(cache) スポーツ見るもの語る者～フモフモコラム:東京マラソン2011で非実業団ランナー・川内優輝さんが一躍スターとなった件。

2011年02月28日

東京マラソン2011で非実業団ランナー・川内優輝さんが一躍スターとなった件。

これが現代のシンデレラストーリーというやつか…。

好天に恵まれた2月27日、首都・東京を3万6000人が駆け抜けました。パンダを中心としたコスプレランナー、USTREAM中継をしながら走る外人、ウォーキングを楽しむ奥様、多くの人がそれぞれのスタンスで東京マラソンを楽しみました。全国のランナーと物見遊山が心待ちにするお祭りを生み、都民の生活を豊かにしたという意味で、石原都政が残した最大の成果といえるかもしれません。

そんな中、注目を集めたのは男子3位に入賞した川内優輝さん。いわゆる「市民ランナー」として、定時制高校の事務職員をつとめながらの参加となった川内さんは、2時間8分37秒の好記録で世界陸上の代表内定を獲得。最後の2.195キロは優勝のメコネンを上回るペースの追い込みで、世界への切符をつかみ取りました。ゴール後には倒れ込み医務室行きとなった姿は、「レースでは死んでもいいという気持ちで走りますから」という言葉そのまま。

事務職員の快走には、正直実業団関係者も苦虫を噛み潰していることでしょう。「向こうは市民ランナーだぞ」「プロがアマに負けるとは何事か」「しっかりしろ」というお叱りも届くに違いありません。確かに実業団でのフルタイム練習に比べ、川内さんの平日は午前中の2時間に限られる練習時間や月間600キロという走行距離は物足りない面があります。トレーナーや用具、遠征や合宿といった環境面も不備が多いでしょう。

しかし、川内さんは単純に「市民ランナー」と呼ぶのは抵抗がある実力者。

箱根駅伝では学連選抜で走り区間3位の実績を持ち、卒業時には実業団からの誘いも受けました。昨年の東京マラソンでは4位に入り、今大会は招待選手での出場。これは実業団に所属しない道を選んだというだけで、「一般人が趣味でその辺を走っていたら早くなりました」という話ではありません。僕らのような本当の一般人が「俺でもやれるかも」「夢を諦めないぞ」「世陸に向かってダッシュ！」などと思ったら大間違い。

今回の川内さんについては、「市民＝素人・一般人なのにスゴイ」という形ではなく、甘えを許さず自分を律した「独立」という点をこそ讃えたいもの。会社で働いて帰ってきたあとでもサボらない。誰かに監視されなくても、周りに仲間がいなくても、自分で自分を律する「プロ」の意識。そうした意識を養うには、むしろ実業団所属選手のほうが環境的に難しい側面もあるでしょう。逆にそうしたプロ意識があるなら、狙った大会に集中できる個人での練習のほうが、やりやすい面もあるはず。

ですので、実業団選手諸氏も「優勝のメコネンはもともと日本の実業団所属だから我々は負けてない」などと強弁する必要はなく、それぞれのスタイルでそれぞれ頑張っていただきたいもの。いろいろなスタイルがあったほうが、いろいろな個性の選手が出てきて楽しいですからね。

ということで、「まっ、気を落とすなよ実業団」という気持ちを込めて、非実業団独立ランナー・川内さんの雄姿をチェックしていきましょう。

◆遅刻しそうになってスーツのまま走ることは僕もよくあるぞ！

僕も仕事の傍ら、大人気の「モンスターハンターポータブル3rd」への挑戦を続けています。しかし、勤務後は「モンハンやるの辛いなぁ」「結構集中力使うしな」「1人だと大変なんだよ」と思うこともしばしば。個人での戦いは環境的にも厳しいものを感じていました。しかし、川内さんのようにソロで頑張っている人の姿を見て、仕事のあとでも短時間集中で1クエストずつソロクリアしていこうと、想いを新たにした次第。

↓堂々3位でゴールした川内さんはそのまま倒れ込む激走！

首にカードかけるのに必死で川内さんが倒れるのをとりあえず放置しちゃうのも、市民マラソンならではの光景です！

助ける前にとりあえずカードかけちゃうのも、市民マラソンならではの光景です！

車イスで医務室に搬送され、車イスランナーの部を若干脅かした川内さん。マラソン後に倒れるのは毎度のことだとかで、急速をとったあとは元気に会見にも登場。「川内ができるならオレだったマラソンできる、と思ってくれてマラソンに挑んでくれれば、若い人も市民ランナーだけじゃなく実業団も世界に向かって挑んでもらえるんじゃないかと思います」「明日は高校入試の願書受付で年の中でも一番大事な業務でして…」「生徒からは“事務”って呼ばれてます」などと、事務員らしいナイスコメントを連発。

今回の記録は日本人では3年ぶりとなる2時間8分台。とはいえ、昨年の世界ランキングを見渡せば69番目の記録。上位にはケニア・エチオピア勢による4分台、5分台の記録がゴロゴロしています。市民ランナーと実業団の小競り合いみたいな構図ではなく、日本勢が一丸となって世界を目指していかなければマラソン日本の復活は遠い夢。まずは川内さんの快走を見て、10分を切るのが目標とかいう控えめな意識を吹き飛ばしてもらいたいものですね。

↓普段はスーツ姿でジョギングをするシュールな川内さん！