昨年秋から新興国で物価上昇が加速し、インフレに伴う社会不安はアラブ諸国の情勢流動化を導いた。成長市場として注目されてきた新興国は政情不安を防ぐため、相次いで賃金引き上げなどに動き始めている。
だが、物価高騰への不満を抑える賃上げは、一段のインフレを招く悪循環につながる恐れがある。多くの新興国では、原油など資源価格の急騰で、経常収支の悪化や財政の負担増といった問題も生じる。
金融危機後の世界の経済成長のエンジンになった新興国で、経済運営のジレンマが強まっていることを、まず認識すべきだ。
新興国では賃上げ実施のほか、食料や石油製品などの価格上昇を抑えるために政府による補助金の大幅増額や価格統制の動きも相次ぐ。アラブ諸国が一斉に動いたが、同様な動きはアジアにも広がっている。
国民の4割が1日2ドル以下で暮らす極貧層といわれるインドでは、物価上昇に抗議するデモが続く。インド政府は2月末にディーゼル燃料やプロパンガスへの補助金延長を決め、食料への補助金もさらに増やす見通しだ。インドネシアは、3月に廃止する予定だった燃料への補助金の延長を検討しているという。
こうした措置は短期的には家計の痛みを和らげる。だが価格メカニズムを通じた資源消費の抑制には役立たないし、財政の負担は増す。問題の先送りというべきだ。
中国の矛盾も深い。インフレ抑制のため引き締め策を進めるが、失業増への懸念もあって大幅な金利引き上げに踏み切れない。半面で中国政府は、格差拡大への不満を和らげようとして5年間で賃金倍増という方針を掲げる。賃金上昇が今後、一段の物価高を招く懸念も大きい。
一方、ブラジルのように景気が過熱し、人手不足も深刻になった国では、歳出削減と利上げによる景気抑制が最優先課題となっている。
新興国の成長に先進国が依存するような構図は、長続きするのか。
米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長は、FRBの量的金融緩和策が過剰流動性を生み、世界にインフレを広げたとの批判に反論してきた。その議長も1日の米議会証言で原油高騰に警戒感を示した。
先進国にとって妥当な政策が新興国の混乱を招き、世界全体のひずみを増幅する――。米国市場では6月末に期限を迎える国債買い取り策の打ち切り観測が台頭、1日の株価は大幅に下げたが、経済政策でも米国は新たなリスクの広がりに正面から向き合わざるを得なくなってきた。
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