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2011年3月号
Yl_pin.gif (1016 バイト) 政 治

菅政権が続いている本当の理由
前原にも岡田にも致命的欠陥が【永田町25時】


「菅政権は風前の灯火」という声が高まっている。3月末にも予算関連法案の成立と引き換えに首を差し出さざるを得ない。いや一か八かの解散に打って出る。マスコミばかりでなく、国会内でもそうした見通しが語られている。
 理由の第1はねじれ国会を克服する手段がないこと。第2は20%を割るところまで落ち込んだ支持率。第3は小沢一派による引きずり降ろし工作だ。統一地方選を控え、民主党内では惨敗を避けるための代表交代を求める声が日増しに強くなっている。
 かつて自民党政権の時代には、こうした状況に陥った政権は、まずもたなかった。近くは森、福田康夫、麻生政権。しかし菅の場合は事情が異なる。ポスト菅の決定的な候補がいないのだ。
 長期になった中曽根政権や小泉政権でも、この人ならと誰もが思う後継候補がなかなか浮上しなかった。現在の民主党もそう。誰がなっても、民主党政権のままなら、ねじれの克服も米軍基地移設問題の解決もできない。それが超低空の菅が延命している本当の理由だ。
 外相の前原誠司や幹事長の岡田克也がいるではないかと指摘する向きもあろう。現に政権最大の実力者である仙谷由人は、菅の行き詰まりを見越し、3月にも前原を首相にする構想を描いた。だが思わぬ事態が発生する。前原の致命的ともいえる欠陥が指摘されたのだ。それは「北朝鮮のハニートラップにはまった過去がある」(公安筋)というものだった。
 前原は京都府議時代と国会議員になった後の2回訪朝している。府議時代は「日朝友好促進京都府議会議員連盟」に所属。いずれの訪朝も朝鮮総連やその関係企業が関わっていた。ハニートラップにかかっていても、証拠がなければ首相に不適格と簡単にはいえない。故橋本龍太郎のように、中国のハニートラップが首相就任後に明らかになった例もある。だが公安関係者は次のようにいう。「朝鮮総連、それに韓国の公安筋に証拠の写真やテープがあるという情報がある」。事実なら、前原は首相になれない。
 大阪府警公安筋によると、前原を敵とする小沢一郎が強制起訴3日前の1月28日夕方、京都市内の料亭で指定暴力団・会津小鉄会の最高幹部と2時間近く会談している。目的は「前原に関する極秘情報の入手ではないか」(同筋)という。かくして仙谷も、前原を諦めた模様だ。
 もう1人の岡田はどうか。仙谷が官房長官を辞めて党に戻った後、折り合いがすこぶる悪い。「原理原則」の岡田に政権をとらせたら、仙谷の影響力は揺らぐ。しかし民主党内を見回しても、仙谷が嫌う岡田を首相にするために菅を倒そうとする動きをする議員はいない。
(後略)


Yl_pin.gif (1016 バイト) 経 済
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メディア淘汰の幕が開いた
情報源】


 ついにメディア淘汰の幕が開いた。慢性的な経営危機に晒されてきた毎日新聞社が、4月をメドに子会社・スポーツニッポン新聞社との共同持ち株会社による経営統合に踏み切った。「手元資金が枯渇してリストラもままならなくなり、統合を名目にメーンバンクの三菱東京UFJ銀行などからリストラ資金を捻出するしか選択肢はなかった」(金融関係者)という。
 スポニチも、スポーツ紙市場が縮小するなか低落傾向に歯止めがかからない。実は年初に、朝比奈豊・毎日新聞社長が社内向けの年頭所感で「近々、グループ再編に関しての発表があるかもしれない」と発言。さらに森戸幸生・毎日新聞取締役東京本社代表がスポニチの社長に就任したことから、「経営統合は秒読み」と見られていた。
 今後は否応なしにリストラが加速する。例えば毎日の中部本社は「事実上、支局レベルに格下げし、大幅な人員削減に踏み切る」(毎日関係者)。いまや同本社の経済部記者はわずか2人。「発表もの」はもう共同通信に頼るしかない。毎日は2009年11月に共同通信に加盟しているが、今後は全国レベルで共同への依存度が高まる。「すでに毎日からは配信についての質量の要求が増している」(共同社会部幹部)という。
 資産売却も進む。名門「ウェスティンナゴヤキャッスル」などを経営する持分法適用会社・ナゴヤキャッスル(名古屋市)株の、トヨタ自動車系の東和不動産など地元大手企業への売却打診が囁かれ、以前から取り沙汰されてきた東京本社のパレスサイドビルのある東京・竹橋地区再開発計画が動き出す可能性もある。『週刊エコノミスト』や『サンデー毎日』の休廃刊も視野に入ってくる。ただし統合にはいくつもの高いハードルが立ちはだかる。毎日より水準が高いスポニチの給与をいかに下げるか。関連会社という天下り先も減り、人員削減は難航が必至。とても一筋縄ではいきそうにない。
 追い詰められているのは毎日だけではない。発行部数の激減に歯止めがかからず、他社に先駆けて東京地区の夕刊廃止に踏み切った産経新聞、10期連続の赤字を強いられ、虎の子の電通株を食い潰して延命している時事通信は、もはや自力での生き残りが難しい。時事は外信とスポーツ部門を分離後に読売新聞に救済されるとの噂が絶えず、産経は親会社のフジ・メディアHDによる支援の行方や、提携関係にある米大手通信社・ブルームバーグなど外資との連携に注目が集まる。希望退職や賞与ばかりか、給与カットにまで手をつけた朝日新聞、戦後初の赤字転落、社運を賭けた電子版も期待はずれの日本経済新聞も、瀬戸際に立っていることに変わりはない。
 大手新聞が売り上げを維持するには、紙媒体以外に収益源を求めるしかない。そのひとつがニュース配信事業。すでに読売は第2県紙への配信業務に参入、今後は通信社を巻き込んだ緩やかな連合体の模索も焦点になる。
 新聞業界は、つるべ落としの販売部数の低下、ネット媒体の台頭に加え、印刷設備や販売店維持費などの固定費負担が重く、広告収入に見合った制作費の削減が可能なテレビ局より厳しい状況にある。しかも単なる効率化は取材・編集の現場にいびつなシワ寄せとなって表れる。「肩たたきされても、自発的に退社する記者は少なくなっている」(大手紙幹部)。それもそのはず、もはや同業他社への転職は難しく、かといってつぶしが利かない職種の代表格だけに、他業界への転身は困難を極める。社員のモチベーションの低下が媒体価値の低下を招く負の連鎖が始まろうとしている。(後略)


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りそなHD 正念場の「細谷帝国」
三井住友の傘下に入るのか、独立路線の堅持か【企業研究


(前略)
 いまや、細谷のりそなグループにおける権力は絶大である。その独裁体制は09年の役員人事で完成された。
「細谷会長の院政が完成したことを内外に高らかに宣言する人事でした」
 09年4月に発表されたグループの役員人事を、あるりそな関係者はいまいましげにそう振り返る。当の細谷も「銀行界のこれまでの常識からすると違和感のある体制」と自己評価している。それほど異例ずくめの人事だった。
 というのも、「りそな銀行」の社長に就いた岩田直樹、「埼玉りそな銀行」の上條正仁、「近畿大阪銀行」の桔梗芳人(再任)、グループの中核3行のトップの椅子を、旧協和銀行出身者が独占してしまったのだ。「合併行の常識では考えられない破壊的な人事」(他のメガバンク幹部)と、金融関係者が一様に目をむいたほどである。
 りそなグループは、旧大和銀行と旧あさひ銀行が合併して誕生したメガバンクである。その旧あさひ銀行の前身が、協和銀行と埼玉銀行であることから、りそなグループでは今も、旧大和、旧協和、旧埼玉の3つの大派閥が併存している。
 そのりそなに、実質国有化を機に乗り込んできたのが、JR東日本の副社長を務め、経済同友会の副幹事も歴任した大物財界人の細谷だった。
「鉄道屋に銀行の経営などできるはずがない」と陰口を叩かれながらも、細谷は「銀行の常識は世間の非常識だ」をキャッチフレーズに経営合理化を進めた。窓口営業時間は午後3時までというのが銀行界の常識だが、細谷はそれを5時まで延長。また窓口での待ち時間の短縮などにも取り組むなどの改善を重ね、グループの求心力を得ることに成功した。
 そのうえで断行したのが「旧3行のバランスを重視した旧来の人事をガラガラポンにすることだった」(りそな関係者)。
 細谷は、旧協和出身者を中核3行のトップに据えて旧体制のバランスを壊しただけでなく、年次のバランスも大胆に崩した。例えばりそな銀行では、1979年入行の社長の下に76年入行の副社長を置き、埼玉りそな銀行では、会長、社長、副社長をすべて77年入行組にするといった具合である。
 これについて細谷は、「CEOサクセッションプランという次期経営陣を育成、選抜する仕組みを導入した結果で、人物本位の人選をしたまで」と説明している。また、「人事を決める指名委員会(社外取締役で構成)には、年次や出身銀行を入力していないデータベースを見せて(予見なく)選抜してもらった」と、公明正大な人事だったことを強調している。
 しかし、「私(細谷)が(人事の)原案を作成した」ことに変わりはない。人事対象者の年次や出身銀行の名前は、データベースには入っていなくても、指名委員の社外取締役の頭の中には入っていたはず。「細谷会長の意向を汲んで、指名委員会がオーソライズしたにすぎない」(りそな元役員)というのが実態だろう。「細谷チルドレン」の若手幹部が抜擢されたという事実は動かしようがない。
 社外取締役を務める元花王副社長の渡辺正太郎や、細谷氏をりそなに招聘したウシオ電機会長の牛尾治朗の影響を指摘する声もある。
「花王もウシオも、旧協和銀行と親密な関係にある。3行のトップに旧協和出身者を就けるという細谷氏の原案に異論などなかったはずです」(りそなグループ会社の元役員)
 この09年の人事によって、細谷がりそな入りした03年当時に代表権をもっていた第1世代の役員たちは、すべて姿を消した。細谷帝国の完成である。
「院政の弊害が出ているのではないか。みずほの3会長と同じように退いてもらう」
 昨年夏、ある金融庁幹部は、細谷の去就について、こうまくしたてた。細谷の在任期間は、この時点ですでに8年の長きに及んでいた。(後略)


Yl_pin.gif (1016 バイト)社会・文化
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「岡本ホテル事件」警察のジレンマ
違法と合法の狭間


 複数の女、クルーザー、高級外車、海外での豪遊、支払い青天井のブラックカード――贅の限りを尽くしていた元暴力団員の詐欺師・大東正博容疑者は、2月7日、組織犯罪処罰法違反容疑で逮捕された。今後、起訴され公判が始まるが、おそらく長期の実刑判決を受け、臭い飯を食うことになる。
 犯罪の舞台となった岡本ホテルグループは、熱海の温泉旅館・岡本ホテルを拠点に、業績不振の温泉旅館を次々に買収、その資金は、高い利回りを保証、温泉も利用できる形にした預託金商法で掻き集めた。
 販売開始は2005年4月からで、5年後には保証した元本を返さなければならない。だが、大東容疑者は、ハナから返すつもりはない。事件化は覚悟の上で5年間の短期勝負、約8000人から200億円以上を集め、40億円を散財した。
 資産を隠し、一部は海外に逃避させている可能性もある。しかし、こうした「バブル犯」の常で、意外に隠し持てない。現在、59歳の大東容疑者は、壮年期の最後にひと花咲かせたわけで、本人の意識はともかく、傍目には「太く短く」の詐欺師らしい収支決算をつけたように思える。
 この事件を捜査当局は、ただの詐欺事件、ただの出資法違反事件で終わらせるつもりはなかった。既に、カタギになっているとはいえ大東容疑者は元山口組系暴力団の組員。その出自と人脈から多くの企業舎弟や組幹部が群がり食い物にしていった。
 警視庁と静岡、兵庫、福井県警の合同捜査本部はそこに目を付けた。だから主力の警視庁は組織犯罪対策四課が出張ったし、昨年5月の家宅捜索時の容疑は出資法違反でも、逮捕容疑はそれよりワンランクアップした組織犯罪処罰法違反となった。
 狙いは暴力団に流れたカネの解明である。既に、直接、山口組の3次団体組長の関係先に、数億円、振り込まれていることが確認されている。
 どんな関係か。
「大東は、いくつかの山口組系組織に属していましたが、最後にいた組の元若頭とつき合いがあった。元若頭はその後、自分で組を起こしています。大東とは長く交遊を続け、送金されたカネは不動産売買に使われたとか。岡本ホテルの家宅捜索後は、大物ヤメ検(弁護士)を紹介しており、一蓮托生といっていいでしょう」(警視庁関係者)
 こうした資金ルートは「暴力団が食い物にした預託金商法」という事件の性格を反映するものだが、捜査当局は「その先」を見据えている。
 事件を追う警視庁担当記者が、こう感想を漏らす。
「最近、警察は弘道会になんでも結び付けようとする傾向があります。それは安藤隆春・警察庁長官が、ことあるごとに『弘道会をなんとかしろ!』と、檄を飛ばしているから。岡本ホテル事件にも弘道会の影がチラつくので、合同捜査本部はそちらを最終ターゲットにしているんです」
 安藤長官の有名なセリフに、「弘道会の弱体化なくして山口組の弱体化はなく、山口組の弱体化なくして暴力団の弱体化はない」というのがある。
 弘道会とは、名古屋を拠点にした山口組の2次団体で会長は山口組若頭の高山清司被告(恐喝罪で昨年末に起訴)、山口組6代目の篠田建市(通称・司忍)組長(服役中)の出身母体でもある。
 構成員と準構成員を入れた勢力は約4000人。山口組では約6000人の山健組に次ぐ。ただ、「当代」の6代目と、ナンバー2の若頭を同時に抱えるだけに、力は圧倒的となった。それを象徴するように、海上空港建設の埋立用土砂や砂利は暴力団の利権だが、中部国際空港も羽田D滑走路拡張も、仕切りは弘道会で、弘道会系業者がゼネコンとの間に入ったといわれている。
 その組織力を高めたのは高山若頭の力で、五代目時代の古参組長をさまざまな圧力を加えて除籍処分などで排除、「直参」と呼ばれる直系組長には、月曜日から金曜日までのウィークデーに神戸の本部に詰めさせ、ペットボトルを始めとした一部の飲食物や日用雑貨は「山口組指定」の購入を命じている。
 このトップダウンの強権支配は弘道会特有のものだが、さらなる特徴は警察やマスコミとの関係遮断にある。情報を漏らさず、飲食をともにせず、事務所に入れさせない。馴れ合わない姿勢は徹底していて、盆暮や賀状の受け取りも拒否する。
 高山若頭と親交があるという企業経営者が半ば呆れ、半ば感心する。
「ホントに徹底しています。数年前から、盆暮の挨拶は『遠慮させてもらいます』と、拒否。昨年は、事前に『ご迷惑になりますから年賀状も出さないでいただきたい』と、秘書役から連絡がありました。弘道会と関係があるというだけで『反社会的勢力』といわれる。それに気を使っているんでしょう」
 高山被告は、自分の新幹線での移動は、車両1台を半ば借り切りにする警戒ぶりで、外出には首相につくSP以上の屈強な警備隊が周りを固める。暴力団のなかでも「マフィア化」が、最も進んだ組織といっていい。(後略)


Yl_pin.gif (1016 バイト)連 載
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流言流行への一撃】西部 邁
TPP反対・再論」

 政界、財界、官界、学界そして報道界のすべてが、TPP(環太平洋連携)の関税撤廃同盟に日本も参加せよと主張している。だから、この春あたりに窮余の一策として、すでに死に体にある菅内閣が、「TPP加盟を選挙民に問う」との名目で、人気浮揚を図るのではないかと噂されている。つまり、世間にさしたる反対論もないというのに、「TPPの菅」を売り出して解散に打って出る段取りであるらしい。
 勝手にヤリヤガレ、といっておくしかない。何の検討も議論もないままに国家の構造改革(と称する構造破壊)が強行される、それが平成の習わしとなっている。そうした悪習に染まった我が身について自省する廉恥心も公平心もなくした国民は、歴史の鉄則に従って滅びの道に入ればよい。
 逆にいうと、TPP反対の極少数者たちは、負けを覚悟の上で、この自滅教徒たちにたいする警鐘を鳴らさなければならない。その鐘の音が、遠い未来にわずかながら残響することがあるかもしれないと夢想する。そうしなければ、この節制心の一片もない平成の世の中で、言葉を吐く勇強心が一滴も沸いてこない。
 人間は、「未だ来たらず」未来へ「向けて」自分を「投げ出す」という意味で、プロジェクト(企画)を生きている。それが自由ということの内実だ。しかし、その未来には、確率的に予測可能なリスク(危険)だけでなく、そうした予測の不可能なデインジャー(危機)が待ち構えている。したがって人も人々も、おのれの「前面」を「覆う」のでなければ、つまり自己へのプロテクション(保護)がなければ、自由の企画はかならず挫折する。「自由と保護」の二元空間でしか生きられぬと知る者は、けっして自由「主義」や保護「主義」といったイデオロギーを振り回すようなことはしない。
 資本が(情報や技術者を引き連れて)国際間を自由に移動できるという状況にあっては、自由貿易は「近隣窮乏化」あるいは近隣諸国の「産業空洞化」を惹き起こす可能性が小さくない。誰がそうするかというと、もちろん移動の不能もしくは困難なものとしての労働や土地や資源を豊富に持っている国家が、である。そうなのだということは、前世紀末から理論において論証され、事実において実証されてもいるのである。
 TPPは、加盟(予定)10カ国のGDP総計のなかで占める比重からみて、日米2国間の関税(をはじめとする規制)撤廃協定である。というのも、その2国で90%余のウェイトを示しているからだ。したがって、アメリカの安価な(農産物をはじめとして医薬品や司法サーヴィスや金融資本も含む)商品が大量に流入してくると予想される。そうなれば、日本経済のデフレーションがさらに悪化する、それは火をみるより明らかである。
 日本の工業製品が、(TPPのおかげで)アメリカに盛大に輸出されるようになると予測する向きにたいしては、莫迦も休みやすみ言え、といってやるしかない。
 世界の金融を動かしているアメリカ経済がドル安政策をとるのは必定で、その為替政策によって日本の輸出関税撤廃の効果は簡単に吹き飛ばされる。現にオバマ政権は「輸出倍増」を謳っているのだから、そうなると見込むのが常識ではないか。――このあたりのことは我が友人中野剛志君が声を大にして訴えてくれているところなので、私がこれ以上に出る幕ではない――。
 つまるところ、「自由貿易か、何となく自由で良さそうな政策だなあ」という子供じみた言葉づかいで、各界の年老いた指導者連が、「3つのM」に促されて、戯言を吐いているだけのことだ。
「3つのM」とは、ニーチェのいった「束の間」(モメント)の「気分」(モーデ)の「意見」(マイヌング)ということである。それに加えてマネタリズム(貨幣主義)、マーケティズム(市場主義)、マテリアリズム(物質主義)、マモニズム(拝金主義教)などを数え上げていくと、まさしく「Mの魔」に魅入られたのが平成日本だといわなければならない。TPPという不合理が経済合理化の総仕上げとして喧伝されているのは、何あろう、こうした「Mの魔」の吐く火焔によって我が列島人のオツムが焼き焦がされたことの結果にすぎないのである。
「競争第一」を唱えた小泉改革が国を挙げて反省されて、「生活重視」の民主党に政権が移った。その政権交代が日本初の「民主革命」ともてはやされもした。その革命とやらが、たった一年で、「国際競争優先」の反革命へと(無自覚のままに)逆戻りするのである。この列島人におけるオツムの混濁は、いかにも酷い国民精神の劣等化というほかない。そのことを指摘する声がいくら耳を澄ましても聞こえてこない。神でも仏でもない生身の人間には、やはり、勝手にヤリヤガレとほざく以外に手はないのである。(後略)


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