ユニセフによれば、家の手伝いや家計を助けるために働かねばならないといった理由で学校へ行けない子どもが世界には約1億人もいるという▲そんな問題に対応し1966年に国連総会で採択された国際人権規約のA規約は、参加国が高校と大学の学費を段階的に無償化することを定めている。朝鮮学校を高校無償化の対象にすると決めた昨年11月、高木義明文科相は談話でこの規約を引用した▲「国籍を問わず、わが国で学びに励んでいる生徒を等しく支援することは、教育についてのすべての者の権利をうたっている国際人権A規約の精神にも沿う」と▲高校無償化適用に当たり朝鮮学校と北朝鮮の関わりも指摘されていたが、政府は外交上の配慮はせず客観的な基準で判断し、すべての意志ある生徒の学びを保障するとして対象にすることを決めた▲ところが直後、菅直人首相は北朝鮮の韓国砲撃という外交問題を理由に、無償化適用に伴う就学支援金支給手続きの停止を指示。高校生が学ぶ朝鮮高級学校全10校の申請審査は止まった。学校側は「3年生が支援金を受けることなく卒業してしまう」と、審査の早期再開を求めている▲朝鮮高級学校の3年生が巣立つ日も間近いが、胸中は察するに余りある。生徒の詩に書かれた「同じ島に住む同じ人間。私たちだけ除外された」に心が痛む。何とか寛容な精神で温かく送り出せないものか。まだ間に合う。(謙)