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社説:主婦の年金 不公平感をなくそう

 夫が会社員や公務員などで厚生年金か共済年金に入っていれば妻は保険料を払わなくても国民年金に入っているとみなされる。これが「第3号被保険者」だ。以前は会社員の妻も自分で国民年金保険料を払わなければならなかったが、86年から現在のような制度になった。

 夫が会社を定年退職したり「脱サラ」したり、あるいは離婚や死別したときは、妻も第3号被保険者ではなくなり国民年金に切り替えて保険料を払わなければならない。妻のパート収入が130万円以上となったときもそうだ。ところが切り替えなければいけないことを知らず、あるいは忘れている人が数十万人から100万人もいるといわれる。

 年金は40年間払うと満額受給でき、期間が短ければ減額される。25年に満たなければ受給資格はない。切り替え手続きをせず国民年金を払っていなければ、その期間の分は減額されないとおかしい。だが、旧社会保険庁の周知が不徹底だったり、社保庁のミスで切り替えられなかった例もあり、妻(受給者)の責任とばかり言えない面がある。このため厚生労働省はすでに年金を受給している人は払い済みとみなし、現在保険料を払っている人は2年分を払えばそれ以前の未払いは不問に付す、との救済策を決めた。法律で保険料支払いの時効が2年と定められているためだ。1月から実施されすでに2000人以上に適用されている。

 ただ、きちんと切り替えて保険料を払ってきた人からの不公平感は強い。救済策が国会での議論を経ず課長通達で実施されたことには野党だけでなく総務省からも批判が出ている。このため厚労省は救済策の手続きを留保し見直しの検討を始めた。

 一般的に夫の収入が高いほど妻の就労割合は低い傾向がある。生活が苦しくて働いている女性は自分で年金保険料を払っているのに、どうして専業主婦は払わなくていいのか。第3号被保険者にはそのような批判がつきまとう。厚生年金に入れない非正規雇用労働者や自営業者の妻も自分で保険料を払っている。正社員の女性は子育てで働けない期間も保険料を払わないといけない。第3号被保険者制度を根本から見直すべきだとの意見が出ているのはそのためだ。

 ただ、介護や子育てのため働きたくても働けない主婦もいる。お年寄りの介護は7割以上を同居の家族が担っており、その多くが専業主婦だ。最近は定年退職や脱サラばかりではなく、夫がリストラで職を失ったり非正規雇用労働者になったりするため妻が第3号被保険者でなくなるケースも多い。

 生活の安心と公平感を満たす制度改革が必要だ。

毎日新聞 2011年3月3日 2時31分

 

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