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2011.02.16

岡留安則の「東京−沖縄−アジア」幻視行日記

岡留安則提供:岡留安則の「東京−沖縄−アジア」幻視行日記

 というか、2月13日の琉球新報一面トップに「抑止力は方便」という極太活字が躍っていた。沖縄タイムスも扱いはいくらか地味ながら、一面トップで同様の記事を載せていた。これは、琉球新報、沖縄タイムス、共同通信の三社共同企画で、普天間基地問題の検証をやろうという画期的な試み。その中の柱として、鳩山由紀夫本人に公約に掲げた「普天間基地の県外・国外移設」の挫折の真相を直撃インタビューしたものだ。1月下旬と2月上旬の2回にわたり、合計3時間の議員会館でのインタビューが実現したという。すでに、鳩山氏は先の外国人特派員クラブでの講演の中でも、普天間の県外・国外移設を断念せざるを得なかった理由に、「役所は最初から辺野古ありき」だったとして防衛・外務官僚の抵抗が強かったことを認めていた。今回のインタビューはそれよりも一歩踏み込んだ形で、「普天間基地移設は最低でも県外」としてきた鳩山前総理が、なぜ日米合意=辺野古新基地建設へと方向転換せざるを得なかったのかについて真相を語ったものだ。「抑止力は方便」というのは、<「県外」断念の理由とした在沖海兵隊の「抑止力」については、辺野古しか残らなくなった時に理屈付けしなければならず「抑止力」という言葉を使った。方便といわれれば方便だった」と述べた>という鳩山氏の発言をタイトル化したものだ。

 鳩山氏は、これまで政府が伝家の宝刀としてきた抑止力ですら方便だったことを認め、「県外」困難視の閣僚や辺野古支持の防衛・外務官僚を最後まで統率できなかった自らの力量不足をも認めた。筆者もその対立構図については幾度となく指摘してきたが、当時の総理自身が率直に認めたことで、普天間移設の挫折の真相が歴史的な事実として明るみに出た。まさに新聞が調査報道の威力を自ら証明したインパクトのある記事だった。ところが、枝野官房長官は、沖縄の米軍には抑止力があり、日米合意に変更はないと即断で回答。沖縄県民に対する思いやりのかけらもない紋切り型の官僚答弁で、再び県民に大きな失望感を与えた。枝野官房長官の背後には仙谷代表代行が控えており、現在の菅政権の下では、普天間基地問題は一歩も前に進まないし、沖縄と政府の対立の図式はますます強まるだけである。菅内閣の支持率もさらに低下し、10%台に落ち込んだ世論調査もあった。先日の愛知県知事と名古屋市長選で民主党推薦候補が惨敗したことでも明らかなように、もはや国民は菅内閣に期待感を持っていない。支持しないが支持する層の約3倍というのだから、何をかいわんや、だ。しかも、この選挙戦の敗北は明らかに岡田幹事長を中心とした執行部の責任である。党としてもケジメをつけないと統一地方選も惨敗必至である。にもかかわらず、「党としてのケジメをつける」との言い分で小沢一郎の党員資格停止に執念を見せる菅総理は権力抗争と自己保身に目を奪われ、完全に理性的判断力を失っている。政治家が民主主義の基本ルールである「推定無罪」の原則すら放棄しているのだから、世も末である。おそらく、菅総理と違って政権交代時の公約の実現をめざす方針を捨てていない小沢氏が疎ましくてならないのだろう。沖縄県民にとっては、現在の民主党執行部は打倒すべき敵でしかなく、むしろ政権交代時の小沢・鳩山路線の原点に立ち戻って、日米合意をとことん見直す方向性を支持するしか選択肢はないと思うのだが。

 沖縄タイムスの「タイムス女性倶楽部」の講演でやってきた作家でクレヨンハウスを主宰する落合恵子さん、琉球新報の講演でやってきた法政大学の教授で江戸文学の研究者でもある田中優子さん、沖縄で相次いで再会。二人ともウワシンで連載をやってもらったこともある旧知の間柄だ。沖縄にいることで、逆にこういう再会の機会が持てるというというのは幸運なことである。
岡留安則の「東京−沖縄−アジア」幻視行日記

岡留安則の「東京−沖縄−アジア」幻視行日記

岡留安則

「噂の真相」の代表取締役兼編集長を務め、現在はフリージャーナリストとして活動中。

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