新着記事

文字サイズ変更

こうのとり追って:第2部・不妊治療を知る 反響特集 過酷な実態、理解して

 不妊の原因や治療方法を取り上げた連載企画「こうのとり追って第2部 不妊治療を知る」(1月31日~2月4日)には、メールや手紙などで多くの反響が寄せられました。記事で取り上げた男性が原因の不妊や、子どもを産める年齢には限界があることなどについて、不妊の経験がある人だけでなく、幅広く意見をいただきました。みなさんの声の一部を紹介します。【五味香織、下桐実雅子、藤野基文、須田桃子】

 ◇原因の夫、ショック強く つらい体験切々と

 「おれと結婚しなければ良かったね」「そんなことないよ」

 埼玉県の主婦(33)は昨秋、夫(36)と不妊の検査を受けた。主婦の卵巣にも不調が見つかったが、それ以上に夫の精子の少なさは深刻だった。医師は「自然妊娠は難しい」と言い、夫はしばらく泣き続けた。

 結婚してから2年がたち、仕事のストレスが不妊の原因と思った主婦は13年勤めた銀行を退職したばかりだった。がんを患う父に早く孫の顔を見せたい気持ちも募っていた。

 夫は治療は受けるものの積極さが感じられない。「忙しい」「眠い」と言って、連載記事にも目を通そうとしなかった。主婦が連日の服薬や注射のつらさを訴えてけんかになった時、夫は「おれが種なしだと思っているから言うんだろう!」と怒鳴った。主婦は「この人と結婚していなければ」と思ってしまう瞬間があるのが悲しい。

 治療費には主婦の独身時代の貯蓄を取り崩している。採取した卵子に細い管で精子を注入する顕微授精は1回数十万円かかり、いつまで持つか心もとない。もし夫の精子が採取できなくなったら、という不安もある。主婦は、第三者の精子を使う非配偶者間人工授精(AID)や、養子縁組も考えようかと悩み続けている。

   *

 不妊治療を中断している福岡県の派遣社員の女性(33)は以前、夫にも不妊の検査を受けるよう求めたが、「自分に原因があったら嫌だ」と拒まれた。女性は「どうにもならない。記事を読んで変わってくれればいいけれど」という思いを抱いた。やはり3年間続けた治療を中断している三重県四日市市の女性看護師(38)は「不妊の原因が明らかでなく、不安と焦りが募る毎日だった」という。「自然妊娠した人に、治療がどんなに過酷か知ってもらいたい」と訴える。

 かさむ治療費を負担に感じる声も多かった。大阪府の女性会社員(27)は「子どもがいる家庭にも大変なことはあると思うが、子宝に恵まれない夫婦も経済的、精神的につらい。出口の見えない治療が何年も続くのか」と漏らす。一方、4回目の顕微授精で妊娠中というベルギー在住の主婦(34)は医療保険で治療費はほとんどかからなかったという。「日本だったら費用がかかりすぎて、子供をあきらめていたかもしれない」と話す。

 連載では通院先選びの難しさも取り上げた。神奈川県茅ケ崎市のパート女性(41)は、夫に精子をつくる機能がなく、医師に「実子は望めない」と言われたが、転院したクリニックの治療で妊娠した。「一つの答えを受け入れるだけでなく、セカンドオピニオンを考えたほうがいい」と呼びかける。

 金沢市の主婦、長谷川智子さん(51)は、連載記事で高齢になると妊娠中や出産時のリスクが増えたり、妊娠率が下がることに触れたことを受け、「自分の体だからもっと能動的に情報を探すことも大切」と指摘する。茨城県牛久市の作業療法士の女性(28)は「加齢が原因の不妊治療には補助はいらないのでは」と意見を寄せた。長年にわたる子育てに責任を持てるかが疑問といい、高齢出産は「親のエゴとさえ思える」という。

 相模原市の女性(42)は、治療費や副作用の負担に耐えても子供が欲しいか自問自答し、「子供は世間体を取り繕う道具ではない」と考える。そのうえで「産む自由も産まない自由もある。子供を授からなくても肩身の狭い思いをしないで堂々と生きてほしい」と思いをつづった。

毎日新聞 2011年3月4日 東京朝刊

PR情報

スポンサーサイト検索

新着記事

 

おすすめ情報

注目ブランド

毎日jp共同企画