「オレは…何をしていたんだっけ…?」
オレの名前は佐伯優。
大学の卒業も間近で、就職活動で内定が取れたと思った企業から取り消されて…凹んでいて…。
とりあえず学校に求人情報を求めに(パソコンが故障)行ってる途中で…、ゼロ○使○魔見たいな変なゲートに吸い込まれたん
だよな…?
誰かに召喚されたとか?
…変だ。妙に目線が低いし誰もいない。
周りを見渡しても荒野だ。
すると…。
「おいおい…、まだこんなところに人間のガキがいるぞ」
渋めの男性の声に振り向くと…、翼をはやした青い竜みたいな…、というよりは、ガーゴイルと称した方がいいだろう。
3匹いる。
それにしても、オレのことを【ガキ】と言ったか!!?
「マジ…?」
「まあいい。殺せ」
「ブフ!!」
突然ガーゴイルから吐き出された氷のつららに驚き、オレは腹を貫かれてしまった。
「ぐほっ!!」
オレは血反吐を吐いてうずくまってしまう。
「しぶといな…。まだかろうじて生きているか…」
ガーゴイルがオレにトドメを刺そうと近づいてくる。
…まさか、女神転生シリーズなのか?
【ブフ】とか言ってたし。
くそ…、こんなところで死ぬのか?
「やれ!!!」
…クソが…!!!
こんなところで死ねねぇ…!!
―どんな力だっていい…!!!
だが、無情にも氷のつららは、オレに向かってくる。
―オレが…生き延びるための力を…ッ!!!
その時、光が爆ぜた。
「なにっ!!?」
オレの目の前に現れたのは…。
紫色の小さい竜。
青い帽子とブーツをはいた雪だるま。
黄色くて丸い生物。
どこかインドを思わせるピンクい肌の少女…。
「古の契約に従い…、ヘイロン推参!!」
「デビルチルドレンだと!!?」
…デビチルかあああああぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!
しかし、そんなことで驚いていられない。
「ラクシュミ!!」
「はい!!」
ヘイロンにラクシュミと呼ばれた少女は、オレに駆け寄る。
ラクシュミは、オレの腹に手をかざし…
「ディアラマ」
と、ディア系の回復魔法を唱えた。
すると、オレの傷がみるみるふさがっていく。
「すまねぇ、た…すかった…」
「無理をしないでください。傷をふさいだだけで、出血までは…」
ラクシュミに礼を言いつつ、ゲイル達に向き直る。
「案ずるな。デビルチャージせずとも十分だ」
…!?
ヘイロンはそう言い放つ。
アニメ版の設定があんのか!?
しかし、デビルチャージなしでも戦えるのは、少しアニメと設定が違うな。
ふと、いつの間にかオレの目の前にパソコン、恐らくはヴィネコンがあるので、それを見る。
「…デビルチャージ後はアークヘイロンか…。
さすがに第3、第4形態はオレのレベルが不足していて使えないようだな」
だが、ガーゴイルなら恐らくヘイロンと、ジャックフロスト、メッチーで十分なのだろう。
「ダークハウリング!!!」
ヘイロンの放った闇の波動が、ガーゴイル達を貫く。
「ぐあっ!!」
3匹のうちの1匹があっけなく倒れる。
うち2匹はこらえたようだ。
「ブフ!!」
「ヒーーーホーーーッ!!!」
ガーゴイル達のぶふをジャックフロストがブフで相殺する。
「メッチー!!!」
メッチーの放つジオが、ガーゴイル達を黒こげにし、この戦いは終わった。
「やったのか…?」
「そのようですね」
戦闘が終わったことに安堵したオレは気を失った。
「く…」
「目が覚めたか?マスター」
ヘイロンの声で、頭が一気に覚醒する。
どっかの洞穴のような場所だ。
しかし、地面は全然硬くない…と、思ったらラクシュミがオレを膝枕していたのだ。
オレは顔を赤くしてラクシュミから離れるが、彼女はオレが目を覚ましたことに安堵の表情を浮かべるだけ。
「夢じゃねぇのか」
オレは改めて、自分の体を見る。
体が小学校高学年くらいにまで縮んでしまい、さらにデビチルのような世界に来てしまったのか。
「オレは何時間寝てた?」
「もう次の日の朝だ」
ヘイロンの言葉で外を見ると、もう夜が明けている。
「ん?なんか変なにおいが?」
オレのその言葉にヘイロンとラクシュミはオレから目をそらす。
が、やがて意を決したように口を開く。
「マスターが気を失っている間に…その…排泄物が…」
その言葉を聞いた瞬間、オレは固まった。
「仕方あるまい。たとえ回復魔法があっても、普通は数日は寝たままの怪我だったんだ。
あと、服の汚れは、ラクシュミの水魔法で何とかした」
その言葉でオレは涙が出てきてしまった。
アニメとか漫画とかは、そういうシーンは殆ど無いとはいえ、現実でこういう場面に出くわせば、結構切実な問題になってしまう。
ほぼ初日からこういう失態を犯すとは…。
オレが落ち着くまで30分はかかり、ようやく本題に入る。
「オレは異世界から来てしまったわけだ…」
「異世界という概念自体は、我々デビルからみて珍しくはない。
しかし、お前はたった一人でこちら側に来た…」
「マスター、この世界はヴァルハラと言います。
あなたはデビルチルドレン…デビルを操る力に目覚めたのです」
「ああ」
「やけにすんなり受け入れましたね?」
ラクシュミが不思議な顔でオレを見る。
「そういえば昨日…、いえ、今はいいでしょう」
「?」
ラクシュミとヘイロンが何かを考えるが、オレには何の事だかわからない。
「元の世界に帰れるかな?」
「それはわかりません」
「だが、時の女神なら何か知っているかもしれん」
ヘイロンの言葉にオレはウルド、ヴェルザンディ、スクルドかと思う。
「その女神とやらは何処にいるんだ?」
「ここから北西に…、あなたの足で1週間はかかりますね」
「そうか…」
オレは体を起こし、屈伸運動をする。
「とにかく、体は動くようになった。
行くか!!」
「行くのはいいがその前に」
と、ヘイロンがオレを止める。
「パートナーデビルである私に、名前を付けてほしい」
名前…か。
ゲイルだと、あの青い人とかぶるし…。
「レジェンド…、オレのいた世界の英語で、【伝説】や、【偉人】の意味を持つ言葉だ。
ヘイロン。お前の名はレジェンドだ」
それを聞いたヘイロンは、その言葉を吟味し、
「いい名だ。期待に応えられるようにしよう。
コンゴトモヨロシク」
「ああ、オレの名は佐伯優だ」
今、あり得ない物語が動き出す。
~あとがき~
主人公、初日から大失態