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社会

「付け帳」いまだ健在 篠山の老舗「大手食堂」 

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常連客らが使う付け帳「御通」と橋本清二さん=篠山市二階町、大手食堂

常連客らが使う付け帳「御通」と橋本清二さん=篠山市二階町、大手食堂

 篠山市二階町の老舗食堂「大手食堂」の壁に、「御通(おんかよい)」と記された付け帳が掛かっている。付けで食べた客が自ら注文した内容を記す、いわば“自己申告帳”。戦後間もない創業当時、現金の手持ちがない学生向けに作られた。数は減ったものの、今も常連客が使う。店主の橋本清二さん(72)は「現金を持ち合わせていなくても信頼関係がある。利用するお客さんがいる限り続けていきたい」と話す。(上田勇紀)

 歌手さだまさしさんも約30年前から現地でのコンサートなどの際、必ず立ち寄るという大手食堂。戦後間もない昭和20年代、清二さんの父忠吉さんが始めた。篠山城跡周辺が「大手通り」と呼ばれたことにちなんで名付けた。ご飯にみそ汁、総菜にうどん。気取らない大衆料理を安く提供した。

 当時は近くに兵庫農科大(現神戸大農学部)があり、おなかをすかせた学生が多く訪れた。一度に大勢来られると、勘定が間に合わない。親の仕送りが来る月末までは、現金を持っていない学生も多かった。忠吉さんは当初、紙に日付とメニュー、名前を書いてもらっていたが、1955(昭和30)年ごろから専用の付け帳を使うようになった。

 「仕送りに頼る学生が苦しいことは分かっていたから、2カ月くらい支払いを待つこともあった。食い逃げもないことはなかったけどな」。20歳すぎから店を手伝っていた清二さんは笑う。付け帳は学生以外にも広がり、毎月20日ごろに一人一人精算し、払ってもらう方式が定着した。

 清二さんは、忠吉さんが亡くなってからも付け帳を続けている。現金払いが主流の今も、役所や会社、個人用など9冊あり、常連客は食べ終わると、慣れた手つきで記入していく。「今どき、のんびりした商売ですわ」と清二さん。付け帳は、せわしないご時世にあって、古き良き時代を今に伝えている。

(2011/03/03 14:17)

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