余録

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余録:中国の新5カ年計画

 中国が5カ年計画をスタートさせたのは、建国4年後の1953年からだ。旧ソ連のシステムを取り入れたもので、政府が中期的な重点政策や経済運営の在り方を定めてきた。中断した時期もあったが、81~85年の第6次計画から制度として定着する▲計画経済の時代は、生産や投資に関する細かな目標が設定されていた。改革・開放政策の導入によって市場経済化が進み、マクロ的な誘導目標に変わってきたが、依然として重要な位置付けを与えられている▲今年から始まる新計画は第12次になるので、中国では略して「十二五」と呼ばれる。このところ、この言葉がメディアに頻繁に登場するのは、今日開幕する全国人民代表大会で審議、採択されるからだ▲温家宝首相はインターネット利用者との対話で、新計画では経済成長率の目標を前計画より低い年平均7%にする方針を示した。景気の過熱を抑え、インフレを退治する狙いだ。雇用や住宅、格差対策に取り組むことも約束した▲昨年来の物価高で、1月には食料品が10%以上も値上がりし、庶民の不満が高まる。労働者はより高い賃金を求め、安い人件費を売り物にしてきた「世界の工場」は曲がり角を迎えている▲中東の政変は、食品価格の高騰や権力者の富の独占への反発が引き金となった。中国政府も波及に神経をとがらせ、ネットで呼び掛けられた民主化集会は厳重な警備で封じ込めた。だが、強権的な手法で一時的に活動は阻止できても、本当に国民生活が改善され、格差が是正されない限り、こうした動きは今後も続くだろう。「十二五」の真価と政権の実行力が問われる5年間だ。

毎日新聞 2011年3月5日 0時11分

 

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