車・自動車SNSみんカラ

2011年02月19日
さて、前回のリーフの試乗記の続きです。

その1はこちらから。







さて、リーフの走りはいったいどうなのか…エンジンをかけて、ではなく、左側のボタンを押してシステムを起動させ、走り出します。

まず気付くのが、クルマ自体の静粛性の高さ。もちろん無音という前提で、エンジン音がしないがために、ガソリン車では全く意識しない他の音が気になる…というEV独特の不満点、これが少なく感じられました。さすがこのあたりはアイミーヴと比べると「軽自動車と普通車の違い」を実感。アイミーヴも静かですが、リーフはそれにも増してさらに静寂、ロードノイズや風切り音なども目立ちにくい印象。

ちなみに、昨今話題になった「静かすぎる」問題で、プリウスはまるで亡霊のようなセンスのないアラームを歩行者対策で用意していましたが、このリーフはインバーターの音を拾いスピーカーで拡張されるので、全く違和感はなし。また歩行者の立場だとはっきり聞こえますが、運転している分ではほとんどこの「あえて出している」音は気付きません。ちなみに前進時だけでなく、バックする際にもトラックの如くアラーム音が車外に発せられます。これは事故防止の1つとして重要な装備と言えるでしょう。

動力性能に関しては、普通に走る限りはもう必要十分以上。ゼロ発進からの加速は間髪入れず俊敏に、高速本線への合流もストレスいらず、最高速はメーター上で150ちょいまで確認できました(爆)。ただアイミーヴから比べれば、グッと後ろにひっぱられるような加速Gの強烈さはなく、あえてフツー感を強調したのかな?と感じさせるセッティング。ECOモードだとちょっとかったるさがあるなぁ…と思うのも、むしろDレンジいらないだろ…と思ったアイミーヴとは違います。そもそも、ECOモードで走っていても、信号待ちで停車時にNやPにして、再び発進…となると勝手にDレンジに戻ってしまうという不可解な設定(苦笑)。というわけで色々試した後は、Dレンジ固定で走っていました。

また、アイミーヴはどのポジションでも少なからず、リーフの場合でもECOモードでは、アクセルを閉じた時に回生分の減速を感じるのですが、Dだとこれがほとんど回生減速を感じず、ほぼN状態でさーっと慣性で転がっていくような、「滑走」状態を味わう事ができました。いわゆる「充電」はできませんが、一般的な使い方で航続距離を延ばすには、このパターンもアリなのでは?と思ったり。プリウスでも低燃費を叩き出す為にはこういった領域をいかに作り出すか、というのが重要なポイントの1つになってきますしね。



さて、EVという観点に絞り過ぎず、フラットにクルマとしての評価はどうか。まず動き出しから感じるのはステアフィールの透き通った印象。あえてこう表現するのは、いわゆる欧州車のようなインフォメーション性あふれる手応えのあるステアフィール…ではないということ。そういう観点の評価だとはっきり言って物足りないのかもしれませんが、個人的には嫌なフリクションやキックバックもなく、好みで言えばもう少し重めのセッティングでもよかったような気がしますが、かなり軽めでスムーズな操舵感を与えてくれるこの緩い速度域での滑らかさを重視したセットアップは、これはこれであり。「がっしり」というよりも「すっきり」といった感じでしょうか。

そしてそれ以上に滑らかさを感じさせてくれるのが、乗り心地。もう頭から結論を言ってしまいますが、今回リーフに乗って最も気に入ったのは、この項目。「1520kg」と見た目よりかなり重めな車重も影響しているのでしょうが、前ストラット後トーションビーム、というありきたりな特にこだわりもないこのサスペンション形式で、これだけと滑るように走る滑らかさとしっとりとした高級感を生み出せるとは、ちょっと驚きのレベル。この感じは、現行フーガ…しかも標準仕様との比較なら完全にリーフの勝ち、オプションの「コンフォートサスペンション」仕様で良い勝負かな…と、ちょっと褒めすぎかもしれませんが(笑)、何せこの街乗り領域での乗り心地の良さには驚きました。



205/55R16というそこそこ結構立派なサイズの、しかも銘柄はBSエコピアというエコタイアど真ん中のタイアで空気圧指定も高め、という「乗り心地視点」での足元のハンディを抱えながら…と思うと、その印象はさらに強くなります。

おそらく、サスの設定自体がかなりソフトなセッティングになっているのも影響しているのでしょう。バネレートもダンパーも、相当に柔らか目な設定のはず。けどもボディ剛性は高く、普通に走っている限りではダンピング性やハーシュネスもキチンと管理されていて好印象。これも、ハイペースでの高速巡航…などの項目が重要視されない、EVならではの利点でしょうか。

けどもそれだけ乗り心地を優先したソフトな足をもちながら、操縦性…これが悪くない、というよりもむしろ良いんですよねぇ。床下に敷き詰められたバッテリーによる重心の低さ、また車体中央に重量物が集まっている事による慣性モーメントの少なさ…これらのEVだからこそできるウエイトバランスのおかげで、柔らかい足でもロールは全然感じられず、スタビリティの高さと旋回性能のバランスもなかなか。前途したような「緩さ重視のセットアップ」のため、決して機敏でスポーティ…というわけではありませんが、結構なペースで追い込んでみても、破綻を見せることなく、さらりとこなしてしまいます。



そして地味ながら「凄いなぁ」と思ったのが、普通に走っている限り、これがすごくFFっぽい。「バーカ、何当たり前な事言ってんだ!?」と思われるかもしれません。もちろんフロント駆動ではあるのですが、これだけ重量物の配置やバランスが異なっていながら、ノーズに重さを感じてフロントを軸にして旋回していくFFみたいな感覚…。

これって、当たり前のようで、実はこういった感覚は、あえて狙わないとなかなか出せないものなのでは。実際ボンネットを開けると、まるでエンジンのようにインバーターがデデンと構えていますが…。例えば普通の人がティーダから乗り替えても、「表面上」はなんら違和感なくスッと走れる、これが開発陣の方々の狙いなのかも…?機会があれば確認してみたいです。このあたり、あくまで普通さにこだわるリーフ。セッティング次第では、もっと面白い走りのテイストを生むような方向を目指す事だってできないわけではなかったはず。このあたりに、アイミーヴとの開発思想の違いが読み取れます。もっともあちらは、ベースのアイ自体が異質な存在ですが…。

そんなリーフの唯一「普通」とは違い、またクルマ好きとしてもどーしても納得し難かったのは、ブレーキのフィーリング。これは回生するがための弊害だったのでしょうが、このフィーリングには参りました。

具体的には、まずとにかく踏力に対してペダルの動きが固い。全体のストロークが短い。コントロール幅が少ない事で調整が難しい、そして何より石を踏んでいるようなチープかつ頼りないそのフィーリング。そのため、ややブレーキアシストが過剰気味に介入してくるのも気になります。車重に対する、絶対的な制動力のキャパシティ自体に不満は全くありません。なにせオカマ掘られるくらいに効きは十分(苦笑)。

しばらく乗っていると、コントロール自体の癖には次第に慣れていくのですが、「ブレーキを踏んでいる」のではなく「ブレーキペダルという物体を踏みつけている」というこの安っぽさは、かなりのネガティブポイント。「違和感」はなくなっても「嫌感」を払拭する事はできませんでした。自然なフィーリングを狙うがためにあえてブレーキ回生を搭載しなかったアイミーヴは、電気自動車としては致命的な弱点なのかもしれませんが、「自動車」であるべく視点から言えば、妥当な判断だったのかもしれません。




さてここからは一気により現実的なEV的な目線へ(笑)。巡航距離のお話です。

今回は日産レンタカーさんのキャンペーンに当選し、クルマを12時間無料でお借りさせて頂く機会に恵まれたのですが、幸いフル充電状態で貸し出しして頂けました。これ、当たり前の事と思いがちですが…違うんです。ちゃんと貸し出し条件の1つとして「80%充電以上」が項目として挙がっているのです。つまりは、フル充電状態になっていなくても、文句は言えないって事なんですね。ご存知の通り、フル充電→空っぽ、という事を繰り返すより、80→30→80→30…と、過度な充電、放出を繰り返さずに容量に余裕をもたせながら使っていくほうが、電池の寿命が伸びる…というのは、携帯電話なんかでも同じ。リーフも、日産としてはフル充電は必要な時だけ、日常的な使い方では80%前後の充電で終わらせる事を推薦しています。

しかしながら、この約20%の違い、限られたEVの巡航距離での中での話となると、結構大きくなってくるんですよね。一応リーフはカタログスペック上ではフル充電200km走行可能、と言っていますが、まぁこれは当然無理なお話。実用上で考えると、一番条件がいい状態で150kmほど。例えばかったるいエコモードでなくDモードならそれより減り、また気温が低ければさらに減り、そして加えてエアコンを使おうものならさらに減り……今回条件的に一番EVとしては最悪な時期だったのですが、上記の条件に全て当てはめるのを日常的な使い方とし、またそれが充電80%状態だとしたら…精神的にゆとりを持って走る事のできる距離は、まぁ約100kmと考えておいたほうが良さそうです。カタログスペック詐欺はガソリン車の燃費でも同じ事が言えますが、まぁ比較的どこでも、気軽に、素早く給油できるガソリン車と、まだまだインフラ整備が充実しているとはとても言い難いEVとで、このカタログ数値の信憑性を同列に語るのはまだまだ時期早々であり、また世間的な流布という意味でも、安易に行うわけにはいきません。

(そんな中、日産レンタカーの公式Twitterでは、「東京の皆さん。リーフに乗って箱根の温泉に行きませんか!」なんて、さも充電なしで東京箱根間をラクラク往復できると誤解しかねない、知識ゼロな素人丸出しのバカな発言がされており、それにまんまと勘違いするユーザーさんがいないかどうかヒヤヒヤ…変に風呂敷を広げて、後でイメージ的なしっぺ返しを食らっては、それこそEV普及の足を引っ張りかねませんしね。)



しかし、そういった不安点をしっかりとカバーしようとする対策…これこそが日産の本気の表れ。日産ディーラーほぼ全てに200Vの充電器、一部には急速充電器を配備。また一番これは良い!と思ったのは、日産の純正カーナビ。これは近くの充電施設の検索ができたり、あらかじめ充電中に暖房の設定ができたり、まぁとにかくリーフにはこのナビは必須!というくらいに重宝するもの。事実、この機能を搭載した日産のアフター品のナビを、アイミーヴが装着する例が増えているそう。レンタカーでアイミーヴに乗ったら、ナビの起動画面に日産のCIマークが…なんて事も、最近多いんだとか…


さて、そんな事を書きつつ、リーフの充電作業のお話へ。ちなみにこの時は50kmほど走って、12セグメント中5セグメントを消費。真冬ながら暖房OFFでこの数値。とは言っても、結構踏んじゃってるところもあるのでその分相殺か。ちなみにガソリン車と違い、EVは基本ギアがなくファイナルが同一なので、速度が上がれば上がるほど、それに同調してモーター回転数もアップ。つまりは高速域になればなるほど「電費」効率的には不利、ということになります。

最初は寒かった暖房OFFも、天気が良くて陽が差していれば、それほど厳しくはありません。ただ極寒地であったり、そうでないところも夜になると、さすがに冷えが…。寒冷地仕様のオプションで、ステアリングヒーターが用意されていますが、これ、ドライバーには非常に便利そう。シートヒーターなどで上手く電力消費を抑えて冬場は乗り切りたいところです。また、さすがに窓の曇りに関してはガマンできるようなものでもなく、ここはエアコンの力を一時的に借りる事となりました。乗員人数が多ければ、窓の曇りというのも1つ問題でしょう。



さて充電…と思いきや、なんと画像のような状態で、リーフとアイミーヴのまさかの充電待ち(笑)。なんか未来の風景だなぁ…とその時は感慨に浸っていましたが、これ、今後は頻繁に目撃するような光景になってくるかもしれません。ガソリン車と違い、最低でも1台10分以上は待つ…つまりは数台入れば、すぐ1時間オーバー。これはいずれ大きな問題になるに違いないでしょう。「あくまで急速充電は非常用」とのことですが、実際普及し始めた時、どこまでその「言い分」が通用するのか。基本は家庭での200V充電、という徹底が難しいのであれば、急速充電器などのインフラ整備は今後急務と言えそうです。



さて、待って待って、いよいよ充電。フロントの蓋をパカっと開き、ここのノズルを挿して充電。その時の姿は、なにか水を浴びるならに電気を吸う小象のよう。笑 充電中は、ダッシュボード上のブルーのインジケーターが点滅して、充電状態を知らせてくれます。


しかしここでまた問題が。画像のように、急速充電器は、駐車スペースに対して並行して設置されているケースが珍しくありません。アイミーヴのように通常の給油タンクの位置にプラグがあればいいのですが、リーフのようにフロントから充電するとなると、意外にそのコードの長さの関係から、写真にある「DQN駐車」のような状態を強いられてしまうのです。今回はガラっガラの駐車場だったのでまぁよしとしても、これ結構大きな問題になるかもしれません。ちなみに、家庭用200Vの充電もここから。この場所ってよく目立つのですが、案外実用的に考えると不便だったりします。まぁアイミーヴはMRレイアウトだからこそ、あの位置でOKだったのですが…今後のFFをベースとしたEVが、どう対策していくのか。初歩的な問題ですが、ちょっとこれは今後の課題かもしれません。



そしてもう1つ、これも今回初めて気付いた部分。急速充電器の謳い文句は「30分で約80%状態まで充電可能」というもの。今回は半分ちょっとまだ残っているので、まぁ15分もすりゃ充電できるかな…っと思ってスタート。ところが、結果12セグ中10セグまで充電するのに、なんと約25分も費やす結果に。おそらくほぼ空の状態で充電したのなら、さらに長く…4~50分くらいかかったかもしれません。

な、なぜ!?どうやらこれ、その機器によって、またEV本体だけでなく充電器も、気温による影響を受けるのかもしれない…そんな仮説が自分の中で立つことに。急速充電器なら30分でほぼフル充電、この前提にまず疑いをもったほうがいい…今回いくつか充電施設を回った上での答え。これは、昨年夏にアイミーヴに乗った際には感じなかった事でした。

さて、色々長々ダラダラ書いてしまいました。総論では、見た目はやはり理解不能。パッケージングにはもう一工夫欲しい。クルマの静的質感は~150万円クラス。インパネとメーターは高級感アリ。走りはEVの特性を生かしつつ、できるだけフツーにフツーに。けどその落とし所が、普通の人が違和感なく乗れ、こだわりある人にも単なる「ティーダ」のEVに感じさせない、絶妙な仕上がり。特に乗り心地は抜群。ただブレーキには難あり。航続距離は基本100kmと考えるべし。寒さはガマン、曇りは大敵。急速充電は基本アテにするな。以上、短くまとめるとこんな感じでしょうか。



いろいろ期待と不安が交じりつつ、けど実際は思っていたよりもちゃんとまとまってた…その印象が強いような気がします。もちろん、まだまだクルマとしての基本的な部分で煮詰めるところはたくさんあります。EVだから、といって、贔屓目で甘い採点をするわけにはいきません。しかし現時点でキチンとEVとして商品化できているアイミーヴと、そしてこのリーフ。世界中見渡せば、「リアル」な目線で、今間違いなく一番進んでいると言っていいでしょう。そしてさらに回生システムやナビ協調制御など、そして価格面でも、リーフはアイミーヴに比べて一歩進んだ存在であると言えます。

しかし。まず。根本的に。なぜ、このサイズなのか?
そこに、最終的には疑問が集中してしまいます。その航続距離からして、EVはやはりシティコミューター的役割が現時点ではベスト。このリーフのサイズでは、やはり色々と「上」を求めてしまう…つまりは、チョイ乗り用と割り切るには、大き過ぎるし、高級すぎるし、サイズ感がなんとも微妙なのです。色々考えるならやはりプラグインハイブリッド、またはボルトのようなエクステンダー式EVか。まぁ、アメリカならばこのサイズは必要最低限なのかもしれませんが、何もかもアメリカ基準=世界基準というのは、もう時代錯誤な気がしてなりません。

ここで、以前アップしたアイミーヴの試乗記の締めの文章を再編集したものを掲載して、この今回のリーフの試乗記の締めにしたいと思います。いざリーフに乗って、その実力を味わい理解した上で、以前に下したこの結論は変わる事はありませんでした。これが今自分の思う、本音です。

~~~~~

航続距離が短い事は欠点と言えば欠点ですが、それを今現在のEVの不満点として問う事は、例えばロードスターに積載性能を求めるようなものであって、少しお株違い。もともとそういう事を前提とした上でこのクルマと上手く接する付き合い方をしていくのがEVであり、その点で言えば意識改革を行うのは、我々ユーザーのほうかもしれません。

高価な軽自動車になってしまうという点で言えば、日産のリーフのほうがポテンシャルは高そうではありますが、個人的には先述したように、EVは軽自動車枠のサイズであるからこそ真価が問われると考えます。きっとリーフくらいにボディサイズも居住空間もゆとりがあれば、その分航続距離の短さなどのデメリットがより切実に感じられてしまうと思うのです。その点だけでも個人的には、アイミーヴの圧勝という気持ちでいます。


さて最後に、これからのEV評論について思う事を少し。アイミーヴに乗って感じた事は、まず自動車としての実力の高さがあった上で、初めてEVという価値観の素晴らしさが生まれるということ。よく「エンジンを必要としないEVは、バッテリーさえあれば、様々なベンチャーが自動車業界に参入できるチャンスである」というような報道もなされていますが、今の時代に必要とされる基準をクリアし、さらには自動車としてドライバーに魅力を兼ね揃え、商品的価値としての何かを盛り込む事は、ノウハウのないそんじょそこらの新興企業が成し得る事は並大抵のものではない…ということを、声を大にして言っておきたいと思います。テスラのような形態が増えるのであれば、これからのEV事業はもっともっと面白くなっていくでしょう。

そしてもう1つ。迫りくる海外勢の脅威も忘れてはなりません。今間違いなく世界で1番日本がリードしている分野であり、まだコンセプトカー段階の車を引き合いに出して、すでに市販ベースの日本車をコケ扱いする一部カーメディアの左翼的報道もどうかとは思いますが、ここ数年のスパンで間違いなくそのリードは着実に縮んでくるでしょう。

例えばゴルフEVが市販となり、リーフと比べた時に、EVという点でスタート位置が揃った場合、結局は今現在で言う「ゴルフとティーダ」の比較状況と同じようになってしまうのではないか。もちろん、速度域が低く、航続距離も短いEVに、ドイツ車の過剰性能過剰クオリティに追随しろ、なんて気はさらさらありません。ようはクルマ自体の魅力、テイストの範囲の話。そう考えた時に、果たして日本車はこれからどういう価値基準でクルマの魅力を作っていくのか。例えそれがEVであろうとハイブリッドであろうと燃料電池であろうと、「クルマとしての魅力作り」の歩みを決して放棄してはいけない、という事を最後に主張して、このレポートを終えたいと思います。
Posted at 2011/02/19 22:50:42 | コメント(6) | トラックバック(0) | 日産
2011年02月14日
さて、今回はいよいよ登場した、日産リーフの試乗記をお届けします。

アイミーヴに続き登場したEV…というと、日産側の人が怒るかもしれません。それほどまでに、今回のリーフに対する日産の気合いの入れようは相当なもの。ハイブリッドでトヨタに大幅に遅れをとった理由も、ゴーンさんのEV推しによるものでしょう。もっとも、フーガのハイブリッドは今までトヨタが積み重ねてきたハイブリッドの歴史をぶっ壊してしまうかもしれないほど、複雑かつ合理的で非常に上手くまとまったものですが…





と、話が逸れました。というわけで今からリーフのインプレッションですが、すでにアイミーヴを3度、100km以上乗っており、最新EVの凄さは実感済み。なので、いわゆる「とっても静かでスムーズ、滑らかな走り…」とまずは誰でも驚くそのカルチャーショックは体験しているので、そういったお決まりの印象は横に置いといて、アイミーヴの試乗記の時のように「ちょっと非日常的じゃないの?」という疑念を抱えつつ、自分はあくまで「自動車として見た時どうなのか」という評価基準の軸をブレさせない、ということを前提にレポートを進めていきたいと思います。



テスト車両は、まだ300kmほどしか走っていない、ホワイトパールの「X」。もう1つ上級グレードの「G」がありますが、このXでも基本的な装備に全く過不足はありません。ルーフスポイラーのソーラーパネルやクルーズコントロールが欲しいのなら「G」ですが、賢いユーザーはほとんどがXを選択するかと思います。





さて、まずはスタイリングですが…登場当初からの個人的な印象、一貫して変わらずに「理解不能」です(苦笑)。いたるところのディティールは未来感を表したかったのでしょうが、なぜこのプロポーションにする必要があったのか。こんなオーソドックスな2ボックスに。事実、後々に記しますが、パッケージング上の「無駄」がいくつも散見されます。まぁこれも、数々の検討と熟慮を重ねて生み出された結果なのでしょうが…個人的には、あの「ジューク」のデザインで中身がEVならば、それはそれは素晴らしく先進的な1台となっていただろうに…と思ってしまいます。デザインだけで言えば、アイミーヴのほうが5000倍はいいですね。



ただ、当初のあのブルーのボディカラーがそのイメージを助長させていたのかもしれません。先日横浜の日産グローバル本社で見たレッドやブラックのリーフは、「まだマシ」な印象でした。この白パールは…やっぱ、ダメですけど^^; とは言え1日乗ってみて、いわゆるブルドックのような「ブサカワ」的愛らしさがある、のかもしれない、と思えてくるようになったりも…。




ボディの3サイズは、4450×1770×1550。ティーダくらいかな?と思っている人も多いようですが、それより1サイズ大きめです。あえてこの大きさで出すのも、おそらくは「北米市場でのベーシックサイズ」を狙ったとも言えますし、プリウスを意識していないはずはありません。


さて、見た目の印象はこのあたりにして、続いてドアを開けてインテリアへ。まず目に飛び込むのが、ホンダ車のような上下2分割のメーター。上部に速度、時間、外気温、左にあるのはエコインジケーター、下は左から時計周りに、バッテリー温度、回生・出力を示すボール型モニター、航続距離。えー何が言いたいかというと、もういろいろな表示がありすぎて、しかも各表示方式がどれもバラバラで、運転中の把握のし易さなんてホントに考えてんの?という印象しか残りませんでした。

ホンダは苦慮してインサイトで「色変化でエコ運転を示す」というアンビエントメーターを作って、これは大変よくできていると思うのですが、やはり初物だからか、リーフはまだまだこのあたりのインターフェイスの工夫が必要かもしれません。というか、人の目線位置によっては見え方が全然違ってしまいかねない、この上下2分割メーターの構造自体、欠陥かもしれませんね。案の定、自分は中央のインフォメーションモニターの下側が見切れてしまう時がよくありました。



その原因の1つとして、ドラポジを合わせている時に驚愕の事実。ステアリング調整はチルトのみ、ホントはテレスコがあればなぁ…と思いながらシートリフターでシート上下調整を…と思いきや、今となっては珍しい、ラチェットではなくダイヤルでの調整。嫌な予感……そうなんです。このリーフ。いまどきシートの高さ調整機能は、全体が持ち上がるタイプではなく、マーチと同じく座面だけがわずかに調整できる、なんとも安っぽくて古臭い方式なのです。これには唖然。

VDC標準はエライ。リア中央ヘッドレストとテレスコが欲を言えば欲しいなぁ…なんて思っていたら、こんなところでコストダウンをしていたとは。インテリアの質感はそこそこ良く感じられていただけに残念。電気自動車は航続距離が短いし、ロングドライブなんて出来ないから、シートポジションの調整なんてどうでもいい…という考えによるものなのか?はっきり言って、EVどうこう全く関係のないところでこんな手抜き、全く持って損というか、もったいないというか。まだプレス試乗会は行われていないとのことですが、誰か指摘する人がいるかどうか。

なるほど、これならアイミーヴよりも安くできるはずです。メーターはインパネまわりにはお金かかってますが(事実、ナビの操作系やエアコンスイッチのタッチは高級感があって質感かなり高し。)その他の部分の内装クオリティは、残念ながら100万円クラス。ティーダ以下、マーチよりややまし、程度です。削れるところは徹底して削ってます。



ちなみにマーチと同じと言えば、これもK12マーチ試乗インプレッションで酷評した、横方向のガラス面積が狭く視認性に難ありの小さなドアミラー(画像はマーチのもの)。リーフは残念ながらこのマーチと同型のドアミラーが採用されてしまっており、案の定車線変更時の後方斜め方向の死角が他車と比べて格段に大きく、危なっかしいったりゃありゃしない。この2点、慣れどうこうで解決できる問題と判断されている?走りや安全性をどういう言う前に、まずこういった基本的な部分をちゃんとする事、それが大切なのでは?もっとも、初期ゴルフⅣや現行E90型3シリーズ前期なんかでも、ドアミラーが小さすぎて危険、という事もありますが。

どうやら気になる一般ユーザーからの指摘はあまりない?しかし、運転し始める前段階として、この2点は個人的に激しく気になりました。細かいところで言えば、リアウインドーのウォッシャーがない、なんてのも。



操作系は画像のように、マウスのようなシフトと、電気式パーキングレバー。見た目を優先してかこういった形状のシフトになったのでしょうが、実際に動かしてみても操作感はまぁまぁ。使いやすいかどうかは微妙なとこですが、ボタン上に「P」ボタンがあり、信号待ちの時はポチっと押せばブレーキ操作から解放されるので便利でした。

ただ、Pボタンを押す時も、そこからDモードにする際にも、後ろのパーキングレバーを操作する時も、その反応がどーも1テンポ、2テンポほど遅れます。おそらくこれは意図的なのでしょうが、少し慣れが必要とされるかもしれません。またこのインパネまわりのピアノブラックの処理は、未来感と高級感が上手くバランスされておりなかなかの雰囲気ですが、ご覧のように乗っているとホコリや指紋、傷がすぐに目立ってしまうのが難点。まだ新車なのにこの状態ですから、長く乗るとどうなるかちょっと心配です。

リアシートは十分なスペースが確保されていて、見た目ではなんだ十分に広いやん!…っと思いますが、実際に座ってみると、なぜかどーも落ち着かない。理由はフロアと座面の高さが不足していて、足をつけると太もも付近が浮かび上がってしまって、スペース的には全く問題ないのですが、どーもしっくり座れない印象。フロントシート下に指先を入れられればもう少しマシなんでしょうが、前途したようにシート高調整の方式があれなのでそれも無理。これはやはりフロア下に電池を積む関係で、パッケージングの苦慮が伺える部分です。ちなみに自分は178cm。小柄な方なら気にならないかもしれません。もっとも、そこまで細かく気にしなければ居住スペースは十分に実用的。ヘッドレストはないものの、中央席も3点ベルトなのは○。



ラゲッジスペース、こちらは積極的に広いと言っていいでしょう。開口部も大きく、深さもたっぷり。シートを倒すととてつもなく大きな段差が残りますが、自転車が積めないじゃないか!という人はセレナを買いましょう(笑)。よほど大きな荷物を積まない限り、大きな問題にはならないと思います。また、ご丁寧にもゴルフバッグ2つの収納方法が説明書には記されていましたが、冬場暖房入れたらフル充電でも100km走れるかどうか、というようなクルマでゴルフに行く人はいるのかどうか^^; あ、近所の打ちっぱなしに行く?なるほどさすが日本基準。

さて、走り出す前からこんな長くなってしまいました(汗)。スイッチをONにして、いざ出発…そこからの走りの印象、カーナビの協調制御、バッテリーの持ち、急速充電、などなどは、次回後編でまた詳しくアップします。今回はこのあたりで。
Posted at 2011/02/14 00:13:03 | コメント(2) | トラックバック(0) | 日産
2011年02月12日
さて、予告通り本日、ツイッターで展開中の「12時間無料レンタルキャンペーン」に当選させて頂いた権利を使わせて頂き、日産のリーフに乗って「大阪オートメッセ」へ行ってきました。


メーカー系はトヨタのみ、タイアメーカーはゼロ(グッドイヤーの袋がもらえない!)、展示規模もかなり小さくなって「これで前売り券2000円の価値はあるのか!?」との前評判でしたが、いやー個人的にはとっても楽しめました(笑)。あのSTIの辰巳さんとお話させてもらえたり、フェラーリ458を筆頭する輸入スーパーカーもいたし、最新のドレスアップトレンドも掴めたし…


と言いつつ、9時に入場して13時に退場(笑)。そして再び、好奇の?目を大量に浴びるのを感じながら、リーフのインプレッションを再開、急速充電でたっぷりと航続距離も確保して…



という矢先に、まさかの出来事が。





片側2車線の直線道路。速度は50キロくらいでしょうか…右側車線を走行中、斜め前方にいるワゴンRが、なぜか突然に進路変更でこちらへ!「危ない!」と思って反射的にフルブレーキ、なんとか回避…と思ったところに、止まりきれなかった後ろのラパンが、リーフのリアにゴツン。



…そうなんです、最新のEV、まだ300kmしか走ってないリーフをお借りしている時に、なんと事故を起こしてしまったのです(汗)


幸い、速度が低かった事もあって、双方ドライバー同乗者に怪我なく、クルマの損傷もバンパーとナンバープレートが少し凹んだ程度。相手の方にも状況が状況だけに、怒るというより同情し合う感じというか…悔しいのは、原因であるワゴンRのナンバーを確認できなかった事(汗

警察にすぐ連絡して事故処理してもらい、意気消沈しつつそのまま返却…。軽微とは言え、新車のリーフを傷モノにしてしまった事実に変わりはなく、申し訳なさで一杯だったのですが、日産レンタカーの方にはとてもご丁寧に、しかも身体の事まで気遣ってくださり、本当にもうすみませんの一言…(涙


せっかくの息抜きのつもりが、とんだ災難日になってしまいましたが、リーフのほうは一応100kmオーバー走る事ができたので、また後日詳細レポートはキッチリと。あとは、今のところ大丈夫だとは思いますが、身体に異変がない事を祈るのみ……


改めて、安全運転への認識を改めた次第であります。自分の戒めのためにも、ここにしっかりと記しておきたいと思います。
Posted at 2011/02/12 23:35:38 | コメント(5) | トラックバック(0) | コラム
2011年02月12日
こんばんわ。


就活本格化につき、毎日古今東西駆け巡る日々です。
前回のFJクルーザーのコメントも返信できておらず…今しばしお待ちを!!汗




さて、そんな多忙極める中、
なぜか色々とネタ的にはストックがありまして…笑
それを簡単にご紹介。
いずれこの3本は、
キチンと試乗記にしてまとめたいと思っています。



まずは、新型ヴィッツ。

トップ画像のピンク色のヴィッツは、前回の池袋アムラックスでFJクルーザーに乗った際に同時に借りていた、1.3Fスマートストップ仕様。この時は本当に街中チョイ乗りでしか試せませんでしたが、早くもレンタカーで配車されており、ちょうどクルマを使う機会があったので、溜めていたポイントを使って格安レンタル(笑)。



借りたのは基本のモデルとなる1.0F。最初に借りた客が自分、というまっさらド新車を、馴らしなぞ無視して(爆)、いつものテストコースで一般道の渋滞、高速巡航、ハイペース巡航、ワインディング、たっぷり400km試す事ができました。そのロングランで印象が変わった点、また兄弟車ラクティスの雑感なども混ぜながら、アップしたいと思います。


次に、スバルのステラ。



これはたまたま友人たちとドライブに行く際に一番安い軽クラスで予約を入れたら、こちらもまた走行2000kmのほぼ新車なステラが割り当てられて、狂喜乱舞(言い過ぎw)。ぜひ1度スバル最後の軽の実力は試しておきたかったので、願ったり叶ったりでした。印象を簡単に言っておくと、その期待は裏切られず。いや、走りのクオリティにびっくり。ただ、そのこだわりがあるからこそ軽撤退という悪夢のシナリオも想像できてしまうわけで…このあたりの想いと悲哀を含めて、また試乗記にて。



さて、お次。これはまだ未試乗。というか、明日…正確には、今日、乗る予定です。ついでにこれに乗って大阪で開催される、オートメッセに参加してきます。その車種は、今注目の、これ。



そう、今話題のリーフ。プレス試乗会の前に、たっぷり試せる機会を設ける事ができました。もちろん、たっぷりと言っても、この久々大阪で積雪を記録する猛寒波。条件としては最悪ですが、これも実力を試すのにいい機会となりそうです。幾度と乗って味わい尽くしたアイミーヴの印象の良さを超えられるかどうか。そして日産の意気込みを商品からどう感じ取れるのか?今からとても楽しみ。こちらもたっぷりと詳しく紹介する予定です。



さ、もうこれだけ忙しいと、こういう事やっているのが数少ない娯楽w とりあえず雪が積もらない事を祈りつつ、リーフにワクワクしながら、今夜はこのあたりで。
Posted at 2011/02/12 00:58:04 | コメント(1) | トラックバック(0) | コラム
2011年02月01日
さて、忙しさに苛まれて、すっかり月1更新ペースとなってしまいました。苦笑

バイトと就職活動の両立、セミナーや説明会に参加するためにバイトを休み、けどバイトを休めば収入が減り生活も就活の交通費も厳しくなり、けど説明会の予約を早い者勝ちで取りやり繰りするだけでも大変で、そしてバイトもすぐ代わりを見つけなければいけない…という悪循環の中、大学ではテスト期間に突入するという、まさに地獄(笑)の週間をなんとか乗り切りました。幸い単位取得には余裕があるので、留年や卒業できないなんて事にならないのが救い。テスト種目も最小限で済みました。あぁ、過去の自分に感謝。笑

経団連やら色々で就職活動の開始時期を模索しているそうですが、せめてやはり2~3月くらいにしてもらいたいですねぇ…と言いつつ、すでに始まっちゃってる2012卒の自分にはもう関係のない事ですが(苦笑)

さて、大阪在住の自分は、移動という点でまだとても恵まれている方なのですが(大きい規模でだと、東京か大阪、あとは名古屋が会場のメインでしょうか)説明会の予約状況次第では、東京へ足を運ぶ事も多くなってきました。ばびゅんと新幹線で2時間半?いえいえ、そこは予算優先で8時間かけて深夜バス。これが寝れないし狭いしツライ…運転大好き人間としては、自分で500kmちょいをピュッと運転して行く方が楽なんですけどねw

さ、前置きが長くなってしまいました。そういうわけでせっかくの東京行、説明会が終わりバスの時間までかなり余裕があったので、ずっと前から行きたかった池袋のアムラックスへお邪魔しました。目的はヴィッツとFJクルーザーの試乗。現在45分タイムレンタルが無料!という太っ腹な企画を開催中で、ちゃっかりこれに便乗してきました。

で、ヴィッツはまぁのちのちにしまして、今回最大の収穫だったのが、FJクルーザーの思わぬ良さに気付けた事。個人的にはMINIやフィアット500など、クルマとしての出来には共感できるものの、過去へのオマージュを現在のコンプライアンスの中で実現しようとする、ノスタリアズム?の傾向はあまりそう好むものではありませんでした。過去を美化し過ぎる傾向も。「あの頃はよかった」だけでは、技術もデザインも進歩しません。伝統は時として呪縛にもなります。

それに、FJクルーザーの北米デビューは2006年。中身は先代プラドがベースであり、技術的にも大してポイントがあるわけでもありません。むしろ、最新か否かで言えば、間違いなく「古い」1台。というわけで、雰囲気だけのクルマ、ということで舐めきっていたんですね。

…で、実際乗ってみました。結論から言うと、もうなんかすいませんでした。国産も「たまには」こういったプロダクトでクルマ作ってってください。…最初と言ってる事が真逆です(笑)。しかも、たまに?なぜこんな心境になったのか…は、追々。





さて、試乗車はベースモデルのブラック×ホワイトの2トーンカラ―。装備充実の「カラ―パッケージ」や、ビルシュタインサスをもつ「オフロードパッケージ」もありますが、装備的にはこのベースモデルでもなんら不満なし。「デフロック」やら「アクティブトラクションコントロール」やらオプションは豊富で、カタログを眺めるだけでも色々と妄想が…。

そんな中、個人的に「付けなくてもいい」と思えるのがアルミホイール。純正サイズの17インチアルミや、60扁平20インチのアルミも用意されていますが、このクルマには間違いなく「鉄っちんホイール」が一番サマになっていると感じます。70扁平17インチのバカでかい迫力ったらありません。(ちなみに純正17インチは265幅、オプションの20インチだと245幅と20インチのほうが若干幅狭に。最小回転半径はともに6.2mで同一。)



ブラック×ホワイトの鉄っちんホイール姿…いやぁー、カッコいいですね。欲を言えば、こんなにピカピカじゃなくて、いたるところそこらじゅう泥っだらけのほうが、さらに雰囲気が良くなるかもしれませんw。もし自分がオーナーなら洗車なんてせずに、徹底的に汚れさせておいてそのまま放置、なんてのもアリ?事前に「もし乗るなら…」と想像していた仕様そのままバッチリだったので嬉しさ2倍。もちろん、鮮やかなブルーやイエローの展示車もいい雰囲気でした。

さてドアを開けて、運転席に「よじ登り」、ドライビングポジションをとると、目の前に広がる景色は今まで経験したことのないもの。幅はバカでかく、しかし天地方向はとても狭く、ポジション自体は案外足を投げ出すような乗用車的感覚で、けどもアイポイントは尋常じゃなく高い。まるで正方形の箱に閉じ込められたような感覚で運転することとなります。視点の高さは4トントラックと同じ、そしてグラスエリアがトラックの半分以下でスポーツカーのよう、と言えば、なんとなく想像していただけるでしょうか。その証拠に、フロントワイパーは短いブレードの3本拭き。見た目だけの演出でなく、こうでもしないと雨の日は前が見えません。笑



インテリアの質感は…なんて、このFJクルーザーには愚問でしょうか。300万円ちょいという、見た目にしては割安に感じられる分、高級感を味わうところは皆無。しかし、グローブ装着前提で操作性を考えられているおかげで、シフトノブも、エアコンも、各レバー類スイッチ類がとにかくバカみたいにデカく、操作性は極めて良好です。試乗車はブラックなので、内装パネルの色もブラックなので一見地味な印象ですが、ボディカラーとインパネが同色となるので、とくにイエロー・ブルー・レッドはかなり目立ちます。運転中これほどまでに自分のクルマのボディカラーを意識させるクルマはそうありません。運転席からは、だだっ広いボンネットも常に視界に入ります。

ステアリングは思っていたよりも小径でグリップも細く、パッと乗った印象では案外取り回しでのステア操作は楽…なのは錯覚で、全長こそ常識的ながら、このボディ形状と大きさ、そして特殊な視界では取り回し性は国産乗用車最難関の分類に入ります。とりわけただでさえ狭いリアガラス面積をさらに覆うスペアタイアのおかげで、後方視界は最悪。かつてのいすゞ・ヴィークロスを思い出させます。ドアミラーが縦長なおかげで、ミラーtoミラーはなんとiQとほぼ同じ!との触れ込みがありましたが、そのiQのミラーtoミラーの数値自体が、アウディA4よりも大きい事を知る人はそういないでしょう。デカいタイアとオーバーフェンダーで、車幅感覚…とくに幅寄せなどは、相当に神経を使う事は覚悟しておく必要がありそうです。ま、このクルマが気に入った人にはどれも気にならない事でしょうがw



そんなボディな割に、リアシートやラゲッジスペースが案外広くない事も知っておく必要があります。RX-8と同じ方式の観音開きドアも使いやすいとは言い難く、リアシートの足元スペースは、狭いとまでは言わないものの、あまり長時間座りたいとは思えません。ラゲッジもフロアの高さ、その割に低い全高、短めの全長で思ったほどの広さではなし。申し訳程度にハッチガラスが付いていますが、こんな狭くて高い位置だとさして便利でもなんでもありません。苦笑

エンジンは4.0LV6。組み合わされるのは5速ATで、シャシーはフレーム。X-REASもビル足もついていない素の仕様。しかし乗るとさすがトヨタ車というか、荒れた路面や少しスピードを上げた時、コーナー時にモノコックとは違う事を意識させられますが、普通に走ればなんら違和感なし。乗り心地もいたって快適。パートタイム4WDなので街中だと常時FR状態で走らなければいけないのは少し残念ですが、ファッションでこのクルマを乗るユーザーには別にどうでもいいのかもしれません。ブレーキもストッピングパワーはこのクルマには必要十分。ロール・ピッチ・ブレーキング時のノーズダイブの大きさ、コーナリング時の挙動変化の大きさ、高速走行時の緊急回避時のスタビリティうんぬん…このクルマにそのようなオンロードで飛ばした時の云々を言うのは、愚問というところでしょう。のんびりまったりクルージングするには最高です。



エンジンは低速からトルクたっぷり、踏めば上までシュンとキレイに回ってくれます。車重を考えれば、十分にパワフルで余裕ある動力性能と言っていいでしょう。欲を言えば、ちょっと排気音がジェントルすぎるというか、優等生すぎるというか。ここはマフラーなどの排気系チューンでもっとドロドロとした迫力あるサウンドを……それか、むしろディーゼルの方がこのクルマのキャラクターにマッチしているかもしれません。

通信簿的に見れば、項目別で点数をつけると、良いポイントはさしてなく、逆に気になるところを挙げればそれはいくつも出てきます。しかし、なぜかこのクルマ、別に飛ばさずとも、街中を走るだけで、とにかく楽しいんですよね。もう運転しながら笑っちゃうんです。ニヤニヤしながら「良いわー良いわーこれ。」ってドライブが楽しめる。一応評論的に文面を色々書きましたが、正直そんな事、そんな基準はどうでもいい。クルマとしての商品的価値は間違いなく高い。逆に言えば、カイエンやレンジならともかく、今売ってるプラドやランクルになんて、自分は全く興味が湧きません。けど、このFJクルーザーなら、気になる…否、むしろカタログを見ながら「自分が乗るとしたら、あーでこーでこうしてああして、仕様が決まったらここをああいじって…」とついつい妄想が広がってしまう。


それはやはり、クルマ全体が醸し出す「雰囲気」の良さなのでしょう。いわゆる「右脳」タイプのクルマ。もちろん「左脳」部分…メカニカルな面も決して、優先しないというわけではありませんが、結局その部分に関しては、よっぽど工業製品的に突出して優れたレベルのものでないと、購入意欲をそそられないわけです。今のトヨタにそちら方向で訴えてくれるクルマがあるか?残念ながら、片手で数えられるほどしか個人的にはありません。それでも、クルマ好きにとって自分はまだ寛容派なほう。他の方ならトヨタ、否、国産車で欲しいと思えるクルマなんて、ない!という方も多いのでは。

ただ、個人的にそんな状況を嘆いたとしても、それを武器に批判しようとは全く思いません。それは同時に新型ヴィッツに乗り、その「温度差」をもうマトモに感じたから。それは、大衆を狙うのか、それともアウトローを狙うのか、で違ってくるのだと。おそらく普通の感覚をもったユーザーなら、確実にこのFJクルーザーなんて眼中に入らない事でしょう。FJクルーザーの魅力に触れ、トヨタの現在のクルマ作りを批判する自動車ジャーナリストが一部でいるようですが、そんなものはナンセンス。やるならば、それは徹底的に左脳視点で、ダイナミクスや安全性を追求提言すればいい。むしろ個人的には、そう感じた時点で、「あぁ、やっぱクルマ好きって、自分って、世間の価値観からズレてんだなぁ」という事を改めて認識した、そんな感じです。



いやー、つくづくクルマ作りとは奥が深く、そして難しい。もちろんこれは本流じゃありません。メイン車種までこんなぶっ飛んだ事しろ、強烈な魅力をもっと盛り込め、なんて言うのは滅相もありません。パッソだってヴィッツだって、カローラだってヴォクシーだってアルファードだって、どーぞどーぞたくさん作って売ってください。偏差値が優秀ということ、それで良く売れるということ、それはそれは素晴らしい事ですし、資本主義の企業としての基本であります。

けど、けどですね。下から上まで幅広いラインナップをもつメーカーならば、このFJクルーザーの「楽しさ」みたいな感覚を持ち合わせたクルマが、もう少しあってもいいんじゃないですか?バカみたい、無駄こそ正義、そんなはっちゃけたクルマが、もう少しあってもいいんじゃないですか?それでユーザー層がさらに広がれば、儲けもんですよ。だって、「企業」といえども、「『自動車』企業」なんですもの。基本ができれば、応用でちょっとおふざけしてもいいんじゃないですか?トヨタさん。ちょっとだけでもいいから、「夢」を売る仕事、でもあると思うんですよ、クルマって。

あ、そういえば、オートサロンではだいぶ「おふざけ」されてましたね。別に一般の方から白い目で見られても、会社の内部で批判が出ようとも、たまにはいいじゃないですか。僕ら「アウトロー」な人間が、とっても楽しみにしてますよ。ね?トヨタさん。


そうだなぁ…巨大化しすぎて、なのに今じゃ3列シートの北米仕様をそのままもってきたヴァンガードのほうが売れちゃって、全く存在感がなくなっているRAV4を、思いきって最近流行りのアンダー2Lクラスまでダウンサイジングして、ジュークやRAV4、もうすぐ登場するマツダCX-5に対抗するべく、このFJクルーザー風のデザインにして売るなんてどうでしょう?ハマーH2→H3の流れみたく。実際FJとH3が同じ大きさだけども。そうすれば日本でも、いやトヨタさんが苦手とするヨーロッパでも、結構いける、かも?そこんとこ、いかがでしょうか?
Posted at 2011/02/01 00:15:17 | コメント(2) | トラックバック(0) | トヨタ
プロフィール
幼い頃から、車が大好きでした。 その気持ち変わらず、今も純粋に、自分なりに日々世の中に新しく生まれるクルマ、そのクルマを取り巻く事情や環境、ドライビン...
ユーザー内検索
<< 2011/3 >>
  12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  
ファン
18 人のファンがいます
愛車プロフィール
過去のブログ
2011年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2010年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
QRコード
QRコード
このブログを携帯でご覧になれます
プライバシー
©2011 Carview Corporation All Rights Reserved.