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社説:公務員制度改革 「協約権」着実な一歩を

 菅内閣が今国会に提出を目指す公務員制度改革関連法案の骨格が固まった。国家公務員に労働基本権のひとつである協約締結権を認めると同時に、人事院勧告制度を廃止する。人事院に代わり内閣府に「公務員庁」を新設、労使交渉や総人件費の基本方針策定にあたらせる。

 これまで公務員制度改革が迷走を続けたのは、人勧制度に手をつけないまま改革を進めようとして壁に突き当たったためだ。ねじれ国会の下、法制化のハードルは高い。協約権付与について幅広い合意形成に政府・与党は力を注ぐべきである。

 08年に当時野党だった民主党も賛成し成立した国家公務員制度改革基本法は、必要な法制上の措置を3年以内に講じるよう定めている。中央省庁の幹部人事を一元管理する「内閣人事局」設置がこれまで先行し検討されたが調整は難航、自公、民主党政権の下で国会に出された法案はそれぞれ廃案の憂き目を見た。

 国家公務員は労働協約の締結や争議権(スト権)が制限され、人勧制度はその代替措置と位置づけられている。今改革案で争議権の付与は今後の検討事項として見送られ、協約締結権を先行させた。基本権付与への国民理解を着実に進めるうえからも、切り離しはやむを得まい。

 改革案はまた、新設される公務員庁を労組との交渉窓口とした。交渉が不調に終わった場合は中央労働委員会が下す裁定が協約と同等の効果を持つ。新方式が労使関係に無用の混乱を来さぬよう、法制化にあたり細心の注意を求めたい。

 国際労働機関(ILO)はこれまで日本政府に労働基本権の制約見直しを勧告してきた。一方で労働協約権の付与をめぐっては人件費圧縮を阻害するとの指摘がある。地方公務員への拡大には、さらに慎重論も根強い。だが人勧制度が硬直化し、機動的な総人件費抑制を妨げてきたというのがむしろ実態ではないか。

 公務員の給与・人事体系を総合的に練り直すためには、人事院も含めた組織改編が欠かせない。基本権問題と並行して制度改革を進めることは理にかなっている。

 また、今改革案には公務員の天下りの監視機能を持つ第三者機関として「人事公正委員会」を新設する構想も盛り込まれている。構想を法制化する過程で中央省庁の意向をくんだ「骨抜き」が進まないようにする目配りが必要だ。

 ねじれ国会の下で仮に法案が提出されても、野党側との協議が難航することは必至だ。協約権付与に伴う懸念を払拭(ふっしょく)するためにも、首相は民主党の公約である国家公務員総人件費「2割削減」実現に向けた具体案を早急に示さねばならない。

毎日新聞 2011年3月5日 2時32分

 

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