生涯755本塁打のハンク・アーロン氏(77)がニューヨーク・ポスト紙のインタビューに答え、ヤンキースのスター、アレックス・ロドリゲス内野手(Aロッド)に、「現役でいる間は野球に集中しろ」と苦言を呈した。
現在、Aロッドの通算本塁打は613。最終的にあのバリー・ボンズの記録(762本)を越えられるかとの同紙の質問にこう答えた。
「可能だと思う。ただ、今は色々なことに気をとられ過ぎている。新聞で読んだが、彼は今年初めていいオフを送り、体を作ってきたそうだ。しかし、それは毎年やらなければならないこと。少なくとも現役でいる限りは野球のことだけに集中しなくてはいけない」
あり余る才能に恵まれながら、ここ一番で勝負弱く、選手や監督から尊敬を勝ち取っていないAロッドに欠けているものが、「集中力」。女遊びもほどほどにしろ、という苦言だった。
そういう意味で、アーロン氏が現在最も買っている選手がデレク・ジーター。「仮にAロッドがジーターくらい真剣に野球に打ち込んでいたら、これまでの結果も違っていたと思う」と付け加えた。
こうした考え方は、メジャーで初めて人種の壁を破ったジャッキー・ロビンソンから学んだという。
「彼には、とにかくまじめに試合に取り組め、と言われた。4打数ノーヒットの時もあれば、3安打することもある。大事なのは1試合、1試合ベストを尽くすことだ、と言われた」
アーロンが現役だった時代はまだ黒人差別が色濃く残っており、ベーブ・ルースの偉大な本塁打記録(714号)を破ったときは、白人から心ない中傷を受けたが、もし、自分自身がジャッキー・ロビンソンだったら、「あれほどまでの迫害に耐えられなかったかもしれない」とも告白した。
かつての同僚だったジョー・トーリ元ヤンキース監督については、「彼が監督になるなんて同僚だったときは微塵も思わなかった。彼はとてもいい男で、現役のときは女の子を追っかけ回していたからね」と偉大な監督の過去を軽く暴露したり、最近、アフリカ系アメリカ人のメジャーリーガーが減ったことについては、「深刻な問題だ。何とかしないと…」と暗い表情を隠さなかった。
最後にファンにはどんな選手だったと言われたいか、との質問には、「私は自分が非常に幸運にも野球の才能を授かったと思っている。ただ、現役時代、どんな時でも自分の持っているものをすべて出した。99%は出したと思っている。そうした選手だったということを覚えていてくれるとうれしい」とアーロン氏。
ロビンソン、アーロン、ジーターと続く「手抜きなしのプレーヤー」がどれだけ増えるかが、野球人気回復の大きなカギを握るということだろうか?