ユーロのかじ取りを担う欧州中央銀行(ECB)が、4月にも政策金利の引き上げに踏み切る見通しになった。トリシェ総裁が3日の記者会見で、域内の物価上昇に対する「強い警戒」を表明し、利上げの意向を示した。実際に利上げとなれば、リーマン・ショック後初めてだ。
過去の局面でも、総裁は近い将来の利上げ実施を示唆する際に、今回と同じ「強い警戒」という表現を使った。4月7日の定例理事会で、域内17カ国の政策金利の引き上げが決まる展開を、市場は織り込んだ。
ユーロと聞けば、ギリシャを筆頭に、財政赤字を抱えた域内周縁国の信用不安を想像する人が多いだろう。財政はばらばらなのに単一の金利をあてる矛盾も指摘され、ユーロは弱い通貨の代名詞でもあった。
そのユーロ圏でなぜ日米欧の先陣を切る利上げなのか。背景にはユーロの深刻な二重構造が潜んでいる。
一つは経済成長の格差である。欧州連合(EU)の欧州委員会は最新の経済予測で、ユーロ圏の2011年の実質成長率を1.6%と見通している。域内最大の経済規模のドイツが2.4%、2位のフランスが1.7%と平均を上回る。一方でスペインやポルトガル、アイルランドといった国々は不振が続く。
力のある大国は、ユーロ安のおかげで輸出競争力をつけてますます伸びる。一方、競争力がなく不安を抱えた中小国は低迷を深める。域内で経済の勢いに「2つの速度」が生じ、その差は埋まりそうにない。
第二の二重構造は、財政赤字や不良債権といった根深い問題と、足元の物価上昇圧力が共存する点だ。
欧州中銀はアイルランドやスペインの銀行の資金繰りを支えたり、国債を買って急激な金利上昇を防いだりする臨時措置を続けている。利上げ示唆の後、市場では問題を抱えた国々の国債が売り込まれた。
一方の物価は、資源・食料高や好調国の賃上げによる上昇圧力が高まる。欧州中銀は11年の消費者物価上昇率を2.3%と予測する。目標とする「2%弱」の水準を上回る物価を抑えようというわけだが、利上げを急ぐ姿には危うさもはらむ。救急隊と予防医の二役を演じざるを得ない欧州中銀の苦悩は深いだろう。
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