどうかしたんですか?」

 心配そうに見てくる綱手。

「大丈夫ですよ」

 なんとなくだけど、なんかわかったことがある。

「医療忍者になりたいんですか?」

「はいっ!」

 綱手は良い返事をした。

「ナナシさんみたいになりたいです」

 憧れる風に言われている。
 なんか、出世した? たしかに、二代目を救った忍者というキャッチフレーズがついている。木の葉の里唯一の医療忍者だし。

「ぼく自身は医療忍者じゃないですよ。その、幅広く習いたかったから覚えただけです。人それぞれ得て不得手はあります。綱手さんは医療忍術の適正があると思いますよ。綱手さんは良い医療忍者になってくださいね」

 ポンポンッと頭を撫でる。すると、綱手の顔が少し赤くなっている。何でだろう。

「お前が医療忍者って向いてないぜ。絶対殴りこむ系の前だ!」

 馬鹿にするように自来也は笑っている。
 正しい。ある意味正しくて当たっている。

「うるっさい! 自来也黙れっ! あっ! ナナシさんちょっと失礼しますね」

 綱手は自来也をつれて、どこかに行く。正しくは自来也の襟元を引っ張って連行している。

 耳を潜めると、

「猫かぶり」

 とか聞こえてきたりも。そして、誰かが殴られる音とかも。

「平和ですね。大蛇丸君」

「まだ戦時中です」

 隣で同じようにことの有様を見ていた大蛇丸に言うと、冷静な一言が返ってくる。

「その志はいいと思います。油断大敵。ぼくも始めての任務のとき、油断して傷を負ってしまいましたし」

「えっ!? 大丈夫ですか?」

 いつの間にかに綱手が戻っている。
 自来也は戻るのにもう少しかかりそうだ。

「ほら、ここにいるのが無事な証拠ですよ」

 小さく微笑む。



 お団子を食べながら、空を眺める。
 こんな状況なのにあまり焦ってはいない。なぜかと言うと、ここにいられる時間がなんとなく分かっているから。
 ただし、ここに来れた原因は謎である。
 本当に時空を超えちゃったよってきな目で、ぼくは原因だと思われる巻物を見た。

「ナナシここにいたのか?」

「ヒルゼンさん? どうかしたんですか?」

 ヒルゼンさんが視界に入ってくる。
 まるでぼくを探していたような口調である。
 
「いや、明日皆で写真を撮ろうと思ってな。あの森にいたときのメンバーで。ナナシも勿論来るよな?」

 ま、間が悪い。
 明日で多分帰れるというのに。
 写真……そこまで、記録が残るのはまずい。

「えっ? いや、遠慮します。皆さんだけでどうぞ」

「何か用事でもあるのか?」

 ヒルゼンさんは首を傾げてくる。

 どうしようか……。
 よしっ!

「あっ!? あんなところに、空飛ぶ猿がっ!!」

「な、なんだとっ!!」

 く、食らいついた。ベターだな……。

「それでは、ヒルゼンさんまた今度」

 印を結ぶ。
 瞬身の術。

 お団子食べる途中だったし、うん。家に帰って何か食べますか。
 いや、家にいるとあれか。
 お弁当作って、どこか違う場所に行きましょう。


「良い眺めです」

 木の葉を一望できるあそこにきている。
 背伸びをしながら気分転換。
 戦乱は続くけれど、今だけは平和。

「っ!? お前か……」

 振り向くと、ダンゾウさんの姿が。

「こんにちは。お弁当ありますけど、食べますか?」

「……いらん」

 そういって、ダンゾウさんはぼくの隣に座る。

「そうですか。残念です」

 暫しの間無言になる。
 チラ、チラとこちらを見てくるダンゾウさん。

「どうぞ」

 おにぎりを差し出す。

「……悪い」

「いえ」

 ダンゾウさんはおにぎりを食べ始め、ぼくはおかずの玉子焼きやから揚げも渡す。

「うまいな」

「ありがとうございます」

「お前が作ったのか?」

 少し驚いた様子である。

「勿論です。料理は小さいときからやっていたので、得意です」

「……今も小さいだろ」

 クスッと笑う。
 雰囲気が少し柔らかくなる。
 元々部外者だからこそ、距離が近づきやすかったのだろうか。
 ダンゾウさんがぼくと話すときは肩の重みが減っているかのように感じる。

「ナナシ、明日写真を撮るそうだが、一緒に来るか?」

「はいっ!」

 初めて名前で呼ばれた……あっ、ついつい、了承をしてしまう。

「そうか……明日迎いに行く」

 シュッとダンゾウさんは消えていく。

「あれー? どうしましょうか」

 

「ダンゾウ、早く来いよ」

 ヒルゼンさんの声が聞こえてくる。
 ヒョコッとダンゾウさんの影からぼくは姿を現すのだ。
 二代目火影様もいる。

「こんにちは」

「ナナシか。来たんだな。ダンゾウと一緒とは」

 他の面々も思わぬ組み合わせで驚いている。
 何だかんだ断ることが出来ないで、ここにいる。

 逆に開き直ったほうが……。

「何笑ってるんだ?」

 ダンゾウさんが顔を覗かしてくる。

「な、何でもないです」

 諦めよう。

「あっ! ぼ、ぼく端で良いです」

「小さいから前に来なさい」

「うっうっ……」

 何故か、二代目火影様の隣、ど真ん中のポジションに。

「撮りますー。そこの君。もう少し表情豊かに」

 カメラマンさんにそう言われる。
 笑顔だ。笑うしかない。



 夕暮れ。見納めの木の葉の里。

「ナナシか……」

「こんにちは。もうすぐでこんばんはですね」

 ダンゾウさんの姿が。
 小さく微笑む。

「ん? 何でその服を着てるんだ?」

 その服というのは、あの森で着ていた服である。
 この時代だとまだまだファッショナブル過ぎて、目立つので貰った服を着ていた。

「それにそのポーチも」

 フル装備完了。まあ、着替える必要があるかどうかが怪しい。

 風が吹く。

「その……楽しかったです。なんか、里の忍について色々と分かって、ちょっと羨ましいと感じました」

 何だかんだ楽しく、里にいる忍の様子が良く分かった。
 普通の忍。アカデミーに行って、卒業試験を受けて、下忍認定試験を受ける。
 そして、中忍試験を受ける。まあ、この当時はまだきちんと制度が整ってないみたいだけど。
 なんで、ぼくは木の葉の里にいて一般人生活を送っていたのだろう。もっと、ほかのところに行けばよかったのに。
 まあ、そのお陰でイタチさんや鬼鮫さん、デイダラさんにサソリさんに会えた。
 ここにきて、ある意味やっとぼくは里の忍に興味が持てた。

「な、何を言ってるんだ?」

 ダンゾウさんは小難しそうな顔でこちらを見ている。
 ぼくは、微笑んだまま。

「ここにきて、忍術以外でも色々と学べました。その……ダンゾウさんはダンゾウさんなりに木の葉のことを、考えてやっていけば良いと思います。木の葉の里はこれからも、もっと繁栄していきます。絶対にっ!」

 小さくガッツポーズ。
 そして、巻物を取り出して開く。
 文字がラスト一行に。

「お、お前……」

 ダンゾウさんがぼくがやろうとしたことに気づきはじめる。

「覚えてなくても良いです。数十年後、絶対に会いに行きます。皆にも伝えてくれるとうれしいです……お世話になりました」

 巻物の文字が薄れていくと同時に、ぼくの体が光る。

「また会いましょう」

 最後に目一杯の笑みを浮かべる。
 そして、ぼくの視界は暗闇に閉ざされる。



「な……ナイ?」

 こ、この声はこんどこそイタチさん?
 目を開けようとするが、視界がぼやく。

「起きたか」

 安堵の声。
 額に手のひらがあたる感触が伝わる。

「大丈夫そうですねェ……」

 鬼鮫さんの声も聞こえてきた。

「ご、ゴメンナサイ」

 振り絞って声を出す。

「謝るな。謝るなら、二度と失敗しないように頑張れ」

「……はい」

 少し安堵した。
 手を握り締める。
 無事に動いた。
 上体を起こそうとすると、背中に激痛が走る。

「ナイ、まだ治ったばかりだ。無理をするな」

 モゾモゾ。
 イタチさんの声と共に、鮫肌がいるのに気づく。

「さ、鮫肌が治してくれたの?」

 モゾモゾ

「あ、ありがとう。あっ! き、鬼鮫さんもありがとうございます」

「なるほど、おまけですか」

 それを聞いて、クスッ笑う。


 ぼくはここに帰ってきた。




 ナイがいなくなった後の木の葉の歴史書には。
 一人の少年が二代目火影を治すと共に、医療忍術なるものを持ち込んだとされている。
 その後、その少年は行方が分からずに。少年がいたとされる一族も結局闇の中。
 少年が持ち込んだ名無しの忍法帳は、里でも重要な秘書扱いになったのだ。
 それのお陰で木の葉の医療忍術は格段に進歩され、三忍の一人綱手に大いに影響を与えたとされる。




あとがき
フラグばっかり。なんか、すみません。
今回の時空を越えた旅の原因は謎のまま。二度と時空を超えたりはしません。ナイがとある忍術習得のためにこの経験を生かしたいなあっと思います。忍術名出てるけど。
次回で一時中断。ナイ修行編ラストです。
ラスト物凄く色々飛ばしちゃいました。本当は中身きちんと書きたかったんですけど。すみませんっ!!
すみませんばっかりですね……うん。



[16066] 第二十五話 少年と別れ
Name: copu◆b7c18566 ID:31db10ca
Date: 2010/04/17 17:24
 
 ただいま山の中にいます。



 第二十五話 少年と別れ



 怪我も治って数週間が経過。


「ナイに足りないのは、実戦だ」

 イタチさんは言い切った。
 あ、当たり前じゃないのかな。
 一回しか参加してないし、練習相手もずっとイタチさんや鬼鮫さんである。

「実力はある。しかし、気配を読んだり、隠したりするのが下手だ。これからは、それらを重点的にやる」

 とりあえず、頷いてみる。
 思い当たる節はいくつかある。

「なので、山に篭ってもらう。期間は一週間。オレから逃げ切れ」

 首を傾げる。

「む、無理ですよっ!」

「手加減はする。だが、頑張れ」


 そして、現在今ここに。
 周りは木々で覆われている。

 モゾ。

 腰にいる子鮫が動く。
「こ、子鮫。よろしくね」

 モゾ。

 話し相手がいることはとても良い。

 モゾ。

「えっ? 今なんていったの?」

 モゾ。

「柄を掴んで、精神を集中させろ?」

 子鮫がそう言ってきたので、とりあえずやってみる。

 ポタッ。

 水面に水が落ちる音が聞こえたような気がする。
 波紋が広がる。

 子鮫と精神が同調された?
 多分、ぼくの予想はあたっている。
 鮫肌は鬼鮫さんと体を同化させていたし、子鮫も出来るはず。これは、その前段階みたいなものだろうか。

 まるで、水の中にいるような気がする。
 臭う?

 前を見ると、子鮫が泳いでいる。

 クイクイっと、臭いの方向を示す。

「チャクラ?」

 臭いはチャクラではないのか。そう思いつぶやいてみると、子鮫はモゾっと動いた。
 正解らしい。
 臭いが近づいてくるのが分かる。
 子鮫はぼくの周りを一周する。

 すると、感覚が元に戻った。

「近づいてくる……あのチャクラはイタチさんか」

 モゾ。

「逃げようか。ブービートラップも仕掛けよう……うん」

 モゾ。

 ぼくは、この場を後にする。




「ん? ナイが動いた」
 
 まるでこちらが接近したのに気づいたかのように……。



 鬼ごっこが開始される。




 無事に一週間が経過した。
 どうにか、逃げられた。
 子鮫のお陰でもあるけど。
 大部分は子鮫のお陰。
 
 子鮫は、チャクラを感知できる。範囲は広くないが。
 それと、チャクラを追跡することも可能である。
 一部精神を同化することによって、子鮫が感知したのを直接受け取れる。

 俗に言う感知タイプ。
 予想外の能力。子鮫って便利。便利すぎ。

 鮫は血の臭いを感知して追うことを考えれば、この能力はありかもしれない。


「予想以上だな。驚いた……この調子で頑張れ」

「次の私の番ですねェ」

 鬼鮫さんが現れる。

「えっ?」

 首を傾げる。
 
 帰ったら早々に、実戦並の修行が待っていた。




 十一歳にになろうとした。
 そして、ぼくは一つの決意をする。

 それから、数ヵ月後。
 イタチさんに拾われて四年目。
 季節は夏真っ盛り。

「何で、全員揃ってる?」

 サソリさんが、扉を開く。
 今には、イタチさん、鬼鮫さん、デイダラさんと揃っているのだ。

 ぼくは、四人と対面するかのように座っている。

「その、四人全員に話したいことがありまして、今回お呼びしました。サソリさんもお忙しいですけど、どうぞお座りください」

 緊張した面持ち。

「それで、ナイ用事は一体何なんだ?」

 イタチさんが聞いてくる。
 ぼくは小さく頷く。

「実は、普通に下忍になって、色々と任務をして、中忍試験を受けたりしたいと思ってるんです。ようするに、里の忍になりたいんです」

 暫し無言。

「里抜けしたオイラたちに言うことか?」

「あっ!? で、ですね……」

 デイダラさんに突っ込まれてしまう。
 ど、どうしようか。すっかり忘れていた。

「ナイは何で里に属したいと思ったんだ?」

 ぼくはイタチさんを見つめる。
 うちは一族と木の葉の里の確執。ぼくは、それがどんなものかは知っているが、当人たちが思っている心までは本当の意味で知ることは出来ない。
 
「その……興味があるんです。どんなものか知りたいんです」

 ダンゾウさんたちが作り上げようとしたものをぼくは知ってみたい。
 木の葉の里じゃなくても良い、里というものを。

「チッ。好奇心は旺盛だな」

「ありがとうございます」

 サソリさんに笑顔で言う。
 興味がある。面白そう。ぼくは、今はそれで良いと思う。

「行くあてはあるのか?」

「あっはい。お、とある方が紹介してくれるそうです」

 大蛇丸さんって言おうとする。危ない。

「大蛇丸の里か?」

 バレテイル。

「まさかっ! あんな危ない人の里なんでいやです。その、波の里です。詳しいことは分かりませんが」

 原作と違うところ。
 それは、波の国が今現在すでに、橋が完成し、貿易などで国が潤っていること。
 そして、その影には波の忍者があるとされる。
 大蛇丸さんがいっていた憑依者がいる里である。

「波の里ですか」

 鬼鮫さんが顎に手を当てる。
 何かを知っているのだろうか。

「鬼鮫さん知ってるんですか?」

「いや、軽くだけですけどねえ。そこの里は霧隠れの抜け忍が作ったということぐらいですよ」

 頭の中に、再不斬と白が思い浮かぶ。
 というか、憑依者って誰だろう。大蛇丸さんと同系列? それとも、ぼくみたいな感じなのだろうか。
 詳しいことは、私の里に来たら教えてあげるわって言っていた。紹介状も含め、一度音の里に行く予定である。
 すでに、連絡済み。

「ナイ、オレ的にいうと、そのほうが良いと思う。オレらといても、良いことはない」

 イタチさん言い切ったら不味いでしょう。

「そ、そんなことないですっ!? 皆さんからたくさん教えてもらって、楽しかったです」

「お前は、オレらが悪人だって知ってんだろ?」

 サソリさんの問いかけに、頷く。

「なら、行け。もうそろそろ邪魔になる」

 暁の活動が本格的になるってことだろうか。

「で、でも……」

「でもじゃねえ」

 あれ? なんか、立場が逆転してるような。
 四人→追い出そうとする 
 ぼく→居座ろうとする
 あれー?

「そ、そういうことなので、今までお世話になりました」

 頭を床に付ける。

「ナイがしたいようにすれば良いと思いますがねえ。頑張ってください……ご飯が寂しくなるますねェ」

「行く前に、おでん作ってけよ……うん」

「あっはい。美味しいご飯作ってから行きますっ! 皆さん本当にありがとうございましたっ!!」

 思ったよりもスムーズにことが進む。

「それで、いつ行くんだ?」

 視線が集まる。

「あっはい。明日です」

 ニッコリと微笑む。
 何故かみんな固まった。


 夜。
 サソリさんとの最後の勉強会が終わり、自室に戻ろうとする。

「ナイ」

「イタチさん?」

 暗くて見にくいが、イタチさんが廊下に立っていた。

「そんなところでどうかしたんですか?」

「用事があってな。今いいか?」

「あっはい」

 そう言われ、外に連れて行かれる。

 満月だ。
 屋敷から少し離れた場所で立ち止まり、イタチさんは周りの気配を読むように、辺りを見渡す。

「ナイ、いくつか言っておきたいと思う」

 ぼくはイタチさんを見ると、目が写輪眼になっているのに気づいた。

「うちはマダラには気をつけろ」

「えっ?」

「い、いや。今のは心の片隅でも覚えておくと良い。それよりもだ。ナイの体にはうちはの血が流れてる」

「えっ!?」

 驚きの連発である。マダラについてはなんとなく誤魔化された。
 
「じゃあ、写輪眼が使えるようになるんですかっ!?」

「……それはない」

「そ、そうですか。でも、なんでぼくの体にうちはの血が流れてるってしてるんですか?」

 母か父のどっちかが、うちは一族? でも、そうだとしたら、孤児院は忍者用のはず。

「ナイが前、怪我をしたときに血が足らず、オレの血をあげたんだ」

「な、なるほど……あの、助けてくれてありがとうございます」

 あの時、増血丸あったんだけどな。
 イタチさんは知らないか。

「いや、いい。写輪眼に目覚めることはないが、気をつけろ。大蛇丸はうちはの血を狙っている」

「写輪眼使えないのにですか?」

「適応はするはずだ」

 首を傾げる。
 適応……移植するってことかな。

「良く分かりませんが、分かりました」

「そうか……」

 イタチさんは一歩こちらに近づいてくる。
 月明かりでイタチさんの瞳が輝いて見える。

 トンッ

 イタチさんがぼくの額に手を当てた。
 いきなりなことなので、少し顔をしかめる。

「二回だ……」

 イタチさんの写輪眼が勾玉模様から手裏剣のような模様に変わる。
 刹那何かが目に入ったような気がして、目を閉じる。
 擦るが、何もないようだ。

「い、イタチさんっ!?」

 目を開けると、イタチさんの顔色が悪い。

「だ、大丈夫だ。戻ろう」

「……はい」

 心配そうにぼくはイタチさんを見たのだった。
 


 翌日。

 皆に見送れながら、屋敷を後にする。
 なんか変な感じでいっぱいだ。

「本当にありがとうございましたっ!!」

 振り返り、大声で言う。
 そして、森の中を駆ける。


 これから色んなことが起こる。
 胸から湧き出る好奇心でいっぱいだ。

 とりあえず、進んでみようと思う。
 そのほうが、絶対面白いから。




あとがき
一部完みたいな感じです。
山篭り編はカットしちゃいました。すみません。これで今のところナイのチートは終了しました。
今後の展開は好き嫌いが激しいので、ご注意お願いします。




[16066] 第二十六話 音に向かう
Name: copu◆b7c18566 ID:31db10ca
Date: 2010/04/17 17:36
 田の国に入る。
 服装は、暗色のマント、フード付。それを、マントといえるかどうかは怪しいと思う。
 今の季節だと暑いが我慢。

 音隠れの里の厳密な場所は教えてもらっていない。
 近くに行けば、誰か(音の忍)が来ると行っていた。
 他にももしかしたら襲われる可能性もあるわね。
 とかも言っていた。



 第二十六話 音に向かう



 印を結ぶ。

「口寄せの術」

 ボンッ!

 煙が晴れるとそこには、不機嫌そうな蛇が一匹。

「というわけで、マンダさんの出番です」

 触ろうとすると、カプッとかまれる。

「痛いです。離してください」

 口の下を撫でる。
 すると、吐き出すようにぼくの指を離してくれた。

「何でオレ様を呼ぶ」

 表情も口調も不機嫌そうだ。
 蛇の表情なんてよくわからないが。

「大蛇丸さんに会いに行くので、ここはやっぱりマンダさんが一番かと」

 そう、蛇を連れて行けば結構安全ではと思い呼び出した。
 身分証としては一応大蛇丸さんから貰った紹介状もあるわけだが、念には念を。

「……あいつが変態だって知ってるのか? わざわざ、自分から行くなんて」

 何故か諭す口調で言われる。
 ……大蛇丸さん一体なにやってるのかな。
 口寄せ動物まで知れ渡っているなんて。

「多分、大丈夫ですよ。レッツゴーッ!」

 モゾ。

 子鮫が動くが、気にしない。マンダを呼ぶといつもこんな感じだ。


 暫く歩くと、気配を感じ辺りを見渡す。

「子鮫」

 声を掛けて、子鮫の柄を握る。
 目を閉じ、集中。

「一人、近づいてきてますね」

 とりあえず、立ち止まり。待ってみることに。
 感知範囲は広くないので、すぐに視界に入ってくる。
 白い衣服を着た少年。髪も白い。
 まだ遠いので額あてまでは見えないが、音忍の特徴の一つ腰辺りに縄を結んでいる。

 速い。
 すぐに、ぼくの前に現れる。

「貴方が大蛇丸様がいっていた人か?」

 整っているが、特徴ある顔立ち。
 原作で見たことがある人物だ。

「君麻呂……さん?」

「僕のことを知っているのか?」

「えーと、その、大蛇丸さんから聞きました」

「そうか、貴方で間違いないようだな。その蛇は……大蛇丸様の後継の証。僕についてきて」

「分かりました」

 君麻呂さんがお迎えに来たのはビックリしたが、まあ怪しい人が来なくて良かった。
 良い人そうで安心。

 森の中に入る。 
 まるで迷路のようだ。
 幻術なども使われており、森は迷いやすくなっている。

「ここが音の里か」

 門が見えてくる。
 入り口には音のマークが。

「そういえばなんという名前ですか?」

 敬語口調がなんか恥ずかしい。

「ひ、秘密です」

 名前は名乗らないでおこうと思う。
 忍具入れからお面取り出し、付ける。
 これで、完璧。

「御免なさい。色々とあるので、名乗れないんです」

「いや、気にしなくて結構です。中に入りましょう」

 即され、中に入ることに。



「君麻呂ご苦労様。下がっていいわ」

 大蛇丸さんが出迎えてくれる。
 いつ見ても、ずっと変わらないその顔。年齢不詳。
 綱手さんと同類ですね。

 君麻呂さんが頭を下げてくるので、こちらも下げる。

「久々ね。ところで、そのお面は何かしら?」

「……顔隠し?」
 
「まあ、いいわ。好きにして」

 大蛇丸さんに中を案内しながら、歩いていく。
 周りから視線が集まる。 

「あっ! マンダさんお疲れ様でした」

 すっかりと忘れていた。
 ついてくるマンダを見る。

「忘れていただろ?」

「あはは、気のせいですよ」

 軽く舌打ちして、マンダ消えていく。


「そういえば、地下には怪しげな実験施設があるんですか?」

 周りから視線を感じる中、ぐるりと辺りを見渡す。

「知りたいのかしら?」

 ニヤリと大蛇丸さんは笑う。
 寒気がする。

「……いや、いいです」

「冗談よ……原作よりはマシな筈だわ。待遇良いし」

「そうですか」

「死なないように気をつけてるのよ。リサイクルできるし」

 今のことは聞かなかったことにしよう。
 原作でもカブトあたりががんばっていた様子。ここではそれ以上なのか。

「それで、話したいことがあるんですけど」

「その前にお願いがあるの」

 大蛇丸さんとある扉の前に立ち止まった。

「何ですか?」

 首を傾げる。
 すると、大蛇丸さんはその扉を開いたのだ。
 
 奥は、運動場らしきもの。
 体育館みたいな感じだろうか。
 いや、どっちかというと決闘場。

「あのー」

「戦って欲しいのよ。貴方がどのぐらい強くなったか知りたいし。大丈夫、相手はあの子達よ。強さは原作どおりだから」

 向こう側にも扉があるらしく、それが開く。
 三人が入ってきた。

「えーと、音の下忍たちですか」

 中忍試験に参加していた音の下忍たち。
 お互い真ん中まで歩く。

「大蛇丸様。ソイツを倒せば良いんですか?」

 たしか、名前はザクだったかな。まるで、獲物を見るような目つきでぼくを見てくる。
 冷静な目つきでぼくの実力を見ようとするドス。
 長い黒髪のキンは、一歩後ろに下がっていた。

「そうよ。でも、強いわよ」

 大蛇丸さんはクスクスッと笑う。

「勝てたら、中忍選抜試験に行ってもらうわ。音の代表として」

「任せてください」

 ドスが恭しく、頭を下げた。

「負けたほうが良いんですか?」

 ぼくはそれを聞いて大蛇丸さんに聞いてみる。

「全力を出して欲しいわ」

「無理です」

 笑みを浮かべる。
 それを、聞いて音の三人の表情が変わる。

「始めていいわ」

 二階には観客席らしきものがあり、大蛇丸さんはそこに移動する。

「餓鬼だから、手加減しようと思ったが必要ないみたいだな。死ね」

 ザクが両手をこちらに向けてくる。

【斬空波】

 刹那、衝撃波がぼくを襲う。
 来ることが分かっていたので、横に飛び避ける。

「君は大蛇丸様のお気に入りのようですが、まさかこの程度なわけないでしょう」

 ドスが接近。
 その後ろには千本を構えるキンが。
 チームワークは悪くはないと思うけど。
 前衛、中衛とバランスはいいし、破壊力もある。

 ドスの攻撃は近距離アウト。ザクの攻撃は一方向だけなので、注意するだけ。ネタが分かるってかなり有利。
 
 ぼくの方が速い。
 どうすればいいのかな。
 子鮫が震えているが、使うつもりはない。
 地面は土だ。

 印を組む。

【土遁・土分身の術】

 ぼくとドスの間に三つの土分身ができる。

「キン、気をつけろ。実体がある」

「見れば分かるわ」

 分身は手前の二人に。
 ぼくはザクへと向かう。

「本体がこっちか」

 もう一度、ザクが腕を向けて衝撃波を出すが、軽やかに避ける。

「そのぐらいの術じゃあたりませんよ」

「なら、これならどうだ」

 両手を向けてくる。
 一瞬タメがある。
 これは……。印を結ぶ。

【斬空極波】

 一瞬視界が無くなるほどの凄まじい空圧。地面がえぐれるている。

「凄い威力ですね」

 うんうんっと冷静に呟く。

「お、お前っ!? いつの間に……」

 ザクが声に気づき、振り向く。

「ほら、タメがあるじゃないですか。その隙に瞬身の術で」

 イタチさんや鬼鮫さんは流れる綺麗な動作で、隙が見当たらない。
 ザクの攻撃動作と比べるとどうしても、違和感が感じる。
 その違和感は、動作と動作の間にある間。それが、隙である。
 隙を突いたのだ。

「くそっ。ならっ……なっ!?」

 もう一度腕を向けようとするができない。

【蛇睨呪縛】

「動けないですよね」

 しゃべる時間があるので、すでに手は打ってある。
 大蛇によって動きを束縛されるザク。

「蛇だとっ!? 大蛇丸様と同じ」

 ショックはどちらかというと、そっち方面。

 
 土分身のほうを見てみる。
 もう勝負は決まっている。

「や、やられましたね」

「な、何よこれ」

 ドスとキンの声が聞こえる。

 土分身は崩れている。
 しかし、狙いはそれ。
 相手を巻き込んで、崩れることにより地面に束縛させる。


 結局誰も傷つかずに、終了。

「うふふ、もう少し派手にしても良かったのに。甘いわね」

「はあ。まあ、いいじゃないですか。チャクラも温存できましたし」

 使った術は土分身に、瞬身、口寄せ。まだまだチャクラは余裕である。

「下忍三人と戦っても、まだまだ余裕あるとはねえ。強くなったわ」

 大蛇丸さんは頷きながら、感心している。

「ドス、ザク、キンの三人。貴方たちは負けたけれど、音の代表として来年の中忍選抜に行ってもらうわ。他の任務も言うから、しっかりとするのよ」

「はっ、はい」

 三人がぼくを見てくる。
 一体誰だっといたような目である。

「そうそう、この子は私の後継よ。次会うことになるかどうかは怪しいけれど。もう下がっていいわ」

 わーい。後継って言われた。
 君麻呂さんもそんなこと言ってたし。大蛇丸さん周りに言いすぎ。
 視線が物凄く痛いです。

「本題に入りましょう。場所を移動するわ」

 そう言われて、この場を立ち去る。
 ザクがこっちを思いっきり見てくる。
 君麻呂さんにしろ大蛇丸さんのどこが良いのやら。



 応接間らしき場所に移動した。

「それで波の件よね」

「そ、それよりも先に話したいことが」

 過去に行ったことを説明する。

「じゃあ、貴方が綱手の初恋だったナナシさんだったの?」

「初恋?」

「……今のはなしよ。聞かなかったことにして。それなら、初めて貴方を見た時の既視感を説明できる」

 フムッと大蛇丸さんは考える。
 そういえば、初めてぼくを見たとき、ぼくの顔を凝視していた。

「でも、面白いわね。それなら医療忍術のルーツは一体どこなのかしらね」

「ループしてますから。不思議ですね」

 医療忍術の出所はどこになるのだろうか。

「今でも過去にはいけるの?」

「そ、それが、書き足した巻物はあれ一本限り。その、新しく作ろうとしてもうまくいかないんですよ」

 術式の文字が消えてしまって、今では謎のまま。
 いや、過去にはもう行かないほうが良いかもしれない。
 現在とつながっているため、何が起こるかがわからない。

「まあ、飛雷神の術うまくいってるみたいね」

「はい。一番力入れてますから。でも、巻物使ったとしてもあと半年は調整が必要です。その時点で多分本人しか移動できませんし」

 なかなか完成しない。さすがSランク忍術。

「まあ、頑張って。あの術試しに作ったものの、うまくいかなくて。貴方に渡して正解だったわ」

 とまあこんな感じで、手紙では言わなかったことを色々と話す。

「本題ね。波の里への紹介状はこれよ。私の名前は出さないほうがいいわ。向こうもそれを望んでいるし」

 封筒を受け取る。
 ハドウ様っと書かれていた。里長だろうか。

「たしかに、危険人物と直接的に関わりたくないですよね」

「言うわね。貴方はその危険人物のど真ん中で暮らしてたの」

「……良い人たちでしたよ?」

「まあ、いいわ」

 そういえば一つ気になったことが。

「君麻呂さん元気そうですね」

 まだ発病していないのかな。
 気になったので聞いてみることにした。

「完治とは言いがたいけど、任務に出るぐらいには調子はいいわ」

「大蛇丸さんが治したんですか?」

「綱手に頼んだの」

「えっ!? 綱手さんに? 連絡でも取ってるんですか?」

「……その場限りのギブ&テイク。連絡は取ってないわ」

「そうですか」

 色々とある様子。 

「病気が治ると結構原作と変わりません?」

 たしか、サスケが音の里に来るときに起こった出来事を思い出すと……。
 大蛇丸さんはぼくを見てきて、指差してきた。

「そこをどうにかするのが貴方よ」

「ですよねー」

 それを聞いて、ため息が出る。

「原作よりも音の里が出来たのは早いわ。それに、波の里もあるし全体的に原作とは少しずつ変わっていく……来年中忍試験受けるのかしら?」

 顔をかしげる。

「受けたらいいですけどね……まだ分かりません」

 波の里にもいっていない。
 来年のことまでは分からない。
 いや、これから起こることも予想外。

「受けるなら、連絡ちょうだい。まあ、ハロウにも伝えてるからどうにかなるかしらね」

「ハロウ? 何かあるんですか?」

 聞きなれない名前。

「二次試験は巻物争奪戦よ。貴方たちのお陰で原作で上がれた人が来れなくなったらどうするの。それと、ハロウは憑依者よ。まだ、説明しなかったわね。歳は貴方の一つ上。ナルトやサスケ君と同じ歳。詳しくは本人から聞きなさい」

「なるほど、了解です」

 ふむふむっと頷く。

 話が終わったら、四人衆とも顔合わせをした。お面付けてるけど。

「戦ってみる?」

 と言われたが、首を振って拒否。
 多分勝てない。

 それと、未完成の術の巻物ももらった。宿題である。
  
 そんなこんなで、音の里を後にする。




あとがき
お久しぶりです。学校が始まっているので、先月みたいに更新はできなくなります。先月は春休みのターン中でした。
次回は本編、次章に入ります。オリジのターン。オリキャラづくし。一次で書けとかの突っ込みは心に響くのでご了承ください。
とあるの二次が書きたくなってきた今日この頃でした。



[16066] 第二十七話 波立つ始まり
Name: copu◆b7c18566 ID:31db10ca
Date: 2010/05/15 21:34
 波の国に到着。
 
 波の国の前情報。
 橋が完成したのは二年前。
 それまでは、小国としても規模は小さかったが、橋が出来たお陰で物流の出入りが盛んになっている。
 いつの間にか、二年で周りの国よりも一歩リードする形になった。

 小さな島が無数に集まって出来た国。

 お金目的に、怪しげな人たちが国に入ろうとするが、それは波忍がきちんと監視する。
 小国だからこそ、自国にある忍里ときちんと連携しているらしい。
 地域密着型の忍び里。

 フムフムッと、軽く調べたことを読んでみた。

「もっと詳しく調べることは出来るけど、このぐらいでいいかな」



 第二十七話 波立つ始まり



 暗色のマントは着ず、季節と合う軽装で歩く。
 ぱっとも、旅行者に見えるだろう。
 しかし、忍から見たら、忍具のポーチ、巻物などが見えるのでぼくが忍者だということが分かる。
 腰には子鮫を帯びてるし、怪しい。

 バレルようにしたんだけど……。

「見られてるけど、来ない……里の場所分からないから、向こうから来るの待ってるんだけど」

 監視はされているが、一向に来ない。
 何か怪しい行動でもすればくるのかな。
 暴れるとか。

「やんないけどね」

 ため息をつく。


「終わった、終わった。ふー、疲れた」

 通りに少女の声が響く。

「こ、コノミ、声大きいよ」

「良いじゃん別に、人少ないし。これから、甘いものでも食べよう。ササメの初任務。奢ってあげるよ」

「えっ? 本当っ!? そ、それなら、えーと、白玉がいいかな」

「和風ね。よしっ! あの店にレッツゴー」

 キャ、キャッと話す少女たち。
 会話を聞いてみると、波隠れの忍らしい。

 見てみると、茶髪の少女と赤みかかった髪の少女がいた。歳はぼくと同じぐらいが、一つ上。
 波隠れの額あてをしているので、間違いない。
 茶髪のほうがコノミと呼ばれていて、赤みかかった髪の少女のほうが、なり立ての忍者らしい。名前はササメ。

「あのー、すみません」

 声を掛けてみることにした。
 二人ともぼくよりも少し大きい。
 ぼくが小柄なせいだからなのか、女の子の方成長するのが早いだけなのかどっちだろう。後半がいいな……うん。

「ふへ? どうかしましたか」

 コノミが親切そうに返事を返してくれた。

「その、波隠れの里にいきたんですけど。どうすればいいでしょうか?」

 ササメがぼくの服装に気づき、となりのいるコノミの腕をつつく。

「コノミ、この人忍者だよ。ポーチあるし」

「あっ! 本当だ。どうしよう……」

 こっちもどうしよう。ハドウさんに会いたいですっていうのかな。いきなり、里長に会うのは……。
 んっ?

「その、ハロウさんに会いたいんですけど」

「ハロウの知り合いなの?」

 少女たちは目を丸めて、ぼくを見てきた。
 ビンゴ。

「それなら、早く言ってよ。ハロウなら、さっきまで任務で一緒だったから、まだここらへんにいるわよ」

 任務で一緒。口調からすると、少女たちと同年代と推測する。

「あっ、そうなんですか」

 そういわれたけど、ぼくハロウの顔知らないし……。

「そ、その、向こうの仕事依頼所に行けばどうにかなると思います。里に行きたいなら」

 コノミが通りにある店を指差す。

 そこは、

「波隠れ仕事受付所……」

 という看板が立てられている、お店があった。
 気づかなかった。あんなのあったんだ。
 里の場所が分からないなら、仕事を受け付ける場所が街中にあるのは当たり前か。

「あっですね。ありがとうございます」

 頭を下げて、そこに向かうことにする。

「頑張ってね」

 コノミが別れ際にそう言ってくれた。

「あれ? あのササメって子、どこかで見たことあるような……」

 少し覚えがあるような。


「すみません」

「おや、坊主どうかしたのか?」

 早速中に入って声を掛ける。
 額あてをしている、おじさんが受付にいた。 

「その、波隠れの里に来たいんですけど」

「坊主、ちょっと来い」

 手招きしてきたので、近づくことに。

「わけありか……紹介状は」

 小声にしてぼくに耳元に呟く。

「これです」

 大蛇丸さんから貰った紹介状を渡す。

「ハドウ様宛て……坊主、少し待っておきな」

 おじさんは事務所の奥に行く。

 椅子があったので、静かに待ってみることに。

「なあ? あんたがおれを探してやつか?」

 声が掛かった。
 振り向くと、そこには薄桃色の髪をした少年がいた。印象深いのはその瞳。紫色の瞳をしている。
 歳は多分ぼくより一個上程度。ナルト兄ちゃんと同じぐらい。波隠れの額あてをしている。
 ということは……。

「ハロウさんッ!」

 叫んで、ダイブ、抱きしめてることに。

「お久しぶりです」

「おれはあんたを「憑依者です。どうも、こんにちは」っ!? お前、大蛇丸がいってたやつか」

 声を潜めて耳元で呟く。

「はいっ!」
 
 笑顔を向ける。

「とりあえず、離れろ」

「了解です」

 ふーとハロウはため息をついた。

「えーと、名前は?」

「ナイと言います。そちらの予想通り、紹介されてこちらの里に来ました。紹介状もってきたんですけど、ここにいたおじさんに渡しました」

「そうか。待ってろ」

 そう言って、ハロウも奥に入っていく。

「おれがお前を案内する」

 紹介状を持って戻ってきた。

「お願いします」

 頭を下げる。



「水面歩行は出来るか?」

 街の外れにある、船乗り場まで来た。

「大丈夫です」

「それじゃあ、船使わずに行くぞ」

 水の上に降り立った。

「了解です」

 ランニング程度の速さで、水上を走る。

「忍術は大蛇丸から習ってたのか?」

「違います……ぼくのこと聞いてないんですか?」

「いや、全然」

 ハロウは首を横に振る。

「おれのことは、どんぐらい知ってるのか?」

「名前聞いたのは、紹介状貰ったとき初めて聞きました。えーと、血継限界もってるとかそんぐらいです」

「お互い何も知らないわけか……」

 ぼくは大きく頷く。

「おれはあと数ヶ月もしたら十二だ。ナイは?」

「あっ、じゃあ、そちらのほうが一つ年上ですね。五月生まれの十一です」

「……小さいな」

 ハロウはぼくを下から上へと眺める。

「うるさいです。きっと、大きくなりますよ……」

 自分で言ってなんだが、どうだろう。怪しい。

「お互い色々ありそうだから、詳しいことは中でな。あれが、波の隠れ里だ。こっちの島は執務室とかがある」

 結界でも張ってあったのが、近づくまで島が見えなかった。
 大きさはそれなり。隠れて見えないが、向こうにもう一つ島があるらしい。
 ジャンプして、着地。

「ここは、裏のほうだな。まあ、里長の館は裏から行ったほうが早いから、そのまま行くぞ」

 木と木の間を走る。

「罠もあるから気をつけろ。おれが通った道から外れるなよ。あと、普通は正面から入らなきゃ、攻撃されるからな」

「了解です」

 御尤もです。
 島を駆け上がるといっても良い。結構急斜面。
 木の間から、建物が見えてきた。

 建物の間を縫うように進む。幾つかの建物は無視し、そのまま奥へ。
 視線は感じられているので、監視はされている。
 山篭りなどのお陰で、気配に敏感になったのだ。

「ここがそうだな」

 そう入って、ハロウは立ち止まる。
 結構立派な建物。忍里自体まだ新しいので、建物も新しい。
 入り口には、二人の忍がいる。

 ハロウが近づき、二、三言話すと、

「ほら、中はいるぞ」

 手で招いてきた。
 門番の忍に見送られながら、中に入っていく。

 板張りの静かな廊下。
 物音はしない。
 廊下を右に曲がったり、左に曲がったりする。中は迷路みたいにグニャ、グニャしている。案内されていなかったらまず迷うだろう。

「この部屋だ。今から里長に会うからな」

 波が書かれた襖の前に来た。
 少し緊張する。

「あんま緊張しなくて良いぞ。気軽にな」

 そういって、扉を開く。
 二十畳ぐらいの広い和室。

 座布団に座る、二十代終わりごろの金髪の男がいた。

「ハドウ、連れてきたぜ」

 自里の里長に対して砕けた口調で言うハロウ。
 何か関係するのだろうか。

「どうぞ、こちらにお座りください」

 ハドウの前には二つのだ座布団。
 ハロウがそそくさと、座るのでぼくも座布団に座る。

「ナイと言います。こちらが紹介状です」

 畳の上に置き、差し出す。

「どうも。私はハドウです――詳しいことは本人から聞いてっと書かれてますね」

 ハドウは手紙を開く、目を通している。
 大蛇丸さん紹介状の意味ないじゃん。

「里の忍になりたいと思い、大蛇丸さんが紹介してくれるとのことで、こちらの里に来たのですが」

 ぼくはハドウを見上げる。
 表情は柔和で優しそう。だけど、逆に表情が読みにくい。

「何故、里の忍になりたいと思ったのですか?」

「好奇心です。その、簡単に言えば面白そう。体験してみたい。そんな感じなのですが」

「いえ、子供らしい良い答えだと思います。里に入りたいなら、いいですよ」

 それを聞いて、一安心。

「忍術はどこで習ったんですか? 簡単なテストを受けてもらえれば、下忍から始めてもらっても結構です。そのほうがこちらとしても都合が良い」

 後半は気になるところだが。
 その前に一つ確認しなければならないことが。

「その、ハドウ……様は霧隠れ出身なのですか?」

「呼び方はご自由に。波の里については少しは調べたようですね。はい、そこにいるハロウも霧隠れ出身です。クーデターを気に私たちは里を出ました」

 やっぱり霧隠れか。予想してたけど。少し言いにくい。

「ハロウからそれとなく聞いています。きっと、貴方も憑依者なのでしょう?」

 それを言われ、驚く。
 ハロウを見ると、

「ハドウ、おれが小さい時からの付き人で、小さいときにポロッと言ったんだよ」

「信じてるんですか?」

 ぼくはハドウさんに視線を送る。

「はい、波の国に里を作ったのも、ここが経済の中心となるっとハロウが言っていたのが原因です」

「そのぼくも憑依者です。何年前かな――もう六年前ですね。元々ぼくは木の葉にいたんです」

「木の葉? なんで、それがここに?」

 ハロウが横から聞いてくる。

「忍じゃないんです。一般の子供で孤児で、孤児院で暮らしていました。二年ぐらい経った日、山にハイキングに行ったんですよ。そしたら、そこで迷子になちゃって遭難……その時とある人に助けてもらったんです」

 一度そこで切る。

「続きは?」

「……えーと、イタチさんが助けてくれました」

「イタチって、あのイタチ? うちはイタチかっ!?」

 ハロウの叫びにたいしてぼくは頷く。
 ハロウの様子を見ると、かなり驚いている。

「何か色々あって、イタチさんと一緒に行くことに。その後、鬼鮫さんやデイダラさん、サソリさんと暮らして、忍術教えてもらったんです」

「鬼鮫?」

 ハドウさんの表情が硬くなる。

「はい、忍刀七人衆の鬼鮫さんです」

 暫し静かになる。

「お前も凄い人生送ってるな」

 呆れ口調のようにハロウはぼくの顔を見て言う。

「ですかね。良い人でしたけど」

「良い人って……」

 ぼくはハロウを横目にハドウさんを見る。

「そうですか……なるほど、忍術を習っていた相手が暁だったので、言いにくかったのですか。身元ははっきりしてますし、心配はご無用です。憑依者ならなおさら。ハロウ、ナイ君を案内してあげなさい。試験は……誰かと戦ってもらい、実力を見ることにしましょう」

「あっはい。分かりました」

「じゃあ、ハドウまたな」

 ハロウが立ち上がる。
 ぼくは、お辞儀をしてこの場を立ち去った。

「にしても凄いな。羨ましい限りだ」

「血継限界の方が良いと思いますけど……」

「まあ、おれも色々とあるんだよ。今度教えてやる」

 ハロウはぼくと向き合う。

「水納 ハロウ。よろしくなっ」

「よろしくお願いします。ハロウさん」

 年上なので、さん付けで。

「さんは要らない。多分同じ班辺りになるんだ、さんはいい。あれだな、班員みたら驚くぞ。期待しとけ」

 ハロウはニヤニヤと笑う。
 何かあるのだろうか。  




あとがき
導入編その一です。
オリキャラばっか。次回あげるときに、キャラ説明も一緒にあげます。
気づいた方もいますが、アニメのオリジの方からもってきたキャラもいます。でも、性格含め色々と違うのでご了承ください。なので、やっぱりほとんど全員オリキャラ。



誤字脱字がありましたら是非ご報告ください。お願いします。



[16066] 第二十八話 忍の試験
Name: copu◆b7c18566 ID:31db10ca
Date: 2010/05/16 20:40
 この島と橋で繋がられている隣の島に移動する。

 そこは、アカデミーや忍者の寄宿舎などがあるそうだ。
 その寄宿舎の部屋に案内され、

「悪いな。まだ何もない部屋で、数日したら荷物とかが揃うはずだ。明日の朝また迎えにいく。じゃあな」

 ハロウと別れる。

「あっはい。ありがとうございました」

 ふーとため息をついて部屋に入ってみる。
 言っていた通り、ベッドがあるだけの部屋。
 ベッドの上に着替えが置かれていた。

「シャワーでも浴びて寝ますか」


 ベッドに着く頃には、猛烈に眠くなる。

「子鮫おやすみなさい」

 モゾ。

 目を閉じる……。


 次に目を開けると、すでに太陽は昇っている。
 もう朝である。

「寝すぎかも……」

 取り敢えず、ハロウが来る前に準備をする。

「ナイ起きたか?」

 ドアがノックされる。
 まだ着替え中。

「今着替え中です。えーと、朝ごはんは?」

「そのために呼びに来た。朝ごはん食べようぜ」

「あっはい。待ってください」

 なんか下忍合格試験で模擬戦闘をやるみたいなので、もう一枚羽織る。
 忍具が外から見えないように。戦闘準備のため、鎖も巻いておく。

「準備終わりました」

 ドアを開けて、敬礼する。

「よしっ、行くか」

 ハロウの服装は昨日と同じようなもの。

「ハロウもここで泊まってるの?」

 ハロウの隣を歩いていく。
 昨日よりも人通りが多い。そのほとんどが額あてをしている。ようするに波の忍である。
 見慣れない顔がいるので、周りはぼくに視線が集まる。

「ああ、向こうの建物。ここは、結婚してないやつが多い。場所はそこまで広くないからな。依頼所があった街あたりに他のやつはだいたい住んでるぜ」

 へーっと頷く。

「あっちがアカデミー」

 それとなく、木の葉のアカデミーと似ている建物がある。

「木の葉のと似てますね」

「だろ?」

 ハロウはぼくに対して、笑って見せた。
 ワザとなんだろう。

「まあ、中はまるっきり別物。おれそこまで覚えてないし、ここの里の連中で元木の葉隠れはナイだけだ」

 まるで、他の里の人はいるみたいな言い方だ。

「どのぐらいの生徒がいるんですか?」

「忍者の学級は四十人ないぐらいかな。そうそうイナリって名前の子供覚えてるか?」

「イナリって、波の国編に出てきた?」

「そうそう。ソイツも通ってる。読み書きも教えてたりもするから、一般の子も通えるんだよ。全体的に忍の子供が多いけど」

 ヒーローになるとか言ってた子だよな。
 一般人でもいけるのか。木の葉でもお金があったら行けたはずだけど。

「下忍の仕事でアカデミーの先生の補佐もあるから、すぐに会えるぜ。任務で橋の護衛もあるからタズナさんとかカイザさんも会えるはずだぜ」

 へーっと頷く。
 結構原作の人たちとうまく行ってる様子。カイザさんってたしか、イナリの義父。生きているんだ。
 波の国、調べてた通りにうまくいっているみたいだ。

「飯食べたら、早速試験だから」

「あっ了解です」

「食堂行くけど、なんかある?」

「……今度からは自炊したいんですけど」

「自炊? 料理作れるのか?」

 くるりとハロウは首を回しぼくを見てきた。

「イタチさんたちのご飯作ってたのぼくですから。それなりに上手だと思います」

 ハロウははー、とため息をつく。

「どうかしたんですか?」

「いや、自炊ね。できるぜ、材料買えば」

 それを聞いて、一安心。
 空を見上げると、晴れて良い天気である。



 第二十八話 忍の試験



「はいっ! ハロウ質問です」

 ご飯を食べて、いざ試験会場へ。

「なんだ?」

「めっちゃ見られてます」

 というかここ、アカデミーの演習場。アカデミーの。
 木とかの障害物があって、周りには手裏剣やクナイが飛ばないように柵が設けられている。

「気にするな。場所もな。仕方ねえじゃん。場所ないんだから。他の島行けばあるけど、この島だとここ以外は運動場だぜ。アカデミーの」

 やっぱり、アカデミーのがつく。
 軽くため息。

「四、六……十四人か」

 視線を感じる。見えない人も含め十四人が少し離れたところから見てくる。

「スゲー、良く分かるな。おれは十人超える程度しか分かんないのに」

 ハロウは関心するように言う。

「いや、だって、山篭り……うん」

 思い出すと、少しどんより気分に。
 そのお陰で子鮫を使わなくても、気配に敏感になった。

「……悪い」

 ハロウもぼくの気持ちを察したのか、謝ってくる。
 
「誰も来ませんね」

「そうだな。もうそろそろ時間なんだが」

 演習場にはぼくとハロウしかいない。
 見学者はいるが。

「いたっ! 運動場の方かと思ってた」

 少女の声が響く。
 昨日聞いたような声である。
 振り向くと、

「あれ? 昨日の子だ。もしかして、その子だったんだ」

 茶髪の少女、コノミさんがいた。
 隣にはササメさんの姿も見える。
 二人の後ろには大柄な褐色の少年も。

「あー、そっか、昨日コノミたちは会ったんだよな。ナイ挨拶しろ」

「あっはい。ナイと言います。よろしくお願いします」

 自己紹介をして頭を下げる。

「あたしはコノミ。隣がササメ。後ろにいるでかいやつがライカ。あともう一人いるんだけど――白さんは?」

 コノミさんが周りにいる少年少女を紹介する。
 白さん?
 なんか波の国といったら出てくる重要な人のような……。

「まだ、来てないな。再不斬先生と一緒に来るんじゃないか?」

 ハロウは辺りを見渡しながら答える。
 再不斬先生?
 白さん? 

「あれ? ……ハロウ?」

「見てのお楽しみ」

 ニヤリと笑い返してくる。

「このメンバーは一体何なんですか?」

「おれら、きちんと班分けしてないんだよ。任務に応じて、班を作ってる。だいたい、ここにいるメンバーに白さんプラスした五人で固まってるな」

 へーと感心してみる。
 面白そうなシステムである。
 きっと、忍者の人数が少ないからそういうシステムにしてるのだろう。

「ナイ君は何歳なの?」

 コノミさんが元気そうにぼくに質問してきた。

「五月生まれの十一です」

「それなら、ササメと同じね。あたしは一つ上。ライカは二つ上で、あとで来る白さんが四つ上ね」

 白以外は年齢がまとまっているような気がする。
 ササメさん……どっかで見たような。

「……来た」

 声変わりをした低い声。
 今のがライカさんの声だろうか。

 皆が見ているほうに視線を向けると、
 先頭を歩くのは、昨日あったハドウさん。
 その後ろに、刀と言うには無骨すぎる、大刀を背負った男と髪飾りをしている綺麗な少年? が歩いてくる。
 再不斬と白である。白さん綺麗だ。本当に男かどうか怪しい。
 原作でナルト兄ちゃんが間違ったのも頷かせる。
 そう思いぼくは頷く。

「おはよう皆さん。もう揃ってますね」

 ハドウさんはぼくらを一通り見ると、視線をぼくに向ける。

「ソイツか」

「初めまして、白と言います」

「ナイと言います。よろしくお願いします」

 視線を向けてくる再不斬さんと白さんにあいさつをする。

「それでは、まあ、白君と戦ってもらいます。気軽に」

 ハドウさんはそう言う。
 たしか、白さん結構強かったような……。

「ナイ、頑張れよ」

「あのー、武器については」

「危なくなったら止める。心配するな」

 再不斬さんがそう言った。
 中忍試験の第三試験予選みたいなものだろう。

「分かりました。お願いします」

「はい、ナイ君よろしくお願いします」

 中央付近まで移動する。
 視線が集まっているので、子鮫は使わない。
 あんまり人前で使いたくないのだ。

「それでは、始め」

 ハドウさんの声が演習場に響く。



 右手にクナイを持って、接近する。
 
 キンッ!

 クナイと千本がぶつかる音。
 速さにはそれなりに自身があったが、白さんの方が速い。
 原作通り、白さんの武器は千本。

 二度、三度、交差し、金属の音が響く。

「結構速いですね」

「白さんの方が早いですけどねっ!」

 左手で手裏剣を投げるが、白さんもタイミングを合わすかのように千本を投げ、手裏剣と千本は空中で衝突し、地面に落ちる。

 戦況と共に、戦場、足場の確認をする。
 水溜りはない。
 忍術的な意味で、地理的条件はぼくのほうが有利か。

 白さんはもう一度千本を投擲。
 手に持つクナイで弾くが。

「影千本っ!?」

 弾いたクナイの下からもう一本の千本が。

 少し身構える。

 すると、上半身に当たり千本が弾かれて、地面に落ちる。
 巻いてある鎖に当てたのだ。

 白さんの視線が、ぼくの上半身に。千本が弾かれたことが気になるようだ。

 一瞬の隙。印を結ぶ、暇はない。

 左腕から鎖を出して、投擲する。
 その動きに違和感を覚えたのか、白さんは瞬時に距離をとった。

「勘が良いな」

 小さく呟く。
 ギリギリで交わしても傀儡の術で束縛できる。

 距離は十メートル。
 暫しにらみ合い。
 お互い手の内を読むかのように。

 この流れを掴むために先制攻撃。
 羽織にしまっていた、クナイをいくつも取り出す。
 チャクラの糸で連結させたクナイ。端っこに丸い玉がついている。

【操襲刃】

 白さんに向かって勢いよく飛ばす。
 すると、初めて白さんは印を結ぶ。

 パンッと白さんが両手を合わすと、風が巻き起こる。

【風遁・烈風掌】 

「風遁っ!?」

 チャクラの糸でクナイを操作するが、一歩遅く風によってすべて地面に叩きつけられてしまった。

 たしか、氷遁は水と風の性質変化だから、風は使えてもおかしくない。
 すっかりと忘れていた。
 火と相性悪いな。土遁しか使えない。
 水がないので、水遁は使い勝手が悪い。それに、水遁は氷遁と相性悪そうだ。
 頭の中で作戦を張り巡らせる。


「ほー、なかなかできるなアイツ」

 再不斬は関心したように言う。

「驚きました。ナイ君かなり動きますね。白君まだ下忍ですけど、実力は中忍以上ですし」

 互角の試合をしていて、二人は驚いている。

「あの動き……」

 再不斬はナイの動きに注目する。

「気づきましたか……霧隠れの動きですね」

 体術はそれぞれ里独自の癖がある。
 ナイの動きは霧隠れ特有の動きである。

「それも、忍刀を使うような動きだな。クナイじゃ、間合いが狭い」

 再不斬はそう指摘すると、ハドウも頷く。
 クナイを振るが、間合いに違和感を感じる。余分に数十センチ。

「ナイと言ったな。どこの紹介だ」

「……大蛇丸さんです。身元は保証します。このあと本人から聞いたことをを説明しますよ。周りに言えるものではありませんし」

「大蛇丸か……」

 再不斬は嫌そうに呟いた。



「はーいっ! ナイ君強すぎじゃない?」

 コノミは周りを眺める。

「……予想外だろ」

 ハロウは小さく呟く。

「……白さんは俺らの中で一番強い――ハロウも良い線いくがな」

「おれまだ一度も白さんに勝ってないぜ」

 ハロウとライカは顔を見合わせる。

「今クナイ浮いてたけど、どんな原理かな」

「多分、チャクラの糸だと思う」

 コノミの問いに答えたのはササメ。

「チャクラの糸って? ふうまの?」

 コノミは首を傾げるが、ササメは横に首を振る。

「それとは違うと思う。砂隠れに傀儡の術っていうのがあって、それもチャクラの糸使うから、多分そっち方面」

「へー。ハロウ、ナイ君って前までどこにいたの? 砂隠れ?」

「えっ? あ、ああ。木の葉だって、何か色々あって小さい時には里を出たみたいだけど。ここに来た理由は、ササメみたいな感じだ」

 ハロウは答えたが、内心ナイの忍術について考えていた。
 傀儡の術ってことはサソリからか? 原作読んだ限りだと、教えそうな感じじゃないのに。
 どんな生活送ってたんだ?

 ハロウはナイと白の試合に視線を戻す。



 ボンッ!

 地面から煙が発生する。
 煙玉をクナイに仕込んでおいた。

 辺りを煙が包み込む。

 というわけでいつもの作戦。
 ずるいかも知れないけど、この方法が一番安全。

【忍法・朧分身の術】

 煙の中に数十体の分身が現れる。
 そして、ぼくは、

【土遁・土中映魚の術】

 で地面に潜る。

「分身っ!」

 煙が晴れると白さんは驚いた様子。
 千本を投げるが、通り抜け分身が消える。

「実体はないようですか」

 目を細めた。
 その瞬間をクナイで切りつける。

「っ!? 今のは……」

 切りつけられて白さんは辺りを見渡し、千本で切りつける。
 切りつけられた分身は消えていく。
 この瞬間を狙いまたクナイで。

「なるほど……分身は実体がない。本体はどこかに隠れてる」

 小さく白さんは呟く。

 二回でバレルなんて。

 巻物を取り出し、作り物の鳥を二つ呼び出す。
 そして、土の中で印を組む。

【土遁・裂土転掌】

 地面に裂け目が出来ると共に外に出る。

「土の中ですか!?」

 足元が崩れるなか、白さんはバランスよく立っている。


「爆っ!」

 印を結ぶと、白さんの足元が爆発を起こす。起爆粘土である。本家よりも爆発力は劣るが、本家と同様操作性は良い。
 白さんは完全にバランスを崩した。
 そして、地面の中に置いた、起爆粘土を地上に呼び戻す。
 白さんの目の前に。

 印を……。

「やめっ!」

 ハドウさんの声が演習場に響く。

 起爆粘土を手元に戻らせる。

「白さんありがとうございました」

「いえ、こちらこそ。驚きましたよ」

 白さんの足元はクナイで切りつけられている。
 それに対して、ぼく無傷。
 何か悪いな。
 正面から戦うの苦手だから、仕方ないけど。

「えーと、傷治しますか? 医療忍術少しは使えるので」

「このぐらいは支障はないので、お気持ちだけでいいですよ」

 そう言われたが、印を結び、傷の手当てを。

「……ナイ、お前医療忍術も使えるんだな」

 振り返ると、ハロウの姿が。

「基礎だけですけどね。これ以上覚えるつもりはないです」

 軽く治し終わり、立ち上がる。

「ナイ君予想以上でした。まさか、ここまで強いとは」

 ハドウさんはそう言いながら、額あてを渡してくれた。

「どうぞ。これで、君も波の忍です」

 波のマークが書かれた額あて。
 ぼくはそれを握り締める。

「ありがとうございます。その、これからよろしくお願いします」

 ぼくは皆に向かって頭を下げた。

「班員はここにいる六名から、任務によって選別します。まあ、詳しい話は再不斬君後任せましたよ」

 ハドウさんはそう言って、いなくなる。
 里長、忍頭。結構忙しい身分なのだろう。

「了解だ。こいつらの担当上忍の桃地 再不斬だ。いつも担当してるってわけじゃないが、形式上だな。詳しくは午後に説明する。一度解散だ。いつものところで、一時集合」

 そう言って、再不斬さんもいなくなる。

「……じゃあ、飯でも食べにいくか」

「あっはい」

 ハロウの提案に全員で行くことに。

「ハロウ……その、白さんって女?」

 医療忍術をたしなんでる事から、白さんの動きを見て少し違和感が。
 その……体型から見ても。

「正解。女だ。不思議だよな」

「不思議ですね……でも、見た目的にはそれで正しいような」

「そうけどな」

 ぼくとハロウは顔を見合わせ、笑う。

「私がどうかしたんですか?」

「な、なんでもないですっ!」

 白さんが間に入ってきて、誤魔化す。





あとがき
淡々と過ぎる。もう少し臨場感のある戦闘シーンを書きたいです……うん。
白がTSしました。あまり突っ込まないでくれるとうれしいです。
そして、固定メンバーのオリキャラたちが登場。これ以上あまり増えません。
キャラ紹介軽くまとめたやつ追加しました。誰だこれっ? となった場合そちらを参考にどうぞ。


次回はえーと、五月中に出来たらと思います。スローペースですが、よろしくお願いします。

誤字脱字直しました。他にもありそうです……ありましたら、ご報告してくれると助かります。

それと、ご質問等ありましたら感想欄にてお気軽にどうぞ。返答に時間がかかるときもありますが、きちんと返信したいと思っています。



[16066] 第二十九話 六角形
Name: copu◆9ee5bcb3 ID:5a89a8bf
Date: 2010/06/05 18:56
 昼食タイムIN食堂。



 第二十九話 六角形



「第二回新入生歓迎会を始めますっ! 拍手」

 パチパチとまばらな拍手が起こる。

「司会進行はあたしコノミがやらせて貰いまーす」

 何だろうこれ。
 朝も食べた食堂の端っこを占領中。
 お昼の時間帯。人もそれなりにいるので、注目を浴びている。
 周りの視線が痛い。

「第二回?」

 首を傾げる。

「わ、私の先週やったばかりだから」

 ササメが手を上げていった。
 たしか、昨日が初任務って言っていたような。

「なるほど……」

「自己紹介から。まずはあたしね。名前はコノミ、匠の国出身。あたしの家で、忍具を作ってるから欲しいものがあったら言ってね。趣味は買い物。次はライカっ!」

 コノミさんは、ライカさんを指差す。

「……ライカだ。一族は元雲隠れ出身。趣味は……鷹?」

「ライカは鷹を育ててるんだ」

 横からハロウが付け足す。

「次は私かな。私の名前はふうま ササメです。田の国出身。趣味は観賞植物かな」

 田の国……。

「あっ! 田の国のふうま一族?」

 思い出した。たしか、アニメオリジナルストーリで出てきたあの女の子だ。
 ふうま一族。アニメでは音の里が出来たことによって、仕事がこなく一族が破綻していたところ。

「知ってるの? 有名ではないと……大蛇丸さんから聞いたの?」

 ササメさんはぼくの顔を見てくる。
 予想外の名前が出てきた。
 いや、大蛇丸さんとは面識があってもおかしくはないか。

「そ、そんなところです。詳しい経緯は聞いてないですけど」

「じゃあ次俺。水納 ハロウ。元霧隠れ出身。えーと、趣味は鑑賞魚。そこにいる、白さんとは小さい頃からの友達。白さんどうぞ」

「はい。私の名前は白です。ハロウ君と同じで元霧隠れ出身。趣味は料理ですかね」

 全員の自己紹介が終わり、みんなの視線はぼくに集まる。
 匠の国は忍具製作で有名なところ。ライカさんの褐色の肌も雲隠れと聞くとなんとなく分かる。
 それに、田の国に霧隠れ。結構ごっちゃなところだな。

「えーと、名前はナイといいます。木の葉の里出身です。趣味は読書、食べ歩き、新術開発とか色々やってます」

「新術開発?」

 ハロウが食らいついてきた。
 どこまで話せば良いのかな。

「大蛇丸さんから未完成の忍術を教えてもらってそれを調整したりしてます」

 まあ、別に言っても良いのかな。

「……変なことやってるな」

「自覚はありますよ」

「はい、では。質問タイムに移りますー。司会なのにあたしが最初に質問したいと思います。何でそんなに強いんですか?」

 またみんなの視線が集まる。

「朝から晩まで修行してましたからね」

「……朝から晩?」

 ぼくは聞いてきたライカさんの顔を見る。
 うんっと頷く。

「はい、日が上がると起きて、自己練、朝ごはん、忍術、幻術の修行、お昼ご飯を食べて、体術関係の修行。夕方はご飯食べて、自己練習、夜は薬物などの医療忍術関係の勉強して寝ます」

 指を折りながら、一日の予定を言う。

「毎日か?」

 ハロウの眉間の皺がよっている。

「ほとんどですかね。たとえ、い……師匠たちがいなくても、一人でやってましたから」

 イタチさんって言おうとした。危ない。

「何年間なんだ?」

 さっきからハロウが詳しきいてくる。
 何故だろう。

「七歳からなんで、四年間ですね」

「よ、四年か……」

「うわぁー、そんな密度でやったから強いのか。わかんないなー、大変だったでしょう?」
 
 ハロウは表情が少し固まっている。
 感心してるのか、呆れているのか分からない口調のコノミが言う。

「そうでもないですよ。毎日楽しかったですから。勉強とかも知らないことが分かるって楽しいですよ」

「あっそれ。分かります。知識が増えるって実感していいですよね」

「ですねっ!」

 ササメさんが同意する。ぼくとササメさんは顔を見合わせ、笑いあう。

「……あたしはパス」

「……人それぞれだ」

 コノミさんの呟きに対して、ライカさんはフォローをする。

「ハロウ君、何してるんですか?」

 白さんがハロウの様子がおかしいことに気づく。
 見るからにおかしいけど。

「いや、おれもチートだなーって思ってたけど、上には上がいたんだなって」

 それを聞いた四人の頭の上には、はてなが浮かんでいると思う。
 チートって、大蛇丸さんにも言われたけど……子鮫の力を知ったらどうするんだろう。
 血継限界も羨ましいけど。




「……鬼鮫か。久しぶりに聞いたなその名前」

「私もですよ。悪い子じゃなさそうですし、大蛇丸さんの紹介だったので、受け入れました」

「……なんかあるかもしれないぞ」

 再不斬は顔を上げ、ハドウを見据える。

「なので、監視をお願いします」

 ハドウは厳しい眼差しで返した。

「手厳しいな。見た目によらず」

「この里のためですから。ハロウは私にすべてを言っていません。まあ、知ろうとも思いませんが」

 ハドウは窓から外を見渡す。
 ハロウはNARUTOの世界で起こる事柄を、ハドウにはあまり話していない。
 ハドウも知ろうとは思わないが。

「ナイ君について何か分かりましたら、教えてください」

「了解した」

 再不斬は頭を下げると、音をたてずにスッと消えていく。




 下忍待機部屋一号室

 そう書かれた部屋に入る。

「あれ? 再不斬せんせー来てないね」

 コノミさんは部屋の中を見渡す。
 雰囲気は応接間。
 四人掛けソファーが四角を作るように四つ置かれ、真ん中にテーブルが置かれている。

「そのまま待ってましょう。もうすぐ来ますよ」

 白さんは廊下にいたぼくらにそう言い、中で待つことに。
 お互い真ん中には座りたくないのか、四人掛けのソファーを二人ずつゆったりと座っていく。

「ハロウはいつから忍者になったんですか?」

 ぼくは首をかしげながら、隣にいるハロウを聞く。

「おれとコノミ、ライカは今年の一月から。ササメはつい最近。去年はグダグダして、下忍じゃないのに下忍みたいなことをしてたな」

「みたいなこと?」

「アカデミーの先生補佐」

「あー。そんなこと言ってましたね」

 ライカさんは一つ上だけど、ハロウと同じ年で下忍になったのか。

「白さんは?」

 向かいにいる白さんを見る。

「私は昔から色々と仕事をしていましたから。今は下忍のほうが何かと都合が良いので、このままなんです」

「そうなんですか」

 霧のときから追い忍としてやっていたはず。
 今もそうなのかもしれない。なんか、新興里って、スパイとか潜り込んでいそうだな。


「揃ってるな」

 ガラッとドアが開き、再不斬先生が入ってきた。
 背中には首斬り包丁を背負っている。
 空いているソファーに腰をかけた。

「もう一度挨拶するが、担当の桃地 再不斬だ。説明するよりも早速任務をやってもらう。任務と言うか、順番で回ってくるアカデミーの先生補佐だ。顔合わせの意味もある。ナイとササメ……白はそれを頼む。残ったやつは通常任務だ」

「分かりました」

 下忍そうそう任務をやるとは思わなかった。
 噂のアカデミーの先生補佐である。なんか、この前木の葉行ったときにそれっぽいのをやったことがあるので、同じ感じなのだろうか。
 座学自体は独学でやっていた感じなので、教えるのなら実技がいいなと思ったりも。


 白さんに案内され、場所を移すことに。

「ササメさんはやったことあるんですか?」

「えーと、先生補佐? 下忍なる前だけど、下級生を教えたことならあるけど」

「なるほど――これって、達成任務に含むんですか?」

 今度は先頭を歩く白さんに聞く。
 中忍試験を受けるためには、任務をある程度やらなければいけないはず。

「何時間か忘れましたがある一定量をやると、Dランクに認定されるはずですよ。これは今度やるとは思いますが、巡回も含みます。勿論給金も貰えます」

 それを聞いて、一安心。

「では、私は先に行っています」

 白さんが姿を消す。

「アカデミーってあの建物ですよね」

 ハロウに教えてもらった建物はここからでもよく見える。

「はい。午後だから実技中心ですね」

 それを聞いて心の中でガッツポーズ。

「ササメさんはアカデミーに行ってたんですか?」

「いたような。いないような。一応アカデミーができた最初の卒業生なんですけどね。時期が時期で忙しかったので、アカデミーで忍術とか習ってたわけではないです」

「そうなんですか……」

 出来立ての里というのはやはり色々と大変らしい。

「今も結構大変ですけどね」

 ぼくは不思議そうな顔でササメさんを見ようとする。

「着きました」

 その話を詳しく聞こうと思ったが、目的に到着。
 白さんと先生らしき額あてを付けている青年。
 その後ろには好奇心旺盛な目でこっちを見てくる、八、九歳ごろの子供たち。

「皆さん、新しく授業のお手伝いをしてくれる方々です」

 青年がぼくたちを見ながら、子供たちに説明する。

「ササメさんは知ってますね。えーと、隣の……」

「ナイ君ですよ」

 白さんは青年にぼくの名前を告げた。

「隣はナイさんです。いいですか? 礼儀正しくやるんですよ」

『はーい』

 子供たちは元気よく返事をする。

「えーと」

 困ったようにササメさんを見ると、ササメさんも同じようにこっちを見てきた。

 いきなりお仕事らしい。
 
 実技らしく、午前白さんと戦った演習場に来る。
 地面に陥没やひびは直されていた。

「投擲の基本はみんな知っているので、アドバイスをしてください。それと、危ないことをしている子がいたらすぐに報告するように」

「分かりました」

 青年にそう言われ、返事をする。

 子供たちは木に向かって、手裏剣やクナイを投擲している。
 綺麗に順番に並んでいて、投擲、回収、投擲、回収ときちんと子供たちだけでローテンションを組んでいる。

 その統率力は、感嘆な声が出るほど。

「外した、ダッセー。オレの番」

「次は当てるんだっ!」

「男子。もう少し静かにしてよね」

 でも、中身は変わらない。
 どこか微笑ましいその光景。

「握り方が少し違うね」

 前にもこんなことをいったような気がする。
 でも、今度は女の子だ。

「こ、こうですか?」

 クナイの握り方を直す女の子。

「うん。それで良いと思います」

 ぼくは頷く。

 アカデミーの子供たちはどこでも同じ。
 そんな感じがした。

 まあ、みんな子供だから。
 ぼくもだけど。




 あとがき
 先週更新予定でしたが、一週間伸びてしまいました。すみません。
 これを上げて思ったのですが、キャラ紹介今回のやつと一緒にあげればよかったですね。

 一つお知らせが。また今月下旬ごろまで更新ができません。多分次回は、今月末に更新予定です。本当にすみません。オリジの短編書いたら戻ってきます。


 誤字脱字等ありましたら、ご連絡くださると助かります。
 更新本当に亀(亀どころじゃないような)ですが、今後ともよろしくお願いします。



[16066] 第三十話 十月の月
Name: copu◆9ee5bcb3 ID:b22b3897
Date: 2010/08/12 23:33
 暫くは、アカデミーの先生補佐。
 子供たちとも仲良くなっていった。

 メンバーはササメさんとプラスアルファと毎回変わっていく。 

 季節は秋。
 そういえば、今月はナルト兄ちゃんの誕生日だよなーっと思い出す。
 元気にやってるのかな。
 今思うとナルト兄ちゃんよりも一足早く忍者になった。

 窓の外を見ると、月が綺麗である。



 第三十話 十月の月 



 トントンッ

 ドアがノックされる。

「はーい」

 覗き穴から見てみると、ハロウが立っていた。

「どうかしたんですか?」

 ドアを開けて、声をかける。

「……今暇か?」

 どこか張り詰めたような感じを受ける。

「はい。暇ですけど」

「なら、おれと勝負しろっ!」

「へっ?」

 間抜けな声を出してしまった。
 首を傾げる。

「組み手?」

「ああ、組み手で良い」

 もう一度首を傾げる。

「ついて来い」

「……着替えてきます」

 よく分からない。

 モゾ。

「あっ」

 モゾ。

「了解です」

 連れていけとのこと。
 腰に子鮫を帯びる。

「準備万端にしましょうか。組み手ですけど」

 鎖を巻く。
 そして、一枚羽織って外に出る。

「長い」

 ムスッとハロウがいう。

「すみません」


 少し前と同じ。
 ハロウの後ろを歩く。
 向かう場所は、演習場。アカデミーの。

「脱がないのか?」

 ハロウはぼくの羽織りを見てくる。

「あっ、別に動きにくくはないので」

 拳を構える。

「そうか……」

 ハロウも拳を構えて、ぼくを見据える。

 十数分後。

「……つ、疲れましたー」

 地面に仰向けになり、叫ぶ。
 久々に体を動かした。
 最近修行をサボっていることに気づく。
 サボったら駄目ですね……うん。

「ナイ……体術苦手か?」

 ハロウは頬を掻きながら困ったようにぼくに聞く。

 組み手の勝敗はハロウの勝ち。
 数回ぐらいはぼくも一本取ったが、そのぐらい。

「型は得意なんですけど、力勝負とかの組み手は苦手です」

「おれより速いけど、力弱いもんな」

 ハロウはぼくをそのまま見つめてくる。

「どうかしたんですか?」

「いや……なんか安心した。おれ、ナイはもっと凄いやつかと思ってた」

 ぼくは首を傾げる。

「白さんってな、きっと原作のときよりも強いんだぜ。おれ一度も勝ったことないし。だから、白さんに勝ったナイは再不斬先生やハドウぐらい強いかと思った」

 ハロウはぼくを見て笑う。

「あはは……そんなわけないでしょう」

 ぼくは苦笑する。
 ぼくの強さはどのぐらいなのだろうか。
 中忍ぐらいなら勝てるぐらい。上忍は無理。特別上忍は? あの人たちって専門分野の引き上げだからな。
  
「ハロウも中々強いと思います……ぼくのものさし結構おかしいですけど」

「どうも。ものさしって何だ?」

「えーと。ぼくって実戦経験あんまないんですよ。練習相手もイタチさんや鬼鮫さんだけでしたから。相手を計るものさしは、その二人なんですよ」

「それって、ほとんどのやつが弱いってことになるじゃん」

「ですね」

 もう一度苦笑する。

「得物使ったらぼくの勝ちですよ。まあ、真正面から勝負するのは好きじゃないんですけど」

 そこは性格や心構えの問題。
 立ち上がり、熱くなったので羽織を脱ぐ。
 すると、出番かと思ったのか、

 モゾ。

 子鮫が動いた。

「あはは、使いませんよ」

 ハロウが凝視しているのに気づく。

「そういえば、紹介してませんでしたね。ぼくの愛刀、子鮫です。子鮫あいさつ」

 子鮫を手に持ち、見せる。
 モゾッと動き、巻いてあった布が落ちた。

 鱗状の刃。

「……鮫肌?」

 モゾ。

「子鮫です」

 モゾ。

 ハロウからしても、まるで頷くかのように動く。

「生きてるのか?」

 モゾ。

「マジ?」

 モゾ。

「な、なんだよーそれっ! てか、えっ? いや、てかそれは何?」

 驚いて慌てふためくハロウ。
 ぼくは顎に手をあてる。
 どうしようかな。まあ、いっか。

「鮫肌から生まれたんですよ」

「えっ? 今なんと?」

 やっぱり、驚くのか。
 ぼくはあんまり驚かないんだけど。

「そして、誕生日プレゼントとしてもらったんです。ねー」

 モゾ。

「さ、鮫肌から?」

「はい」

 ぼくはハロウを見て頷く。
 ガクリとハロウは下を見た。

「よ、世の中広いな」

 ハロウは小さく呟いている。

「これがぼくの秘密の一つです。てか、とっておき? 鎖を使うのも子鮫を使うため」

「まだ秘密があるのか……おれの秘密は――」

「別に言わなくてもいいですけど。これは、戦うときには使うものですから」

 ぼくはハロウが言おうとする前に、そう言ったが、ハロウは横に首を振った。

「いや、言っとく。なんかフェアじゃねえ。おれの体には尾獣のチャクラが封印されている」

「じ、人柱力じゃなくてですか?」

 さらりとすごいことをハロウは言った。
 チャクラを封印。いや、どっかで……。

「アニメオリジナルストーリーで九尾のチャクラを封じたやつがいた。おれもソイツと同じ……何尾か分からないけどな」

 ハロウは空を見上げる。

「そうですか……」

 ぼくもつられて空を見上げる。

「月が綺麗です」

「だな……よしっ! 明日から二人で修行だっ!!」

「はいっ! お願いします」

 ぼくはハロウに向かって敬礼をし、笑いかける。

「負けねえからな」

「望むところです。じゃあ、明日の五時ここ集合で」

「えっ? 五時。早くないか?」

「いつもどおりですけど……」

 ぼくは首を傾げる。

「うっ、そ、そうか。分かった」

 ハロウはどこか顔を引きつらせた。


 一人から二人へ。
 いつもの修行が少し騒がしくなる。




あとがき
今回二話続けてアップです。この一話が短いだけですが。
次話のあとがきで、まとめて色々と言い訳します。



[16066] 第三十一話 鷹と舞う斬撃
Name: copu◆9ee5bcb3 ID:b22b3897
Date: 2010/08/07 14:11

「やっぱり寒いわねー」

「……甲板にいるからだ。寒いなら前を閉めろ」

「これはファッションだからいいのっ!」

 コノミさんはそんなことをいうが、上着の前は開けっ放し。本当に寒そうにしている。
 対して、ライカさんは顔色は変わらない。寒さを感じているのか怪しい。

「外にいるのは、任務ですから仕方ないですけど」

 呟きながら上を見上げる。
 空からは雪が降る。
 空気は冷たいが、風はなく波は穏やか。
 ここは船の上。
 船の護衛である。

 忍者になって三ヶ月。
 初めてのCランク任務である。


 
 
 第三十一話 鷹と舞う斬撃



 Dランク任務は数回。
 基本的にアカデミーの先生補佐が多い。生活には困っていないので、いいのだが。

 
「Cランク任務ですか?」

「そうだ」

 いつもの待機部屋。
 部屋には六人+再不斬先生。

「船の護衛だ。出発は波の国の港から。目的地の火の国の港まで」

 再不斬先生はぼくを見据えてくる。

「火の……国ですか」

「嫌か?」

 再不斬先生の目が細まる。
 ぼくは横に首を振る。

「いえ、ここに来る最中に普通に通りましたし、木の葉を出たあとも何回も行きましたから」

 火の国は大きいから……うん。
 特には気にしない。
 木の葉に行ったら、今は逆に考え深い。昔のことを知ったから。

「班員は、探索、連絡のためにライカ、補助にコノミ、近接援護にナイに行ってもらう」

「了解です」

「……言い難いのだが、まとめ役をやるリーダーだが生憎手が空いていない。悪いが三人一組で行ってもらう。お前たちもだ」

 再不斬先生はぼくらを見渡す。
 やっぱり、忍者足りてないんだなっと実感。
 三人……あー、連絡のためにライカさんがいるのか。


 というわけで、今ここにいる。

「見張り番ぼくなんですけど」

 ぼくは二人を見る。

「いやー、一緒に任務とかしたことあるけど。そこまで話したことないじゃん。ハロウとかササメとかとは話すみたいだけど」

「……いわゆる親睦を深めようと思ってな」

 すると、二人はぼくの顔を見てきた。

「あはは、そうですか」

 ぼくはそれを聞いて苦笑する。
 思ってみると実際そう。
 ハロウとは朝、夜共に修行をするし、歳も同じことや趣味も似たような感じなのでササメさんとは何かと話が弾む。
 他のお三方は、そこまで話をしたことはない。

「誰から忍術習ったの?」

「……黙秘します」

「ちょっとっ!」

 コノミさんが腕を振って叫んでくる。

「あはは」

 ぼくはまた苦笑しながら、誤魔化す。

「……聞いて欲しくないこともあるのだろう」

 うんうんっとライカさんに対して頷く。

「何か色々とありそうよね」

 コノミさんはそう小さく呟きながら、懐から巻物を取り出す。
 そして、色々と忍具を呼び出した。
 普通のクナイや手裏剣と言ったものとは違った、爆発物っぽいものが甲板の上に散らばる。

「何してるんですか?」

「えっ? これね。話しついでに荷物の整理をしようかなーって。これは、水中専門の起爆具よ」

「へー」

 腰をかがみながらそれらを眺める。
 かなり珍しいもののような気がする。

「すでに船底には色々とセットしてるから、安心してもいいわよ」

 かなり物騒なことを言う。
 魚雷みたいなのを、セットしたのだろうか。
 視線を空に向けると、船の上空を旋回する鷹の姿が見える。
 ライカさんの鷹である。警戒するように飛んでいる。
 ピューという独特の高い鳴き声が響く。

「……珍しいか?」

 ずっと鷹を見ていたらライカさんが声を掛けてきた。

「い、いえ。なんか一番仕事してるのは鷹さんだなって」

「……そのために入るわけだがな」

「あたしも仕事してるわよ」

 不満げなコノミさんの声が聞こえてくる。


 Cランクと言っても平和だなー。
 まあ、そんな簡単に襲われることなんてないか。うん、うん。


 と昨日までは思っていた。
 
 

「……天気が悪いな」

「そうね。雨が降りそうだ」

 ライカさんとコノミさんは空を見上げる。
 それにつれられて、ぼくも空を眺めた。
 鷹が飛んでいる。
 元気だなーっと思う。

「へっ?」

 思わず声が漏れてしまう。
 警戒するように鷹が甲高く鳴き、船の進行方向へと飛んでいく。暫くすると、こっちに戻ってきて、ライカの手甲の上に降り立ってきた。

「……向こうに誰かがいる」

 ライカさんは静かに船の進行方向へと指差す。

「島とか船は見えないわよ?」

 コノミさんは目を凝らしながら見るが、特に変なものは見当たらない。
 ぼくも視界の範囲内では特に怪しいものは見当たらなく、目を閉じ子鮫を握り意識を集中させる。
 船を中心とする波紋が広がるイメージ――いた。

「二百メートル先に誰かがいます」

「二百メートル先? 水の上に?」

「はい」

 目を開き、船の進行方向を見る。

「探索方法は置いといて、水の上に入るってことは忍者かしら?」

「そうじゃないですか? ちなみに一人です。他に怪しい人は見当たりません」

 水の上で精神統一でもしているかのように、チャクラは静かである。こっちに視線を向けていないので、鷹がいないときっと気づかなかっただろう。

「……ガドー辺りか。一人っというのが運がいいのか悪いのか」

 ガドー? なんか聞いたことがあるような。それよりも、重要なのは。

「結構強そうです。多分上忍レベルぐらいは」

 そんな感じが伝わってきた。
 ぼくがそう言うと、二人の顔に緊張が走るのが分かる。
 運が悪いのは、今現在小島と小島にある航路にいるということ。ほとんど一本道。
 相手は何かしらの手段でこっちの位置を把握しているはず。なので、戻るということも危ない。
 二百メートル。近すぎる距離である。

「……船長に伝えてくる」

 ライカさんは早足で船室へと向かう。

「敵なんですか。やっぱり」

「波の国はまだそこまで平穏じゃないの。帰ったら説明するわ。勝てなくてもこの場から逃げれればいい。足はこっちのほうが速いしね」

 コノミさんは巻物を取り出し、忍具の準備をする。

「敵は動いてないの?」

「えっ? あっはい」

 意識を集中させる。一歩も動いていない。

「じゃあ、そのまま探索係り。鷹使うとばれるしね。チャクラとかは消費されるの?」

「あんまり使わないので平気です」

 精神を同調させるときに少し使う程度。子鮫の力を借りているだけなのだ。



 殺伐というと結構違う微妙な緊張感。

 ライカさんも戻ってきて、戦闘配置。
 目視できるまでもう少しである。
 相手はすでにこっちが気づいている事は知っているはず。

「動かないのよね? 囮の可能性は?」

「チャクラを感知しているので、その可能性は低いです」

 動かない敵。ただ待っているだけなのか。
 うーんと首を傾げる。

「……見えた」

 ライカさんが小さく呟く。この中では一番目がいい。
 すぐにぼくもその姿を確認することができた。
 水の上で仁王立ちする鎧を着た姿を。

「侍?」

 NARUTOの世界にはたしかにいる。
 でも、ここで出会うと違和感を感じる。鉄の国だっけかな。侍がいる国は。

「侍って鉄の国の? あそこって国外の依頼受けないんじゃないの? よく分からないけど」

 コノミさんは警戒しつつ、こっちのほうへ首を向ける。

「……よく知らないが、現に目の前にいるわけだ。何かしら依頼を受けてるんだろう。抜け忍ならぬ、抜け侍か」

 突然侍はスッと動き、腰にある刀を抜いた。見た目は鈍重そうだが、意外と軽やかな動きをする。
 無駄のない動き。実力はやはりある。

「小童だけか? 上忍はどうした?」

 船がそのまま近づくと、侍が声を掛けてきた。
 ぼくは困ったように他の二人を見る。

「……先生は気配を消して様子を見てるわ」

  いないといったらどうなるのだろう。

「見え透いたうそを。つまらんのー。小童共だけか、もう少し遣り甲斐があればよかろうに」

 言い終わるが早いか、僕らめがけて侍を刀を力強く振る。ビューと風を斬る音。

【傀儡の術】

 両指を広げて、鎖を操作する。マントの間、両足、両腕から鎖が飛び出し、ぼくらの前へ幾重と張り巡らせる。

 キキッン!

 鎖は衝撃を受けて、後ろに吹き飛ぶ。固定がうまくできてはいないからだ。しかし、攻撃を防ぐことには成功した。

「小童とは思ったが、少しはできるようじゃな」

 うんうんっと侍は頷いている。

「侍は忍術は使えませんが、チャクラの形態変化は使える様子……かなり熟練度も高い」

「あたしたちだけじゃ荷が重くない? 隙を突いて逃げるしか……」

 そうは言ってもかなり難しい。
 動いたっ!

 鎖を腕に巻きつかせて水面へと降りる。
 思ったよりは早いが目で追える速さ。それよりも、刀を振る速度がかなり速い。一太刀もらっただけで、致命傷だろう。

「援護お願いしますっ!」 

 印を組む時間もない。完全なる接近戦。取って置きを残す気力もなく最初から全力。
 戦闘開始から子鮫を使うのは初めてだ。

 二、三度交差する。
 なんか手加減をされているような気がしないでもない。
 侍は兜もつけているため、表情が分からないので実際はどうかは知らないが。

 一歩距離をとった瞬間、侍目掛けて金色の刃が振ってきた。いや、刃ではなく羽根である。

【雷遁・雷羽根弾】

 チラッ上空を見ると、いつもの鷹が飛んでいる。
 どういう系統の忍術かというと、木の葉の犬塚みたいな忍術らしい。

「やりおるなっ!」

 鎧には無数の羽根が刺さっているが、致命傷には至らない。

「ならこれならどうよ」

「へっ?」

 大きい何かが隣を通った。顔面すりすり。
 球体で、文字と文様が書かれた謎のもの。いや、ものすごく爆発物っぽい感じがする。
 いや、絶対……。


 ドットーン!!

 爆発とともに轟音が鳴り響く。
 爆風で船のところまで吹き飛ばされてしまった。
 大きな怪我はないからよかったけど。

「どんなものよ」

 エッヘンという風に胸を張るコノミさん。
 ぼくとライカさんは冷ややかにそれを見つめる。

「ご、ゴホッ……老体と労わらんか小童共め。一対一で戦うのが武士道というものだろう」

 しゃべり口調や声のトーンからしてもそれなりの歳らしい。ご老体なら引退すればいいのに。

「……ぼくら忍者ですけど?」

「ふっ、これだから風情が分からん若者は……」

 首を傾げる。
 侍が後ろを向いたからだ。
 でも刀の柄に手を掛けている。
 
「まあ、いい。今回は帰るとしよう。依頼もあれじゃしな。次もある」

 その様子はどこか――居合いをするような感じだ。
 
「お主らはあるかどうか知らんがなっ!」

 最初の一撃よりもずっと力を入れたその斬撃。
 今度は逆に空気を切る音さえ聞こえない。

 ぼくはそれが来ることを確信して、タイミングを合わすかのように先端に子鮫が付いている鎖を振る。

 ズズズズッ!

 斬撃とぶつかり合う。子鮫が斬撃を削る瞬間の音。
 斬撃はチャクラの形態変化。チャクラを削る子鮫ならそれを受け止め、削ることができる。

「霧の忍刀……長く生きてれば面白い物が見えのじゃな」

 侍はそれだけいうと、去っていった。


「ナイ、無事?」

「ぼくは無事です」

 鎖を引っ張り子鮫を回収。

 モゾ。

 まあまあおいしかったらしい。白い布で子鮫を巻いていく。 

「……ナイはだな」

 ため息交じりのライカさんの呟きが聞こえる。
 ぼくは後ろへ振り向くと、船の外装が横線一本の綺麗な太刀筋が残っていた。ぼくがいた地点だけは太刀筋は残っていない。
 子鮫の大きさ上全部は受け止められなかったらしい。

「弁償ですかね?」

 ぼくは上を向き二人を見ると、

「さあ?」

「……知らん。まあ、里が持つだろう」

 二人とも肩をすくめた。




あとがき

微妙に長いこの話。
どうもお久しぶりです。生きてます。
そして、更新できなくて本当にすみません。前回から一ヵ月半以上経ってるという。
お待ちいただいた方々、本当にすみませんでした。

次回は短編集です。
なんか色々と長くなっているので、二回に分けるかもしれません。
来週中に一度出来たら良いなあっと思っています。言うだけならタダですが、実行しないのは駄目ですよね。次回こそは有限実行できるように頑張りたいです。

大事なことなので、三回言います。
更新できなくて、すみませんでした。今後も付き合っていただけると光栄です。

誤字脱字等ありましたら、感想のほうで一言言っていただけるとうれしいです。



[16066] 第三十二話 波の里で①
Name: copu◆9ee5bcb3 ID:b22b3897
Date: 2010/08/21 22:36
 度々くる小話のターンです。


 
 第三十二話 波の里で①


 小話 ナイとコノミとライカ


 あの任務が終わった数日後。

「これが波の国ね」

 黒板に円が描かれ、その中に波と書かれる。
 その周りにはいくつもの円が追加されていく。

「周りのは他の国ですか?」

「正解っ!」

 何故かメガネを掛けたコノミさんは、まるで先生ようにぼくを指差した。

「ちなみにメガネは伊達ね」

 メガネをクイッとさせる。

「……誰も気にしていない」

「うっさい、ライカ」

 ライカさんは部屋の壁に寄りかかっていた。
 今この部屋にいるのはぼくたち三人だけである。

「ここら辺の小国って、どこも似たり寄ったりしてるの。少し前まではここもそうだったんだけどね」

 一度そこで切る。

「ナイはどこまでここのこと知ってるの?」

 聞かれて首を傾げる。
 強いて言うなら、一般的な……それ以下かもしれない。
 原作での状況は今でもなんとなく覚えている。
 でも、それとは違うと思う。ガトーって出てたけど。

「あんまり知りません」

「まあ、そんな感じよね。波の国は少しはマシになった。でも、少しはなの。利権結構色々あって大変みたい。ガトーって知ってる?」

 出てきた……。原作でも波の国を手に入れようとした人だ。

「ガトー……あの大きな会社のですか?」

「そう。それよ」

 ここでコノミさんは大きなため息をつく。
 今の波の国でもやはり関係しているらしい。

「ガトーカンパニー。主に海運業ね」

「あっ! 海運……船ですか」

「そう」

 船なら波の国とは切っても切れない関係。
 でも、原作と違って今の波の国の様子は結構豊かに見える。

「……波の国には特に特産物といったものがない。しかし、周りが海に囲まれた環境は船を使う貿易には最適」

「波の国は貿易で成り立っているの。この国で海の貿易でガトーと関係するのが六割」

 ライカさんの言ったことを補足するようにコノミさんが付け足す。

「六割ですか。大きいですね。で、その、何が問題でも?」

 六割。思ったよりもずっと大きい割合。でも、今のこの状況なら……よく分からず首を傾げる。

「そうっ! 大きいわよね。これで、ガトーが満足するならいいのっ!」

 ここでコノミさんは語彙を強めた。

「ガトーは十年前以上からこの波の里に手を伸ばしていた。もし、俺ら波の忍者がいなかったら十割……いや、国そのものにまで手が伸びてだろうな」

「というわけで、ガトーにとってあたし達は目の上のタンコブってわけ」

「はー」

「それがどうしたのって顔してるわよね。まあ、実感ないからかもしれないけど。ようするに、この波の国は元からこの国に住んでる人たちとガトーたちが戦っている最中なの」

 戦っている? でも、目で見てるわけじゃないような……。

「見えない戦争中。その上でガトーは橋の存在が邪魔になっている。海よりも陸の方がコストが安いしね。新たに作ってるの知ってるでしょう?」

 それは知っているとぼくは頷く。
 まとめると、

「これ以上橋が出来るのは困るから妨害しているってことですか?」

 すると、二人は正解っと言う風に頷いた。

「最近武力で妨害し始めたの。迷惑よね」

 嫌々そうにコノミさんは呟く。

「でも、わざわざ妨害するなんて……効率悪いような」

「……違うんだろ。元々ガトーはこの国を手に入れようとしてたんだ。今のタイミングを逃すと、もう二度とこの国には手が出せなくなるから、今この状況で打って出たんだろ。勝ち目は薄いように見えるがな」

 何だかんだ原作っぽく進んでいるように見える。

「問題は抜け忍を雇い始めてるってこと。あの侍もそうみたいよね」

「あんなのがゴロゴロいたら嫌ですね」

「……報告はした。あとは上の判断だろ」

 ぼくら三人はあの任務のことを思い出してため息をついた。



 小話 ナイとハロウ①


「うーん、何かあれですよね」

 夜空を見上げると、綺麗な満月が見える。
 とても寒い。
 そして、息が上がる。吐いた息は白くなる。

「何がだ?」

 ハロウの方を見ると、ハロウも息が上がっている。

「やっぱり、あれですよ」

「だから、何がだよ」

「修行ってやっぱり、きちんと教える人が居ないと効率がよくないですっ!」

 右手ガッツポーズでぼくがいうと、ハロウは疲れたように息を吐いた。

「何ですか、その反応」

「いや、だって、これ自己練だろ? 昼ごろ先生たちに教えてもらってんじゃん」

 任務がない日で、再不斬先生も暇な日は修行を見てもらっている。他にも見知らぬ上忍の人たちがわざわざ来てくれたこともある。

「でも、やっぱり効率を求めるなら……」

「マジで修行漬けだな」

「ですね。まあ、そんなものですよ……うん」

「強くなってどうすんだ?」

 ハロウは少し疲れたようで、地面に腰を下ろした。
 強くなる……。

「特にないですけどね……うん」

「なあ」

「何ですか?」

 ぼくもハロウの隣に腰を下ろす。地面が冷たく、ヒヤリとした。

「大蛇丸が何をしようとするのかはわかんねえ」

「木の葉崩しは起こすつもりみたいですけど」

 いきなり話が変わるが、ぼくはそれに話を合わす。

「そうだな……波は音と仲が良い。周りにはバレナイ程度に、上層部でな」

「みたいですよね。ササメさんの件とか」

 ふうまの一族はほとんどまるまる、この波の里にいる。

「木の葉崩しの際は波は協力しないがな」

「それがいいですよ」

「大蛇丸は何を求めているんだと思うか?」

 ハロウはぼくの方を見てくる。

「ハロウは分かりますか?」

「わかんねえっていっただろ」

「そうでしたね……多分、なんとなくぼくは分かるような気がします」

「なんとなく?」

「なんとなく。でも、違うのかな」

 夜空を眺める。

「なんだよそれ」

 ぼくは苦笑しながらハロウを見つめ返した。

「ナイは本当にないのか?」

「ないですよ」

 やりたい事なんて。今が楽しいならそれで……。

「ハロウは?」

「おれはこの里を守りたい」

 決意するように呟いた。

「かっこ、いいですね」

「お前はさあ、それでいいのか?」

 首を傾げながらもう一度ハロウを見る。

「だってさあ、あれだろ。お前に忍術を教えてくれた奴らってみんな死ぬじゃん」

「えっ?」

 一瞬何を言っているのか分からなかった。

「サソリは本当に序盤で。デイダラ、イタチ……鬼鮫は最後あたりだったな」

 静けさが訪れる。

「えーと、その」

 ハロウは困ったように頭を掻く。

「まあ、おれは暁に近づきたくないから。別にいいんだけさあ」

「……尾獣のチャクラを封印でしたもんね」

「だから、おれは暁に近づきたくない……向こうから来るなら返り討ちにする。だから、おれは強くなる。そして、里も守れるようになる」

 決意がある。夢がある。先がある。
 
「先のことは――まだ分かりません」

 小さく小さくぼくは呟く。
 イタチさんに鬼鮫さん、デイダラさんにサソリさん……忘れたらダメな鮫肌。
 少し思い出に浸ってしまう。

 冷たい風が吹く。

「今日は終わりにしましょうか」

「そうだな。明日に響くし」

 朝や夜はまだ寒いけど、だんだんと春になって来ていると肌で感じることが出来る。そんな今日この頃。



 小話 ナイとコサメと医療忍術?


「握り方がちょっと違うね」

「こ、こう?」

 手裏剣の握り方を変えて、少年はぼくの顔を見てくる。

「そんな感じで、こういう風に投げる」

 スナップをきかせて投げると綺麗に的に命中。

「おー」

「という風にします」

「はーい」

 子供らしい元気の良い声。

 ただいまアカデミーの教師補佐中。
 
 忍術指導以外にも読み書きやらそろばんを使った算数問題などなど。
 黒板には課題なるものの、数式が書かれている。

「ナイくんはソロバン下手だよね」

 子供たちを尻目にそろばんと奮闘していると、ササメさんの声が真上から振ってきた。

「苦手です……うん」

 そろばんは使ったことがあんまりなかったので、ここの子供たちよりも下手でした。

 キーンコーン カーンコーン

 授業の終わりを告げるチャイム。そして、昼食の開始を告げるチャイムが鳴る。

「お昼ですね」

 借り物のそろばんを返却しようと立ち上がる。

「ナイ君は今日は食堂?」

「いえ、お弁当です」

「えーと、もしかして作ったとか?」

「はい」

 それを聞くとササメさんは驚くように目を見開いた。

「す、すごいっ! た、たしか一人暮らしだよね。まさか、いつも?」

「だいたい自炊です」

 わあ、すごいすごいと体で表すかのように、ササメさんは腕を勢い良く振っている。
 子供たちが怪しげな目でこっちを見てくるのが感じられる。

「……そろばん、戻してきますね」

「あっはい。そうそう、わたしもお弁当なので、一緒に食べよう。ナイ君お昼までいるの珍しいし、みんなとごはん食べないかな?」

 ササメさんは後ろにいる子供たちを指差す。
 お弁当を持つ一団。外でみんなと一緒にごはんを食べようと言うお誘い。

「いいですよ。分かりました、じゃあ少し待ってください」

 そろばんを返して、お弁当を持ち外でごはんを食べることに。


「はーい、先生。先生って前まで木の葉の里にいたんですか?」

 昼食を食べていたら、そんなことを聞かれた。
 先生って言われるのは少し、むず痒い。

「だ、誰に聞いたんですか?」

 すると、その少女は首を曲げ、ササメさんの方を見る。

「あれ? 言ったら駄目だったの?」

 あはは、と苦い笑い方をしていた。

「まあ、別にいいですけど」

「あっ! でも、ずっと木の葉の里にいたわけじゃないんだよね」

「ですね。生まれは木の葉ですけど。七歳以降は他のとこにいました……うん」

 イタチさんたちと一緒にいたことを思い出す。まだ、数ヶ月前の話だがとても昔のように感じた。

「どうかしたの?」

 ササメさんが首をかしげて聞いてきた。

「何でもないです……今はまだ元気にしてますしね」

 今は元気にしている……しんみりするのは良くないと思い、ほかのことを考えることにした。


 アカデミーのお仕事を終えると、ササメさんに誘われてあるところへ向かうことになった。

「病院ですか?」

「はい。ついてきてください」

 白く、清潔そうな建物。波の里・中央病院と書かれている。中央ということは、あるということなのだろうか。
 ササメさんの後をついていき、中に入ることになった。
 里の中ということなので、忍者しかいない。まあ、当たり前か……っと思いながら、奥へと進む。

「えっ? た、立ち入り禁止ですよ?」

「大丈夫です」

 関係者以外立ち入り禁止の看板が見えるが、ササメさんは歩みをやめない。
 本当に良いのかとぼくは冷や冷やしていた。

「ここです」

 ある扉の前に立ち止まる。
 鼻がツーンとする嗅ぎ慣れた、臭いが漂ってきた。この香りは……

「薬草ですか」

 ぼくは顔をあげ、ササメさんのほうを見ると、少し驚いていた。

「……正解です」

 扉が開く。暖かい空気が漏れてきた。

「ビニールハウス……薬草の栽培ですか」

 中々の広さがあるビニールハウス。数多の薬草が栽培されている。一年中を通して、安定した薬草を得ることが出来るだろう。
 手入れをしている、病院の関係者が数名。勿論医療忍者だろう。

「ササメ、きたね。その子がナイ君かな?」

 十代終わりごろの青髪の青年が話しかけてきた。額当てに医療忍者の服装を着ている。

「えーと、この人は私の従兄弟のふうま アラシ」

 付け足すようにササメさんは僕にその人のことを説明してきた。
 ふうま アラシ 原作だと、大蛇丸に捕まって人体実験をされた人。医療忍者とは驚いた。

「ん? どうかしたかい?」

「えっ、いえ。そのなんか用事でもあるのでしょうか?」

「いや、ササメから、君が医療忍術を使うと聞いてね、どういう子かと思って」

 アラシさんは小さい僕に笑いかけながらそう言った。

「たいしたものじゃないです。医療忍術は片手間でかじった程度なので」

 応急処置程度なら可能だが。医療忍術よりも毒物知識を僕は増やしていった。

「取り合えず、中を案内するよ」
 
 アラシさんに病院の裏側を案内される。

「感想は?」

 一通り見終わったところで、アラシさんは僕にそう聞いてくる。

「その、何だが、木の葉の医療忍術を思い出します」

 手術現場も少し見たが、医療忍術がぼくがよく知っているものだった。

「この病院に勤めている人の多くは、俺の一族だ」

「田の国のふうまの一族ですよね」

 アラシさんは小さくうなづく。

「そして、使う医療忍術は綱手様から教わったものなんだ」

「っ!? 綱手って、木の葉の三人の?」

「そう。元々、ふうまの秘伝忍術は医療忍術の系統に通じることもあって、飲み込みも早かった。そして、今現在波の国を代表する医療忍者の一族なんだ」

 ふうまの秘伝忍術。あんまり覚えてはいないが、チャクラの糸で相手の心臓を云々とか、蜘蛛を操ったるとか、何か色々とあったような気がする。

「それで、何でぼくに?」

 里に来て数ヶ月。病院内部を見せるのはいささかどうかと思う。

「ササメはこの病院に手伝いに来ている。あと数年したら立派な医療忍者になるだろうね。君もどうだい?」

 ぼくはアラシさんと目を合わせた。
 後ろにいるササメさんはいきなり褒められて、少しおどろいでいることが分かる。

「ぼくは医療忍者になるつもりはありません」

「……予想はしてたけど、面を向かって言われるとね」

「あっ! いや、その、そう言う意味じゃなくて」

「分かってるよ」

 アラシさんは苦笑しながら、肩をすくめた。

「でも、お手伝いできるならしたいです。医療忍術はあれですが、薬草知識はもっと深めたいです」

「期待してるよ。君の方が詳しいこともあるかもしれない。ちなみに、医療忍術は木の葉のものだが、体系的には霧のも多いんだ。ここだけの話、元追い忍の方々のお陰でね。薬草知識は主にそこからかな」

 そこまでぼくに言ってどうするのだろうか。どう返事をしたらいいか、困っているとアラシさんはぼくの髪を撫で、

「明日にもササメと一緒においで、歓迎するよ」

 とぼくとササメさんを交互に見た




あとがき
コメント返しで書いたとおり長くなったので、二つに分けました。
波の国の現状説明が入ってます。
次回はナイとハロウ②とナイと白のお話を予定してます。これでやっと、木の葉の人たちと会える例の回に入れます。
ただいまハロウ②をまだ書いてる途中なので、来週中に更新できたら良い感じです。
本当は九時頃更新予定でしたが、明日の聖戦に向けて準備をしていて、時間がかかりこんな時間に。明日は理想郷発の某囲碁本を忘れずに買う予定。
テンション上がってます。

誤字脱字ありましたら、ご報告してくれるとありがたいです。
次回もよろしくお願いします。



[16066] 第三十三話 波の里で②
Name: copu◆9ee5bcb3 ID:b22b3897
Date: 2010/09/01 12:21
「なんかさー、ナイ、病院にも行ってるんだって?」

「どこから聞いたんですか?」

 夕方。日も暮れる時、ぼくとハロウは組み手を行っていた。

「白さんから」

「あー、白さんも何回か見かけました」

 元追い忍こと、白さんも病院のなかで何回も見たことがある。
 色々と忙しそうだったので、その場では話しかけなかったが。

「この文武両道め」

 エイッとハロウは蹴りを飛ばしてくるが、ぼくはそれを軽く避ける。

「知識はたくさんあって良いものですよ」

「よくやるよな。関心、関心」

 はーっと大きくハロウはため息をつく。

「ところで、もう三月なんだが言いたいことあるか?」

「もうそろそろナルト兄ちゃんがアカデミー卒業ですね。無事に卒業できるかな」

 アカデミーの卒業時期はもうそろそろのはず。いち早くぼくの方が忍者になったんだよなーっと自分の額あてを身ながら、しみじみ思う。

「いや、違う。おしいが、なんか違う」

 ハロウは駄目だしをしてくる。

「あー、中忍試験ですねっ! ぼくは中忍試験を受けるために波に来たんですから」

「マジか。いや、いきすぎ、その間だよ」

 ハロウがだんだんとイライラしてくるのが分かる。

「えーと、何ですか?」

 白々しくハロウに向かってそう言うと、

「波の国編だよっ! ガトーのやつ。てか知ってるだろう。襲われただろう前の任務で」

「ですよね。でも、同じ時期に起こるんですか? たしかに、橋はただいま建設中。あと二ヶ月ぐらいで完成です。もし、その橋が完成したらガドーは波の里に手を出すことが出来なくなるはず。でも、本当にくるのでしょうか?」

 良い戦力を向こうは揃えている、しかし、勝ち目の薄い戦いを仕掛けるだろうか。

「ガトーはそう言うやつだ。仕掛けるだろうな」

 どこかで会った様な口調でハロウはそう言った。

「会ったことがあるような感じですね」

「おれは隠れてたけどな。ヤクザもんって感じ。絶対来るし、餌も撒いた」

「餌?」

「そう、偶然だけどな。橋を作る木材が足りなくなりそうなんだよ。それで、来月の終わりごろタズナさんが買い付けに行ってくる。火の国にな」

「そ、それは超大変そうですね。わざわざ、タズナさんが?」

 タズナさんは橋作りのまとめ頭。わざわざ、その人が行くものだろうか。

「良い橋作るのは、良い素材と良い職人だそうで、木材を自分で見て買うらしい。自ら行くそうだ。超大変そうだけどな」

 ぼくとハロウは顔を見合わせながら笑いあう。

「護衛とかは?」

「普通にいるよ。でも、木の葉の里付近まで買い付けに行くみたいだから、木の葉の奴を雇う。国境付近で護衛を交換してもらう予定」

「超変な感じですね」

「いい加減、その超っていうのやめろ」

「了解」

「まあ、変だけどな。で、ガトーが他の国の中タズナさんに手を出さないというのが、上の意見。おれも同意」

「そうなんですか」

 波の国でも付きっ切りで警護中。火の国でも付きっ切りで警護中。たしかに、手は出しにくい。
 手薄になるのは……。

「あれですかね」

「あれだな。それで、波の国編襲来に備えて、修行をもう一段落上げることにした」

「はあ、というと?」

「再不斬先生の修行現場に飛び込んでいく」

「許可は?」

「ない」

 男らしくハロウはきっぱりとそう言った。

「こういうときどういうことを言ったら良いかわかんないんですけど」

「頷けば良いと思うよ」

「……」

「……」

 小さな沈黙が広がる。
 何でだろうか。

「場所はどこですか?」

「リサーチ済み。ということで、レッツゴー」

「いまからですかっ!」

「何だよ。お前が行きたいっていったんだろ?」

「た、たしかに前そんなこと言ったけど」

「じゃあ、レッツゴー」

「……はい」

「声小さい」

「おーっ!」

 もう行くしかないと思い、やけくそで右手を上げた。



 第三十三話 波の国で② 
 ナイとハロウ② 突撃っ! 隣の修行現場っ!



 暗色のマントで体を覆う。いつもの戦闘服に着替えた。
 島と海の境い目。

「向こう側にいるはず」

 隣に立つハロウはぼそりとぼくに向かって言った。
 月明かり程度しか、明かりは無いため人がいるかどうかなんて目では確認できない。
 子鮫を握り、チャクラの感知を始める。500メートル先、海の上にチャクラ反応を感じた。

「いますね。500メートル先に」

 ぼくはハロウの顔を見る。

「何だ?」

「これから先に進むときは気配を消すように。再不斬先生はそこら辺、感知しやすそうですし」

「そうだな。でも、おれ気配消すの苦手なんだよ」

「それなら、最低限殺気は消すように」

「殺気って何だよっ! もとからねえよ」

「死ぬ気で逝けって事ですよ」

「漢字違わないか?」

「気のせいです……うん」

 冗談はさて置き、ぼくらは出来る限り気配を消して進んでいく。

 ある地点から一気に霧が出てきた。
 数メートル先は視界が閉ざされている状況。ハロウと連絡を取るのも難しく、孤立してしまう。
 もう一度意識を集中させて、再不斬先生の居場所探す。
 50メートル先。ずっと動いていない感じがしている。さすがにバレタだろう。なんせ、向こうは無音殺人術の達人。気配を消すのも読むのも得意だろう。ハロウは右横5メートル程度離れたところに入る。気配は感じるが、視界で確認は出来ない。
 意識を元に戻して、右手に子鮫を構える。左手は傀儡の術で鎖を辺りに漂わせ待機させる。
 準備万態の状況。近接における、防御の構え。

 ドンッ!

「先手打たれたっ!」

 大きな爆発音の後に辺りに水飛沫が巻き散る。微妙に悲鳴っぽく聞こえるハロウの叫び声。
 霧のせいで何が起こったかどうか確認できないが、ハロウは攻撃された。

「っ! ぐっ……水分身か」

 後ろに気配を感じ、慌てて距離を取ろうとしたところに蹴りが飛んできた。
 再不斬先生である。あんまり速くはない。ハロウのところも襲われたところを見ると、水分身だろう。
 横に飛んで蹴りの威力を消したため、戦闘には支障はない。

「水分身には遠慮は入らないですね」

 ぼくはにやりと笑い、左手を思いっきりひっぱった。
 蹴られた瞬間、鎖を水分身に巻きつかせておいたのだ。分身系の術は外傷を与えると、それが軽くても分身が消えてしまうのが大半。そして、元々水ということもあり、思ったよりも力が要らずに鎖を再不斬先生を引きちぎった。

「うっ! 一体だけじゃない」

 再不斬先生本体を探したいところだが、そんな時間は無かった。
 いつの間にか複数の気配に周りを囲まれている。
 広範囲の術を使いたいところだが、ハロウを巻き込んでしまうため、その案は却下。飛び道具もこれに含まれてしまうため、近接戦闘、体術しか、子鮫を使うしかない。
 
「おらっ! 次、次だっ!」

 ハロウが頑張っている声が聞こえてくる。

「向こうも頑張ってますね。ぼくもやりますか」

 ぼくは、鎖で距離周りの距離を掴みながら、子鮫を握りなおす。


「調子はどうだ? 今13人目」

「……15人目」

 いつの間にかハロウと背中を合わせて戦っていた。

「負けたっ! 体術はおれの方に分があると思ったんだけど」

「甘いです。子鮫を使うなら負けませんよ」

 悔しそうにするハロウに対して、ニヤリと笑う。

「にしても、数は多いな……強くないけど」

 ぼくとハロウが倒した数は約30人。今も周りには10人程度がいる。
 分身の強さは本体の十分の一。囲まれても十分に対処できるレベル。しかし、一つ問題があった。

 分身の一人が右側の死角からハロウを狙う。それに、ぼくが気づき対処をする。すると、ぼくの死角を狙って別の分身が襲ってくるのだ。

「連携してますね」

「そうだな」

 ぼくは苦笑いをしながら辺りを見渡す。水分身の連携攻撃。まるで、誰かが分身に指示を出している感じである。その誰かというのは再不斬先生であるわけだが。
 相変わらず、霧で視界が閉ざされている。気配を掴もうとも、本体の再不斬先生を見つけることは出来ない。

「メンドイ。広範囲の忍術で一気に雑魚を片付ける」

 痺れを切らして、ハロウがぼくにそう言う。

「広範囲忍術……あー、ありますけど」

「じゃあ、頼む。おれは少しの時間稼ぎとそのあと、霧を晴らす」

「やっぱり、ぼくに出番がいきますか」

 水だから水遁がいいのか。いや、水龍弾は一方向に対して有効で、全方位には不向き……。全方位はあるが、チャクラがもったいないような気がする。火遁は広範囲の忍術をそもそももってなくて、土遁は論外。あれだっ! 使ったらハロウは驚く。広範囲ではあまりないが、今は密集中。
 そんなことを一瞬のうちに考え、使う術を決めた。

「行くぜっ! 水遁・水陣壁っ!」

 ハロウが素早く印を組むと、ぼくらと分身との間から水の壁が湧き上がり、境界を作った。
 長続きはしない。ハロウはぼくに目でそうサインを送ってきた。。
 分身たちもそれが分かってるらしく、水の勢いが弱まったら、飛び込んできそうな感じを受ける。

 この印を組むのは久々。出てくるのはいつもの彼ではなく……出てきたら困るけど。大きくても、小さくても。
 水の壁を蹴り上げ宙に舞いながら、印を組む。

「口寄せ・屋台崩しの術っ!」

 ボンッ!

 という音共に全長十メートルの大蛇が海面に落下する。
 ちなみに、ただ大きい蛇を口寄せしただけなので、屋台崩しの術とはまるっきり違うと思う。

 バシャンッ! という大きな音と水飛沫があたりに飛んだ。
 ぼくは綺麗に蛇の背中に乗る。

「潰されましたが」

「お、おれ潰されるとこだったっ!」

 とりあえず、決め台詞を言うと、下の方からハロウの批判めいた声が聞こえてきた。

「ご無事でよかったです。分身の気配は……ないですね。あとは本体」

 蛇の落下で分身たちはあえなく撃沈した様子。再不斬先生は相変わらず、気配が読めない。子鮫の出番だろうか。

「そういえば、霧を晴らすんじゃなかったんですか?」

「あー、忘れてた。待ってろ」

 ハロウはそう言って、印を組む。

「忍法・霧払いの術」

 すると、あたり一面濃かった霧が、スッと消えていくのだ。
 月が海面に写っている。

「で、再不斬先生は? っ!?」

 背後に気配を感じて子鮫を振るうが、呆気なく手首を捕まれ首筋に冷たい金属を押し付けられた。首斬り包丁である。

「反応は良いな。油断はしてなかった感じか」

 静かに告げる再不斬先生。

「最後までやるのが忍でしょう」

 ぼくは首を少し回して、にやりと笑いかけた。
 右足で踏む動作を行う。その合図によって、呼び出した大蛇は役目を終えたことを知り、ボンッ! という音と共に消えたのだ。

「っ!? やるな」

 再不斬先生は目を細めている。

「空中戦はこっちが有利です」

 海面に落ちるまでの数瞬。鎖を操作して、再不斬先生の獲物首斬り包丁に巻きつけ束縛する。
 着地し、ギュッと鎖を握る。

「で、それでどうする」

「ハロウ出番です」

 さあ、今なら再不斬先生は動けない。攻撃のチャンス。ぼくはハロウの方に視線を向けると、

「えっ?」

 首を傾げているハロウの姿が目に入った。

「……」

「……」

 ぼくと再不斬先生は気まずい雰囲気になる。

「期待したぼくが馬鹿でした」

「扱いヒデェ……」

 ぼくがそうぼやくと、後ろにいるハロウが小さく呟いている。
 気を取り直して、キッと再不斬先生を睨み付ける。
 やり気が削がれたが、気を持ち直す。
 取りあえず現状の確認。傀儡の術だけでは、鎖を支えきれないので右手で鎖を握っている。左手は傀儡の術中……両手がふさがっているのだ。

「体格差を考えることだな」

 再不斬先生が首斬り包丁の柄を握り、鎖を引きちぎるかのように思いっきり上げた。
 ぼくは逆に鎖によって引き寄せられる。くっと一瞬だけ唇を噛締めるが、その後、ニヤリと口元を上げた。
 握っていた鎖を手放したのだ。

『傀儡の術』

 久々に両手で行う、傀儡の術。
 首斬り包丁を縛っていた鎖がまるで蛇のように這い上がり、再不斬先生の手元まで来る。そして、柄ごと再不斬先生の右腕に巻きつける。
 右腕封鎖。

 バシャ!

 再不斬先生の左手方面の海面に水柱が出来る。
 執拗に獲物を狙う鮫のように、水柱から子鮫が出てきて再不斬先生の左腕に巻きついた。

 傀儡の術の左手は首斬り包丁の鎖を、右手は子鮫を操作したのだ。
 両腕封鎖。
 
 再不斬先生はそれでどうしたっという風にこっちを見てくる。
 傀儡の術を解かずに印を結び、親指を小さく噛む。

 ボンッ!

 という音と共に出てくるのは、赤紫色の蛇。それが、ぼくの左腕に巻きつく形で口寄せされた。

「おい、また面倒くさそうなときに呼ぶな」

「何も無いときに呼んでも怒るじゃないですか」

 ぼくはマンダに向かって苦笑しながら言ったのだ。

「で、何すんだ?」

「今日は珍しい日ですね。ハロウにしても、マンダさんにしても」

 修行をつけてもらうとか、嫌に素直に言うことを聞いてくれるとか。
 うんうんと頷く。
 再不斬先生は様子見を言うことらしい。そうでなければ、のんきに話なんかも出来ない。

「左手の鎖をよろしくお願いします。右手は子鮫に頼んでいるのだ」

 マンダは若干嫌そうな顔になったが、小さく頷いて了承してくれた。
 
「面白いものが見れそうだな」

 ボソッとそう言い、ぼくから鎖を受け取り、水中に潜ったのだ。
 一瞬溺れないのかなっと心配してしまう。

「前準備完了。久々の大忍術いきますよっ!」

 気合を込めて、再不斬先生に向かってそう言う。

 印を組むのは正確無比といっても良い。組む早さも自信がある。
 ないとすれば、術にこめるチャクラの量。
 一つずつ印を組むごとにチャクラを練り上げる。

『水遁・水鮫弾の術』

 海水が鮫の姿を形取り、再不斬先生に勢い良く向かっていく。

 完璧。子鮫とマンダによって、両腕の動きを封じられ身動きもあまりできない。

「やったっ!」

「何がだよっ!?」

 思わず、ガッツポーズをしてしまう。
 後ろの方でハロウが何かを言ったが取りあえず、スルーすることにする。

 そして、再不斬先生に当たる瞬間、冷たい突風が巻き起こった。

「一体何が……」

 目を開けられないほどの風量。体が凍えるほど冷たい。それは、再不斬先生の方から吹いてくる。
 風が止む。目を開けると、再不斬先生に当たるかどうかというところに、鮫の氷像が出来ていたのだ。
 再不斬先生の傍らには、任務帰りなのか髪を結ったままの白さんの姿があった。

「やりすぎですよ」

 笑みを浮かべて白さんはぼくにそう言った。
 顔は笑っているが、どこか背筋が寒くなるのは気のせいだろうか。

「その、ハロウがやれっていうので」

「言ってねえよっ!」

「子鮫バック。そして、マンダさんお疲れ様でした」

 モゾッと子鮫が動き出した。
 再不斬先生は何だこれという風に見ている。戦闘中は傀儡の術で動かしていたのだから、その反応は当然だろう。 
 子鮫はヒュルヒュルッと再不斬先生の腕を脱出したあと、氷像を壊して一直線で戻ってきた。

「お疲れ様です」

 モゾ。

 マンダは帰ったのかな。多分。
 周りを見るが、顔を出していないマンダについてそう考えた。鎖も手放しているみたいだし。

「再不斬先生少し調子に乗りすぎました。すみません。そして、お疲れ様でした。ハロウも」

 ぼくはそう言って、クルリと再不斬先生に背を向けた。

「それでは、おやすみなさい」

 と去ろうとするが、

「待て」

 後ろからは再不斬先生の声が。前にいるハロウはぼくを睨んでいる。

「何かありますか?」

「ありすぎだろっ! 何だ、あの蛇?」

「口寄せですけど」

「だよな……じゃねえよっ! 再不斬先生もそう思いますよね?」

 ハロウは同意を得ようと再不斬先生にそう言う。
 まあ、蛇はあれだよね。大蛇丸のやつだから疑問に思うよね。
 ぼくとハロウは再不斬先生に視線が向かう。

「蛇は置いといて、その刀どうした?」

 今度はみんなの視線が子鮫に集まる。
 ハロウには説明していたけど、他の人にはしていなかった。

「貰いました」

「誰にだ?」

 正直に言ってもいいのだろうか。平気か。だって、向こうはぼくがイタチさんたちといたことを知っているのだ。

「お察しの通り、再不斬先生の思うとおりです」

 取りあえず、人名は避けて答えた。
 再不斬先生の眉間に皺が寄る。基本皺がよってるけど。
 
「鮫肌か」

 モゾ。

 子鮫は否定するかのように動き出す。

「子鮫です。以後お見知りおきを」

「ところで、お前らはどんな用事だったんだ?」

「いやー、再不斬先生に修行をつけて貰おうかと思って」

 再不斬先生に対してハロウはそう答える。

「自分たちでやってると聞いたが」

「中忍試験も近いじゃないですか。もしいけるなら、そのときのためにとってハロウが言ってました」

「そうそう……あれ? 間違ってないけど、全責任おれに押し付けてない?」

「気のせいです……うん」

「取りあえず、お前たちだけじゃ不公平だ。修行をつけるなら、他の班員もだ。時間は作ってやる。明日にも他の奴に伝えとけ」

 再不斬先生は少し考えてそうぼくらに告げた。

「超ばっちり?」

「超ばっちり」

 ぼくらは顔を見合わせ、喜んだ。 
 それに反して、再不斬先生はため息をついた。やっぱり面倒くさいとは思っているらしく、髪の毛を掻き上げている。
 隣にいる白さんは少し面白いものをみるように再不斬先生を見ていた。

 取りあえず、海の上は肌寒い。

 



 あとがき
 今回は宣言どおりに更新できました。
 予告だと二話構成だったのですが、二話目はお蔵入りに。ナイと白さんのやつを入れる予定でした。一応出来上がりましたが、微妙すぎたので上げないことにしました。短いですし、内容もなんかアレな感じになったので。
 というわけで、小話のターンも終わりです。今回小話ではないですけど。
 次回例の回に突入。やった、ある意味本章突入ですっ!

 次回の更新時期はその……未定。来週は忙しいと思われるので、いつ書ける? といった模様。オリジも書かなければならないので、更新は九月の何時かだと思われます。
 亀更新ですが、お待ちいただけるとうれしいです。

 誤字脱字等ご報告ありがとうございました。今回のもガドーってなってました。あはは。
 今回できたてホヤホヤなので、誤字脱字等があるかもしれません。
 もし、見つかりましたらご報告いただけるとうれしいです。



[16066] 第三十四話 作戦×交錯×再会?
Name: copu◆9ee5bcb3 ID:b22b3897
Date: 2010/09/01 12:01
 右も左も木が生い茂る森が続く。その中央に一本道の街道が存在している。ここ数日は快晴が続き、今日も綺麗に晴れていた。
 そんな太陽の日差しから隠れるように、街道近くの木に背中を預ける二人の忍。一人は十代前半の少年に、十代半ばの少女。額には波隠れを表す額当てをしている。
 二人ともゆったりとした服装を着ていた。

「もうそろそろみたいです。感知範囲に入りました」

 目を閉じていた少年は目を開けそう言った。

「それでは準備でもしましょうか」

 少女は少年に向かって、頷いたのだ。
 二人の忍は、ナイと白である。
 通常なら四人一組又は三人一組で動かなければならないのだが、波の里のとある事情によって、ナイと白の二人だけでここに来ている。まあ、合図をすればすぐさま仲間はきてくれるが。

 ここは、火の国と波の国の国境付近。
 二人は火の国に行った、タズナを迎えに来たのだ。



 第三十四話 作戦×交錯×再会?



 あと百メートル。それだけ、近づけばお互いの存在をきちんと確認することが出来る。
 何せ、一本道。人影も二つの集団以外見られない。
 あと五十メートル。
 ナイは白に向かって、視線を送る。
 そして、両手を大きく振りながら走り始めたのだ。
 道のど真ん中にある水溜まりを避ける。
 ナイが水溜りを超えた瞬間、音も無く水溜りの中から背中合わせの二人が現れた。
 黒い布を着る二人組の男たち。まるで鏡合わせのように、片手に凶悪そうな爪を付けている。霧隠れの額当てが見えた。
 男たちの爪からこれまた刃が付いた凶悪そうな鎖が伸びる。
 ナイは気づいていない。

「っ!?」

 男たちの鎖がナイの全身に絡みつく。

「一匹目っ!」

 男たちは勢い良く爪を振り下ろす。
 すると、ズサリとナイの体が鎖によって引きちぎられた。

「ってそうなればいいんですけど」

 ナイが男の背後に現れそう言ったのだ。
 引きちぎられたナイの体は土くれへと変わる。

「土分身っ!?」

 男が叫んだ。それと同時に、また鎖を振ろうとするが、動かない。

『傀儡の術』

 土分身に本物の鎖を忍ばせておき、土分身が壊されると傀儡の術で相手の鎖に巻きついたのだ。そのため、思うように鎖が言うことを聞かない。

「動かぬっ!」

 二人は瞬時に判断し、爪から鎖を引き抜いた。
 しかし、その瞬間を見逃さない忍が一人いる。

「まさか、同郷者がでるとは思いませんでした」

 声と共にナイの隣に白が現れた。

「ご苦労様です」

「いえいえ、ナイくんが動きを止めてくれたお陰ですから」

 頭を下げるナイに対して、白は小さく笑みを浮かべた。

 バサリッと男たちの体が地面に伏す。
 首筋にはそれぞれ二本ずつ千本が刺されていた。

「他に隠れてる人はいません」

 一段落付いたので、ナイが小鮫を握り周りの様子を調べた。

「なら、無事に戻れそうですね」

 ナイは頷いて、返事を返す。

「おー、迎えは二人かー。超ごくろーだったな」

 二人は振り向くと、そこにはタズナさんと依頼を受けた木の葉の忍の人たちがいた。
 色々あり、木の葉側の依頼書はCランク。

 ナイはまじまじと木の葉の忍たちを見たのだ。木の葉の忍は漫画通り。
 上忍のベストを着た気だるそうにしている白髪の男。黒髪でツンツンとしている少年。ピンクの髪に赤いチャイナっぽいドレスを着ている少女。そして、金髪にオレンジ色の服を着た少年。
 ナイはその光景をみて、自然と笑みが出た。ナルトと目が合う。少しドキリとした。しかし、ナイはすぐに視線を逸らした。
 元気にやってる姿を見れたから、今日はこれでいいかもっとナイは思う。次会う機会もきっとある。その時、きちんと挨拶をすればいいんだと。
 ナルトはナイの姿を見て目を見開いていた。

「ちょっと、先生。Cランクは忍と戦わないっていいませんでした?」

「いやー、ほら、倒したのはあの子達だから」

 サクラはカカシに聞くが、カカシは適当に誤魔化した。しかし、カカシの視線は依頼主のタズナ、そして、ナイと白へと向かう。

「おっと、鎖で一応縛っておきますね」

「お願いします」

 その視線を避けるように、ナイは倒れている男たちの方を見る。
 カバンから鎖を取り出し、男たちが万が一起きても逃げれないように鎖を巻きつける。
 これで、安心っとナイは頷く。 

 ボンッ!

「えっ?」

 地に伏せた男たちから煙が舞い上がる。そして、この音は……。

 シュッ!

 ナイは手裏剣を取り出し、投げつける。

「口寄せの巻物。それも、時限式」

 トンッと手裏剣が煙の向こう側の地面に刺さった。

「ふむふむ、子供の割りは頭が回る」

 煙から現る三十前後の一人の男。口調はまるで冗談が混ざっているような話し方。
 保護マスクに、霧隠れの額当て。ナイと視線が合うが、その瞳には何も映っていないように思える。
 
 ナイは咽るような血の臭いを男から感じ取った。

 ナイの予想通り、水から出た鬼兄弟が一定時間何も連絡がないと、男が巻物によって呼ばれる仕組みになっていた。
 念には念を。チャクラ感知で油断しきっていたナイたちには手堅い罠である。

「見るところによると、鬼兄弟を倒したのは……波の忍か。優秀だな。元霧隠れだけのことはある」

 男はナイと白に視線を送る。すると、白を見て目を見開いた。

「まさか……いや、そうか。再不斬くんは女を見る目はあるようだな」

 マスクで見えないが、きっと口元は笑っているように見える。

「で、そのじいさんを殺さないといけないわけだが」
 
 男がタズナさんに向かって目を見開く。
 その瞬間、その場にいた忍たちはザザザッと何かが体の中を通ったような気がした。
 殺気による竦み。

 動けっ! ナイは心の中で念じながら、体を動かす。
 目の前にいるのは明らかに危ない強敵。再不斬先生や、鬼鮫さんぐらいあるかもしれない。この前の侍といい、今回といい、ぼくは運がないなっと心の中で苦笑した。

『傀儡の術』

 ナイは両手を掲げる。先ほど放って、地面に刺さった手裏剣をひき戻るのだ。それと同時に、鬼兄弟を縛っていた鎖を一気に、男の方へと向かわした。

「お前も鎖を使うのか」

 男は鬼兄弟の鎖とナイが使う鎖を見比べながら感心したようそう言った。
 足元の鎖に注意が入って、自分の背中に向かっている手裏剣には気づいていないように思える。

「まあ、可愛いものだなっ!」

 抜刀。男は懐から忍刀を抜き出した。

 カンッ!

 金属と金属がぶつかり合う音。
 
「ほー、鎖に忍刀か。腕も悪くはない」

 ナイは自分に向かった刀を小鮫で受け止めた。
 速い。
 男の背後を狙っていた手裏剣はあらぬ方向に飛ばされ、男の足元にあった鎖はバラバラに切られていた。そして、ナイへと刀が向かう。
 たった一瞬。男は刀を抜いた瞬間に、その場で体を一回転してそれらをやり遂げたのだ。

「小鮫っ!」

 ナイは叫ぶ。
 
 モゾ。

 呼応するように、小鮫が動き出した。
 小鮫は斬るのではなく、削るのだ。
 鱗が裂き出し、ナイは相手の忍刀を引き裂いた。
 男は目を見開く。やはり、とても面白そうに見える。

「っ!? 嘘だとは思ってたがな。ふむふむ」

 ナイは背筋に変なものを感じる。
 男の様子はあまり変わらない。今の一撃で男の忍刀は壊れ、そして、握っていた右手も負傷させたのに。
 男の右手からポタリポタリと血が垂れている。

 バンッ!

 空から花火が上がる。

「これで、仲間が助けに来ます」

 ナイの後ろにいる白は、救援信号を空に打ち上げた。

「それは、困った。取りあえず、仕事を片付けるか」
  
 その瞬間、男の姿が消える。

「っと、危ないな」

 白が地面に向かって千本を投げた。
 すると、その間近に男が現れる。

「先には行かせません」

「白ちゃん程度じゃ無理」

 男は白に向かってそう言うと、名前を呼ばれ白の肩がビクッと動く。

「白さんっ!」

 ナイは声を上げながら、小鮫を構えなおした。
 白とナイの間に挟まれる男。

「はー、取りあえず、雑魚を片付けるか」

 口調から冗談混じりが消え、冷や冷やとした声が響く。

 二人だけで倒そうことは不可能。最低でも時間を延ばして、仲間が来るまで頑張るしかない。ナイと白は心の中で決意をする。

 男は壊れた忍刀を捨て、新しい忍刀を抜き出した。
 左手で構えた瞬間……

「木の葉の忍か。依頼内容は国境付近までの護衛でしょう? これ以上は関係ないんじゃない?」

 白髪の男……カカシが男の前に立ちはだかった。

「いやー、子供が頑張ってるのに、大人が何もしないのはね……それに、タズナさんの護衛を頼まれてるから、まだ引渡しも終わってないのに」

 ふーん、と男は目の前にいるカカシに視線を送る。
 波の忍、特に白に目が行っていたため、木の葉の忍を男はあまり見ていなかった。

「片目を隠す木の葉の忍者……んっ!? コピー忍者カカシ。写輪眼か」

 男の目が輝きだす。まるで、新しいおもちゃを得た子供のように。
 ナイは男に集中していたが、やはり、写輪眼と聞いてサスケに目が言ってしまう。そこで、ナイは気づくが、木の葉の忍たちがタズナを守るように周りを構えていた。
 
「写輪眼って?」

 サクラの小さな声が響いた。

「お嬢さん、木の葉の里なのに知らないの? 白眼は?」

 男がサクラに向かってそう言う。

「っ! 白眼なら知ってるけど」

 恐る恐る答えるサクラ。
 対して、男はそれを見てうんうんっとうなづく。

「まあ、うちは一族はほとんど死んじゃったから、仕方ないか。写輪眼っていうのは、術・幻術・忍術をすべて見抜くことができ、また視認することによりその技をコピーし、自分の技として使うことができる。っていうスゴイ瞳術。そして、目の前にいる君たちのセンセイは戦乱1000以上の忍術をコピーし、他国から写輪眼のカカシ又はコピー忍者カカシと呼ばれているすごい忍者なんだ」

 男はご丁寧に写輪眼の説明を行った。
 本気を出すのかと思えば、結局先ほどのような冗談混じりの口調に戻っている。

「今回は止めよう。カカシくんが相手だと面倒くさいし」

「逃がすと思うかっ!」

「暑くならないでよ、カカシくん」

 男は冷ややかな目でカカシを見据え、左手にある忍刀を投げた。
 カカシは軽やかに投擲された忍刀を避けるが、男に接近されてしまう。

「ふむ、体術なら分があるかな……まだ写輪眼使っていないけど」

 男は小さく呟きながら、小鮫によって傷ついた右手を振るう。
 忍刀を避けたことで、カカシは男の攻撃は避けることが出来ず、腕を前に構えて防御しようとする。

「駄目ですっ! 避けてくださいっ!」

 ナイは何かに気づき、思いっきり大きな声で叫んだ。

「チッ……」

 男は小さく舌打ちをする。

 グサッ!

「くっ! それは、血か……」

 何かがカカシの腹部を貫いた。背中まで貫通したようで、腹部も背中からも血があふれ出す。
 
「あーあ、俺のこと気づいちゃったか。てか、誰? その刀どうした?」

 クルリと男はナイのほうを向く。
 男の右手には赤い、長細い刀身だけの刀が握られている。
 固体を保ったのは一瞬だけ、ボッチャッと赤い刀身は男の手のひらに戻っていく。
 あれは……血そのもの。

「ナイです。刀は貰いました……鮫肌から」

「前から思ってたけど、あの刀変だ――鬼兄弟は回収させてもらう」

 一瞬でナイの脇を通り、鬼兄弟の下に男は駆け寄った。

「面倒だな依頼。でも、楽しめそうだ。白ちゃん、再不斬ちゃんに俺のこと伝えておいてね」

 冗談混じりな口調で男は言い、鬼兄弟を持って去っていった。
 バサリとナイの後ろの方で何かが倒れる。

「か、カカシ先生っ!」

 サクラの叫び声。
 カカシが倒れたのだ。
 ナイも慌てて駆け寄る。

「毒物ですね。致死性ではない様子ですが……」

 白はカカシの様子を見て、木の葉の忍を見上げる。
 カカシの意識はすでにないようだ。

「傷口も大丈夫です。主要な器官は傷ついていません。骨の方も。綺麗に貫通してますね」

 ナイも白と同様に、傷口を確認する。 
 ナイが叫んだお陰で、カカシは咄嗟に避けることが出来、重傷を避けたのだ。

「では、傷口に手当てを行います。血は多く流れてますからね」

 ナイは医療用のパックを取り出す。

「白さんは毒物の方をお願いします。足りなければ、ぼくのヤツもどうぞ」

 白は頷きながら、カカシに使われている毒物の割り当てを行う。

「結局大丈夫なんですか?」

「はい、大丈夫です。内臓とかだと、ぼく程度じゃ治療できませんが、このぐらいまでならぼくでも対処できます」

 ナイは安心させるように、サクラに向かって笑いかけた。

「白さん、増血丸です」

「ありがとう、混ぜて平気なので、薬と一緒に混ぜます」

「割り当てはどうですか?」

「霧の里でよく使われているやつですね……完璧とは言えませんが、起きたら少しは動ける程度にはなるでしょう」

「おー、さすが白さん」

 ナイと白はお互いに話をするが、手は休めさせない。

『掌仙術』

 ナイは傷口に手をかざす。
 タズナもサスケもサクラもその光景を静かに見守る。ナルトは、ナイの横顔ずっと凝視していた。小さくナイ、ナイなのかっと呟いている。

「これで平気です。まあ、傷口が深かいというか貫通してるので完璧ではないですが、起きて軽く歩く分には大丈夫です」

「薬の方は煎じましたが、飲ませて良いでしょうか?」

 一応確認するよう、白は木の葉の忍に尋ねる。

「そっか、他国の忍だもんね……私は別に良いと思うけど」

「一口飲んでもらうって言うのでどうだ」

 サスケが白にそう提案を持ちかける。
 まあ、念には念をというやつなんだろう。

「分かりました」

 白は自分が煎じた薬を一つまみ取り、口に入れた。
 それを見た、サスケは小さく頷く。

「お水の方は?」

「いや、いい」

 白は木の水筒を見せるが、サスケは横に首振った。

「そうですか……」

 白がカカシの口の中に薬を入れ、水を注ぎ込んだ。
 きちんと飲んでるようで、喉が動いている。

「ゴホッ、ゴホッ」

 むせ返るように、カカシは意識を取り戻した。

「大丈夫ですか?」

 ナイはカカシにそう聞くと、カカシは自分の傷口を確認するように腹部を触る。

「まだ、あんまり触らない方が良いですよ?」

「これは、君が?」

「あっはい」

「医療忍者なのか……」

「違いますけど、まあ、そんな感じです」

 ナイは、苦笑しながらカカシに返事をしたのだ。

「うちの子達とは違う、礼儀正しさを感じる」

 控えめなナイを見て、カカシは少し感動に浸っていた。
 ナイはどうしたら良いか分からず、周りを見ることにした。
 そこで、ナルトと目が合った。ここで、目を逸らすのは、どうかと思い困ってしまった。

「な、なる……っ!?」

「なあ、ナイだよなっ!?」

 ナイが声を掛ける瞬間、ナルトはナイに詰め寄った。
 ナイの肩を両手で押し付け、勢い良く二人は後ろに転がったのだ。その瞬間、なにやら変な声が聞こえたが、その場にいる人たちは誰も気にしなかった。

「そ、その、お久しぶりです……」

 ナイはこういう時どういう顔をしたらいいか分からず、顔を見上げハニカミながらナルトに笑みを送った。

「ナイ……生きてたんだな。オレってばずっと、心配してて、死んだかと思って……」

 ナイの頬に上から雨粒が落ちてくる。

「あっ、えーと、その、ナルト兄ちゃん、泣いたら、駄目ですよ」

 戸惑いながらナイはそう言う。

「な、泣いてないってばよ……」

 ナルトは涙を拭いて、拗ねた声を出した。
 それを見たナイは、クスッと笑う。

「ナルト兄ちゃん忍者になったんですね。おめでとうございます」

「おうっ! スゴイだろ。って、ナイも忍者になってるし」

「半年前ぐらいになったばかりですけど」

「オレより先輩じゃないか」

「……才能です」

「ナイが生意気になってるてばよ」

 ナイとナルトは顔を見合わせながら笑いあったのだ。

「ところで、その下にいる先生は大丈夫か?」

「へっ?」

 タズナのその一言を聞いて、その場にいる忍は一名を除き間の抜けた声を出したのだ。
 
 あれ? 地面じゃないな……ナイはナルトに押し倒された際のことを思い出した。
 ナイは恐る恐る、首を曲げる。

 そこには、顔を青くしたカカシの姿があったのだ。

「いやー、何か邪魔しちゃ悪いかなって、空気読んじゃってね。いや、いんだよ、別に」

 ナイはカカシのすぐ横で治療をしていた。そこに、治療が終わったナイをナルトが勢い余って後ろに押し倒す。
 そこは、ちょうどナイがカカシの怪我を治していたところで……。

「うわあっ! ご、御免なさい。ナルト兄ちゃんもさっさと退かなきゃ」

「か、カカシ先生ごめんってばよ」

「いや、いや、いいよ。先生怒ってないから。誰一人オレのこと忘れていたことなんて、気にしてないから」

 若干いじけるカカシの姿があった。
 でも、これでもすごい忍者なのよねっというサクラの小さな呟きが聞こえる。

「それで、その、ナイ君だっけ? ナルトと知り合いなの」

「おうっ! ナイはオレの弟みたいな存在だってばよ」

 さっきまでの涙は何処かに消え、ナルトは大きな笑みを作って断言する。

「そういえば、ナイくん、昔は木の葉の里にいるって言ってましたもんね」

 白もそれに同調するように、そんなことを言った。
 すると、サクラとサスケは小さく首を傾げる。

「あのー、えーと、とりあえず、その話は後にしませんか?」

 ナイは困ったような顔をしている。

「んっ? あー、ですね」

 白は首を回して、辺りを見ると、波の額当てをしている忍が三人到着していたのだ。
 なんとなく、暇そうに見えることから(若干好奇心の目でナイとナルトを見ていたが)、少し前から到着していたらしい。
 二十代前半、波の里の中忍である。

「大丈夫ですか? 医療忍者の手配も準備しています。取りあえず、木の葉の方々もお越しください」

 中忍の一人が、カカシに手を貸す。

「オレも動けないし、少しお邪魔するか。よしっ、分かったかお前ら?」

「ナイ、まだまだ話できるってばよ」

 ナルトはカカシの決定を聞いて、喜びながらナイに顔を向ける。
 しかし、ナイは少し難しい顔をしていた。

「まさか……ありえる」

「どうかしたってばよ?」

「えっ? いえ、何もないです……うん」

 中忍に連れられ、波の国へと一同は足を進める。





 あとがき
 やっとナイとナルトが再会しました。取りあえず再会編開始します。
 カカシは出来る子だと思います。扱いがひどいのは仕様です。ところで、サスケの覚醒イベントが思いつかないのですが……。

 懺悔タイム。
 第一。これから先、こんな感じの三人称視点で進みたいと思います。こっちの方が書きやすいということもあります。たまに、小話入れるときは一人称なのかな。良く友達に神様視点だよねーと言われたりとかも。ある意味自分でも納得ですが。
 第二。何か前に、これ以上オリキャラ出さないとか言っていたくせに、何か気づいたら出てました。侍さんの時点でオリキャラです。本当にありがとうございました。まあ、敵なのでいいですよね。という感じの言い訳を。
 第三。オリジ書こうと思ったらいつの間にかナルトの続きを書いていました……あれ? なので、八月中に更新できました。次回は未定です。九月中何時かですね。
 第四。題名思いつかなかっただけです。すみません。ところで、続きの連載いつやるのでしょうか? OVAも楽しみに待ってます。OVA出るのかな。

 以上四点、感想、誤字脱字等がございましたら、コメントくれるとうれしいです。
 個人的には第一について、どう思うか聞いてみたいです。

 いつごろ更新できるか分かりませんが、今後もお付き合い頂けると幸いです。



[16066] 第三十五話 現状×依頼×夕食タイム?
Name: copu◆9ee5bcb3 ID:b22b3897
Date: 2010/09/04 18:29
「霧が濃いな」

「そうね、さっきまでは全然なかったのに」

 サスケとサクラは周りを見渡す。辺り一面濃い霧で覆われ、船に乗る一同は周りの景色を見ることが出来ないのだ。

「まあ、いいじゃんかよ。そんなことよりも、ナイさあ」

 ナルトは霧のことは気にせずに、ナイに話しかけている。
 あははっとナイは苦笑した。
 船に乗ってから、お互いに自己紹介を行ったのだ。



 第三十五話 現状×依頼×夕食タイム?



「防衛ラインを上げました。少しすると、霧は晴れますよ」

 船の先導をやってる中忍は、木の葉の忍にそう告げる。
 国自体に不法侵入をすると侵入者を感知する結界を広範囲に使っているらしい。普段、里を隠している結界の簡易版だということを、ナイは事前に聞いていた。
 そして、元々は霧隠れの里で使っていたらしいということも。

「霧隠れの里みたいだな」

 カカシは小さく呟いた。

「色々ありますからね……ところで、ナイくん」

「えっ、あっはい。何ですか?」

「あの男が誰か気づいたんですか?」

 白のその一言でみんなの視線がナイに集まった。
 ナイはおもむろに小さく頷く。

「白さんのこと知ってましたし、その少し話で聞いたことがあったので」

 ナイは昔鬼鮫から忍刀七人衆の話を聞いた。その時に、もう一人名前が挙がったのだ。



「まあ、頭数には入りませんがねえ。もう一人いるんですよ」

「忍刀を使う人がですが?」

「いや、忍刀なんて使ってませんねえ」

 鬼鮫はニヤリと笑う。ナイは意味が分からず、首をかしげた。

「血を使うんですよ」

「血ですか? その、血継限界っていうやつでしょうか?」

「知ってましたか。そう、血を操る血継限界。その力で、血の刃を作っていたことから、忍刀七人衆の八人目と呼ばれた……」



「追い忍筆頭 蛭湖(ひるこ)……たしか、そんな名前だったと思います」

 ナイはみんなに男に名前を告げた。

「蛭湖? 聞いたことがない名前ですね」

「オレも聞いたことがない名前だ」

 白とカカシは同時にそう言う。
 それに対して、ナイは横に首を振った。

「人前にはほとんど、名前も顔も出さなかったようです。追い忍だったこともあり、他国の人には知られていないようですし。再不斬先生なら少しは知ってるじゃないでしょうか?」

「ところで、その再不斬っていうのは……」

「思ってる通りじゃないでしょうか?」

 白はカカシに小さく笑いかけた。
 それを見て、カカシは小さなため息をついたのだ。

「一癖も二癖もありそうな里だな……いや、ウチも同じか」

 カカシはサスケとナルトの顔を見比べた。

「それでさあ、それでさあ」

「ナルト、少し黙ってろ」

「むー」

 相変わらずナイに話しかけているナルトに対して、カカシは注意を促した。
 口を尖らせるナルト。

「あれは何だってばよ?」

 甲高い鳴き声に気づき、ナルトは空を見上げた。

「あれ? いつの間にかに霧を抜けてるわ」

 サクラは霧が晴れていることに気づき、周りを見渡した。
 木の葉の忍は物珍しそうに、サクラと同じく周りを見渡す。
 そのとき、一匹の鷹が先導の中忍に向かって飛び降りてきた。

「鷹?」

「ウスラトンカチめ。伝令用の鷹だろ」

「サスケ、言い過ぎだってばよっ!」

「ナルト兄ちゃん、船の上で立つと落ちますよ」

「へっ? うえっ!?」

 いきなり立ち上がるナルトにナイがそう言うと、言ったそばから上体を崩した。

「ふんっ」

「ちょっとナルト、何やってるのよっ!」

「うー、そんなはずじゃあ、なかったのにってばよ……」

「元気な餓鬼共だ」

 ナイはそんな光景を見て、笑みを浮かべた。

「白、君は里のほうに戻って報告を。ナイ、君はそのまま木の葉の方々の世話をするように」

 中忍は白とナイの顔を見て、伝令を伝えた。

「分かりました。では、私はこれで失礼します。ナイくん後はお願いしました」

 白は船を降りて、海の上に立つ。

「分かりました」

 ナイは白に対して、敬礼を送る。
 白はあることに気づいて、ナイにメモを渡した。
 その後、船にいる人を見渡して、小さく頭を下げるとスッと消えていく。

「えっ!? な、何で、海の上に立てるんだってばよ」

「何かの忍術か?」

「そ、それしか考えられないわよね」

 木の葉の下忍はその光景を見て、驚いていた。
 カカシはそれを見て、小さく考えているように見える。

「ナイ」

 中忍がナイに向かって、伝令用の巻物を放り投げた。

「注意点が載ってる。よく読むように」

 木の葉の忍には一応見えないようにナイは巻物を開いた。

 話していいこと。波の里について、君が知っていることは話しても平気だ。しかし、そこは君の判断で黙っていいことは黙ってもらえるとうれしい。
 話してはいけないこと。今現在の波の里の状況。先月ぐらいまでのなら話してもらってもかまわない。タズナさんの任務についても。
 先に波の里については軽く説明してもらえるとうれしい。

 フムフム、取りあえず、ぼくが知っていることはだいたい話していいんだあっとナイは思った。

「あっはい。了解です」

 ナイは巻物から顔を上げて、中忍のほうを見た。

「よろしく頼む。木の葉の方々、もうそろそろ上陸します」

「おー、超懐かしい、わしの家だな。ツナミたちは元気にやっておったか?」

「はい。ツナミさんたちは今、中央付近に住む場所を移させてもらっています」

「その方が超安全だな。わしもか?」

「その予定です。今は取りあえず、そちらの上忍の方の怪我を直してもらうほうが先決です、医療忍者もここに来る予定です」

 船を橋に寄せて一同は上陸した。

「おー、スゲエ。海の上に家が建ってるってばよ」

「確かにすごいわねえ」

 ナルトとサクラは感心するように、海に柱を立てて、その上に家を作る波の国独特の家を眺めている。

「俺たちはこれで失礼します。里内は取りあえず、安全なのでご安心を」

 中忍たちは頭を下げると、その場を去っていった。
 取りあえずっていうことが頭に引っかかる一同。
 そして、周りの視線はナイへと集まる。

「……中入りましょうか? タズナさんお願いします」

「わしの後についてくれ」

 そして、家に入っていく。

「超きれいだなー」

 部屋は埃は掃われ、綺麗になっていた。
 こまめに掃除に来ているらしい。

「カカシさん、向こうに布団を拭くから待ってくれ」

「あー、スミマセン本当に」

 申し訳なさそうに、カカシはタズナに頭を下げる。

「カカシさん、体の具合はどうですか?」

「うーん、痺れはないようだが、まだイマイチといったところかな」

 そそくさと布団がひかれ、そこにカカシは腰を下ろした。
 ナイは先ほど白からもらったメモを見る。そこには、カカシに使われた予想できる毒の一覧に、解毒に使われた薬が載っていた。

「うーん、キチンと解毒できてないのかな。即効性でそこまで効く毒か……。取りあえず、本家の方がくるまで、容態をもう一度診ますね」

 ナイは小さな巻物を地面に広げ、そこから薬を摩り下ろす道具を一通り取り出した。

「使っていないもので、多分、これかな」

 そして、カバンから薬草の粉末が入った小瓶をいくつか床の上に広げる。
 そんな、作業を木の葉の忍とタズナは見守った。

「さっきの綺麗な人といい、波の忍は凄いわね」

「それはちょっと違うんですけど……言っておきますが、白さんは医療忍者ではないですよ? 色々ありますけど。まあ、ぼくは少し手ほどきを受けたぐらいです。毒物は一応専門で扱えますけどね」

 興味深そうに見てくるサクラに対して、ナイは説明しながら、丁寧に薬を煎じていく。

「どうぞ。あと、増血丸も」

 ナイは薬と薬丸をカカシに渡した。

「水じゃ」

 タズナはコップに水を注ぎ、カカシに手渡した。

「ありがとうございます」

 ゴグッとカカシは飲み込んだ。そして、苦い顔になる。

「良薬口に苦しです。すみません」

 ナイは苦笑しながら頭を下げた。

「ナイ君、君が謝ることではないぞ。それにしても君はなんて礼儀正しいんだ」

「あの、先生。誰と比べているんですか?」

 木の葉の下忍は、ジローッとカカシを冷ややかに見つめた。

「いや、あはは……ところで、ナイ君はナルトと知り合いのようだが、どこで知り合ったんだ? さっきの白さんとやらが、木の葉の里に住んでいたとかいっていたか」

 カカシは話題を変えるべく、ナイの話に移った。

「小さいときは木の葉の里に住んでました。七歳ぐらいまでかな?」

「それなら、アカデミーにいたの? どっかですれ違ったかもね」

「ナイはアカデミーに行ってないってばよ?」

「えっ? そうなの」

 そんな子もいるんだっとサクラは一人で納得した。

「抜け忍ってわけじゃないのか」

「忍者じゃないですからね。で、色々あって今ここにいます」

「はしょりすぎだってばよ」

 取りあえず、ナイはガッツポーズをして言い切ったが、ナルトの突込みが飛んできた。

「話したくないなら、別にいいが」

「いや、別にいいですけど」

 カカシがそう言うが、ナイは横に首を振る。

「先にこの里について、説明させてもらいます。タズナさんはすでに知ってる範囲ですけど」

 ナイは正座をして、一同を眺める。

「先ほど抜け忍云々っていってましたが、この里内ではあまりそう言うことは言わないほうがいいと思います」

「何故だ?」

 サスケが睨み付けるようにナイに視線を送る。
 ナイはさして気にしないかのように、続けた。

「ぼくもこの里に長くいるわけではないので、あれですが……この里の半分以上は抜け忍です。カカシさんはある程度予想がついてるとは思いますけど」

「まあ、あれだな。新しく里を作るって言うのは中々大変だから」

「残り半分は何だってばよ?」

「隠れ里がない国にも忍はいます。それらの忍たちは一族でひとまとまり。なので、残り半分は里に属していなかった一族の人たちです。この後来る医療忍者の方も一族出身ですね。田の国の人たちです」

「音の里か……」

「はい。理由はお考えの通りです。里の出来方はこんなもんです」

「ナイはどうやってこの里来たんだ?」

「えーと、ナルト兄ちゃんその話はまた今度で。取りあえず、現状説明してくれとって頼まれたので」

 ナイの話を聞きたいナルトは口を尖らしている。
 そして、ナイは木の葉の忍にガトーと波の国について説明したのだ。

「それを、オレたちに説明してどうするんだ?」

 サスケが疑問に思ったのか、ナイにそう尋ねた。

「まあ、ですよね……なんとなく、想像つくんですけど……うん」

 ナイは小さなため息をつく。
 トントンッと家のドアがノックされた。

「来ましたね」

 ナイは立ち上がり、玄関に駆け寄った。覗き穴から一応外を確認し、扉を開ける。
 青色の髪をした青年が立っていた。

「ご苦労様です、アラシさん」

「ナイ君こそ」

 ナイの予想通り、ふうまアラシの姿がそこにあった。

「一応解毒は出来たと思います。傷口の治療は完璧ではないので、そこをお願いします」

 ナイは白からもらったメモに先ほど、自分が使った薬草を書き記し、アラシに手渡した。

「薬関係なら、君はオレの上を行くかもね」

「そんなことないですよ」

 ナイとアラシは話を一度そこで切り、カカシの横に座る。

「初めまして、波隠れの中忍ふうま アラシと申します。傷の具合はどうでしょうか?」

「良好っといた感じかな」

「毒物に対しては、さきほどの処置で十分だと思っています。いち早く動けるように、怪我の治療をさせてもらいます」

「すみません、本当に」

「いえ、助けてもらったようで、こちらこそありがとうございます」

 大人の話し合いで、ナイ含め下忍たちは静かに見守った。

「何か裏があると」

 カカシが厳しいまなざしで、アラシを見る。

「ナイ君から波の国の現状は聞きましたでしょうか?」

「ガトーか」

「はい……リアルタイム、今現在、波の里は少し厳しい状況にあるんです」

 アラシはそう、カカシを見返した。

「厳しい? オレ独自の判断だが、さっき戦った忍のレベルが複数人いるとは思えない。そちらの里の方が分があると思えるが」

 カカシの話を聞いて、ナイとアラシは苦い顔になる。

「通常ならそうでしょう……元々波の里は人員不足です。国が安定していないので、ある程度人数は里に残さなきゃいけない。大きな任務に参加できる人は限られている。実は、恥ずかしいのですが、里の指折りの実力者たちが今里外の任務に出てるんです」

「国の危機なのにか? 正気とは思えない判断だ」

「苦渋の判断です。依頼主は他国の大名で、名前も有名な方。前から波の里を指名させてもらっているんです」

「なるほど、でも、国の危機」

「一応ギリギリで間に合う予定です。上忍もまだ残っています」

 あー、この流れは……ナイは自分の予想が当たりそうな気がした。

「ですが、向こうも思っていた以上に戦力をそろえてきているようです。はたけ カカシさん、コピー忍者として他国にも名高い貴方を私たち波隠れは雇いたいと思っています。正式な依頼です。お願いします」

 アラシはそこで頭をつけ、土下座したのだ。
 やっぱりっとナイは頭を押えた。元々カカシを雇うつもりで手を打っていたのだ。きっと、あの時蛭湖が現れなくても、何かが起こっていたのだろう。

「……この子たちには荷が重過ぎます。どう考えても、Bランク以上の任務だ」

「分かっています。こちらとしては、Aランクの報酬も払っても雇いたいそうです」

 アラシは巻物をカカシに手渡した。
 それを一目読んで、カカシはため息をつく。

「有名なのも考え物だな……」

 チラッとカカシはナイに視線を向ける、ナイはあははっと苦笑することしか出来なかった。

「国を出るのは難しいのか?」

「いえ、きっと、手は出してこないはずです。面倒はさけると思われます」

「それで、オレたちがこの任務を受けないことにして、波の里が壊滅されたら後味が悪すぎる。図られたか」

「その際は木の葉の忍の方々に非はありませんので、あまりお気にせず」

 お気にせずといっても、どうからどう考えても、気にするに決まっている。

「あとから、木の葉の里から苦情が来ますね」

「分かっています。忍頭がじきじきに、謝罪に行くと思います。時期も時期なので」

 その一言でカカシの目が一瞬細くなった。
 アラシが言った事は中忍試験のことだろう。

「さっきの白って呼ばれた女は下忍なのか?」

 今まで見守っていたサスケが口を開いたのだ。

「はい、白さんはまだ下忍です……中忍になってもいけるとは思いますけど」

「ナイ君も下忍よね?」

「はい、勿論」

 サクラの問いかけに、ナイは頷いた。

「カカシ先生、オレは賛成だ。少しでも実践を経験したい」

「オレもサスケに賛成ってばよ」

「いや、あんたはナイ君とまだ話したいだけでしょうか……私も危ないとは思いますけど、みんなに賛成です」

 ナルトは勢いよく手を上げた。ナルトの理由はサクラが言ったとおりだが、サスケとサクラはきちんとした理由がある。
 サスケは、白と目の前にいる少年たちとの実力の差を感じたのだ。サスケの前でクスッと笑ったりする小柄の少年であるナイだが、どう考えてもあの動きは演習だけで得られるものではない。実戦経験があればもっと強くなれるのではないかとサスケは考えたのだ。
 サクラは、逆に日ごろ戦闘の際は班のみんなとは違い、あまりうまくいっていないように思えていた。今日は、ナイの医療忍術を見て、私もこういうことならみんなに協力できるかもっと感じたのだ。もう少し、ここにいて、自分が出来ることをつかもうとしている。
 それぞれ、何かを目標に波の国に残ろうとしている。
 そんな思いを感じたのか、カカシはため息をついた。

「仕方ない……分かりました。その依頼受けます」

「ありがとうございます。後日、忍頭のハドウ様が挨拶に来ると思います。よろしくお願いします」

「そちらが考える予定日は何時頃に?」

「あと一週間ほどだと考えています。それと、下忍方々はもちろん、身の丈にあったものをさせますので、安心してください。伝令があるまでは、修業でもどうぞ。ナイ君は残しておくので、何か問題がありましたら、そちらからご報告ください。というわけで、ナイ君後はよろしくお願いします」

「あっ了解です」

 ナイはアラシに頭を下げた。

「本題の治療に移ります」

 すると、ぐーっという音が部屋に響いた。
 あははっと恥ずかしそうに頭を掻くナルト。

「ちょっと、雰囲気壊さないでよ、ナルト」

「でも、生理現象だってばよ」

「ご飯でも作りましょうか」

「食材は補充済みだよ」

 立ち上がったナイにアラシが声をかけた。

「タズナさんお台所お借りします」

「おうっ! 一人で大丈夫か?」

「私も手伝います。ナイ君待って」

「ナイとサクラちゃんの手料理だ……ナイって料理できんのか?」

「オレに聞くな」

 首をかしげてナルトはサスケに聞いたが、サスケはそっぽを向いた。

「料理がうまいって、妹がいってましたよ。妹も下忍でナイ君と同じ班なので、もしかしたら滞在中あうかもしれませんね」

「じゃあ、期待できるってばよ。ナイ、器用だったような気がするし」


 台所では、

「波の国では見た目どおり、お魚がおいしいので、今日は魚にしましょうか」

「了解」

 包丁の握る二人の姿に、まな板の上に新鮮な魚が置かれている。

 しばらくすると、

「な、ナイ君料理うまいわね」

「小さい時からやってるので」

「そうなんだ……大変そうね」

「いえ、楽しかったですから。今もですけど」


「出来たわよ。ほら、サスケ君もナルトもただ待ってないで、テーブルの上にお皿を並べて頂戴」

 出来た料理をテーブルに並べる際にサクラが暇そうにしている二人に声を掛けた。
 さすがに、全部サクラにやらせるのは居心地が悪いと思ったのか、二人はそそくさっと立ち上がり、皿をとりに台所へと向かう。

「おー、サクラ上手だな」

 カカシは布団から起き上がり、テーブルの上を見上げた。

「感想は食べてから言ってください。あれ? あの医療忍者の方は?」

「あー、仕事があるそうだ」

「そうなんだ……一人分多く作ちゃった」


「終了っと」

「ナイ、皿どこってばよ?」

「あれ? ナルト兄ちゃんに、サスケさんどうかしたんですか?」

「いや、サクラちゃんが皿並べろって」

「ナルホド。えーと……タズナさーん、お皿とかお箸どこですか?」 

「ん? 餓鬼共も手伝っていたのか。あっちじゃ」

 タズナさんが台所に現れ、食器棚を指差した。


「いっただきますーっ!」

 テーブルを囲む一同。
 魚をメインといた、美味しそうな夕食がテーブルの上に並ぶ。

「う、うまいってばよっ!?」

 ご飯を口に運ぶナルトは思わず、叫んだ。
 サスケの箸も思わず止まった。

「うまいな。これはどっちが作ったんだ?」

「二人で……」

「ナイ君がほとんど作りました。私も驚きの腕前」

 ナイが何かを言おうとしたが、サクラが遮った。

「おー、予想以上じゃあ」

 タズナも満足そうに頷いている。

「ナイ凄いってばよっ!」

「いえいえ、これぐらいやれば誰でも出来ますよ……」

「でさあ、ナイは、どうしたてんってばよ?」

 おっと、その話に移るのかっとナイは思った。さっきからナルトが聞きたくて、うずうずしていたことには気づいていたが。

「誰かに助けてもらったのか?」

 首を傾げてくるナルト。

「そうですけど、あれ? ナルト兄ちゃんは何かあったのか知ってるんですか?」

 ナイはナルトがハイキングで遭難したことを知っているのではないかと思った。

「知ってるってばよ。昔、ナイを連れて返った兄ちゃんに聞いたってばよ」

「なるほど」

 ナイはポンッと両手をたたいた。

「ど、どいうこと?」

 サクラが会話に割って入ってくる。

「ナイはハイキングで行方不明になったてばよ。それで、オレずっと死んだものかと……」

「でも、実は生きていたそんな感じです」

「へー、誰に助けられたの? いや、そのまえに何で誰も助けに来なかったのかしら」

 サクラは不思議そうに首をかしげた。

「あとで、知ったんですが、その頃木の葉の里で問題があったんですよ。その、同じ日に。だから、ぼくの捜索ができなかったんじゃないのかなっと思います」

 どこか、言いにくそうに言うナイ。
 サスケは話半分しか聞いていいなく、その本質に気づいたのは、カカシ一人だけだった。

「そんなことあったんだ。でも、遭難してるんだから、探せばよかったのに」 

「でも、だから忍者になれたので今思うとよかったです」

 そう、イタチさんに会い、鬼鮫さんやデイダラさん、サソリさん、鮫肌も。勿論、ヒルゼンやダンゾウも忘れずに。おまけに、大蛇丸さんも。ナイは彼らによかったと思える。

「そっか、アカデミーには行ってないもんね」

「行きたかったんですけどね」

 寂しそうにナイは笑う。
 それに気がついたのか、サクラは慌てて口を閉じた。
 
「誰に忍術ならんだってばよ?」

「うっ……」

 ナイが困ったような声を出した。
 どうしよう……イタチさんなんて口が裂けても言えない。サスケの方をチラッと見る。
 大蛇丸っていうのも、言えない。
 どうしようっとナイは悩む。

 トントンッ! ドアがノックされた。
 チャンスと言う風にナイの目が輝いた。

「はい、どちら様ですか?」

 慌てるようにナイは立ち上がり、玄関に行ったのだ。
 ドアを開けると、そこには……

「よっ!」
  
 手を上げて挨拶をするハロウがいた。

「ハロウっ! いいところに、本当にいいところにきましたっ!」

 ハロウの姿を見て、凄く喜ぶナイ。

「ど、どうかしたのか?」

「その……実はナルト兄ちゃんが誰に忍術習ったんだって聞かれて、どうやって答えればいいか考えてなかったんです」

「で、おれに時間潰しをしてほしいと」

「はい、そんな感じです……うん」

 それを聞いて、ハロウはため息をついた。

「ガンバレ」

 ハロウはドアを閉めようとするが、ジャラジャラと鎖が伸びてハロウの体に巻きついた。

「えっ?」

「皆さんに紹介しましょう。そうだっ! アラシさんが帰ってしまったので、一人分ご飯余ってたんです。よかったね?」

「よかったね? えっ? えっ? えっ?」

 ズルズルッとハロウをタズナさんの家に引きずりこむナイ。

「ナイどうかしたってばよ?」

「その友達が尋ねてきたので。あー、こっちは同じ班のハロウです。歳はナルト兄ちゃんたちと同じ歳です」

 いつの間にかに鎖を仕舞い、後ろにいるハロウをナイはみんなに紹介した。

「ハロウじゃないか、久々じゃなっ!」

「た、タズナさんご無沙汰振りです……えっ? おれここに居なきゃいけないの」

「ハロウ、お茶碗にご飯よそいますね」

「おう、ありがとう……えっ?」

 ハロウが気づくと、いつの間にかに手にはご飯が入れられた茶碗が。

「カカシさんで、サスケさん、サクラさん、ナルト兄ちゃんです」

「よ、よろしく」

 それぞれ、ナイが名前を紹介していく。ハロウはあははっと乾いた笑みを浮かべていた。

「で、おれどうするの?」

 ナイの耳元でハロウが呟く。

「普通にご飯食べればいいと思いますけど」

「そ、そういうもんか」


「なんか、仲よさそうってばよ」

 ナルトは羨ましがる様にナイとハロウのやり取りを見ている。

「同じ班なんだから仕方ないんじゃない? ほら、なんかここにきて日が浅いとか言ってたし、同じ年頃の子が居て仲良くなったんじゃないのかしら?」

「ナイはそんな安っぽい子じゃないってばよ」

「いや、何言ってるかわかんないから」

 こんな調子でナイの話が微妙にうやむやになった。


「じゃあ、皆さんお休みなさい。明日はきちんと皆さんが泊まる部屋の準備をしておきます」

 玄関にはナイとハロウを見送る、一同がそろっていた。

「えーと、タズナさんのことよろしくお願いします」

 取りあえず一晩、木の葉の忍がタズナを守ってもらい、明日ツナミたちが住んでいる場所に移ってもらう手はずになっている。

「ナイお休みってばよ」

「はい、また明日」

「ということでナイ君よろしく頼む」

「了解です」

 カカシとナイは顔を見合わせた。
 カカシはとある修業をさせたいといい、いい場所はないかと聞いて来たのだ。

「ナイ行くぞ」

「あっはい」

 ペコリとナイは頭を下げて、タズナの家を後にした。

「で、どうするんだ? 今日は誤魔化したが」

「ですよね……とある抜け忍に助けられて、云々って誤魔化しましょう」

「それ、当たってるじゃん。まあ、それを言うとあまり詳しくは聞いてこないんじゃないか。ボロを出さないように」

「まあ、了解です……修行しますか?」

「今日はいいや……ガンバレよ」

「はい」




あとがき
三人称視点で進めていきます。書きやすいと言う理由以外にもナイ視点以外で、全体を見られたら良いなあっと思ったりしています。
こんな感じです。情に訴える作戦に出たようです。
敵の忍者さんの名前決まらなかったので、とある漫画に同じような能力使う人がいたので、その人の名前パクッてしまいました。
能力自体のイメージはソウルイーターの黒血ですけど。血の刃とかカッコイイですよね。

次回は例の原作通りの修行編。前編、後編の二部に分ける予定です。

更新普通に出来てる……オリジが進まないから。
多分土曜には次話上げれそうです。

そして、題名折角なので再開編はこんな感じで進めていくつもりです。

誤字脱字報告ありがとうございました。大感謝です。
誤字脱字、感想ございましたら、コメントの方よろしくお願いします。質問等も答えられる範囲で返答したいと思っています。
今後もお付き合いよろしくお願いします。



[16066] 第三十六話 木登り×相談×必殺技? 前編
Name: copu◆9ee5bcb3 ID:b22b3897
Date: 2010/09/13 20:04
「カカシ先生。こんなところで何やるってばよ?」

 ナルトが辺りを見渡しながら、そんなことを言ったのだ。
 サスケもサクラも同意するように、頷いている。

「たまには先生を信用しなさい……と言うわけで、ナイ君よろしく」

「えっ、あっはい」

 カカシにいきなり話を振られたが、ナイは戸惑いながらも了承の返事をした。



 第三十六話 木登り×相談×必殺技? 前編



 ここは波の国の中央付近に位置する小さな島。
 住民がいないので、手付かずのまま自然が残っている。なので、高さがかなりある木々も残っているのだ。
 ナイはカカシに頼まれてこの場所を案内したのである。

「えーと、ここに皆さんを連れてきた理由は、木登りの業をやってもらうからです」

「木登りの業?」

 聞きなれない言葉に木の葉の下忍たちは一斉に首をかしげた。

「はい。勿論ただの、木登りではありません。手を使わず、足だけで登るのがポイントです」

「ん? もしかして、水の上を歩くのにも通じるのか?」

「おー、正解ですサスケさん。その通りです。まず、木登りの業ができたら、水面歩行の業をやってもらいます。お手本を見せる前に、これは、忍術ではありません」

 サスケが鋭いことを言うと、感心したようにナイが小さく笑った。
 説明が終わると、ナイは木の前に移動し、印を組みチャクラを足に向かって練り始めた。

「こんな感じで、チャクラを足に集めて、登ります」

 ゆっくりと、木に登りながらナイは説明を続けた。

「やるときは、まだ慣れないので助走を付けてから始めてください。合格ラインは、枝があるところまでいけることが出来たら、合格です」

 木の中腹までナイは行くと、トンッと綺麗に地面に着地した。

「何か質問がある方は?」

「質問ですっ!」

 サクラが授業中のように、手を上げた。

「はい、サクラさんどうぞ」

「便利だとは思いますけど、何かやる意味があるのでしょうか?」

「うーん、それは、一度試してからお答えします」

 ニッコリとナイは笑みを浮かべた。

「取りあえず、皆さん始めてください」

 はーい、と木の葉の下忍三人はそれぞれ木の前に移動していく。

「一番乗りで合格してやるってばよ」

 開始してそうそう、ナルトが勢いよくチャクラを足に集めて、木に突撃していった。
 ジャンプ。右足が木の幹にあたると、バキッという音と共に、ナルトの右足が木の幹に貫通して、穴を作ったのだ。

「へっ? と、取れないっ!?」

 ナルトは左足で木の幹を蹴り、右足を取ろうとする。
 しかし、右足が思っていた以上に深く挟まっていた。

「これでどうだってばよっ!」

 思いっきり左足を蹴り上げる。
 スポーンッという、風に右足が抜けた。そして、そのまま勢い良く後ろに倒れこんだナルトの姿をみんなは苦笑しながら見ていたのだ。

「痛いってばよ」

 頭を押さえるナルト。そんなナルトに対して、ナイは苦笑しながら説明を始める。

「今のはナルト兄ちゃんのチャクラ量が多すぎたから起きた現象です。逆に少ないと、木の幹にくっ付かず、反発してしまい上まで行くことが出来ません」

 そこで、ナイは話を切り、木の葉の下忍たちの顔を眺める。

「これは、チャクラコントロールの一環です。チャクラコントロールは説明不要ですよね。前衛でも後衛でも使う術に対して最低限のチャクラで術が使えるようにするのが、基本です。チャクラを綺麗に練り上げることが、強くなる第一歩です」

「ナルホド。それじゃあ、水の上を歩くのはもっと難しいですか?」

「そうです。水の上だと、つねに同じ量のチャクラを練り上げなければなりません。なので、木登りの業よりももっと難しいものになります。とは言っても、練習すれば普通の下忍で体得できる程度のもの。出来ない人は。練習あるのみですね」

 サスケは説明を一段落聞くと、練習を始めた。一歩、二歩、三歩、四歩目で、地面に落ちてしまう。

「ナイはこれいつできたんってばよ?」

 ナルトは立ちながら、服に付いた土ぼこりをはたきながらナイに聞いてきた。

「えーと、確か分身の術覚えるよりも早く使えたような気がしますが」

 それを聞いた、サクラとナルトは驚いた。

「下忍の私たちがやってることなのに……」

「オレとナイの差は一体なんだってばよ……」

「いや、まあ、ぼくのことはあまり気にせずに……ちなみに、波の里のアカデミーでは普通にこれ教えてますよ?」

「えっ? そうなの?」

「はい。卒業試験で、普通にでる内容みたいです。まあ、土地柄船の護衛があるので、下忍の初めごろには水の上を歩けるようにするという意味合いがあるみたいですけど」

「お国柄か……」

 うんうんっと納得したように頷く、サクラとナルト。

「そんな感じです……ナルト兄ちゃんだけ、アドバイス」

 ナイは地面に落ちている葉っぱを一枚拾い上げる。

「葉っぱ?」

「はい」

 ナルトの問いかけに、ナイは頷く。そして、葉っぱを一枚額にのせる。
 ナイは印を組み、チャクラを練り上げる。
 すると、倒れていた葉っぱが立ち上がったのだ。

「これと同じ原理です。もし、チャクラが少ないと葉っぱは綺麗に立たず、逆に多すぎる葉っぱが壊れてしまいます」

 じーとナルトはその様子を凝視する。

「オレ判ったてばよ。そうだよな、チャクラコントロールだもんな。集めるのを足にするだけ」

 何か判ったように早速ナルトは印を組み、チャクラを足に集める。そして、

「オレが一番乗りってばよ」

 一歩、二歩、三歩……助走をつけたが、木の枝まで真っ直ぐとナルトは到着することが出来た。

「ナルト凄いじゃないっ! チャクラコントロールがうまいだけのことはあるわね」

 サクラが首を上に挙げ、ナルトを見ながらそんなことをいったのだ。

「えっ? 誰がチャクラコントロールがうまいんですか?」

 ナイは何かの聞き間違いではないかと思い、サクラに聞いてみる。

「ナルトよ。どうしたのナイ君?」

「昔は下手だったんですけど……練習したんですね」

 ナイは暖かい表情でナルトを見上げた。
 少しすると、あれ? 漫画と少し変わるような……まあ、いっか……うんっとナイは心の中で呟いた。

「私も行ってくるわね」

「頑張ってください」

 その後、サクラも一発で木の枝まで到着する。
 で、残ったのが……

「あとはサスケだけってばよ」

「ちょっと、そういう言い方やめなさいよ……サスケ君頑張ってっ!」

 サスケただ一人。いまだ中腹にも達していない。

「じゃあ、オレってば必殺技の練習してくるってばよ。完成したら、ナイにも見せてやるってばよ!」

「あんまりウロチョロしたら危ないんじゃない?」

 ナルトが森の奥に行こうとすると、サクラがそれを注意する。
 ナイは取りあえず、小鮫を使い、島の中に入る忍の人数を確認した。

「大丈夫です。何かありましたら、報告するので。ナルト兄ちゃんはこの島の中で、修行するのは平気です」

「サクラちゃん、ナイもそういってるってばよ」

「もう、仕方ないんだから」

 ナルトはサクラとナイに手を振って、森の奥へと入っていった。

「迷子にならないといいけど」

「迷子になっても大丈夫ですよ。場所は分かりますし」

「何? 隠し能力?」

「そんな感じです……感知系の忍でもあるので」

 あははっとナイは笑う。

「そういえば、カカシ先生どこにいるの?」

「あそこで暇してますけど」

 ナイは視界の端っこにいるカカシを指差した。

「あっ本当だ、いた。まあ、良いかしら」

「待て、サクラ。折角先生を見たんだから、何か反応を示そう」

「何か、面倒くさそうに思えて?」

「面倒くさい……まさか、オレが日ごろからガイに対して思っていたことを、人から言われるとは……」

「その前に、ナイ君に投げすぎですよ」

 サクラは怒ったように眉をしかめる。
 さすがに、それに対しては反論することがなくカカシは頭を垂れた。

「ナイ君の手際が完璧すぎたので……先生でもやったことあるのかい?」

「あっはい。アカデミーで先生の補佐をやってます」

 それと、基本一対一で教えてもらっていたので、他人に教えることに対してナイは少し自信があったのだ。

「偉すぎる……じゃあ、サスケはナイ君に頼もうかな。オレはナルトの方を見てくるよ」

 カカシは笑顔でこの場を去っていった。

「変な先生ですね」

「同感よ……何かアドバイスするの?」

 サクラは頑張っているサスケの方を見る。

「まだ良いと思います。粘ればできるものなので、アドバイスするには早すぎます……ナルト兄ちゃんの場合は、あの葉っぱのヤツ昔やってたので、思い出してもらっただけなので」

「まあ、たしかに。サスケ君そういうの嫌そうだし」

 二人はサスケの様子を見ながら静かになった。

「その、ナイ君?」

 サクラは何かを聞こうと思い、ナイに話を切り出そうとする。

「なんでしょうか?」

「ナイ君は何で医療忍術を習ったの?」

「興味があったからと、教えることが出来る人が目の前にいたからです」

 ナイが医療忍術を習った理由としては、今あげた二番目が大きい。
 何故なら、独学、教科書だけの勉強だけでは医療忍術は習得できないのである。何だかんだいいつつ、サソリは実地による医療忍術の勉強をナイに叩き込んでいた。

「興味があるんですか?」

 ナイはヒョコッと首をサクラのほうに向けた。
 しかし、サクラは少し難しそうな顔をして曖昧そうに首を振る。

「まだわかんないって感じかしら……何か自分にあったことが見つかればいいのに」

「木の葉の里は大きいから、あれですか」

「それが何か関係するの?」

「勿論。小さな隠れ里はそれだけ、下忍でも即戦力を期待します。なので、アカデミーのうちにだいたい忍の方向性を決めてしまいます」

「もしかして、お国柄って言っちゃったけど、木登りの業とかもそれに関係するの?」

「はい……まあ、前衛、中衛、後衛だけでも決まると、あとは自分で出来るとは思いますけどね」

 フムッとサクラは考えるように、俯く。

「サスケ君にナルトは完璧に前衛よね……ナイ君は?」

「僕ですか? えーと、オールラウンダーですかね。前衛でも、後衛でもできるので」

「聞いた相手が悪かったか……単純に考えると後衛よね。体術苦手だし」

 サクラの小さな呟きを聞いて、ナイは心の中で焦る。
 やばい、このまま行くと漫画通りにいかない可能性が。

「体術あたりは、ある程度練習したほうがいいと思います。木の葉の医療忍者でとても有名な方がこんな感じのことを言ってました。医療忍者は先に倒れたらだめだ。何故なら、誰が傷ついた仲間を助けるって感じのを。何かどっか違うような感じがしますけど」

「たしかに、医療忍者が先に倒れたら駄目よね。そんなこと言った人は誰なの?」

「伝説の三忍の一人、綱手姫ですよ」

「伝説のくノ一のっ!? さ、さすが有名なだけはあるわね……」

 サクラはナイにその話を聞くと感心したように感嘆の声を出した。

「医療忍術は、木の葉は他の里よりもリードしてると思いますよ」

「そうそう、確か二代目火影様を助けたナナシっていう方が木の葉に医療忍術を広めたって授業で聞いたことがあったような」

「へっ、へーそうなんですか」

 内心ドキドキのナイ。
 サクラはそんなナイの様子には気づいていないようである。

「アカエミーで習うことだったのか……」

「何か言いましたか?」

「何も言ってません。まあ、もし何か習いたいものがあったら、カカシさんに相談してみたらどうですか? たしか、忍術、体術、幻術。どれも一流レベルですよ」

「カカシ先生がねえ。日ごろを見ると、とてもそう思えない」

「意外とそういうものかもしれませんよ」

「ふーん……ナイ君の先生はどんな先生なの?」

「怖いかなって思ってたんですが、優しい先生ですよ。みんなの修業に何だかんだ相手してくれますし」

 ナイは今現在の先生である再不斬を考えながら言った。

「カカシ先生とは正反対ね」

 うんうんっと頷くナイに対して、サクラは笑みを浮かべる。

「相談か……」

「手っ取り早いのは、師匠を作って直々に教えてもらうのが一番です。その方が覚えやすいので」

「うーん、綱手様が師匠になってくれれば……なーんてね」

 言い終わると、サクラはその場で立ち上がった。

「私もナルトを見習って、修業でもやろうかな。ナイ君と話せてよかったと思うよ、ありがとう」

「いえ、別にそれほどのことはやっていません」

「年下とは思えないわ……サスケ君のこと、よろしくね」

「了解です」

 サクラは小さいナイに手を振って、森の奥へと向かっていった。
 取りあえず、ナイはそのままサスケの修業風景を眺めることにした。




あとがき
修行編前編。サクラ相談編でした。
ナルトがめちゃくちゃチャクラコントロールがウマいのは、頑張ったからです。ナイがいない分、ナルトは修行を続けていた様子。
次回、サスケと会話して、ナルトの必殺技編です。
次回更新は土日頃になるかと思います。

皆さん、今後もよろしくお願いします。





[16066] 第三十七話 木登り×相談×必殺技? 後編
Name: copu◆9ee5bcb3 ID:b22b3897
Date: 2010/09/13 20:22
 あれから一時間が経過。
 サスケは木の中腹にも登ることが出来ていない。
 ナイはじーっとその光景を眺めていた。暇なのか額に葉っぱをのせて遊んでいる。葉っぱを二枚重ねたり、回転させたりっと暇を潰していた。

「お前も修行でもしたらどうだ?」

 そんな様子のナイにずっと見られ、嫌気でも差したのかサスケはナイを睨みつける。

「見張りと言うか、ここにいるのが任務です。気にしないでください」

「見張りなら、他の奴らがどこにいるか確認しろ」

「大丈夫です。サクラさんはここから50メートル先に、ナルト兄ちゃんとカカシさんは300メートル先にいます」

 一応任務なので、ナイは度々小鮫を使い木の葉の忍の居場所を把握している。
 暇そうにしているが、やることはやっているナイである。



 第三十七話 木登り×相談×必殺技? 後編



「鬱陶しい」

 サスケは結局ストレートにナイに言ってみたが、ナイは特に気にしている様子は見えない。

「サスケさんの場合は基本的に練習不足です。まあ、サスケさんぐらいなら、頑張れば今日中で出来るとは思いますけど」

 ナイは立ち上がり、サスケがいる木の付近まで近づく。
 年下にそんなことを言われ、サスケは少しムッとする。

「一人っていうのは虚しいですかね……」

「フンッ、一人で修行するのが普通だ」

 ナイの呟きをくだらないかのように嘲笑するかのように言うサスケ。

「まあ、ぼくも教えてもらってる以外は一人でやってましたけど、意外と大人数でやるのもいいんですよ? 多すぎるのもあれですけど」

「分からないな」

「あれですよ。お互いを認め合うライバル? 的な人が入れば良いんじゃないんですか?」

「お前にはいるのか?」

「えっ? ぼくですか? いないかな……でも、ナルト兄ちゃんと戦ってみたいですね。それと、うちはのサスケさんも」

 ナイはクスッと笑みを浮かべる。

「戦ってやろうか?」

「言っておきますが、止めた方が良いですよ? 戦ってみたいって言いましたが、今じゃあんまり相手になりません」

「オレがか?」

「自覚してますよね」

 ズバリと言い切ったナイ。それを聞くとサスケは眉間に皺を寄せた。
 面白くないかのように、サスケはナイを視線からはずす。

「写輪眼でも、使えるようになると変わるとは思いますけどね」

「写輪眼か……お前は実戦を経験したことあるのか?」

「実戦ですか?」

 ナイは下を見ながら思い出す素振りを見せる。

「片手いくかないか……ぐらいですかね。昨日のも含めて」

「……そんなもんなのか」

 思ったよりも少ない数にサスケは少し驚いているように思える。

「白さんはぼくよりもずっと多いですよ。まあ、ぼくサスケさんたちより少し早く忍者になっただけなので」

「その割には、動きに迷いが無かったな」

「それは、やらなきゃやられることを知ってるから……初めての実戦で大怪我しましたし」

 半ばからまるで呟くようにナイは言う。そして、サスケの視線がナイに戻った。

「忍者っていうのはそんなものです。ぼくの場合は、演習でもずっと強い人が相手をしてくれたので、体や目が慣れてるんですけどね。その話を聞いてくるということは、実戦はまだなんですか? まだ忍者になって一ヶ月ぐらいだけでしたね。なら、Dランク任務ばっかりですもんね」
 
 考えるように頷くナイ。
 サスケはまるで、自分が子ども扱いされているような気感じになり、気分を害している。

「……Cランクは今回が初めてだ」

「そうですか……ぼくも一回だけかな? あれ? 昨日タズナさんの迎えに行く任務ランクどのぐらいなんだろう。忍者と戦いましたし、Cランク? いや、任務外の仕事……まっ、いいですか別に」

 さして気にしないように、ナイは言い切る。

「そう言うものか? ナルトと仲が良いっていてたから、ナルトと同じ性格だと思ってたが、違うなあんた」

「ナルト兄ちゃんと同じって、負けず嫌い? 人情的? ぼくとは違いますよね。負けず嫌いはサスケさんと似てますけど」

「どういうことだ?」

「そんな怖い顔しないでください……まあ、ナルト兄ちゃんとサスケさんは似てますよ、共通点多いですから」

 ナイは空を見ながら呟く。

「アカデミー時代は仲良くなかったのですか?」

「いや、別に……」

「今はそれなりって感じですね。ナルト兄ちゃんはなんか、サスケさんに対して敵対心? ライバル心ってやつですか? それを抱いてますけど」

「フンッ。ナルトのやつは頑張ってるが、まだまだって感じだがな」

 鼻で笑いながらも、サスケはナルトのことを少しは認めているようで、ナイは内心驚いている。

「それなりって感じですね」

 面白そうにナイは笑う。

「オレとナルトはどこが似てるんだ?」

「別に良いじゃないですか」

「教えろ」

 さっきから不機嫌垂れ流しのサスケ。ナイは小さくため息をついた。

「ぼくは一人でした。だから、ナルト兄ちゃんはぼくに話しかけてきたんです。ナルト兄ちゃんも一人でしたから。サスケさんも一人じゃないですか。ちなみにぼくは今一人じゃないですけど」

「どういうことだ?」

「うちはの事件知ってますから」

「っ!?」

「その反応を見ると、昨日の話あんまり聞いてませんでしたね。ぼくが遭難した日はちょうど、うちはの事件の日だったんです。なので、子供一人の遭難なんて小さな事件は後回しにされた……ぼくとサスケさんの接点はここから始まったんですよ?」

 サスケの表情は硬い。
 ナイはそれを見て、肩をすくめる。

「始まった?」

 しまったとナイは心の中で叫んでしまった。ナイの話の念頭にはイタチとの出会いがあるので、はじまったと言ってしまったのだ。

「ほ、ほら、今現在ここで、話してるじゃないですか? 意外な感じです。そう、とても意外」

 意味ありげに繰り返しながら、ナイは言った。
 
「それでは、少し周りを見てきますね。ナルト兄ちゃんの必殺技が気になるので」

 危ない。
 サスケと話してるとボロが出てしまうと感じたナイは、ここから去ることを考えた。

「そうしてくれ、気が散るからな」

 サスケは木登りの業を再開する。
 そして、ナイはここを後にした。


「近場のサクラさんからかな」

 もう一度ナイは子鮫を使い、居場所を把握する。
 三人とも場所は……

「ナルト兄ちゃんとカカシさん、もっと奥に行ってるな」

 修業って何やってるんだろうとナイは思う。

「サクラさん」

「ナイ君?」

 サクラはハアハアっと息が上がっていた。
 近くの木々には手裏剣、クナイが刺さっている。
 サクラは投擲の練習に息の上がり具合から見て体術の修業もしていたようだ。

「頑張ってますね」

「たまには、きちんと取り組まないと体が鈍るわね。ナルトのとこに行くの?」

「はいっ!」

「やっぱりね、そんな感じがしたわ。サスケ君は?」

「頑張ってますけど、微妙ですかね」

「そっか……サスケ君なら大丈夫そうだけど」

「大丈夫ですよ。またあとで、失礼します」

 ナイは小さくサクラに手を振って、奥へと向かう。


 そして、最初にナルトがいた地点にたどり着くナイ。

「あれ? 何だろう……」

 そこから、あちらこちらと木々の様子がおかしいことに気がつく。

「木が抉れてる? ナルト兄ちゃん木登りの業?」

 ナイの周りにある木の幹が抉れているのだ。その抉り方は異様である。
 ナイはそれがナルトが初めて木登りの業によってできた跡と同じだと思ったが、どうからどうみても違う。
 抉り跡を右手で触る。

「えっ? まさか……」

 ナイは他の木の抉り跡を見る。
 まるで、螺旋を描くような跡。それは、ナイも何回も見たことがある。いや、ナイ自身が原因のあの跡と同じ。
 最近、その練習自体やっていなかったので、ナイはすぐに思い出さなかった。いや、今この瞬間で見かけるとは思っていなかったので、考えの中から除外していたと言うのが正しい。

 ナイは奥を見つめて、走っていく。
 訓練の賜物なのか無意識にナイは気配を消した。

「やっぱ難しいってばよ」

「集中しろナルト」

 ナルトとカカシの声がナイの耳に届いた。それと共に突風がナイを襲う。
 やっぱりとナイは確信した。
 
 ナルトは両手を合わせて何かをしていて、カカシは片手でイチャイチャパラダイスを読みながらナルトを見ていた。

「あーまだ駄目ってばよ」

 ナルトの落胆の声と共に、ナルトを中心に突風が起こる。

「まあ、頑張れ」

「カカシ先生何かコツ教えてくれってばよー」

「ナイ君が言っていただろ? 練習あるのみだ」

「練習不足か……それにしても、オレのオリジナルだと思ったのになあ、残念だってばよ」

「普通思いつきもしないぞ」

「さすがオレ」

「で、本当のところ何でこんなことを考えたんだ?」

「ナイが頭の上にのせた葉っぱを回転させたのが、きっかけだってばよ。それで、オレももっとチャクラの量を多くして練り合わせて、頭突きをすれば良いんじゃないかなって考えて、頑張ってチャクラを回転してんだけど……」

「だけど?」

「思ったよりも威力がすごくなり過ぎて、頭の上でやるのは危ないって感じたってばよ」

 うんうんっとナルトは頷く。
 それを聞いて若干呆れるカカシ。
 チャクラコントロールや勉強を頑張っていたナルトだが、根本的にはあまり変わっていない。

「そのとき、別に頭突きじゃなくてもいいんじゃないかって思えて、パンチにしたってばよ」

「それで、今に至るわけか」

 フムッと考えるようにカカシは腕を組んだ。

「発想が天才だなお前」

「カカシ先生に褒められたってばよ」

 ナルトは嬉しそうに鼻の下を指でこする。
 どうからどうみても、螺旋丸の修行風景。話を聞く限り、独自で修行をやっていたらしい。
 どうしようかなっとナイは考える。どうからどうみて、話がズレて来ている。チャクラコントロールが得意だけならまだしも、まさか螺旋丸にも手が出ていたことにナイは驚いた。

「そこにいるのは誰かな?」

 カカシは後ろに声を掛けたのだ。
 驚いたようにナイは肩を鳴らす。無意識で気配を消していたナイだが、さきほどの突風で気が削がれたらしく、カカシはナイの気配に気づいた。

「お疲れ様です」

 元々隠れる気は無かったので、ナイは素直に姿を現した。

「ナイ君か……ナイ君以外にないか」

「ナイっ! 今の見てたか? すごいだろっ?」

「良く見えませんでしたが、何か凄そうでした」

 ナイがそう言うと、ナルトは残念そうな表情を浮かべる。

「よしっ! じゃあ、今度はしっかり見とけってばよ」

「ナルト……ナイ君にはきちんと完成してから見せれば良いだろ?」

「ん? た、たしかに……じゃあ、ナイまた今度見せるってばよ」

 ナルトは両手の手のひらを合わせてチャクラを練るが、カカシがそんな提案をしてナルトはチャクラを練るのをやめたのだ。
 ナイはカカシが知り合いとはいえ他の里の忍に見せるのはやめろっと言っていることにすぐに気づく。
 螺旋丸、四代目火影が一から作った忍術。たしかに、あまり人に見せるものではないとお思われる。
 それに、無意識とはいえ気配を消していたナイに少しカカシは警戒したのだ。ナルトに集中していたとはいえ、ナイの気配に気づかなかったからである。それは、カカシの不覚といえる。

「今のがナルト兄ちゃんの必殺技なんですか?」

「おうっ! ナイには必殺技ないのか?」

 ナイは首をかしげた。
 必殺技? 水遁なら上忍クラスの忍術をいくつかどうにか使える。
 でも、それを必殺技というと何か違うような気がした。
 そう、オリジナルティ。誰でも使える技を必殺技というのは何か、ナイは嫌だった。
 そこで、思い出したのが、あの自分で作った、自分だけの火遁の術。
 実戦で使用経験はまだないが、ナイにとっての必殺技と言っても良いのではないか。

「あるような気がしますけど、まだきちんと使ったことないですね」

「じゃあ、見せてくれよ」

「フフフ、必殺技はそんな簡単に人に見せるものではないんですよ? ここぞっ! という時に使うんです……ぼくは多分そうしないけど」

「どっちなんだよ」

「必殺技は作戦を立てて効率良く、うまくことが進むのに必要なんです。あるときは、一番最後、またあるときは、隠しだまのダミーに」

 うんうんっと頷くナイ。
 どうみても、子供が言う台詞ではないと思われる。

「いや、必殺技はやっぱり一番最後に使うべきだろ。先生もそう思うよな?」

「フェイントに使うっていうのもありだよな。ナルトお前、影分身得意だろ? 一人目でフェイント掛けて、二人目が本命とか」

「な、なるほど」

 ナルトは感心するように唸る。
 ここでナイはここで、影分身も何だかんだ使えるのかー、漫画通りっとうんうんっと頷く。

「ところで、ナイ君?」

「あっはい、何でしょうか?」

「サスケはどうしてる?」

「まだ中腹には行けてない様子です。でも、サスケさんなら頑張れば夜までにはできるんじゃないでしょうか?」

 ナイはそう答えたが、今日中に実際出来るかどうか微妙だと思っていた。
 何故なら、そのとき傍らにナルトがいないからである。
 ライバルがいて、切羽琢磨頑張って、漫画の二人は一日でクリアしたのである。

「まさか、サスケが一番苦戦するとはなあ」

 カカシは思わずぼやいている。ある意味予想外だったのかもしれない。

「アイツにとっては良い薬か」

 ……そうでもないかもしれない。

「夜遅く掛かる場合は、ぼくが近くにいるようにするので安心してください。取りあえず、明日も自由時間みたいなので」

 また特に連絡は来ていないので、木の葉の忍のみんなは明日も今日と同じ修行時間。

「それなら、サスケはできなくてもサクラとナルトには水面の業やってもらおう」

「カカシ先生。オレ、螺旋丸の修行やりたいってばよ?」

「待て待て、チャクラコントロールはどっちみち必須だ。ナイ君も言っていただろ? 水面の業は下忍でもできる。遠からずやることなんだから、明日やることに決定」

「そうですね。サクラさんもその方が良いかもしれませんね。一日、二日、体術とかの修行をやるよりも効果的だと思います」

「サクラのヤツ、体術の練習しているのか、意外だな」

「苦手克服とかあるんじゃないですか? 後衛支援やるにしても、ある程度動けないといけませんから」

 カカシは何かに気づいたような目でナイを見てくる。
 サクラがナイに何かを相談したことに気づいたのだ。

「ナイ君は先生向いてるんじゃないかな?」

「教えるのは苦手じゃないですけど、どうでしょうかね」
 
 ナイは苦笑した。
 相談に乗ることも出来るし、アドバイスもできる。でも、先生には慣れないような気がしている。
 ナイには夢がない。目標がない。そんな人が先生になるのは違うような気がする。
 でも、いつか夢や目標が出来るような気がしてナイは空を見つめた。きっとそれが大事な理由になるということも。


「じゃあ、サスケ頑張れってばよ」

「さ、サスケ君頑張ってね」

 ナルトは元気良く、サクラは遠慮がちにサスケに別れを言う。
 結局夕暮れまでに、サスケは木登りができなかった。なので、ナルト、サクラ、カカシの三人は新しく泊まる部屋に戻ることになったのだ。
 それで、サスケは一人で修行。傍らには一応ナイがいるが。

 ナイは相変わらず頑張るサスケを眺めていた。
 というよりもアドバイス自体、体で覚えろしか言いようがない。
 
 汗が滴り落ちる。体力もかなり消耗しているはずだが、サスケは頑張っていた。
 集中力を切らさずに、サスケは木登りの業を続ける。

 パチッと灯り代わりの焚き火が鳴る。
 木を蹴る音以外しない静かな夕暮れ。

「平和だなー」

「お前はさっさと帰れ」

 他人事のように過ごすナイにサスケは睨みつける。
 数時間前にも同じ光景を見たような気がする。

「任務ですので……それに、サスケさん場所分かりますか?」

「うっ……」

「思ったよりもアレですかね……やっぱりあれですか?」

「あれって何だ」

「ライバルがいないからですかね」

「くだらない」

 フンッとサスケは顔を背ける。

「競いながら修行するのは効果抜群ですよ? 条件つけるって言うのは大事なんです。と言うわけで、ライバルはいないので、別条件付けましょう」

「ん?」

「サスケさんは何で忍者やってるんですか? 何で強くなろうとしてるんですか?」

 サスケの表情が強張った。

「強くなる第一歩。目標ですね。ありますか?」

「……お前はどうなんだ?」

「聞いておきながら、自分のことは言ってませんでしたね。忍者になりたい理由ですか……忍者になることができなかったからかな? 忍になれなかったからなりたい。ただ、それだけですよ」

 サスケは不思議そうな表情でナイを見つめる。
 あははっとナイは苦笑した。

「昨日の話聞いてませんでしたね? 木の葉のいたときのぼくは、アカデミーに行けませんでした。なので、忍者になれない。だから、忍者に憧れたんです。ただ、それだけ」

 とナイは言ったものの、もう少し奥が深い。
 NARUTOの世界にいるのに、何故自分は忍者になれないのだろう。なんで、ここにいるのだろう。ナイが小さいとき思っていたものはそれなりに大きい。

「目標は特にはありません。知りたいと思うから知ろうとする。それが、強さに繋がったんです」

「結局お前は目標ないじゃないか」

 嫌々そうに言うサスケ。

「今はですね。やりたいこと、もう少しで見つかりそうです」

「オレは答えるつもりだ。そのもう少しって言うの教えろ」

「……助けたい。人助け? うーん、まだ気持ちが固まらない。考えがまとまらないですかね」

 ポツリとナイは小さく呟く。

「サスケさんは?」

「一族の復興、そして、ある男を殺すこと」

「頑張ってください」

 キッとサスケはナイを睨みつける。

「サスケさんの境遇は知ってますよ。自分の事件調べたので……サスケさんみたいな人はたくさんいます。今は戦乱ではないですが、平和ではないです。木の葉では血継限界は迫害されませんが、他の里では迫害されるところがあります。それが原因で、一族諸共……っていうのは聞く話です。色々難しいと思います」

 ナイは難しそうな顔をしながら小さく笑う。

「ある男を殺すためには強くならなきゃ駄目です。と言うわけで、頑張ってください。もし今日中にできたら、良い術教えてあげます?」

「良い術?」

「はい。ところで、性質変化は火でいいですよね?」

「ああ、そうだが……」

 話がよく分からず、首をかしげているサスケに対して、ナイは懐から巻物を一つ取り出した。

「火遁の巻物です。上忍クラスの術も記されてます。これを差し上げます。条件付けですね」

 分かりやすく、火遁と一筆された巻物をナイはサスケに見せる。

「何でオレにそうする?」

「ただたんに、興味があるんです。サスケさんに……それと、明日のごはんサスケさんの好きなもの作ってあげますよ」

 ピクッとサスケの肩が動く。
 昨日の夕飯で、ナイの料理の腕前を知っているからである。

「今日中だな……やってやる」

 サスケはまた木へと体を向ける。

「はい……何が好物なんですか?」

「……おかかのおむすびだ」

「えっ? そ、それってほとんど料理の腕前関係なんじゃ……」

「あと、トマトも好きだ」

「だ、だからですね……」

 はーっとナイは小さなため息をついた。
 そういえば、イタチさんはこんぶのおむぶび好きだったなあっとナイは思い出す。こんぶのおむすびとキャベツ。
 何だこの質素な兄弟。ナイは心の中で苦笑した。




あとがき
一日遅れてすみませんでした。
必殺技はナルトです。葉っぱが回転の話は、今回が初出です。葉っぱを回転させたら螺旋丸に繋がるんじゃないかっと思ってナルトに螺旋丸習得させました。ナイも半端だけで使えるんですよね……今度使わせよう。使えるっていう設定忘れてしまう(笑)。

今回は前々回辺りからよりは誤字脱字マシだといいなあ。楽観的希望です。報告ありがとうございました。大感謝です。
次回更新は完璧未定です。すみません。今月中に出来たらいいなあっと思っています。今週来週忙しいのでパソコン触れないのが大きいです。

これで、失礼します。亀更新ですが、今後もよろしくお願いします。



[16066] 第三十八話 来襲×分断×決闘!? 前編
Name: copu◆9ee5bcb3 ID:b01fbafe
Date: 2010/12/27 22:19
 サスケは夜中まで木登りを励み、どうにか習得することができたのだ。今頃は、水面の上で頑張っているはず。
 ナイはそんなことを思いながら、自室にいた。

「今日の監視はお休みですか……」
 
 ナイの木の葉の忍のお目付け役は今日一日休みに。里が緊急体制のはずだが、ナイは忍の任務自体休みになったのだ。

「ぼくの代わりに誰かいったんだろうな……暇なときは」

 ムクッとナイは立ち上がり、本棚の中から分厚い本を取りだす。一見ただの厚い本に見えるが、中には別物。
 そして、机の引き出しを開き、二重底になっている底から巻物を取り出した。机に本や巻物を見比べながら、一本の巻物に丁寧に書き込んでいく。

「時空間の安定及び、起点指定――術式利用……」

 ぶつぶつっとナイは呟きながら手を進める。

 トントンッ!

 ドアがノックされる音。
 ナイは机の上に広げた本と巻物を手早く片付ける。

「おれ。いるか?」

「ハロウ? どうかしたんですか?」

 ドアを開けると。ハロウが立っていた。周りには誰もいなく、一人で来た様子。
 そして、一点だけ気になることがある。それは……

「非番ってわけじゃないですよね。その服装を見ると」

 私服姿ではなく、任務時に着るような忍装束を着ていた。

「緊急集合。着替えて、いつもの待合室に来いだそうだ」

 ハロウはナイと視線を合わせそう告げた。

「えーと、向こうが動き出したとか?」

「……みたいだな。急げ」

 改めて気配を探ってみると、慌ただしい雰囲気にあることをナイは感じ取った。派手に警報を鳴らさず、隠密に里全体は動いている。

「間に合うのかな……再不斬先生たちは」
 
 ナイは身支度を整えながら小さく呟いた。



 第三十八話 来襲×分断×決闘!? 前編



 橋の上には五人の忍がいた。

「ということで、木の葉のみなさんはここら辺で待機をお願いします」

 ナイは所定の場所に木の葉の忍、四名を案内した。重要部分からわりと近く、何があったらすぐ迅速に動けるようになっている。カカシの戦力を期待していうということだ。また、他の波の忍たちと連携をしないですむような、絶妙なポジションに木の葉の忍たちはいる。

「ナイはどうするってばよ?」

「ぼくもここでサポートをとのことです……体よく端っこに追いやられたような気もしなくはないですけど……うん」

 ナイは後半独り言のように小さく呟く。ナイの予想通り、未だナイの立場はオンリーだったこともあり、木の葉と一緒に行動させるという話に決まった。後方で医療サポートという話もあがったが、カカシをうまく使えることができるように、チャクラ感知ができるナイは一石二鳥だったのだ。

「でも、どうやって内部に入るわけ? だって、周りは霧で覆われているんでしょう?」

 サクラはごもっともなことを言う。

「そうですね。でも、小国とは言え波の国は周りが海で進入はしやすいんですよ。結界も範囲が広くなればなるほど穴も増える。それに、相手は元霧隠れの忍もいるので、結界の弱点はすでに知っているはず。なので、その対策はやっていると思うんです」

「じゃあ、あんまり結界は意味がないの?」

「進入する際は多人数ではなく、少人数ってことぐらいですね」

「異変がないようにきっちりと空からも見張りを付けているのか」

 カカシが空を眺めると、みんなもつられて一緒に顔を上げる。上からは鷹の鳴き声が聞こえてくる。

「あれは一体何だってばよ?」

 ナルトは空を指差す。ナルトの指差す方向に、空を切る音と地表から空へと放たれる一本の細い雲。
 そして、空高くまで上がると爆発音と共に破裂した。

「花火? な、何か落ちてこない?」

 破裂した場所から黒々としたようなものが水面に向かって落下していく。数はそこまで多くはない。

「あれって、人?」

 サクラの小さな呟きをナイは聞きチャクラを感知してみると……。

「チャクラ反応あり、数は五人です」

「そ、空からくるってばよ。ど、どうするんだ?」

 ナルトは心配そうにナイを振り向いた。

「たしか、空からやってくる可能性もあったので何かしら対策が……」

 ナイの話を中断するように、バンッと大きな音と共に空に炎が上がる。

「すげぇってばよ」

「対空攻撃ですね……うん、派手。あれ――無傷?」

 空中で燃え上がる炎を感心するように見る一同。そんな中、ナイはチャクラ感知を使用しつつ相手の状況を把握しようとしていた。
 ニ撃目の攻撃でもう一度大きな炎が空に上がる。

「だ、駄目です。何かしらの術を使って、炎を無力化してます。一人こっちの方に落ちます」
 
 すばやく落下地点を計算したナイは皆にそう告げる。そして、五人がいるところから程近い水面に向かって落ちてきた。大きな水柱が天に昇る。数瞬遅れて、空から数十枚の紙も降りてきた。

「口寄せの術式……最初の五人は先発。初撃を防いで、口寄せの術式が書かれた紙をばら撒くのが仕事」

 地表すれすれでばら撒かれた紙を全部燃やすことは不可能。最初の五人はそのための布石。
 口寄せで現れる敵側の忍。姿を現したのは一瞬で、すぐに霧が出てきて辺りは見えなくなる。素早くナイは小鮫を引き抜いた。

「な、ナイ君前に行くなっ! ナルトは動くな。お前たちは卍の構えで、迎え撃て」

 カカシの制止を聞かず、ナイは橋の上から水面に降り立った。ナイを中心に波紋が浮かび上がる。
 一人前に出たナイを狙いに定め敵の忍たちは一斉に襲い掛かる。

 空を切る音。ナイは小鮫は前に振るい、放たれたクナイを叩き落した。キンッという金属音が響き渡る。
 正面から一人。右側からも一人。ナイは冷静に相手の気配を感じ取っていた。数は四人。
 必要最低限の行動で、それらの攻撃を避けると共に鎖を相手に巻きつかせ手元にある鎖を思い切り引っ張る。小鮫は相手の体を這うかのように、体中を切り裂いた。タンミングをずらして、上から襲ってくる忍に対しては、正確にクナイを投げつける。
 水面に落ちる音が二つ。数瞬おいてまた二つ。敵の忍たちの体は水の中に沈んでいく。敵の忍も霧の中……無視界の中で相手を殺す訓練を受けていたが、ナイの方が気配を殺すのがうまく、気配を読むのがうまかった。ただそれだけである。きっと、霧がなかったほうが、ナイは苦戦していたかもしれない。

「霧が晴れたな」

「エヘヘッ、ナイが敵を倒したってばよ、きっと」

「凄いわね、ナイ君」

 敵は忍びだけではない。橋の上には十人近くの侍がナルトたち木の葉の下忍を襲うが、三人はコンビネーション良く対処していた。カカシはナイの方を気にしつつも、ナルトたちでは対処しにくい、敵の忍者の相手をしていた。
 霧隠れの術を仕掛けた忍が死んだため、視界が戻ってくる。

 パチパチッ!

 小さな拍手が起こった。

「いやー。すごいよ、君。その無音殺人術(サイレントキリング)、どこかの鬼人を思い出す。その剣術どこかの怪人を思い出す。そして、やっぱりその刀……どこかの霧の忍刀を……」

「爆っ!」

 冷やかしを感じる声色。誰かが落下し、水柱があった場所にあの蛭湖がいたのだ。大きな外傷は見当たらない。
 ナイは相手がいい終わらないうちに、印を結んだ。蛭湖がいる辺りに爆発が起こり、またしても大きな水柱ができる。

「な、ナイ、エグイってばよ」

「このぐらいやらないと駄目ですよ……うん。ちなみに、水中にはいくつか事前に罠が仕掛けているのを発動させました」

 対空攻撃含めコノミさんたちご苦労様ですっとナイは頷きながら感謝をささげる。

「駄目じゃないか。最後まで話を聞かないのは」

「無傷? まさか……」

 水柱が消えると、そこには特に怪我を負った様には見えない蛭湖が立っていた。
 印を組む時間はあまりなかったはず。

「性質変化に形態変化?」

 小さくナイは呟くと、蛭湖は目を見開いた。

「さすが、さすが。すばらしい、すばらしい。それだけで、気づくとは」

 蛭湖は感心する様に頷いた。
 蛭湖が爆発を防いだのは、性質変化に形態変化を用いた、印の短い新術。ナイの予想では、雷切のようなものを体に纏って爆発を防いだのだろう。

「それでは、第二ラウンド行きますか」

 人をくったような笑みを浮かべ、蛭湖は印を組む。

『霧隠れの術』

 辺りはまた、霧が発生し視界が悪くなる。

「そして、木の葉の皆さんはそこで待機」

 蛭湖は何かを結びつけたクナイを橋に投げつける。

 ボンッ

 クナイに結びつかれた紙から新たな侍が二十人ほど現れた。

「餓鬼しかいねえじゃんか。楽勝だな」

「侍さんはそっちよろしく」

「おう、霧で姿が目えねえ忍者の旦那」

 ナイは蛭湖の気配で感じる方を睨み見た。




あとがき
すみません、すみません。生きてます。
久々すぎる更新です。前回の更新日はいつだったかな……。
なんか、本編一話間に入れる予定でしたが、一気に本題に。

前編、後編の二つに分けました。40話で波の国編終了できたらいいです。

次回、蛭湖の血継限界にナイ大苦戦っ!?
後編まだ書いてません。冬休み中に40話まで書けるようにがんばりたいと思っています。




[16066] 第三十九話 来襲×分断×決闘!? 後編
Name: copu◆9ee5bcb3 ID:b01fbafe
Date: 2011/01/02 14:31
 ナイは首筋を狙う刀を寸前で受け止めた。

「うーん、なかなか。気配を消して接近してるのに気づくとは」

 蛭湖は満足げに頷く。
 ナイは少し嫌そうな表情を浮かべて、距離を取る。相手の手が縦横無尽の血の刃。軌道が読めないので、できるだけ接近戦をしたくないのである。
 少し離れただけで、お互いの存在が見えなくなるほどの濃霧。ナイは蛭湖の気配を読みながら手裏剣を投げつける。手裏剣は霧の中を進み、何かに当たる鈍い音が聞こえポチャーンと水に落ちる音が後に続く。

「あれ? 刀で手裏剣をはじいた? でも、それにしては音がおかしいけど……」

「最近の子供は危ないなあ。刀振り回したり、手裏剣投げるなんてっ!

 刀を振る音。ナイはとっさに一歩左に移動した。すると、さっきまでナイがいた位置に斬撃が通ったのだ。飛ぶ斬撃。霧が裂け、蛭湖とナイの間に一瞬一本道ができる。

「あれ? やっぱり、手裏剣……」

 一瞬だけ蛭湖の姿を見たナイは疑問に思う。手裏剣は確かに、蛭湖に当たっていた。その証拠に蛭湖の服には手裏剣が刺さった跡があった。しかし、血は流れていない。

「血? ま、まさか」

 蛭湖は血を操る血継限界。それは、多分体外だけではなく、体内も。皮膚の下には血が流れている――ようするに、皮膚の下には鉄をも通さない鎧が存在している。

「刃が通らないなんて……」

 モゾ。

「へっ?」

 モゾ。

「そ、そっか。で、でも、どうするれば」

 ナイは小鮫を強く握り締めた。

「止めってるぞ。これならどうだ」

 真正面から見据える刀。そして、四方からは真っ赤な刃がナイに狙いをつけてくる。
 小鮫に鎖。空中を縦横無尽に泳ぎ、蛭湖の攻撃を防いでいた。

「こう全部防がれると悲しいなあ」

 蛭湖はニヤリと笑うと、片手の印を結ぶ。すると、血の刃が幾千の鋭い針へと姿を変えた。

「さ、さすがにそれまでは――っ!?」

 避けようとしていたナイの右肩に血の針が刺さる。

「爆っ!」 

 ナイは痛みを我慢しながら印を結んだ。半ば自分を巻き込みながらも起爆罠を起動させる。

「おしい、おしい」

 水の膜に包まれる蛭湖。

「水面流し。衝撃吸収に良い術だ」

 そんな様子を見てナイは口を噛みしめた。チャンスさえあれば・・・・・・。



「一番大事なところの警備が疎かになるのは感心しないの」

 静まり返った廊下内。そこに、一人の侍が歩いていた。その侍は、ナイが一戦交えたあの侍である。
 侍が通った後には、護衛についていた忍の死体が何人も倒れていた。

「ここじゃな」

 侍はある扉を開いた。そこには、二人の忍が正座をしながら待ちかまえていたのである。

「大将の首を取るのが戦の必勝法」

「正論ですな」

 ハドウは小さく笑いながら、侍を見据える。




 第三十九話 来襲×分断×決闘!? 後編




「ライカっ! どうしたの?」

 野外に作られた救護室に現れたライカ。テント内には、怪我を負った忍者が何人もいた。ササメは後衛任務でずっとここにいた。

「怪我じゃない。監視役の交代」

「そ、そっか、よかった。今日はみんなバラバラだし、心配してたの」

「……仕方ないだろ。コノミは罠。白さんは単独任務……あいつらはどこにいるんだ?」

「たしか、ハロウはハドウさんのところで待機。ナイは木の葉の忍者の方々と合同任務だそうです」

「何も無ければいいな」

 二人は心配そうに外を眺めた。



「カカシ先生、ナイのところへいってくれってばよ」

「そうですよ。ここは私たちで十分です」

 ナルトたちは橋の上に新たに現れた侍たちと戦っていた。わざとなのか、橋の上までには霧はあまり掛かってこない。

「と言われてもねえ。オレが行ったところで、足手まといにしかならないと思うが」

「カカシ先生ってスゲェ忍者じゃないのか?」

「オレは無視界戦闘を専門にはしてなくてな。あの濃霧の中だとナイ君の方が動けるんだ」

「先生、波の里に来てから良いこと無いわね」

「話してる最中にもあいつピンチになってないか?」

「サスケの言うとおりだってばよ。どうすればいいんだ」

「まあ、オレに任せろ。ここはお前等に任すぞ」

 真剣なカカシの声を聞いて、下忍たちは一斉にカカシの方を振り向く。

「オレには秘策はあるんだ。さっさとナイ君を助けて、戻ってくる」

 カカシは橋から降り、胸のポケットにある巻物を取り出し開いた。

「最初にやるのは、相手の行動を封じること。血の毒もあるし、瞬間瞬殺。一瞬で片づけるか」

『口寄せ・水遁・追牙の術』

 水面に術式が浮かび、複数の影が水面の中を移動する。



『水遁・水鮫弾の術』

 ナイは印を結び、蛭湖に向かって術を使う。海水が巨大な鮫に形作り、勢い良く襲いかかる。しかし、蛭湖に当たるか当たらないかのところで、鮫は無数の斬撃により細切れになってただの海水に戻ったのだ。

「接近戦は不利だと思い、中距離に合わしたのは評価できる。それに、決め手になる強力な術も持っている。残念な点は相手が悪かった。それだけかな」

 空を切る音。ナイは鎖を前に張り巡らせる。鎖は何かを受け止めたが、全部を防ぐことができなかった。いくつもの血の弾丸がナイの体を貫通した。

「くっ!?」

「あれだよね。解毒がよくできてる。不思議だ」

「・・・・・・チャンスさえあれば」

 ナイの体はすでにボロボロに近かった。致命傷はなかったものの、無数の切り傷、貫通した怪我口から血が垂れている。

「何だ? おっとコピー忍者参上か・・・・・・どんな手で来るのか」

 蛭湖は面白そうに小さくつぶやいた。ナイもそのことに気づく。橋の上で戦っていたカカシが水面に降りたのである。

 水面にいくつもの波紋が起こる。
 ナイは何かを確信して、蛭湖を見据えた。

 バシャッ!

「犬っ!? これは、驚いた・・・・・・だが、犬程度なら」

 蛭湖は驚きながら、自分の体をみた。
 水中から一気に無数の犬たちが蛭湖に噛みついたのだ。しかし、蛭湖は体中に武器があるといっても言い。なので、拘束できるのも僅かな間だけ。

「ああ、だが。一瞬で良い。オレの取っておきだっ!」

 濃霧の中でも薄ぼんやりと何かが光っている。そして、バチバチと放電している音が響きわたる。

「ぐっ!? い、良い切れ味だな。まさか、血の防御を破るとは・・・・・・」

「雷切だ。切れ味は保証する」

 カカシの右腕が蛭湖の背中から胸へと突き刺さる。

「だが、残念だったな」

 蛭湖はニヤリと笑みを浮かべる。
 カカシはいやな予感がして、手を抜こうとするが、蛭湖の血が固まり抜くことができない。

「心臓を潰したはず・・・・・・なぜ、死なない?」

「体内の血も操れる。ちょこっとだけ心臓の位置をずらしたんだ。いやー、カカシくんが凄腕過ぎて、綺麗に心臓だけを狙うから。無事だったんだよ」

 蛭湖の体から流れる血が新たな刃を形成する。

「取りあえず、ぼくとしてはこういう瞬間を狙ってたんですけど」

 ナイは小鮫を握りしめ、蛭湖の首筋に狙いを定めた。

「忘れてたよ・・・・・・でも、ねえ。君の刀じゃカカシくんみたいに、貫けないでしょう」

「一つだけ言っておきます……小鮫は斬るのではなく、削るんです。チャクラも」

 小鮫が蛭湖の首筋に当たった瞬間、刃が逆立ちそのままいともたやすく蛭湖の首ごと引き裂いた。

 引き裂かれる瞬間、蛭湖の顔には驚きの表情が浮かんでいる。

「血を操るということは、血の中にチャクラを通しているってことです。そのチャクラがなくなれば、血はただの血にしかならない……今説明しても死んでますから、意味ないですよね……うん」

 バッシャンっと蛭湖の体が水面に落ちていった。

「カカシさんご協力ありがとうございました。多分ぼく一人だと、うまくいかなかったので」

「えっ? 結局おいしいところナイくんにもっていかれたという感じか? ま、まあ、いっか。ナイくんご苦労様」

 霧がだんだんと収まっていく。

「ナイーっ! カカシ先生っ! こっちも片づけたってばよっ!」

 橋の上のは数十人もの侍や敵の忍が倒れている中、軽傷は負っているものの元気そうに木の葉の下忍三人は勇ましそうに立っていた。

「ところで、ナイくん?」

「はい、なんでしょうか?」

「この戦いってどうやったら、終わるんだ?」

「えっ?」

 ナイはカカシの問いかけに固まってしまった。

「た、多分。大将倒したら終わりじゃないんですか?」

「大将?」

「はい、多分……うん」

 ナイは気まずそうに小さくうなづく。




「これ以上はお体に触りますよ」

「ふんっ。そんな、隠し玉があるとが」

 肩で息をしボロボロの侍に対して、ハドウは無傷。部屋を二分割した侍がいる部屋半分だけが無数の斬撃跡が残っている。

「コントロールもなかなかになりましたね」

 ハドウは後ろにはハロウに声を掛ける。しかし、ハロウは集中している様子で、返事が返ってこない。最初と変わらず、正座をしていた。
 侍が刀を振るうが、斬撃はハドウ二当たる瞬間虚しく逸れてしまう。
 侍とハドウの間に何かがあるのだ。それは、部屋半分ほどもある巨大な甲羅がハドウとハロウを包み込んでいた。侍の攻撃程度では傷一つ付けられていない。

「そういえば、そちらの大将は今どうしてますかね」

「船の中で待って……っ!? ま、まさか、お主ら」

「大将の首を取るのが戦の必勝法ですから」




「遅い……まだか。あいつ等にいくら払っていると思ってやがるんだ」

 波の国境付近からほど近い海。その海にガトーを乗せた船がいた。いまかいまかと波忍たちとの勝利の連絡を待っていたのだ。

 トントンッ。

 ドアがノックされる。

「祝報か。入れ」

 ドアが開かれると、ドサッと船の中で警護をしていた男たちの死体が投げ込まれる。そして、現れたのは身の丈以上もある巨大な刀を背負った忍。額には波の印が刻まれている。

「お、オレに手出すとどうなるか分かってんのかっ!?」

「フンッ」

 怯えながらも虚勢を張るガトーに向かって、再不斬は何かを投げたのである。

「契約書? これはっ!」

 ガトーはそれに目を向け、一気に再不斬に視線を送った。

「やりすぎたんだよ。おめーの知り合いの大名共もこっち側についてくれた」

 再不斬たちの本当の任務はガドーに荷担していた大名たちの説得。大名たちの中にもガトーのような利益しか考えていないものもいたが、半数以上はガトーの影響力によって従わされていたものたちであった。波の忍がガトーの首を取るという計画を打ち上げると、説得もあり、ガトー亡きあと協力してくれると言ってくれた。

「ま、待て。話あわなっ!?」

 ガトーの首筋に首斬り包丁が当たる。

「おめーはおしまいだ」

 静かにガトーの首が宙を舞った。




 バンッ!

 ナイは傷口の手当をしながら空を眺めた。空に花火が上がったのだ。

「あれは何の合図だい?」

 ナイは木の葉の忍たちを見て、首を横に振った。

「波の合図ではないみたいです」

 ナイが説明した後、再び空に花火が上がる。

「あれは波のですね。えーと、勝ったようです」

「マジカっ!? やったてばよ。無事任務完了ってばよ」

「そうね」

「ふん、このぐらい楽勝だ」

 ナイはナルトたち三人の様子を見て、小さく笑みを作った。

「ご苦労様でした」




あとがき
明けましておめでとうございます。
視点変えが多かったような気がします。読みにくかったらすみません。
書き終わって気づいたこと。意外とあっさり終わったなあ。

コメントは今度まとめて返したいと思っています。

次回、波の国編終了話。



[16066] 第四十話 完了×別れ×第一歩
Name: copu◆9ee5bcb3 ID:b01fbafe
Date: 2011/01/05 19:56
「上がるとき気をつけてください」

 ナイは船から一番乗りに陸に上がる。

「大丈夫ってばよ。もし、落ちても平気だってばよ」

「そういえば、水面歩行の業できるようになったって言ってましたね」

 ニヒヒッとナルトは笑いながら陸に上がる。

「何だかんだ、良い修行にもなって、波の国にきてよかったわ……ねっ、サスケ君?」

「あ、ああ……そうだな」

「そりゃあ、サスケが一番苦労したから、本当に来てよかったってばよ」

 サスケはギロリとナルトを睨みつける。その横でサクラは小さなため息をついた。

「ちょっと、止めなさいよ二人とも。ナイ君ともお別れの時だから」

「元気で良いですよね」

 一番後ろにいた白はタズナに手を貸しながら笑みを浮かべた。

「超元気な餓鬼どもだ」

「すみませんね、騒がしくて」

 カカシはすまそうにタズナに頭を下げる。



 第四十話 完了×別れ×第一歩




「そういえば、カカシ先生朝いませんでしたけど、どこに行ってたんですか?」

 サクラは思い出したかのように振り返る。

「ああ、それか……」

「ハドウさんのところに行ってたんですよね?」

 カカシが言うとするが、間にナイが割って入ってきた。

「ハドウさん? 誰ってばよ?」

「えーと、波の里で一番偉い人です」

「忍頭の方ね。それで、どうかしたんですか?」

「簡単に言うと、感謝されて、今回の一件に巻き込んでしまったことで頭を下げられたぐらいだな」

「たしかに、本来の任務から外れちゃいましたもんね」

 うんうんっと木の葉の下忍たちは頷く。

「超悪かったな。おまえら」

「いいですよ。タズナさん、良い経験になりましたから」

 謝って来たタズナに対してカカシはそんなことをいった。

「そうだってばよ。初のDランク任務が……あれ? ランクはどうなるってばよ?」

「たしか、下忍にはCランク以上の任務はさせないじゃなかったか?」

「あっ、サスケ君の言う通りかも」

「大丈夫だ、おまえ等。きっちり働いた分は評価される……オレは小言をもらうがな」

 ぼそっとカカシは小さく付け足した。

「これで、波の国ともさよならか」

 サクラは振り返り、岸から波の国を眺める。防衛のランクは下げられているため、今の波の国は霧で囲まれていない。そのため、綺麗な景色がそこに広がっている。

「ナイ」

 ナルトは景色を眺めた後、ナイの方を向いた。

「何でしょうか? ナルト兄ちゃん」

「波の里でどこにあるってばよ?」

「秘密ですよ? 波の国のどっかにあります。小さな忍里は、里の存在自体が秘密な場合がほとんどです。木の葉などの大国ぐらいですよ? 場所が丸分かりなのは」

「へー、そうなんだ。知らなかったわ。その割には、うちの里、襲われたりしないわよね?」

「甘いです。木の葉の国もきっと、結界忍術で他国の忍が進入したらわかると思いますよ。それに、暗部がいるので秘密裏に……なんてことが」

「怖いわね。そうなんですか、カカシ先生?」

「なんで、そこにオレの名前がでるんだ?」

「だって、ナイ君がカカシ先生は暗部でも一目おかれた凄腕だーって言ってたんで」

「買い被りすぎだ」

「ですよね。結局霧が深かったから、カカシ先生がすごかったかどうか、わからなかったし。カカシ先生活躍してたのかどうかも……」

 うんうんっと頷くサクラを見て、カカシは心の中で大きくため息をつくのだった。

「ということで、木の葉のみなさんご苦労様でした。波の国、里を代償してお礼を述べたいと思います。本来の任務外、新たに力をお貸しいただき、本当にありがとうございました。木の葉のみなさんが力をお貸ししたことで、被害はとても小さくなりました。本当にありがとうございました。

 ナイはペコリと木の葉の忍四人に頭を下げた。

「そっか……ナイともお別れなんだな。ナイまた会おうなっ!」

「はい、また近いうちに」

「おう! 絶対ってばよ。結局必殺技もみせれなかったし、次は絶対みせるってばよ」

「期待してますよ……うん」

 ナルトとナイはお互いに顔を見合わせた。

「ナイ君、ありがとう。ナイ君にあって、これからどうすればいいか何となく分かったような気がする」

「ぼくそんなすごいこと言ってません」

 照れくさそうにナイは小さく笑う。一瞬の静寂のあと、サスケが一歩前にでた。

「世話になった」

「サスケ、それだけ? 一番世話になったのはサスケだろ。もっと、言うことあるってばよ」

「ためになった……ありがとう」

 若干照れながらサスケはナイに礼を言う。ナルトとサクラは少し二やつきながら見守っていた。

「サスケも少し丸くなったな。ナイ君、オレからもありがとうな。こいつらに良い影強を与えてくれて」

「そんなことないです……そこまで、言われるほどのものではないですよ」

「うー、人ができてる。オレの教え子たちとは全然違う……」

「ナイくんは変に大人びてますからね」

 今まで傍観していた白が会話には言ってきた。

「そうそう、私たちより一つ下とは思えない、落ち着き」

「ナイは昔からそうだってばよ?」

「あっそうなんだ、生まれつきね」

 一同に頷かれ、恥ずかしそうにナイは小さく笑う。

「ボチボチ出発するか」

「おうっ!」

 互いにもう一度別れを言い、木の葉の忍たちは木の葉の里へと帰っていく。




「おっと、ナイ君に聞こうとしたことがあったな」

「何がってばよ?」

「鬼人はともかく、怪人のことをな」

「怪人?」

「そう。霧隠れ忍び刀七人衆の一人怪人干柿鬼鮫」

「鬼鮫ってなんか危なそうな名前ですね」

「実際にもヤバイ奴だけどな」

「強いのか?」

「ああ、蛭湖以上の実力だろう」

「そいつがどうかしたってばよ?」

「いや、蛭湖がナイ君に向かって怪人の名前を出してたからな。少し気になっただけだ」

 そうあのとき、蛭湖はその剣術怪人に似ていると……カカシは深く考えるように顎に手をおく。

「そういえば、ナイ君近いうちにっていったわよね? なんかまた会うこと知ってるみたいに」

「そういえば、そんなこと言っていたような気がするってばよ」

「ああ、それ、きっと中忍試験のことだ。たしか、今年は木の葉が主催だからな……んっ?」

 カカシは考えなく、中忍試験のことを口に出したのだが、三人が自分のことを見ていることに気づく。

「中忍試験?」

「そういえば、一年に何回かそんなものがあったような気がするわ。たしか、他の里と合同で」

「よし、先生、オレたちをその中忍試験に出せ」

 カカシの意思関係なく、意気込む一同。

「なんだろうな。ナイ君とこの子たちの違いは」

「ということは、中忍試験でナイにまたあえるってばよ。やったーっ!」

「いや、まだ出すかどうか決めてないし、それに、まだ報告もされてないんだがな」

「えっ? じゃあ、中忍試験ないんですか?」

「いや、試験内容が漏れると大変だから、秘密裏に事を運ばせてるはずだ」

 ウキウキしている三人を見て、カカシはため息をついた。

「ほらほら、おまえ等。いいかい? 自分らの実力はこの一件で分かっただろ? 中忍試験になると、強い奴はたくさんいるわけで……」

「ナイ君よりも?」

 サクラとカカシは一瞬視線が合う。

「……いるんじゃないかな」

 カカシは視線を逸らして答える。あんな風に気配を消して上忍に近づいたり、上忍と一対一で戦いもちこたえるなんてできる下忍が果たしているか……白さんも結構できるなあっとカカシは心の中で頷く。振興里おそるべし。

「帰ったら修行てっばよっ!」

 ナルトは握り拳を作って大きく空高く腕を振りあげた。



あとがき
どうも、今回は宣言どおり書き上げれました。短い上に、会話ばかりですが。
無事に四十話、波の国再開編終了です。最近本家のnarutoもなかなか熱くなっていいですね。まさか、白と再不斬が活躍しているところをまた見れるとは。

次回更新は未定です。すみません。少し忙しいです。レポートにおわれています。やってない自分が悪いのですけど。
次話の中身は中忍試験の間に『波の話を一話』いれるか、『ナイとハロウの木の葉の里大冒険』の二択です。
多分今月は無理……来月半ばごろ更新できたらいいなあっと思っています(期待しないで)。

コメント返しは、今週中に。コメントくださった方ありがとうございます。
そして、今週中にもオリキャラ紹介のところを少し更新しようかと思います。

では、皆さんここまでお付き合い頂き本当にありがとうございました。四十話長いです。来月で、一年経つとか驚きです。そして、一年経つのに自分としては中忍試験の話に行ってないのが驚きです。
来月にもまた会えたら光栄です。

オリジも書かなきゃな……



[16066] 第四十一話 ナイとハロウの木の葉の里大冒険
Name: copu◆b7c18566 ID:b01fbafe
Date: 2011/02/28 22:32
「おはようございます。白さん」

「おはようございます」

 ササメは起きたばかりで、眠そうに目をこする。白はササメよりも起きたのは早かったらしく、お茶を飲んでゆっくりしていた。

「……ハロウ、ナイがいない」

「あっ! おはようございます……いない?」

 ササメの後ろからのっそりとライカが現れた。

「あの二人なら、早く起きてどっかにきましたよ」

「えっ。ズルイです……あっ」

 不満げにササメは口を尖らす。ふと、後ろを見ると二人に置いてけぼりにされたのがショックだったのか、ライカが固まっていた。

「あれ? テーブルの上になにかありますね」

 ササメはテーブルの上にある雑誌を発見した。

「えーと、木の葉の里の歩き方……ガイドブック? えっ? 木の葉ってこういうものがあるの?」

 一応隠れ里何だよねっとササメは白を見た。

「まあ、木の葉の里は大きいですから」

 あははっと白は苦笑する。

「そんなものなんですかね」

 ササメは納得しないように呟くが、手は甘味の店を探そうとガイドブックを開いていた。

 波の下忍六人は中忍試験を受けるために、木の葉の里までやってきたのだ。



 第四十一話 ナイとハロウの木の葉の里大冒険



「あれが噂の木の葉のアカデミーです」

 ナイは向こうに見える建物を指差した。隣で感心したようにハロウが頷く。

「おっ、結構想像で作ったけど、本当に外見は似てるな」

 波の里のアカデミーの外見はハロウがイメージした木の葉のアカデミーのものである。
 実際に木の葉の里で見たわけではないので、イメージした部分が多いが、本物を見るとうまく出来たことがわかる。

「今日は授業ないみたいです」

 アカデミーは静まり返っていた。どうたら、休日のようである。

「あのブランコ……ナルトが作ってたやつか?」

 アカデミーの正面にある木々にブランコが吊るされていた。

「ぼくはここら辺まで来たことがないので、分かりませんが、そうじゃないですか?」

「ちょっと、感激するよな」

「そんなもんですかね」

 ナイはハロウと一緒に木の葉の里を案内していた。
 木の葉の里(原作重視)の旅をハロウが所望したため、二人で回ることにしたのであった。

「懐かしいですけど」

 ナイは辺りを大きく見渡す。

「結構覚えてるんだな」

「そうですね……ちょうど、九尾の一件で建物が綺麗に一新したこともあって、ほとんどそのままですよね」

 ナイにとって、約五年ぶりに訪れた木の葉の里。

「行きたいとこあるのか? 会いたい人とか?」

「ナルト兄ちゃんにはまた会うのでいいですよ」

「そうじゃなくて、孤児院だったんだろ?」

「大丈夫ですよ。どうせ、忘れてますって。そんなに印象的な子供じゃなかったですから」

「今も子供だけどな」

 ハロウの突っ込みにクスっとナイは笑いながら、角を曲がろうとした。

「うわぁっ!」
  
 ナイは向こうから来た少年とぶつかってしまった。ナイよりも、二、三年下ぐらいだろうと思われる。

「イテテだコレ」

「だ、大丈夫ですか?」

 ナイは少年に向かって手を差し伸べる。

「こ、木の葉丸ちゃん……また他国の忍っ!?」

 少年に後ろにいた少女が震えたように大声を挙げた。

「コレ? 木の葉丸って……おいおい」

 ナイの後ろにいるハロウはこの状況を見てため息をついた。

「あっはい。波の国の忍者です。大丈夫ですか、君?」

 木の葉丸と呼ばれた少年は、他国の忍に何かあったのか、腰が引けていた。

「で、でもなんかやさしそう……」

 少女の隣にいたおっとりしている少年が小さくつぶやいた。

「ありがとうだコレ」

 木の葉丸は恐る恐るナイの手を握り、立ち上がった。

「ごめんね」

「大丈夫だコレ」

 ナイは申し訳なさそうに目を伏せると、木の葉丸は大声で言ったのだ。
 どうやら、警戒心を解いたようです。

「前から思ってたけど、ナイって結構子供に懐かれるな」

「そうですかね……アカデミーの子?」

「年長組です」

「ですよね、忍者オーラ出てるよ」

 ナイがそんなことを言うと、三人は照れたように恥ずかしそうにする。

「おい、どんすんだ? この状況」

「結構いいんじゃないですか……うん」

 ナイは頷いて、目線を三人に合わせた。

「実はぼくたち、木の葉の里を見学してるんですが、案内してくれませんか? やっぱり、ガイドブックじゃなくて、現地の人に案内してほしいですし」

「お前も現地の人だっただろ」

 ナイは三人に手を合わせながらお願いした。
 三人は顔を見合わせ、相談を始める、

「どうするんだコレ」

「リーダー忍者ごっこしてくれなくて、暇だったしいいと思うけど」

「ぼくもそう思う」

「よーし、里一番の天才忍者木の葉丸にまかせろだコレ」

「あはは、ありがとう」

「おい……おれの意見」

「じゃあ、お願いします。レッツゴー」

「ナイ、スルーか?」

 ハロウの意見を聞かずに、ナイとハロウは木の葉丸たちに案内されることになった。

「あそこが映画館だコレ」

「今は風雲姫の最新作がやってるのよね」

「面白かったですよね」

 フムフムっと木の葉の里を回っていく。

「どこか行きたい場所はないのかコレ?」

 有名所は案内したらしく、木の葉丸はナイの顔を見た。

「だって、ハロウ」

「おれに振るのかよ……うちは一族が住んでた場所に行ってみたいんだけど」

「うちは? ……サスケ兄ちゃんのことだコレ?」

「そうそう」

「……たしか、閉鎖されて入れなかったような」

 ウドンは思い出したかのように言う。それを聞いたハロウは目を光らせた。

「よしっ! 侵入だ」

「やめた方がいいですよ。木の葉の里、いつもより警備が厳しくなってますから。うちは一族のいた場所なんか秘術がたくさんありそうですし、警戒されてるはずです」

 ナイはふと周りを見渡した。
 みんなもそれに釣られて、周りを見る。

「そうなのか?」

「今も少し見られてましたよ」

「おー、何かすごいコレ」

「あっ!」

「どうしたんだ?」

 ナイはとある方向を見て声を漏らした。

「その、火影岩に行きたいです」

 ナイは木の葉にそびえる火影岩を見ていた。

「行ってみたいって? 何だよ」

「あそこからの景色……いいんですよ」

 ナイは思い出すかのように目を瞑る。

「でも、さあ、入れるものなのか?」

「た、たしか、普通には入れなかったような気がするコレ」

「レッツ、侵入」

「いや、お前、言ってること違うぞ」

「そんなものです……うん。きっと、うちはと違って多めに見てくれますよ……こっちには三代目火影の孫がいますし」

 若干黒いオーラがナイから流れているのをハロウは見てしまった。

「仕方ないな。お前がそこまで言うなら、付き合ってやるよ」

「さすが、ハロウ」

 ため息をつきながらも、ハロウはナイに付き合うようだ。

「で、いいかな木の葉丸君」

「うーん……大丈夫だコレ。火影岩まで登る秘密の抜け道を知ってるんだコレッ!」

 バンッと木の葉丸は胸をたたいた。
 ナイはその情報源が、ナルトからではないかと心の中で苦笑した。


「たしかに眺めがいいな……」

 ハロウは思わず、感嘆の声を漏らす。
 草の根を分けながら、ひっそりと火影岩の頂上を目指して登ったのだ。
 そこは木の葉の里を一望できるベストスポット。

「ナイは前にもここにきたんだろ? ナイ?」

「えっ? あっ、はい……うん」

 ナイはその景色に集中していたため、ハノウの声があまり聞こえなかったらしい。

「すごいなコレ」

「な、眺めいいですね」

「こういう場所あったんだ」

 木の葉丸たち三人はここから見える景色は初めてらしく、驚いている。

「夕日も綺麗ですよ……」

 ハロウは何かナイに向かって言うとしたが、ナイが遠くを見るような表情になったため声をかけるのを躊躇った。

「四捨五入したら、五十年になるのかな……うん」

 一段落したら、ナイはくるりと木の葉丸たちのところを見た。

「お礼に何かおごりますよ。何か食べたいですか?」

 木の葉丸たち三人は顔を見合わせる。

「一楽のラーメンだコレ」

 一斉に声を合わせて言ったのだ。

「いいな。おれも食べたい。それにしようぜ」

 ハロウも噂のラーメンを食べたいらしく、同意する。

「ぼくも初です。それにしましょうか」

 うんうんっとナイが頷くと木の葉丸たちはうれしそうに大きな声を上げた。


「あれ? ハロウたちじゃない?」

「本当だ。おーいっ!」

 一楽の屋台まで歩いていると、前から声が掛かった。
 前を見ると、ガイドブック片手にコノミとササメがいる。勿論、後ろにはライカと白がいた。

「これから、この子達お勧めのラーメン食べに行くつもりなんですか、きますか?」

「行く行く……じゃない。何で二人で勝手に行くのかな。ライカが一人で寂しがってたよ」

 ナイがそう誘うと、ササメは少し起こっているようで眉をひそめた。

「その……諸事情があったので……うん」

「仕方ないですよ。ナイくん、木の葉の里に元々いたんですから。行きたいところもあったんでしょう」

「でも、それなら何でハロウも一緒に?」

「色々あるんだぜ」

 ハロウは大きく頷いて、誤魔化そうとする。

「……ナイはどこでも子供に好かれるな」

 ライカはナイたちの隣にいる木の葉丸たちを見て、そういった。

「そうそう、ナイは子供に懐かれる」

「そうですね」

 ハロウがそういうと、みんなが大きく頷いた。

「そうですかね……取り合えず、ラーメン食べましょう」

 そして、仲良く一楽のラーメンを食べるのであった。




あとがき
お久しぶりです。ギリギリ二月更新間に合いました。
新章突入。中忍試験編。今回は導入で前回いっていた話を書きました。
思ったよりも冒険してないのは気のせい……うん。

三月中に数度更新できたらいいなあっと思っています。

更新頻度ゆっくりすぎですが、今後ともよろしくお願いします。

誤字脱字等あったら、報告してくれるとうれしいです。
そして、書き終わって気づいたんですが、若干一人いない……その人は、今度出てくる予定です。



[16066] 第四十二話 集え新人ルーキーたち
Name: copu◆b7c18566 ID:b01fbafe
Date: 2011/03/04 22:12

「さすが、合同選別。言うだけのことはあるわ」

「うん。だんだんと人数増えてきたよね」

 コノミとササメは少し興奮気味に話す。

「……もう少し静かにしろ」

「何よ、ライカだって心の中じゃあ、ワクワクしてるくせに」

「……してない」

「してる」

「はいはい、このぐらいにしましょう。周りに見られていますよ」
 
 白が穏やかにコノミとライカの間に割って入った。
 ササメが恐る恐る周りを見ると、たしかに周囲の目線を集めていた。

「まあ、どっちみち集まりますけどね」

 苦笑してナイはそう言ったのだ。

「えっ? 何で?」

「そりゃあ、見慣れない額当てをしてるからに決まってるだろ」

 首を傾げるコノミに対して、ハロウがそう付け足す。
 たしかに、どこの忍だあいつ等っという話し声が聞こえてくる。

「リラックス、リラックスです……うん」

「リラックスしすぎだ」

 ゆったりと椅子に座るナイに対して、ハロウはため息をついた。
 ここは、中忍選抜試験会場。波の忍六人は服装バラバラ、年齢バラバラ、態度バラバラっと少しこの場で浮いていたりする。



 第四十二話 集え新人ルーキーたち



「サスケ君にナルト大丈夫?」

「オレは問題ないってばよ」

「……オレもだ」

 心配そうにサクラは二人に声をかけた。何故か試験前なのに、二人はすでに怪我を負っている。

「サクラちゃんこそ、大丈夫かよ? あの、ゲジま……」

「な、ナルトその話はするなっ! しゃーなろー!」

 サクラは嫌なものを忘れるように頭を勢いよく振る。

「にしても、あの眉毛強いってばよ」

「……ああ」

「ニヒヒ、下忍にもまだまだ強い奴はたくさんいるけど、オレは負けないってばよ」

 三人は試験会場の扉の前についた。

「……ナルト、さっきコテンパンにやられたじゃない」

「さ、サクラちゃん、そんなこというなってばよ……」

「試験で借りを返せばいい」

「サスケ良いうこと言うってばよ……よっしゃーっ! 行くってばよ」

 ナルトは掛け声と共に、扉を開いた。


「うわぁ、たくさんいるわね……もしかして、私たち結構ギリギリ?」

 サクラは扉を開けた瞬間、一斉に視線を受けて肩をビクっとさせる。
 試験会場には、予想を上回る人数の忍がいた。隠れ里も様々。木の葉、砂、滝、草と普段ならお目にかかれない忍たちである。

 サクラはごくりっと唾を飲んだ。

「サスケくーん。おっそーいっ! 私ったら、久々にサスケくんに会えると思って、ワクワクしてたんだから」
 
 場に沿わないピンク色の声。サクラは眉間に皺を寄せながら首を回すと、同期の山中 いのがサスケに抱きついていたのだ。

「サスケ君から離れなさいっ! このイノブタ」

「あっら、サクラじゃない。見ないうちに、オデコまた広がったんじゃない?」

「何ですってっ!」

 ナルトは二人の間に挟まれ、困惑している。

「お前らもこんな試験受けに来てたのかよ。めんどくせーな」

 そこに、やる気ない声が加わる。

「あっ、おバカトリオだ」

「その呼び方やめろ」

 はーっと奈良 シカマルはやる気のないため息を吐く。その隣ではボリボリっと黙々とポテトチップスを食べる秋道 チョウジの姿があった。
 以上三人。上忍猿飛 アルマ率いる第十班。ナルトたちと同期の下忍たちである。

「見っけっ!」

「……こ、こんにちは」

 大きな声に後に小さな声が続く。みんなは振り向くと、先頭に犬を頭に乗せた少年犬塚 キバ。後ろにおかっぱ頭の少女、日向 ヒナタ。その隣にサングラスを掛けた少年油女 シノがいる。
 以上三人。上忍夕日 紅率いる第八班。これも、同じくナルトたちと同期の下忍たちである。
 計三班。木の葉隠れのルーキーたちである。
 アカデミー卒業後に久々に会ったのか、ここが試験会場であることを忘れ話込んでいる。

「君たち。もう少し静かにしないか」

 メガネを掛けた青年が注意とともに近づいてくる。

「アカデミー卒業したばかりの、ルーキー君たち。ここは遠足会場じゃない。そんなにしゃべるな」

「何よ、アンタ」

 青年の口調にムッとしたのか、いのが口を開く。

「僕は薬師 カブト……それよりも、周りを見てごらん」

 カブトにそう言われ、九人は周りを見た。すると、会場にいるほぼすべての忍から視線を送られている。お世辞にも好意的ではない。

「みんな試験前でピリピリしている。文句を言われる前に注意をしようと思ってね……文句だけで済むなら、いいけど」

 カブトはそう言って、肩をすくめた。

「仕方ないか……右も左も分からない新人くんたちだ」

「その……カブトさんは、この試験二回目ですか?」

「いや、七回目。この試験は年二回。だから、今年で四年目だ」

 サクラが聞くと、カブトは首を横に振る。

「それなら、この試験について色々知ってるんだ」

「まあね」

「カブトさんってすごいのか」

「……でも、受かってないんだぜ」

「あはは、そういうことになるかな」

 シカマルがぼそっと呟いたのか聞こえたのか、カブトは少し困ったように頭を掻いた。

「それより……アンタ、何でオレたちがルーキーってこと知ってるんだ?」

 サスケが一歩前に出る。
 カブトは元から、ここにいる九人を新人として忠告に来たのだ。しかし、九人ともカブトと面識がない。

「カカシ班のうちは サスケ君ね。残りの班員はうずまき ナルト君。春野 サクラ君」

 カブトは懐から札を取り出した。
 表面に忍と書かれた札である。

「君たちはアスマ班の奈良 シカマル君。秋道 チョウジ君。山中 いの君。残りの君たちが紅班、犬塚 キバ君。油女 シノ君。日向 ヒナタ君か」

 カブトはそれぞれ所属する班と班員すべてを言い当てる。

「カブトさんそれって」

「ああそうだ。この札に君たちの情報が書かれている。情報をチャクラで記号化して焼き付けるもの。情報カードと呼ばれているものだ。少しでも試験を有利に進めるために、情報収集をしているんだ」

 カブトはまた札を取り出した。
 合計すると、札の数はかなり多い。

「少しサービスをしよう。たとえば、こんなのもある」

 カブトは一枚の札を取り出した。
 そして、それを地面の上に置いた。

「地図?」

「そうだ。これは、今回の各隠れ里から参加する忍の人数が書かれている」

 札には地図が描かれ、その下に忍び里の印と数が書かれている。

「159人も……すごいですね。機密情報っぽい」

「情報の入手経路は教えられないな」

 カブトはニヤリと笑う。どうやら、真っ当な情報ではないらしい。

「そのカード……俺らの里以外のもあるのか?」

 またまたサスケが一歩前にでる。

「あるよ。音や波は最近出来た小さな里だから、そこらへんはあまり情報がないけどね」

「波……あっ! ナイだ。ナイも来てるってばよっ!」

 ナルトはカブトの言葉を聞いて、波隠れの里のこと、ナイのことを思い出した。

「そういえば、さっき見せてくれたカードに波隠れ6人って書いてたような……」

「なるほど。気なるやつでもいるのかい?」

「いる」

 サスケはそう断言する。カブトは面白そうな表情になった。

「調べてあげよう。名前かなんか知らないのかい?」

「砂隠れの我愛羅。木の葉のロック・リー。波のナイの三人だ」

「里と名前まで分かってるなら、早い。ふむふむ……これだ」

 カブトは地面に三枚のカードを置いた。

「見せてくれ」

「まず……木の葉のロック・リーだ」

 カードに眉毛が印象的な少年が現れる。

「年齢は君たちよりも一個上だ。ここ一年で体術が伸びてるが、他はダメだ。昨年、実力ある新人下忍として期待したが、中忍選抜試験には参加せず。もし、君たちが参加しなかったら、この子達が木の葉のルーキーだったろうね」

 カブトはカードを見せながら、説明をする。
 一通り説明が終わると、次のカードに移った。次のカードにはひょうたんを背負った少年が写っている。

「次は砂漠の我愛羅。中忍試験は君たちと同じ今年が初。任務経験は……驚いた。下忍なのに、Bランク一回。他国の忍で、新人だから詳しい情報はこれ以上ない」

 情報が少ないのか、最後のカードに移ろうとする。

「おっと、砂漠の我愛羅。任務はすべて無傷で帰ってきてるそうだ」

 カブトはメガネをクイッとしながら、九人を見る。

「さて、最後だ。残念ながら……波の国はあまり情報がないな」

 今まで一枚につき一人しか写っていなかったのだが、最後の一枚は六人の写真が写りだされている。

「波の里では、白、ライカ、水納 ハロウ、コノミ、ふうま ササメ、ナイの六人が来ているらしい」

「あっ、この人とこの子会ったわね」

「……ナイの友達ってばよ」

 サクラは白とハロウを指差す。
 それを見て、ナルトは口を尖らせた。

「サクラ、他国の忍と知り合いなの?」

「任務であったのよ……あれ? ということは、来てるの?」

 サクラとナルトは辺りを見渡すが、波の忍は見えなかった。前の席にいるのかもしれない。

「……この六人の中にBランク任務を受けたのが数人いるようだ……小さい里だと思ったが、優秀な忍を送ってきてるようだね」

「おっ、ナイのことだってばよ。絶対」

「まあ、ナイ君ならありえそうね」

 ナルトとサクラは顔を見合わせ、頷きあう。

「あと一人……あの白っていうお姉さんもそれっぽいわね」

「綺麗な人だってばよ……」

 局地的に思い出に浸っている二人。

「下忍でBランクどんな奴だよ。めんどくせー」

 そんな二人を見て、シカマルは嫌々そうに呟いた。その隣ではボリボリっとポテトチップスを食べるチョウジ。いつの間にか、袋が新しくなっている。

「この子ら以外も、みな優秀な下忍たちばかりだ。あまり中忍試験を甘く見ないほうがいい」

 カブトはその一言で幕を降ろした。

「そんなことよりも……ナイはどこってばよ」

「ナルト。どうせ、会えるわよ」

「ナイッ!」

「叫ぶなっ! 向こうも恥ずかしいじゃない。こっちも恥ずかしいからやめないさい」

 サクラは叫ぼうとするナルトの頭を叩いた。
 若干涙目になるナルト。

「へっ? 何っ!?」

 サクラは目を見開いた。
 椅子蹴って高く飛び上がる少年。そして、クナイを取り出し、カブトに向かって投げたのだ。
 額当てから音隠れの忍ということが分かる。

「……音隠れの」

 カブトは来ることを予測していたのか、軽々とクナイを避ける。しかし、もう一人の音隠れがカブトに接近し右手を振るう。それも、紙一重で避けるカブト。

「……よかった」

 サクラも安堵したが、パキッとカブトのメガネが割れたのだ。

「……ふーん、そういうことか」

 カブトは割れためがねを見て小さく呟いた。

「どういうことだっ! 今完全に避けたはず」

「鼻先掠めたんだろ」

 サスケが叫ぶと、シカマルがどうでもいいよう言い放つ。
 そのとき、カブトが突然地面に倒れ、吐いたのだ。
 ナルトとサクラは咄嗟に駆け寄る。

「大丈夫ですか?」

「ああ、大丈夫だよ」

 カブトは少しつらそうにするが、上体起き上がらせる。

「何だ……たいしたことないんだな。四年も受けてるベテランのくせに」

「あんたのカードに書いておきな。音隠れの三名、中忍確実ってな」

 音隠れの忍たちはカブトの前に姿を現した。実行犯の二人以外にもう一人、計三人である。
 その場は殺伐した雰囲気になる。

「静かにしやがれっ!」

 ボンっという音と共に、怒声が会場を響き渡らせる。
 前を見ると、バンダナを頭に巻いた大柄な男を筆頭に試験官らしき忍たちが現れた。

「待たせたな。中忍選抜第一試験、試験官の森乃 イビキだ」
 
 バンダナ姿の男はそう自己紹介する。

「音隠れの三人。早速失格にされてえのか」

「スミマセン。初めての受験で舞い上がってしまいまして」

 意外に音隠れの忍は素直に謝った。
 イビキはそれをみて、鼻で笑う。

「いい機会だ。言っておく。試験官の許可がない戦闘は禁止されている。そして、許可されても相手に死を至らしめる行為も許されない。試験官に逆らったものは、即失格だ。覚えておけ」

 イビキは受験生に向かって威圧的に言い放つ。

「では、これから中忍選抜第一の試験を始める。志願書を提出し、番号を受け取れ。その番号どおりに席に着け。そのあと、筆記試験の用紙を配る」

「んっ? 筆記……用紙?」

 ナルトは首を傾げる。そのとき、試験官の一人が分厚い紙束を取り出した。

「ぺ、ペーパーテストッ!」

 ナルトの大きな声が会場中に響き渡ったのだ。



以下試験中の波の忍たち 『』は心の声です。
①ナイ

『第一問……暗号問題ですね。意外と解けるかな? 一辺の漢字の数は同じ。線対称、点対称で読み解く可能性あり……部首、音読み、訓読みっと。これかな? ……この並び順からして、この漢字はダミー、いらないっと』

 とりあえず、問題に挑んでいるナイ。
 スラスラとは言わないものの、解けている模様。

『完成っと。時間は七分か。七×十で七十分……まあ、全部解けないですし」

 チラッと次の問題を見ると、ナイの手が止まる。

「二番目は絶対無理……三番目も……四番目こそ。いけるかな?』

 計算関連の問題は解けないらしく、パッと見でナイは諦めた。
 四番目の問題はというと。
 高山で任務中、敵に襲われ怪我を負った。毒物が使用されたらしく、症状が書かれている。そして、その怪我の適切な治療法、解毒の方法について書けっといったもの。

『……二代目火影様に使われたヤツじゃないんですかね』

 昔起こった出来事が思い出される。 

『偶然だよね……うん。ヒルゼンさん……』

 ナイはこれから起こることを思うと、気が滅入ってしまう。 

 結局、カンニングすることなく、九問中五問答えることができたナイ。そのときにちょうど、45分になったのだ。


②ハロウ

『フフフ、この日ためにある程度勉強したからな』

 試験内容を知っていたハロウはこの日のために、勉強をしていたらしい。

『わ、わかんねえ』

 しかし、現実はそこまで甘くなかった。一問ぐらいはっと思ったが、ビクともしない。

『よっし、カンニングだ……あれ? 別にテスト受けなくてもいいんじゃねえ? そうだよ。別に受けなくても、受かるんだ』

 ただたんに、カンニングが面倒臭いように思える。
 ハロウの決意は固まったようで、時間まで寝ることにしたらしい。

 45分時。イビキによって、顔面すれすれにクナイを投げ込まれ起きることになった。


③ササメ

『……解けない。えっ? この難易度なんですか……あっ! 四番解ける』

 と四番だけスラスラと解くコノミ。

『で、でも一問だけ解けても。か、カンニング? そ、それって……でも、このままだと』

 決意を決めたササメをカンニングをすることに。

『まずは、忍法・口寄せ』

 ボンッとササメの机の上に小さな蜘蛛が数匹現れる。

『答えを調べてきて』

 蜘蛛にそう命ずると、そそくさっといなくなった。
 その後、不器用ながらも減点なしで、ある程度答えることが出来たのだった。


④白

『解けるものもありますけど……試験官が言うに、カンニングをしたら減点。でも、この問題の難易度は並ではない。ということは、この試験会場の中に答えを知っているサクラが数人入っていて、その人からカンニングをすればいい。要するにこれは、試験官にバレずにカンニングをするということ』

 白はイビキの言動一つ一つを思い出し、第一試験の中身を推測する。
 白が印を結ぶと、手のひらに試験官から見えないぐらい小さな氷の鏡が現れる。壁などにも鏡が貼られ、白はサクラと思われる事物を特定する。

『あの人がサクラの人ですね……みんなにも知らせてあげたんですが……まあ、気づいたらにしましょうか』

 こうして順調に白は問題を解いていく。


⑤コノミ

『ふー、カンニングよっ! カンイング。解けるわけないじゃない』

 コノミはイライラと問題を読み終えた。

『試験用紙配るときにすでに配置済み。これをクイッとやると』

 天井に鏡をクナイでセットし、指のワイヤーで角度を変えることができるようにセットしたのだ。
 コノミは指をクイッと動かすと、上のほうで小さな金属の音が聞こえる。何かが突っかかっているような音。
 
『あれ? うまくいかない……まさか、誰かの忍具と被って動かないとか? 誰よ一体……あれ? あの鏡は氷? 白さんのじゃない。よしっ! あれを借りるわ」

 目標を白が作った鏡にして、コノミは作業を開始した。


⑥ライカ

『……少し様子見か』

 時間が経つにつれ、カンニングで消えていく下忍たち。

『……もうそろそろいいだろうか。忍法・視覚共有-鷹の目-』

 ライカは試験会場の外、窓際近くの木に自分の鷹を止めていたのだ。
 忍法で鷹の視界を共有することで、窓から解答を見ることが出来る。



以上波の忍六名。無事に第一試験突破。




あとがき
久々に木の葉視点で少し書きました。波の里があると、カブトさんとの会話はこんな感じに。
とりあえず、三次予選の件もあるので一通り出番を入れたという感じです。

第一試験はこのぐらいです。試験内容等は省きました。45分時のナルトの台詞や空気の読めないアンコさんの登場と書きたいところもありましたが、カット。
気になる方は原作、アニメや他の方々が書いたSSでご確認お願いします。
次もいきなり試験中になる予定です。
そして、例の人が登場。二分割にするかもしれません。

中忍選抜試験編もよろしくお願いします。



[16066] オリキャラ紹介等
Name: copu◆b7c18566 ID:31db10ca
Date: 2011/01/08 15:16
あの人誰だっけ?
という人用のオリキャラ&オリジ設定が入った原作キャラの紹介などなど。
NARUTO的なポジションは、性格等を考えた結果それっぽいなあと思っただけで、イメージしやすくするための一例です。

・ナイ ナルトたちの一つ下。 黒髪、黒目。
 名前の由来は名前が無いからきている。NARUTOの世界に来る前は、病院生活を送っていた少年。個室みたいなので、それなりに裕福らしい。
 頭の回転は速く、覚えが良い。師も優秀だったので、忍者として才能を開花させた。
 趣味は読書、食べ歩き、新術開発(主に大蛇丸からもらったものの調整)。料理は上手で、餌付けも得意だったり。
 裏設定。本当は苗字を与える予定だったが、なんかしっくりこなくて苗字なしのまま波の里編に突入。もうその予定もないと思う。


・暁
 原作同様。若干一部ほのぼのしているが、それは多分気のせい。
 そうに違いない。


・大蛇丸
 憑依者の一人。原作の強キャラに憑依、俺つええええ。
 口調も何故か、原作通り。というより、憑依した人が……。
 暁の一部の面々からは変態扱いされている。ナイからも変態ry
 自称ナイは私の後継だそうだ。


・子鮫 忍刀
 鮫肌から生まれた忍刀。オリジナルと同等の能力を持つ。
 刃渡りはオリジナルよりもずっと小さく、脇差程度の長さ。クナイよりも二、三周り大きい。
 チャクラの感知能力を持ち、それをナイと共有することが出来る。 


・マンダ
 だいたいこのSSだと登場の際は小型化している。口は悪く、本人の知らないところで子鮫とマスコット対決をしてたりも。
 出番少なめ。


【波の里の人たち】

・水納 ハロウ ナルト達と同年代。 金髪、紫の瞳
 もう一人の憑依者。霧隠れ出身。
 血継限界。三尾のチャクラが封印されており、ある程度はコントロールすることができる。
 小さいときには霧隠れを出て、新天地を探しウロチョロ。波の国に目をつけ、活動を開始する。


・ハドウ 再不斬よりも少し年上。金髪の温和な男性。
 ハロウを逃がした張本人。その後、波の里の里長になる。忍頭と呼ばれたりもしている。霧隠れでもある程度地位があった様子。
 ハロウが憑依者だということを知っている。


・ふうま ササメ ナイと同じ歳。 赤みかかった髪 後ろは一部結びポニーテール。あとは、垂れ流し。
 アニメのオリキャラ。体術はあまり得意ではなく前衛向きではない。その代わり、医療忍術を使え、医療忍者になろうとする。
 アニメのオリキャラだが、かなり性格改変?
 NARUTO的なポジション:ヒナタ


・コノミ ナルト達と同じ歳 茶髪
 匠の国出身の忍具を作る一族。とあることで国を出て、ハロウたちと合流。波の里を起こした一族の一つ。
 忍び里にいるときから、忍具を作ると共に自分たちも忍者になった。
 明るい性格で、忍術よりも主に忍具を用いた戦闘が得意。一番がお手製起爆札。
 NARUTO的ポジション:いの


・ライカ ナルト達より一つ年上 茶髪、褐色
 元雲隠れの一族出身。口寄せで鷹を扱う。両肩には鷹が止まっても痛くないように、鉄鋼が仕込んである。ノリツッコミだと、ツッコミ役。
 寡黙な少年で、6人の中で一番身長が高い。
 NARUTO的ポジション:シノ


・白 ナルト達の三つ上 
 ほぼ原作通り。再不斬への思いも。全体的に能力はパワーアップ。
 薬物や毒物、人体の急所に詳しい。何故かこのSSだと女性になっている。


・桃地 再不斬
 ほぼ原作通り。
 しかし、原作よりも性格は軟化。やわらかくなっていて、里の人たちの人望も厚い。何だかんだナイたちの修行を手伝ってくれる。


・ふうま アラシ 青色の髪。
 ササメの従兄弟。中忍であり、医療忍者である。
 ハドウからも信頼されていて、将来有望の青年。



【オリジナル術】
・魔幻・縛鎖十縛 幻術 ランクC
 十本の太い鎖で相手を束縛させる幻術。

・雷遁・雷羽根弾 忍術 ランクC
 口寄せした鷹とともに協力して行う忍術。
 羽根に雷を纏って相手に投げつける。

・忍法・霧払いの術 忍術 ランクD
 辺りの霧を晴らす術。自然ものも有効で、霧隠れの術を解く場合はお互いの術の習熟度で変わってくる。

・水面流し 忍術 ランクA
 チャクラに水の性質を持たせて、自分の周りを覆う術。
 炎や爆発などから身を守るのに適している。


情報が更新されたりします。


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