社説
札幌市汚職 道内最大手も関与とは(3月4日)
札幌市発注の工事をめぐる汚職事件が道内最大手のゼネコンにまで波及した。
道警は偽計入札妨害容疑で、岩田地崎建設(札幌)の元第1営業部部長を逮捕すると共に、札幌市契約管理課係長らを再逮捕した。
市が行った道道のトンネル復旧工事の一般競争入札で、係長が最低制限価格に関する情報を漏らし、岩田地崎建設がこれをわずかに上回る価格で落札した疑いが持たれている。
道警は、係長が見返りとして営業部部長から数十万円相当の商品券を受け取った贈収賄容疑でも捜査している。
道内の建設業界のリーダー格でもある会社が、法に触れてまで入札関連の情報を得ていたとすれば、あぜんとするばかりだ。社会的責任を問われて当然である。
札幌市は、岩田地崎を2年間の入札参加停止処分にする方針だ。
岩田地崎は過去にも、官製談合事件で指名・営業停止の処分を受けている。法令順守が社会の強い要請になっているこの時代に、不正の代償が極めて高くつくことは、容易に想像できたはずだ。
公共事業の減少で建設業界が厳しい状況にあるのは間違いない。しかしそれが、法に触れても良いという理由にならないのは当たり前だ。
事件は、岩田地崎の経営に打撃を与えるだけにとどまらない。入札参加停止が、300社とされる下請け企業に及ぼす影響が心配される。孫請けを含めるとさらに深刻だ。そうした自覚はあったのだろうか。
不祥事が優良企業を傾けてしまった例は数多い。岩田地崎に求められるのは、そうした歴史に学んで法令順守を徹底し、会社を再生させる姿勢だ。
札幌市の職員管理のずさんさも、あらためて問われている。
再逮捕された係長は、白石区役所勤務時代から入札情報を業者に漏らしていた可能性も指摘されている。
そうした人物が昨年、市契約管理課に異動し、市役所内でも十数人という、市発注の全工事の入札情報を把握できる立場になっていた。
立件された贈収賄事件で受け取った賄賂は、パチンコや遊興費に使ったと見られている。周囲は異常さを感じなかったのか。市は「最後は職員のモラル頼み」などと言って済ませられないはずだ。
入札予定価格の事後公表制のあり方も、細部まで再検討する必要がある。事後公表制によって、予定価格という行政側の「秘密」の価値が上がったことが背景にあるからだ。
札幌市には職員の意識改革はもちろん、不正を未然に防ぐシステム構築にも急いで取り組む義務がある。
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