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PCの起動時間をゼロにする新開発「アトムトランジスタ」はまるで人間の脳

DIGITAL DIME 3月4日(金)10時8分配信

 日常生活の中に大小様々なコンピューターが存在するユビキタス社会実現のためには、技術的に克服されなければならない壁は多い。

 例えば、デバイスの起動時間を極限まで短くすることや記憶データを安定的に保存することだ。このため、高速で立ち上がる半導体や電源を切っても記憶を保持する不揮発性のメモリーが必要とされてきた。「アトムトランジスタ」は、物質・材料研究機構(長谷川剛 主任研究者ら)と大阪大学、東京大学の研究グループが共同で開発した次世代トランジスター。

 トランジスターとは、半導体(伝導体にも絶縁体にもなる物質)を組み込んだスイッチのこと。従来のトランジスターは、半導体中の電子を移動させてオン/オフさせていたが、上の図のように「アトムトランジスタ」は、電子ではなく金属原子を絶縁体の金属内部で移動させてオン/オフさせている。この時、移動する原子の数がとても少ないので、動作時の消費電力が従来と比べ、100分の1という高い省エネ性能を実現できた。

 さらに、内部の電圧をコントロールすれば、トランジスターの状態を保持することができ、その結果、データの記憶までできる。記憶する時の消費電力も、磁気メモリーの100万分の1という超省エネ。さらに、オン/オフ比の抵抗値の差が大きく、より複雑な計算ができるのも特徴だ。

 全く新しい理論で動かす「アトムトランジスタ」だが、素材は今の電子回路でも使われているもので、製造工程もこれまでの生産ラインで可能という。

 計算も記憶もできる「アトムトランジスタ」を使えば、これまで別々だった演算回路とメモリーの一体化が可能。OSをメモリーに書き出す手順が早くなるため、コンピューターの起動時間を極端に短くすることができる。これまでいろいろな素子が試されてきているが、超省エネの「アトムトランジスタ」なら、小型化や軽量化も可能で極小サイズのPCもできるだろう。

 さらに、制御や演算と記憶の機能が合体することで、人間の脳に似たデジタルネットワークを作ることができるという。長谷川主任研究員らは、「アトムトランジスタ」などを使うことで、脳のシナプスのように振る舞う素子や神経回路を自ら作り替えたりする動作を確認しているが、この技術がさらに発展すれば「人工知能」の実現も夢ではないだろう。


●ダイムの読み
「アトムトランジスタ」で超省エネPCが実現すれば、街のあらゆる場所に設置できるユビキタス的なデバイスはもちろん、それぞれの関節などに高性能のコンピューターを分散させたロボットなど、恩恵を受ける分野は多い。さらに、自らを作り替える人工知能が実現すれば、賢く使い勝手のいいマシンができるだろう。

最終更新:3月4日(金)23時52分

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