玄倉川の岸辺

悪行に報いがあるとは限りませんが、愚行の報いから逃れるのは難しいようです

「非実在青少年」とクロマグロ(そしてドラえもん)

2010年03月24日 | 日々思うことなど
いきなりだが、東京都の青少年育成条例だか「非実在青少年」規制論議と、地中海産クロマグロ取引禁止問題は似てると思う。

最初に私自身の立場を書いておこう。
どちらの問題に対しても直接の利害関係者ではない。作り手・送り手ではないし、消費者としてもほとんど関わっていない。エロ系のマンガ・アニメ・ゲームは苦手だし、マグロを口にするのは回転寿司かスーパーの安売りパックくらいだ。たぶんあれはメバチかキハダだと思う。
傍観者のつもりで好き勝手に言わせてもらうと、どちらも規制の対象に目されている側がやりすぎたんじゃないか、度を越している、遅かれ早かれ問題にされるのはやむをえない、むしろ当然だ、という感じ。
わかりやすいのはクロマグロのほうだ。世界の漁獲量の8割を日本が消費していると聞くと驚くし、乱獲のせいで絶滅が危惧されているとなると恥ずかしくて申し訳ない気持になる。ドーハでの会議では日本の主張が大差で「勝った」けれど、個人的には負けてもいいんじゃないかと思っていた。専門家の中にも「ワシントン条約の勝者は中国とリビアで、敗者は日本と持続的漁業」だという人もいて、私は大いに納得した。

「青少年育成条例」問題も結局のところは限りある資源の収奪がまずいのである。
この場合の資源とは、「不健全な」あれこれの存在をお目こぼししてくれる世間様とか「善良な市民」の寛容さだ。なにしろ渡る世間は鬼ばかりだし、いかに心の広い人でも寛容の井戸は無限ではない。
どれほど「不健全な」作品であってもそれは表現の自由だ、お目こぼしだの何だの恩に着せられるいわれは無い、と怒る人もいるだろう。まことに正論だ。だが、往々にしてご立派な正論が通らないのが人間社会であり、日本という国である。政治的な成果を得たければ、理屈よりも現実を見て運動しなければうまく行かないどころかかえって逆効果になりかねない。
ちなみに、この場合の「善良な市民」とは、ロリコン・ペドフィリア系二次元表現物を見て本気で怒ったり心配する人たち、具体的には小さな子供をもつ両親や祖父母、教育関係者といったあたりをイメージしている。私自身は二次元ロリペドは嫌いだけど怒りはしないし、子供はいないし、教師でもないから自分を(規制論議における)「善良な市民」とは思っていない。ちなみに、二次元エロもロリペドも興味ないが、一般的なエロ(ヌードやAV)は好物である。
ネット上で盛んな「表現規制反対運動」がどういう結果になるかわからないが、仮に勝ったとしても、ドーハで「大勝利」した日本のように、かえって資源保護に重い責任を負わされることになる。これまでどおり乱獲を続けることはできないし、無理に続ければかえって業界全体の破滅という結果を招くだろう。

ところで、規制反対論のなかに「(条文があいまいだから)ドラえもんが規制されることになりかねない」という意見が見られるけれど、そのたびになんとも微妙な気持になる。言ってる人はたぶん本気で心配していて、一般人へのインパクト抜群だと思っているのだろうが、なんだかなあ…。この微妙さが何かに似ていると思ったら、皇位継承問題で男系維持派(私もその一人なのだが)の一部が好む「Y染色体論」なのだった。
はっきり言ってしまうと、どちらも「同志」だけに通じる特殊な感覚であって、一般人へのアピールとしてはゼロ、それどころかマイナスの効果のほうが大きい。感心されたり同意を得るよりも失笑されることのほうがずっと多いはずだ。
「Y染色体論」はとりあえず置いといて、「ドラえもん規制対象論」について言えば、実際にそのような(ドラえもんを規制すべきだ)主張がそれなりの力を持って存在していることを示せなければ、「極論」「ためにする主張」とみなされてかえって反対派の信用を損なう。雲ひとつない晴天の日に「雷が怖い」と震えてみせるようなものだ。心配性だなと笑ってもらえればまだしも、「この人おかしいんじゃないか」と思われかねない。
雷(表現規制)の恐怖を訴えたければ、それなりに雲が出ている(不健全な要素が認められる作品への規制)場合でないとまともに聞いてもらえない。私が思うところの一般常識からすればドラえもんは間違いなく健全で雲ひとつない青空だ。雷の危険性を訴えて恐怖をあおりたければ、実際に雷が落ちそうな入道雲(規制の対象になりうる不健全さ)を示すべきだ。
二次元エロ規制論における「入道雲」が何に当たるのかよくわからないけれど、非オタクの一般人に理解してもらえる範囲だと耽美的な少女漫画の名作(竹宮惠子とか萩尾望都とか)あたりだろうか。「ドラえもんが」というより「中学生高校生が『風と木の詩』が読めなくなるかも」と言うほうがよほどリアリティがある。


参考
 Homura's R Comics Blog: 表現の自由を守る為に
 規制反対運動をしながら、どんどん敵を増やしてる人たち
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